Fallout76 -once in a blue archive- 作:egguimen
個人的には結構満足な分を書けたと思ってます。
ちなみにタイトルの元ネタはクエストラインやPerkから来てたりします。
殆どはクエスト風に考えたオリジナルですが…個人的な拘りです。
楽曲から取ってみても面白いかもしれませんね(忍び寄るJASRAC)
それでは本編をどうぞ。
翌日、再び町内を歩いていた時に見慣れた子たちと目があった。
シロコ達だ。どうやらセリカは一緒にいないらしい。なら、他に用があるのだろう。
そう思っていると、こっちに気がついたホシノが声を掛けてきた。
「おー、誰かと思えば先生じゃんか。」
「ん、先生もいまからお昼食べに行くの?」
「そうだな、食料の備蓄も減ってきたし…そうするつもりだ。」
「備蓄って……今まで何食べてたの。」
「これだが。」
彼が懐からだしたそれは、周りをドン引きさせた。
「うへー…そ、それってわんこのエサじゃん……。」
「人が食べていいものなんですか……それ。」
「ああ、慣れればわりとイケる。」
(死体じゃないだけマシなんだがな……。)
彼は生前、荒廃した世界で飢えを凌ぐためなら死体を貪り汚染された水を啜ることも躊躇わずに生きてきた。ウェイストランドじゃまともな食料など滅多に見つからなかったのだ。まあ、戦前並みの生活水準を得たレジデントから差し入れも何度か貰ってはいたが………。
とにかく彼にとっては犬の餌ですらご馳走なのだ。
「ん…先生は今すぐまともな食事をするべき。」
アヤネもシロコに同意する。
「そ、そうでね。じゃないと先生が可哀想です。」
するとホシノがターキンの腕をガシッと結構強めに掴む。
「決まりだね、行こうか。うんすぐに行こう。」
「……?」
そして数分後……
彼はホシノ達に連れて行かれるがまま一軒のラーメン屋に辿り着いた。
「いらっしゃいませ!柴関ラーメンです!」
「何名様ですか?空いてるお席にご案内いたしますね!」
「少々お待ちください!3番テーブル、替え玉追加です!」
その中では、セリカが元気にアルバイトをしていた。
しかしそんな事をターキンが気づくはずもなく……
生徒たちは店の戸を威勢よく開いた。
ガララッ…
「いらっしゃいませ!柴関ラーメンで……。」
「わわっ!?」
セリカも思わなかっただろう。
まさか、自身のバイト先に自分のクラスメイトが来るだなんて。
「あの〜☆5人なんですけど〜!」
「あ、あはは…セリカちゃん、お疲れ……。」
「お疲れ。」
突然のクラスメイトの御来店にセリカは困惑する。
「み、みんな……どうしてここに……!?」
「うへ〜やっぱりここだと思った。」
「なんだ、君アルバイトしてたのか。」
「なんで先生までいるのよ!?」
「なぜか憐れみの目を向けられて半ば強制的に……。」
「ますますどゆこと!?」
「うへ、セリカちゃんのバイト先といえば、やっぱここしかないじゃん?だから来てみたの。」
「あと先生が可哀想だし…とくに食生活が…。」
先生が可哀想とはどういうことなのか、彼女は内心気になっていたが余計に気まずくなりそうだったので聞くのはやめた。
それはそれとして、彼女は先輩が自分のバイト先を嗅ぎつけていたことに
「ホシノ先輩かっ……!!ううっ……!」
と悔しそうにしていた。
…すると、厨房のほうからなんとも渋い声が聞こえた。
「アビドスの生徒さんか。セリカちゃん、おしゃべりはそれぐらいにして、注文受けてくれな。」
声の正体は、この店の大将…つまりは店長なのだが。それがなんと柴犬。しかも二足歩行の。
バンダナとエプロンまでして完全にラーメン屋の店主の格好の柴犬なのだ。
(キヴォトスの市民…何度見てもこの強烈な違和感はどうにも…)
「あ、うう……はい、大将。それでは、広い席にご案内します……こちらへどうぞ……。」
一方のセリカは大将に言われた通りに、皆を席に案内していた。不服だったようだが……。
セリカに案内された席は言っていた通り、大人数用の広い席だった。
「はい、先生はこちらへ!私の隣、空いてます!」
「……ん、私の隣も空いてる。」
別にどっちに座っても問題はなさそうだが……。
こことりあえず、比較的小柄で場所が空いてそうなシロコの隣に座ることにした。
「……ふむ。」
俺がシロコの隣に座ると、彼女は何故か満足そうだった。
それにしても…。
ズイ…
さっきからなんだかシロコの距離がやたらと近いような気がする。これではこっちを選んだ意味が……。と思っていたところ、気づいたセリカがシロコにツッコむ。
「狭すぎ!シロコ先輩、そんなにくっついたら先生が窮屈でしょ!もっとこっちに寄って!」
「いや、私は平気。ね、先生?」
「何でそこで遠慮するの!?空いてる席たくさんあるじゃん!ちゃんと座ってよ!」
「わ、分かった……。」
そしてちゃんと座ってもらった後。
ノノミからセリカの格好についての話題が上がった。
「セリカちゃん。バイトのユニフォーム、とってもかわいいです☆」
「いやぁー、セリカちゃんってそっち系か。ユニフォームでバイト決めちゃうタイプ?」
「ち、ちち、違うって!関係ないし!こ、ここは行きつけのお店だったしその……。」
「ユニフォーム姿のセリカちゃん、写真撮っとけば一儲けできそうだねー。」
「どう?一枚買わない、先生?」
