Fallout76 -once in a blue archive- 作:egguimen
それでは対策委員会編、スタートです。
Line in the sand
キヴォトスに来てしばらく経ったある日…。
「おはようございます!先生。」
彼女の元気のいい挨拶に、俺も返事をする。
「アロナ、おはよう。」
「もう先生が来たこの短期間で、もうシャーレに関する噂がたくさん広まって、他の生徒たちから助けを求める手紙が届きはじめてます。」
「いい兆候です!私たちの活躍が始まるということですから!」
「ですがその中に……ちょっと不穏な、こんな手紙がありまして。」
「これは先生に一度読んでもらった方が良いかなと。」
「不穏な手紙?」
「いったいどんな……」スッ…
そう言って、机に置かれていた手紙に目を通した。
内容を要約するとアビドス高等学校っという場所が暴力組織の攻撃にあっていて、シャーレからの補給の支援が欲しいとのというものだった。
「うーん…アビドス高等学校ですか…。」
「昔はとても大きい自治区でしたけど、気候の変化街が厳しい状況になっていると聞きました。」
「調べた所、でかい砂漠らしいな。」
「はい。どれほど大きいかというと、街のど真ん中で道に迷って遭難する人がいるぐらいだそうです。」
「あはは、まさか、そんなことあるんでしょうか……?いくらなんでも街のど真ん中で遭難だなんで………。」
「さすがに誇張だと思いますが…。」
「いや、砂漠はナビゲーションがないとほんとに迷うぞ…。」
「もし砂嵐にでも巻き込まれたらひとたまりもない。」
これは西部でそういう死体を幾つも見てきたから言えることだ。
「とにかく、用心した方がいいな。」
俺が消防服に砂が入らないように作業台で細工していると、アロナが先程の対策委員会なる組織からの手紙について言及する。
「それにしても、学校が暴力組織に攻撃されているなんて……ただ事ではなさそうですが…。」
「一体何があったんでしょうか?」
「それを知るためにも...。」
「さっそくアビドスへ向かおう。」
「もうすぐに出発ですか!?さすが、大人の行動力!」
「ははは…とりあえず、屋上に行くとしよう。」
「え?どうしてですか?」
当然の疑問だった。普通外へ出るなら下の玄関を使うものだ。
しかし、この男は違った。
「陸路は迷うだろうが、空からなら話は別だろ?そういうことだ。」
俺は背中のジェットパックを展開する。
そしてシャーレを飛び立つ前に、少しだけふざけてみた。
「アテンションプリーズ!…なんちゃって。」
完全に滑ってしまっていた…。彼はウケを狙うのがあまり得意な方ではなかった。
「「……。」」
俺は少し恥ずかしくなった。
「先生ってそんな茶目っ気あることするんですね…。」メモメモ…
「あっ!まてまて、メモを取らないでくれ!」
「……恥ずかしいだろ…///」
(あっ、今の先生の顔かわいい。)スッ
アロナは彼の表情をこっそり撮影*1した。この事は墓場まで持っていくつもりらしかったが、
この後すぐにバレた。
「さて、茶番はこの辺にして……。」
「行くとしようか……アビドスへ…。」
そうして俺たちはアビドス砂漠へと向かった。
アビドスの上空を飛行中、俺は何気なく思った。
「それにしても、本当にデカい砂漠だな…。モハビを思い出す。」
彼は故郷のアメリカの南西部にあるモハビ砂漠を思い出していた……。
そこはとても広大で、サボテンが生え、回転草が風に吹かれて砂埃とともに転がっていく…。
まさに西部劇の舞台のような場所だった。
エドワードとも…よく行ってたな。
あいつのレーザー並の早撃ち、あそこのカウボーイから習ったんだっけな。
俺がクランベリー湿原でくたばった後、元気にやってるんだろうか…。
俺が故郷の思い出に耽っていると、懐にしまっていたシッテムの箱からアロナから声をかけられる。
「せ、先生!アビドスの校舎が見えてきました!」
「見えてきたんですが…。」
「…何かあったのか?」
「はい、何かの集団が校舎を校舎を襲ってるみたいなんです…。」
正に…悪いニュースだった。
(手紙にあった例の暴力組織か…。)
「…まずいな。」
その頃アビドスの校舎では、アビドスを乗っ取ろうと画策する不良の集団。
カタカタヘルメット団が強襲を行っていた。
ダダダダダダダダダダッ!
銃弾飛び交う校舎の戦場…黒いヘルメットをかぶった集団が校舎へと殺到する。
「行け行け!このまま押し切るんだ!」
集団の一人がそう叫ぶ。
そして、その集団のリーダーである赤いヘルメットを被った団員が高らかに笑う。
「ひゃーっ!はははは!」
「攻撃!攻撃だ!奴らはすでに弾薬の補給を絶たれている!」
「弾切れになるのも時間の問題だ!確実にこの学校を占拠するのだ!」
赤いヘルメットの彼女が檄を飛ばすと、ヘルメット団の攻撃は勢いを増していく。
ダダダダダダダダダダッ!
