Fallout76 -once in a blue archive- 作:egguimen
すみません、思いの外気に入ってくれる方が多くいたもので動揺しました。
アビドスの借金について知った翌日の朝。
「……~♪」
俺はアビドスの地理を把握するため鼻歌を歌いながら町内を散策していた。
「……。」
「……あ。」
すると、目の前に見知った猫耳の少女が見えた。セリカだった。
昨日あんなことがあったとはいえ、挨拶は大事だ。
「やぁセリカ、おはよう。」
俺の挨拶に気がついたセリカは
「……げっ」
「…せ、先生。」
確かにあんな事があったばかりで気まずいだろうが…。
いくらなんでも挨拶に「げっ」と答えてしてしまうのは如何なものだろう?
「…何か用?」
「見かけたから、挨拶しただけだ。」
「なによそれ…馴れ馴れしくしないでくれる?」
「昨日も言ったけど、あんたの事なんか認めてないから。」
「……そうか。」
[そんなに目“くじら”を立てて
だが、それでも助ける。それがレスポンダー達が教えてくれた俺の使命であり、生きる目的だ。
「それがいい…私が信用に値するかどうかは、今後の行動で示すつもりだ。」
「まあ、精々頑張らせてもらおう。」
「…あっそ。」
セリカが去ろうとした時、どこからか叫び声がした。
「か、火事だあああああ!!!」
「何ッ!?」バッ
声がした方を振り返ると、民家から黒い煙と火の手が上がっているのが見えた。
「まずいな、かなり火が回ってる……消防局はいつ来るんだ?」
「そ、そんな……ここじゃ来るのに1時間以上かかる……!」
「1時間だと!?」
「そんなに待ってたらあっという間に全焼してしまうぞ!」
「し、仕方ないでしょ!?アビドスで消防署がある所なんか、ここから十数キロ先の市街地にしかないんだから…。」
「しかもこの住宅街、構造が複雑だし……。」
「……。」
とんでもない情報がセリカから出てきた。そんなにかかってたらあっという間に建物が燃え尽きる。場合によっては他に燃え広がる事だって……。
急いで駆けつけると、群がる野次馬達の中から更に悪い知らせが耳に飛び込んできた。
「そ、そんな、まだ中に妻と息子が!」
スーツをきた柴犬の姿の御仁が、絶望的な表情を浮かべて膝から崩れ落ちていた。
なんと人が火事場に取り残されていた。消防が来れない状況、民間人が下手に向かえば被害が増す一方……。ならばやるしかあるまい。
「皆さん危険ですから下がって!」
俺は人混みを押し退けて現場の前へと向かう。
「ちょ、ちょっ何する気!?」
「救出しに行くに決まってる。」
「ば、馬鹿じゃないの?危険すぎる!」
「先生は消防士じゃなくて先生でしょ!」「恰好は完全に消防士だけど……。」
「火災現場は前職でいくつも経験がある。」
「それに悪いが危険かどうかなどという問答をする時間もない。」
「とにかく誰かが動かないといけないんだ……。」スチャ……
俺は消防斧を取り出し、燃える民家の玄関に乱暴に叩きつける。
「おらぁ!」ブンッ
バコオォォォ―――ッ!!
ドアが破壊されると同時に、煙と熱風が襲ってくる。
ビュオオオ――ッ!
「グウゥ!!」
(いつものことながら、この熱はきついな……。)
俺は耐火服越しにその熱さを感じながら、民家の中へ入っていった。
「…………。」
セリカはそれを黙って見ていることしかできなかった。
「誰かー!誰かいますかー!」
俺は煙と炎が立ち込める屋内でひたすら叫ぶ。
すると、
……ケテ…タスケテ……。
その祈るように絞り出されるその声を、俺は聞き逃さなかった。
階段を上がり、奥の部屋を見ると、母親と子供が倒れたたんすにに挟まって動けなくなっていた。状況はかなりまずい……。
「見つけた!」
「もう大丈夫です。助けに来ました。」
俺は親に声をかけると、斧で親子を下敷きにしていたたんすを叩き壊す。
ドガッ!バキィッ!