「………ッ!こいつらぁ!」
ヘルメット団の攻撃に、セリカは激昂し。アサルトライフルを撃ちまくる。
タタタタタタタタタッ!
「ウゥッ!」ドサッ
彼女の激しい銃撃に、一人の団員が倒れる。
「ふんっ!どうよ、これで少しは参った?」
しかし、それが他のヘルメット団の歩みを止めさせるには至らず、彼女は手痛い反撃を受けることになる。
ダダダダダダダダダダッ!
「きゃっ!?」
「セリカちゃん!」
連中の凶弾に撃たれ膝をつく彼女に向こう側で敵の進行を食い止めていた2年生の先輩、ノノミが顔を青くする。
「ノノミ、ここは任せてセリカを援護してきて。」
「はい!」バッ
その隣で、彼女の同級生シロコが声をかけた。
ノノミは彼女に頷き、直ぐセリカの下へ愛用のミニガンを抱えながら駆ける。
「セリカちゃんをいじめる子達には…」
キュイーン…
「お仕置きですよー!」
ババババババババッ!!!
「ギャアアッ!?」
ミニガンの掃射に、ヘルメット団達は一網打尽にされる。
「ノノミ先輩…!」
「セリカちゃん、大丈夫ですか?」
「う、うん…平気、シロコ先輩は?」
「向こうで別の集団を抑えてます。急ぎましょう!」
タッタッタッ…
シロコの援護に向かうため廊下を駆けるが、
「おっと、ここは簡単には通さないぜ?」ザッ…
連中が再び現れ、その行く手を塞いだ。
「もう!どこまでもしつこいやつら!」カチッ
「あれ?」
セリカは銃の引き金を引いたが、弾が出なかった。
「う、うそでしょ…こんな時に弾切れ!?」
「ノノミ先輩!」
「こっちもさっきの制圧射撃で使い切っちゃったみたいです…。」カチカチッ
そうこうしてる間に、反対側からもヘルメット団達がやってきて完全に板挟みの状態になる。
もはや攻めることも引くこともできず、もはや万事休すかと思われた。
「はは!どうやらお前らも、とうとう袋のネズミになったって訳か!」
団員の一人は自分達の勝利を確信していた。
しかしその時…
ズドンッ!ズドンッ!ズドンッ!
「ギャッ!?」
背後から放たれた散弾が挟み撃ちしていたヘルメット団の片方を襲った。
「全くヘルメット団めーおちおち昼寝もできないじゃないかー。」
その声の正体は、黒い盾とショットガンを構えた、校内唯一の3年、小鳥遊ホシノだった。
「ホ、ホシノ先輩!」
「うへー、ごめんねー遅くなっちゃって。」
「ささっ、早くシロコちゃんのとこ行こー?」
一方そのころ、校舎の玄関ではシロコが一人でヘルメット団達の進行を食い止めていた。
「ん!」ダッ
タタタタタタタタタッ!
「うぐっ!」ドサッ
「ぴぎゃっ!?」バタッ
彼女の機動力と精密な射撃の前に、ヘルメット団達は一人また一人と倒れていく。
しかし、それも長くは続かなかった。
カチカチッ
(しまった。弾切れ……!)
シロコはとっさに安全な場所でオペレーターをしているアヤネに通話を繋げる。
「アヤネ、倉庫の弾薬まだある?」
『いえ、一発もありません……。』
『もう既に予備のものも使い果たしてしまったようです……。』
「そう……。」
(こうなったら…。)
彼女はこうなってしまっては殴ってでも食い止めようと構える。
だが、その彼女の決死の覚悟はもはや必要なくなった。
ドゴオオオオオオオオオン!
「「ぐああああああああっ!?!?」」
「……!?」
けたたましい爆発音とヘルメット団達の情けない断末魔が校庭から響く。
その予想外の出来事にシロコは唖然とする。
そして、爆発で巻き起こった煙の中から一人の男が現れる……。
「どうも、君がアビドスの生徒か?」
「そ、そうだけど……あなたは誰…?」
シロコは警戒しながらそおの消防服姿の男に問いかける。
「名前はターキンという…。」
「今は説明を省くがとにかく……助けにきた。」
そう告げたとたん、彼女の瞳が縮まったかっと思うと、突然彼の後ろを指さす。
「危ない!後ろ!」
「……さっきはよくも爆弾でブッ飛ばしてくれやがったな…。」
「死に晒せぇッ!」
ヘルメット団の怒りに任せた罵声、それに彼が振り向いたその瞬間…数多の銃弾が彼を襲う。
ダダダダダダダダダダッ!
「……ッ!」ザッ!
ビリリリリリリリリリ!!
パラパラパラ……。
「ば、馬鹿な!」
右手から放たれるテスラライフルの稲妻は、無数の弾丸の運動エネルギーをすべて熱に変換して撃ち落としっていった。
「大人しく寝ていろ。」
パンッ!
「―――ッ…!」バタッ
空いた片手で足のホルスターから素早く10mmピストルを引き抜くと腰で構え、V.A.T.S.で狙い迅速に処理した。
「ば、馬鹿な……あいつ化け物だ!」
おののくヘルメット団達に俺はこう答える。
「これくらいできないとやってられなかったのさ…。」
俺はインベントリからミサイルランチャーを取り出し、片膝をついて構える。
「悪いがもう一度、ブッ飛んでもらおう…。」カチッ
ボシュ――――……!
ドッカアアアアアアアアアン!!
校庭にいたヘルメットの集団は彼の宣言通り、爆風で飛ばされていった。
「ふぅ……。」
俺は一息ついた後シロコの方に向き直り訪ねる。
「あのヘルメット集団はあれで全部か?」
シロコはその質問にハッとしたように言う。
「そうだ、ノノミがセリカの所に……。」
「…クラスメイトが危険ってワケか。その二人はどこに?」
「こっち、ついてきて!」ダッ
二人がノノミ達に向かっている頃、三人は最初こそ善戦していたが、次々に雪崩れ込んでくるヘルメット団達を捌き切る前に、弾が完全に底をつきいてしまい全員、廊下の最奥に追い詰められてしまっていた。
「おらいい加減に観念しやがれ!」
ダダダダダダダダダダッ!
カンッ!キンッ!
ホシノは盾で必死に銃弾を防ぐ。強者である彼女も、多勢相手に武器が使えなければ守りに徹するほかなかった。
玉砕覚悟で格闘を仕掛けようとも考えたが、この弾幕の中を切り抜けることを考えたときその発想はすぐに霧散した。
「うへー、おじさんそろそろしんどいかもー……。」
「ホシノ先輩……。」
ホシノ、ノノミ、セリカ、完全に追い詰められた三人の表情が徐々に曇り始める。
「そこまでだ。」プスッ
俺はサイコバフを首筋に打ち込む。
「フ―――ッ…!!」
深く呼吸し、薬の作用から来る狂暴な衝動を抑える。
スチャ…
そして三人の生徒に詰め寄るヘルメット団達を制圧すべく懐からパワーフィストを2つ取り出し、その両腕に装備する。
ダッ!
俺はダッシュで背後から詰め寄り、集団の一人を背中から思い切り突き上げる。
「そらっ!」バスッ
バゴオォッ!
「―――――ッ!?」
誰かが天井にめり込んだ音に、団員全員が振り返る。
ぷらーん…
「「は?」」
その視線の先には、頭から天井にぶら下がっている団員と、消防服を着たガスマスクの男が両腕の黄色い鉄拳をガツン!とぶつけている様子があった。
それは、これから彼女達の身に起こる出来事を暗示していた。
「歯を食いしばったほうがいい…さもないと…」
「自分で舌を嚙み千切ることになるぞ。」
ダッ!
彼はどすが利いた声で警告するなり、疾走する。
「「ヒエッ…。」」
その瞬間、ヘルメット団達全員の血の気が引いた。
ドガッ!「ぐあっ!」
ベコォッ!「ひでぶ!」
ドスッ!「ぎゃふん!」
バシュンッ!「ふにぃー!?」
走りながら繰り出す鉄拳で、ヘルメット団達を次々となぎ倒していく。
「うあああああっ!?!?」パリーンッ
ある者は殴られた勢いで窓から外に放り出され、
「ぐぼぁっ!」ズサーッ!
ある者は砂に埋まった教室に頭からダイブし、
「うぷっ……」
「オロロロロロロロロロロ……!!」
バタッ…
またある者は、あまりにも強烈なボディブローに耐え切れずヘルメット越しに吐いた。
「わ、わあああああああああああ!!」
そして最後の一人になった黒いヘルメットの不良は、仲間達を蹂躙していったその男を前に動揺するあまり、弾切れの銃を投げつけながらがむしゃらに拳を突き出した。
ブンッ
「フッ……!」サッ
シュッ、バコンッ!