しかし破壊した衝撃で階段が崩れ、退路が塞がれてしまう。
(階段がダメになったか……だがまだ手はある!)
「さあ、運びますよ。」グッ
母親と子供を両脇に抱えて、俺は目の前の窓に向かって走りだした。
「とりゃあ!」バッ
力一杯、窓を蹴破り、家屋から飛び出した。
パリーンッ!!
「ふんっ!!」
ドッスーン……!
「ふぅ……!」
持ち前のフィジカルに任せて着地した。何とか親子に衝撃が行かない様にしたが…。
その後すぐに親子に怪我の処置を行い、建物をクライオレーターと冷却グレネードで消火した。
一件落着というやつだ。
「ありがとうございます!ほんとうにありがとうございますっ!」
「妻と子を助けてくださりありがとございます!この御恩は忘れません!」
「本当にありがとうございました。」
「礼には及びません。できることを尽くしただけです。」
「それに幾つかやむを得ず破壊した箇所もあるので…。」
「とんでもない、家族が無事なだけでも奇跡です。」
「とにかく大事にならなくてなによりです……それでは。」
俺が軽く会釈をしてその場を去ろうとした時、助けた子供が笑顔で駆け寄ってきた。
「おじさん!ありがとう!」
「すーーーっごく、かっこよかった!!」
俺はこみ上げる照れくささを笑って誤魔化した。
「ははは、君もかっこよかったよ……とっても。」
「ほ、本当に!?」
子供は目を輝かせて尻尾を振っていた。すげぇかわいい。
血に飢えた獰猛なモングレル共にも見習ってもらいたいかわいさだ。
「ああ。」
俺はあの現場で聞き、見た。
あの子は、あの火事の中意識が途絶えかけながらも助けを呼んでいた…。
そして、自分も半身動かすのがやっとの状態でありながら迫る炎から母をかばっていた。
まだ子供だというのに……なんと英雄的な行動だろう。
「君はとても勇敢で、大事な人を守れる。とても強い子だ……。誇っていい。」
俺はその英雄を称える為に親指を立て、サムズアップを送った。
そして、改めてその場を去った。だが……歩いている途中再び声がかかった。
さっきの子供ではない。
「ちょ、ちょっと待って!」
「どうした、セリカ。」
「どうしたもこうしたもないよ!なんであんな危険な真似したわけ!?」
「死んじゃうかもしれなかったんだよ?」
「それはあの親子も同じだったろう。」
「そ、それはどうだけど…で、でも……ッ!」
「それに、あの親子が死んでしまったら、悲しむ人がいた。」
「うっ…で、でもそんなの先生にだってい『いない。』……。」
「え……。」
「もう…いない……誰も。」
ここには、誰もいない……家族も、親友も。
……だから…………独りだ。
あの日、スコーチに言われた言葉を思い出す。
薄暗い坑道で、残る一体にとどめを刺そうとした時だ。
「お、お前は…独りだ……!!!」
「知ってるよ。」ダァン!!
知ってるよ、よぉく知ってる。
俺は……二人を失ったあの時から………。
俺の声は銃声で霞んでいた。
黙り込んでしまったセリカを後目に一瞥し、俺は歩いた。
その身に背負っているモノの重さを感じながら。
散った人々の意志を背負ってもなお、俺はVault76で託された使命を果たせなかった……。
その未練が消えることは、決してないだろう。……だからこそ、俺にはまだ、失われていないこの世界を、生徒を守る義務がある。
生徒達には、未来を生きる権利がある。先生の私がその権利を保障しなければ……
たとえ、再び死ぬことになったしても……。
神よ、どうか見守っていてください。
前回の続き程度に書いてたせいでいつぞやの短い文章に……。
話は変わりますが、ファイヤーブリーザーって消防局で活動してた訳だし、制服も消防服なんだから戦闘だけじゃなくて普通に消火活動とか人命救助のプロだと思うんですよね。
そうすれば彼も一応消防士のはずですから、こういう事やるかやらないかで言えばやると思います。はい。
今回も読んでいただきありがとうございます。
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