「うんヌッ―――」
しかし彼は、それはそれは綺麗なクロスカウンターをそのヘルメットに叩きこんだ。
こうして彼は、廊下にいた全ての団員のヘルメットを叩き壊したのだ。
ゴロゴロ……バタンッ
ヘルメットを砕かれた襲撃部隊最後の分隊長は、勢いよく転がりながら床に倒れ伏し、そしてヘルメット団は全滅した。
「……ヘルメットがあって命拾いしたな。」
気絶から再び起き上がった連中は彼を見るなり一目散に脱兎が如く校舎から飛び出し、撤退した。
セリカ達はその光景に唖然とした。
「わ、私達…助かった……の?」
セリカは困惑しながら尋ねる。
『み、みたいですね……?』
アヤネはセリカの質問に無線越しで答える。
それとは別に、ホシノもターキンに訪ねる。
「うへ、助けてもらった所悪いんだけどさ……何者、なのかな?」
俺への彼女のその問いかけは極めて穏やかでありながら、その目は完全に人を怪しむものだった。
「教えてやりたいのは山々なんだが、それについてはもう少し落ち着ける場所で話さないか?」
「ほら、廊下で立ち話というのもなんだろう。」
「それになんだがここは…埃っぽい。」
彼女達は彼の意見にとりあえず同意し、教室に集まることになった。
「ん、ただいま。」
教室には、先程シロコ達のオペレーターをしていたアヤネがおり、彼女たちを出迎えた。
「シロコ先輩、それに皆さん、さっきはお疲れ様でした…。」
「それとそこの大人の方……えーと。」
「ターキンだ、先生をしてる。」
「え!?」
俺が先生であるという発言に周りは目を丸くし、アヤネは驚きの声を上げた。
「せ、先生っていうことはまさか!?」
「連邦捜査部「シャーレ」の先生!?」
まさしくその通りだった。
「その通り。シャーレに手紙届いてたから急いできたんだ。」
「じゃあ、という事は、支援要請が受理されたんですね!」
「よかったですねアヤネちゃん!」
「はい!これで……弾薬や補給品の支援が受けられます!」
様子を見るに、彼女達は本当に切羽詰まっていたようだ。
そしてようやく緊張の糸が少し解けたらしい。
「まさかあんな状況にまで追い込まれていたとはな……。」
「手紙を読んだ時には、急いで向かっていたのだが…。」
「遅れてすまなかった。」
俺は謝罪とともに頭を下げる。
「い、いえ、別に先生が謝ることでは……。」
「そうそう、結果的に私達は助かったんだしさ。」
「とりあずさ、頭上げてよ。」
「う、うむ。」
そんなやり取りをした後、アヤネはコホンと咳を一つしてあらたまる。
「それでは先生。少し遅くなりましたがあらためてご挨拶させていただきます。」
「私は、委員会で書記とオペレーターを担当している1年のアヤネです。」
「こちらは、同じく1年のセリカ。」
「どうも。」
名を呼ばれた猫耳の彼女の返事はかなり淡白なものだった。
露骨に鋭い視線から察するに、あまりいい印象を抱かれていないのは確かだ。
(やはり先生なのに消防服を着てるのがまずいのか?)
そんな的外れな考えをよそに、生徒達の紹介が進んでいく。
「こちらは2年のノノミ先輩とシロコ先輩。」
すると、狼の少女が先に話しかける。
「さっき、玄関で最初にあったのが、私。」
「……あ、別にマウントを取ってるわけじゃない。」
「そうか。」
(狼か、あまりいい思い出がないな……。*2)
今度は天真爛漫といった感じの明るい声が聞こえる。
「よろしくお願いしますね☆先生~。」
「ああ。」スンスン…(札束のにおいがするな)
俺の嗅覚は
「……そして、こちらが委員長で3年の、ホシノ先輩です。」
「いやぁ~よろしく、先生ー。」
「では、俺もそろちゃんとした自己紹介を……。」スッ
俺は徐にガスマスクを外す。
「「……!?」」
彼の顔を見た生徒達の反応は様々だった。
「あらためて、私はターキン・ゴッドフレイ。」
「シャーレの先生だ。よろし…くと行きたいがそんな空気でもないな、やはり珍しいのか?」
「わあ☆」
「うへーズタズタじゃん…すっごく痛そー…。」
「まままさかあのヘルメット団たちにやられて…!」
「……と、とりあえず絆創膏を…。」
「いやそんなので治るものじゃないでしょあれ!?」
「もっと包帯とかでしっかりグルグルに巻いて…。」
「え、えーとその……ターキン先生…そ、そのお顔は…?」
まあ、先生という肩書からは想像なかったのだろう。
「……もうただの傷跡だ。」
「それももう随分と前に創ったな。先生になるよりも前に…。」
「この恰好を見ての通り、過酷な現場で仕事をしてたものでね…。」
ホシノは「へー」と言いながら尋ねる。
「うへ、前は消防士さんだったのかな。」
「でも…火事で口を裂かれることなんてこと…流石にある?」
ホシノ推察はかなり鋭いものだった。
この子……かなりPERが高いぞ。
「……これはその…うーん。話せば長いんだが。」
「多分、君が考えてることに近いかもな。」
だが果たして…この子達に話していいものだろうか。
「だが今は私のこの愉快な顔の事はともかく、今は物資についてだ。」
彼はそれ以上語ろうとはせず、今回ここに来た目的を果たすことを優先した。
「早速用意したいんだが、少し廊下を借りてもいいか?」
「べ、別にいいけど何を?」
俺は廊下に出るC.A.M.Pを取り出し、その傍に細工師の作業台を設置する。
「ちょっと何それどこから取り出したの!?」
「作業台だ、そこの装置を使って設置した。」
「それで、今から何をするんでしょうか?」
「弾薬が足りないんだろう?だから今から作る。少し持っててくれ。」
「いや作るって……。まさか?」
弾薬は買うより作る方が安い。なんならタダだ。
「おおおおおおおおおおお!!!」
ガッガッガッガッガッ……!!
しかし、全部手作業だった。
「「「えぇ……。」」」
さっきの殺伐とした空気をぶち壊す怒涛の勢いに一同は困惑した。
「できた!」ドサッ
「早い!」
「そして多い!」
すぐにセリカのツッコミがとんできた。
弾薬を作るのには数分しかかからなかったうえ、弾はそれぞれざっと2万発近くはあった。
「あとついでにこれだ。」
そう言って手榴弾をありったけ詰めた箱を隣に置く。
「ついでで作るものじゃないでしょこれ…。」
「でもとても助かります。ありがとうございます。」
「……人間兵器工場?」
シロコは目の前の仕事ぶりにそんな声を漏らした。
「これくらいならいくらでも作れる。他にも必要なものがあったら言ってくれ。」
過剰とすら思える物資の補充の後、アヤネが改めて礼を言った。
「本当に何から何までありがとうございます。」
「私が送った手紙や先のヘルメット団との戦闘でご存知かと思われますが、我が校は現在危機にさらされています……。」
「そのため「シャーレ」に支援を要請し、先生がいらしてくれたことで、その危機を乗り越えることが出来ました。」
「先生がいなかったら、そのヘルメット団たちに学校を乗っ取られてしまったかもしれませんし、感謝してもしきれません……。」
…あと一足遅かったら、彼女たちは居場所を無くしていたのか……。
そう思うと…俺は背筋が凍るような感覚に襲われた。
「そうか、間に合って良かった……。」
実にそう思う。
だがしかし、それはそれとして聞きたいことがあった。
「それよりも、対策委員会とはなんだ?」
アヤネが俺の質問に頷く。
「そうですよね、ご説明致します。対策委員会とは……このアビドスを蘇らせるために、有志が集まった部活動です。」
「アビドスを…蘇らせる……か。」
俺はなんだかVault76と似たものを感じざるを得なかった。
……俺も、アメリカを蘇らせたかった。
放射線と疫病で荒れ果てた故郷を、救いたかった。
俺だけじゃない、俺の友も、家族も……Vault76を出た居住者全員が、その志を同じくして持っていた。
そんな俺の夢はもう、叶ったかすらも知ることができないが……。
そんな風に感傷的になっていると、ノノミが誇りあり気に語る。
「うんうん!全校生徒で構成される、校内唯一の部活なのです!」
「まあ、全校生徒といっても、私たち5人だけなんですけどね。」
「……。」
それは果たして学校と呼べるのか…と疑問に思ったが。
あえてそれに触れることは野暮だろうと思ってしなかった。
シロコは、何故生徒が全部で5人しかいないのか、その理由を語ってくれた。
「他の生徒は転校したり、学校を退学したりして町を出て行った。」
「学校がこのありさまだから、学園都市の住民もほとんどいなくなってカタカタヘルメット団みたいな三流のチンピラに学校を襲われる始末なの。」
「現状、私たちだけじゃ学校を守りきるのが難しい。在校生としては恥ずかしい限りだけど……。」
むしろ、今まで五人で守り抜けていた事にもっと胸を張るべきだろう。
些か自己評価が低い気がする。
「もし「シャーレ」からの支援がなかったら……今度こそ、万事休すってところでしたね。」
「だねー。補給品もそこをついてたし、あいつらもかなり本気で来てたからさすがに覚悟しちゃったよねー。」
「なかなかいいタイミングで来てくれたよ、先生。」
「うんうん!もうヘルメット団なんてへっちゃらですね。大人の力ってすごいです☆」
「大人っていうより、これは先生がかなり特殊なんじゃ…。」
「おいおい、あんまり褒めるなよ照れるじゃないか。」
「っ!べ、べつにそんなんじゃないし!勘違いしないで。」
「うっ、そ、そうか…すまん。」
「な、別に落ち込まなくても…。」
とはいえ大人の力……あるいみは確かかもな。
だが、使い方を誤れば取り返しがつかなくなる力でもある。
楽観的なノノミに対し、シロコは懸念を抱く。
「でもまぁ、そう簡単に攻撃を止めるような連中じゃないけど。」
「あー、確かに。しつこいもんね、あいつら。」
「こんな消耗戦を、いつまで続けなきゃいけないのでしょうか…。ヘルメット団以外にもたくさん問題を抱えているのに……。」
どうやらヘルメット団の襲撃は今回がはじめてではないらしい。今回は幸運にも俺が駆けつけられたら、今度はいつ来るか……。
するとホシノがその疑問を待っていましたとばかりに語り始める。
「そういうわけで、ちょっと計画を練ってみたんだー。」
「えっ!?ホシノ先輩が!?」
「うそっ……!?」
「どうした、珍しいのか?」
「いやぁ〜その反応はいくら私でも、ちょーっと傷ついちゃうかなー。おじさんだって、たまにはちゃんとやるのさー。」
「おじ……さん?」
「ん?おじさんはおじさんだよ?」
おかしい、見た目は明らかに子供の少女なのにおじさんを自称しているのだ。
訳アリなのか?まさか新種のすべすべお肌のグールなのか!?
そんなありもしない可能性を考えているとシロコは気にするなと言う。
彼女曰く、
「気にしなくていいよ。冗談で言ってるだけだから。」
「そう…なのか……?」
キヴォトスのジョークはかなり独特なようだ。
「……で、どんな計画なの?ホシノ先輩。」
セリカが尋ねると、ホシノはふふんと鼻を鳴らし、自信ありげに説明をはじめる。
「ヘルメット団は、数日もすればまた攻撃してくるはず。ここんとこずっとそういうサイクルが続いてるからね。」
「そして今回も来たみたいだけど、今日やってきた先生に撃退された。」
そこにシロコが付け加える。
「しかもコテンパンに。」
「そう、なら今奴らは拠点で次の攻撃の準備をしているはず。」
「それで、ヘルメット団たちが準備中の今こそこっちから前哨基地を襲撃してやるチャンスなんじゃなかなってこと。」
「い、今ですか!?」
「そう。今なら先生もいるし、補給とか面倒なことも解決できるし。」
かなり理にかなっていた彼女の提案にシロコとノノミの2年生組は乗り気だった。
「なるほど。ヘルメット団の前哨基地ならここから30kmくらいだし、今から出発しよっか。」
「良いと思います。あちらも、まさか今から反撃されるなんて、夢にも思ってないでしょうし。」
「そ、それはそうですが……先生はいかがですか?」
「襲撃なら、わざわざ現地に行かなくとも安全かつ確実に行える方法がある。」
「アヤネ、まずはヘルメット団の前哨基地の座標を教えて貰えるか?」
「は、はい。」
そう言って座標を聞いた後、校庭にて再びC.A.M.Pを設置する。
するとセリカが冗談交じりに聞く。
「全く、いきなり現れてヘルメット団を片っ端から殴り飛ばしたかと思えば大量の弾薬をほいほい作るし、今度は何をするつもり?」
「まさか今度はデカい大砲でも置くわけじゃないでしょーね。」
茶化すようなセリカの質問に対し律儀に答える。
「まさにその通りだ。よくわかったな?」
「え?」
俺は早速簡易的な大砲もとい臼砲陣地、そしてそばに傍に攻撃目標を指定するための制御用ターミナルを設置する。
「あとはこの配線をこれと繋げて……よし!」
「な、なによこれ……。」
「コイツでヘルメット団の前哨基地を爆撃する。」
「は?」
我ながらとんでもなくぶっ飛んだ発想だとは思う。だがまあ、銃でもくたばらないような頑丈な連中に灸をすえる分には、これくらい問題ないだろう……多分。
「あとは目標の座標を打ち込んで……。」
「これでよし。」
コンピュータにヘルメット団の前哨基地の座標を入力し、発射準備を整える。
彼方を見据える砲塔が台座の歯車を回しながら目標の方角へと旋回する様はとても威圧的だった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……
「射撃用意……」
「──発射ァ!」ポチッ
ドゴオオオオオオオオオン!!!
エンターキーを強く叩き、大砲がその火を、空を裂くような轟音と共に吹き上げた。
遠くから高性能榴弾の爆煙が吹き上げるのを確認すると、俺はアヤネが持っているドローンを現場に向かわせた。
「アヤネ、基地の様子は?」
『今確認を……か、完全に破壊されてます。』
ドローンのカメラ捉えた映像を写しているモニターには、突然の爆撃にヘルメット団たちがたまらず逃げ出す様子と、かつて前哨基地だった残骸が黒い煙と共に残っていた。
「よし、任務完了。」
「み、見る影もないわね……。」
セリカはモニターを見てその惨状に愕然としていた。
一方でシロコの方はそうでもなく、むしろ清々したかのように
「ん、これでアイツらもしばらく大人しくなるはず。」
と言っていた。
とりあえず、作戦は成功したので教室に戻る。
「おかえりなさい。先生、お疲れ様でした。」
「おかえり〜。作戦どうだった?」
「ん…見る影もなくなった。」
「うへ。」
「アヤネ。ドローンを貸してくれてありがとう、おかげで現地に確認しに行く手間が省けた。」
「は、はぁ……。」
「ようやく火急の事案だったカタカタヘルメット団の件が片付きましたね。これで一息つけそうです。」
ノノミの言葉にシロコが頷く。
「そうだね。これでやっと重要な問題に集中できる。」
それに便乗したセリカが口を滑らせてしまう。
「うん!先生のおかげだね、これで心置きなく全力で借金返済に取り掛れるわ!」
「ありがとう、先生!この恩は一生忘れないわ!」
俺はセリカの"借金"という単語が聞き捨てならかった。
「ちょっと待て……借金だと?」
「そんなこと手紙には書いてなかったが。」
俺はあまりにも突然のカミングアウトに自分の耳を疑った。
「……あ、わわっ!」
「そ、それは……。」
「ま、待って!!アヤネちゃん、それ以上は!」
何か言おうとしたアヤネに対しセリカが待ったをかける。
「……!」
するとホシノが言う。
「いいんじゃない、セリカちゃん。隠すようなことじゃあるまいし。」
だがしかしセリカは依然として話そうとはしたがらない。
「か、かといって、わざわざ話すようなことでもないでしょ!」
「別に罪を犯したとかじゃないでしょー?それに先生は私たちを助けてくれた大人でしょー?」
シロコはホシノの意見に同意する。
「ホシノ先輩の言う通りだよ。セリカ、先生は信頼していいと思う。」
「そ、そりゃそうだけど、先生だって結局部外者だし!」
「……。」
彼女の言葉に黙って耳を傾けた。
なぜ身近な大人に話したがらないのか、頼ろうとしないのか。
まずはそれを知るべきだと思った。
それは俺に限った話ではない、アビドスは砂漠とはいえ町もあり人もいる。
その上この地域唯一の教育機関が潰れるというなら現地住民も黙ってはいないはずだ。
なのになぜこの生徒たちだけで…。
その違和感に悶々としていると、ホシノがセリカを説得しようと試みた。
「確かに先生がパパっと解決してくれるような問題じゃないかもしれないけどさ。こんなこと言って向き合ってくれる大人は、先生くらいしかいないじゃーん?」
「悩みを打ち明けてみたら、何か解決方法が見つかるかもよー?それとも何かいい方法があるのかなー、セリカちゃん?」
他に何か方法があるのか…セリカはその一言に図星を突かれたようで、たじろいでしまう。
「う、うう……。」
しかしそれでもと彼女は反論する。
「でっ、でも、さっき来たばっかりの大人でしょ!今まで大人たちが、この学校がどうなるかなんて気に留めたことなんてあった!?」
「この学校の問題は、ずっと私たちだけでどうにかしてきたじゃん!なのに今更大人が首を突っ込んでくるなんて……。」
「私は認めない!」
耳を疑った。
誰も助けてはくれなかった……そんな馬鹿なことがあるのか。
他に頼れる者はなく…少数でも、それでも居場所の為戦ってきたというのに。
ウェイストランドじゃそんな救いのない話はいくらでもある。
それはもう聞き飽きるくらいにだ。
だがしかし……ここはキヴォトス、アパラチアじゃない。
ここには文明も…法もある……。
その筈なのに……なのに……。
彼女達の境遇に密かに嘆いた。嘆かずにはいられなかった。
バッ!ガチャッ!
タッタッタッ……
突然、辛抱たまらずとセリカは教室を飛び出してしまった。
「セリカちゃん!?」
「私、様子を見てきます。」
動揺するアヤネを余所に、彼女の身を案じたノノミが後を追って行った。
俺は…それを黙って見送る他なかった。
「……。」
「えーと、簡単に説明すると……この学校借金があるんだー。まあ、ありふれた話だけどさ。」
「ああ、そう言っていたな。」
「うん。でも問題はその金額で……」
「9億円ぐらいあるんだよねー。」
「9億…。」
「…9億6235万円、です。」
「アビドス…いえ、私たち「対策委員会」が返済しなくてはならない金額です。」
「これが返済できないと、学校は銀行の手に渡り、廃校手続きを取らざるを得なくなります。」
「ですが、実際に完済できる可能性は0%に近く……ほとんどの生徒は諦めて、この学校と街を捨てて、去ってしまいました。」
「そして私たちだけが残った。」
「学校が廃校の危機に追いやられたのも、生徒がいなくなったのも、街がゴーストタウンになりつつあるのも、実はすべてこの借金のせいです。」
「……どうしてアビドスは、そんな莫大な借金をする事にったんだ?」
彼女達は語った。
過去に想像を絶する砂嵐が発生し、自治区の至るとこが砂に埋もれた事。
その災害対策の為、資金が必要だったが、それを得るために悪徳金融業者に頼る他なかった事。
そして必死に講じた対策も虚しく、この地は砂漠化の一途をたどった事。そうして借金ばかりが増えていってしまった事。
「「「……。」」」
「……大変だったようだな。」
「はい……。」
「私たち力だけでは、毎月の利息を返済するのが精一杯で……弾薬も補給品も、底をついてしまっています。」
「セリカがあそこまで神経質になってるのは、これまで誰もこの問題にまともに向き合わなかったから。」
「話を聞いてくれたのは、先生…あなたが初めて。」
「……まあ、そういうつまらない話だよ。」
「で、先生のおかげでヘルメット団っていう厄介な問題が解決したから、これからは借金返済に全力投球できるようになったわけだけど…。」
「もしこの委員会の顧問になってくれるとしても、借金のことは気にしなくてもいいからねー。話を聞いてくれただけでもありがたいし。」
「そうだね。先生はもう十分力になってくれた。これ以上迷惑はかけられない。」
なんてよくできた子達なんだろう。そんな少女達を企業は……。
やはり企業とは往々にしてクソなのだな……。
俺はかつてのVault-tecの所業を思い出し、酷く憤りを感じる。
子供とは、無限の可能性であり、世界の未来だ。
その未来を、大人が、企業が、私利私欲の為に奪っていいはずがない。
この
過ちを繰り返すというのか……ならば、準備をしなければいけない。
それは必ず、乗り越えなければならない事だから。
俺は……友が、家族達が愛した故郷を救えなかった…。
与えられた使命を全うできなかった情けない男だ。
だがせめてここだけでも…彼女たちの居場所だけでも、救ってあげたい。
そう切に思う。
Vault76のレジデントとして、一人のアメリカ国民として、レスポンダーとして、
そして、一人の人間として……。
俺は彼女達の話を一通り聞いた後、俺はその固く閉ざした口を開く。
「迷惑なんて、幾らでもかけてくれて構わない。」
「君たちは……まだ子供なんだ。」
「困っていたら、大人を頼っていい。むしろそうすべきだ。」
「私のことが信じきれなくても構わない、それには誠実さで応えるつもりだ。」
「そして君たちを見限った人々に代わり、先生がその責任を取る。」
「この命に代えてでも必ず、君たちを守る。」
彼は真剣な面持ちでそう語った。
その血塗られた修羅道を潜った顔と、荒廃した世界を見てきた青い瞳には、覚悟と信念があった。
「そ、それって……つまり。」
「絶対に君たちの力になる。約束だ。」
「はいっ!よろしくお願いします、先生!」
「へえ、やっぱり先生も変わってるねー。こんな面倒なことに自分から首を突っ込もうなんて。」
自分を変わり者というホシノに対し、俺はこう答える。
「君達は、この顔の傷を気にしていたな。」
「あまり多くは語れないが、聞いてくれ。」
話すべきか迷っていたが、寧ろこれだけは…話しておくべきだろう。
「……私はかつて、仲間と共に故郷を救うため全身全霊を尽くして戦ってきた。」
「これは、その時にできたものだ。」
「そして私はその過去を、今の君たちに重ねた…それだけだ。」
「……そっか。」
そう呟く彼女の瞳の影は、微かに煌めいていた。
「先生……。」
「うん……わかった。」
アヤネも戸惑いを感じながらも、ほっとしたようだ。
「良かった……「シャーレ」が力になってくれるなんて。これで私たちも、希望を持っていいんですよね?」
それにシロコは頷いた。
「そうだね、希望が見えてくるかもしれない。」
だが一人だけ、快く思わない者がいた。
「……ちぇ。」
結局、教室を飛び出していってしまったセリカだが。ノノミ曰く、そのまま帰ってしまったらしい。
友よ、私の選択は、間違っていないだろうか…?
あとがきです。
ジェットパックはジェットパックなんだから長時間飛行できてもいいと思うんです。(?)
ドラマ版で発覚したんですがT-60って四肢にスラスターがついてたんですね…何かの参考になるかも……。
そんなわけで、今回も読んでいただきありがとうございます。
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