「別に構わないが、セリカは大丈夫なのか?自分の制服姿の写真を売られても。」
「いいわけないでしょ!」
「そして別に構わないって何!?まさか…趣味じゃ?」
「っと言っているが?」
「ねぇしれっとツッコミをスルーしないでくれない?」
「ちぇ、つれないなー。」
「先輩、変な副業はやめてください……。」
漫才じみた事をしつつも束の間、シロコはセリカに直球に尋ねる。
「バイトはいつから始めたの?」
「い、一週間前から…。」
「そうだったんですね☆時々姿を消していたのは、バイトだったということですか!」
「も、もういいでしょ!ご注文はっ!?」
「『ご注文はお決まりですか』でしょー?セリカちゃーん、お客様には笑顔で接客しなくちゃー?」
彼女が注文を急かすと、ホシノの鋭いご指摘が入る。
こうして見ると普段からのんびりした様子でもしっかり先輩してるものなんだな…。
「あうう……ご、ご注文は、お決まりですか……。」
「私は、チャーシュー麺をお願いします!」
「私は塩。」
「えっと……私は味噌で……。」
「私はねー、特製味噌ラーメン!炙りチャーシュートッピングで!」
「先生も遠慮しないで、ジャンジャン頼んでねー。この店、めちゃくちゃ美味しいんだよー!アビドス名物、柴関ラーメン!さぁさぁ。」
そう言ってホシノは先生にも注文を促すが彼にはとある致命的な問題があつた。
彼はラーメンが何なのか知らないのだ。
「その……ラーメンとはなんだ?」
「え、ラーメン知らないの?」
「ああ。」
「嘘、ラーメンを知らないなんて…。」
皆信じられないと言った様子だが。
アメリカにもヌードルカップと呼ばれるものはあった……しかしアレはラーメンとは程遠い代物で…実物のラーメンが何なのかは実のところ彼はよく知らない。
するとセリカは昨日のことがまるで無かったかのようにとても真剣な顔で言う。
「先生…ラーメンを食べたことがないなんて人生損してるよ、すごく。」
「そ、そんなにか?(疑問)」
「ええ、そんなによ。」
「そんなにかぁ…。(納得)」
すると、厨房から例の柴犬の店主こと『柴大将』が顔をだしてきた。
「なになに?あんたラーメンを食べたことがないんだって?」
「ああ、どんな食べ物かも知らない。」
「だったら俺のオススメを食べてってくれ!」
「すぐつくっからちょっと待っててくれよ!」
そう言って大将は肩を大きく回して意気揚々と台所に引っ込んだ。
すると、セリカが突然こんなことを尋ねてきた。
「ところで、みんなお金は大丈夫なの?もしかして、またノノミ先輩から奢ってもらうつもり?」
「はい、私はそれでも大丈夫ですよ☆このカードなら、限度額までまだ余裕ありますし。」
「いやいや、またノノミちゃんにご馳走になるわけにはいかないよー。きっと先生が奢ってくれるよー。ね、先生?」
流石に借金で困ってる子達にお金を出させるのは気が引けてしょうがない。
寧ろ奢らせてほしいくらいだ。
「確かに、子供にお金を出させるなんて大人げないことはできないな。喜んで奢ろう。」
「やったー!先生太っ腹ぁ〜」
「ところで個々の支払いは現金か?」
「ええ、一応キャッシュレスも対応はしてるけど。」
「そうか、ありがとう。」
(一応暇を見つけて金塊を換金しておいてよかった。)
(危うくボトルキャップで支払うところだった。)
(…できるかわからんが。)
生徒の知らぬところで、複雑な懐事情に頭を抱えるターキンであった。
そこから少し時間が経ち…
「はい、お待ちどうさまー。」
「熱いからきをつけてね。」
そんなことをしていると、セリカが皆がそれぞれ注文したラーメンを持ってきた。
ちなみに大将が俺に作ったものはここの看板メニューの「柴関ラーメン」というものらしい。
「おーきたきた!」
「いつ見ても美味しそうです☆」
「ん、じゃあさっそく。」
そしてみんなは早速手元の箸を取り、美味しそうに麺を啜る。
皆が舌鼓をうつ中で俺だけがあることに苦戦を強いられていた。
困ったことに俺は箸を使ったことがなく、見よう見まねでやろうにもぎこちなく、麺を掴むことすらままならなかった。
「うーん、難しいな…。」
そんな風に困っていると、ホシノが聞いてきた。
「ん?先生、もしかして箸使うのはじめてだったり?」
「ああ、全く使い勝手がわからない。」
「なるほどねー。それじゃ、見ててみー?」
すると、ホシノは割り箸を一本取り出し、それを器用に使って麺を掴んでみせた。
「こうやるんだよ先生ー。」
「おお……テクニカルだな……。」
「そうかな?これくらい普通だと思うけど。」
その後、持ち前のインテリジェンスですぐに箸の使い方を覚えた。
「おお、そうそう上手ー。」
「では……イタダキマス。」
湯気の立つ麺に息を吹きかけ少しずつ冷ましながら、勢いよく啜る。
ズルルルッ…
「どお?美味しい?」
「……なんだこれは美味しすぎる。」
「幸福と書かれたバットで後頭部をぶん殴られたような衝撃的な美味さだ。」
そう述べる俺の箸は美味しさのあまり震えていた。
初めてメタンフェタンミンを摂取した人間にも少し似ている。
「なにその物騒な例え……まあでも気に入ったみたいだね。」
彼が述べた感想はすごく独特…というよりかバイオレンスな表現だった。
でもラーメンがすごく美味いしかったことだけは伝わったようだ。
その後、しばらくラーメンと共に至福の一時を過ごし完食した。
そして会計中、柴大将に尋ねられた。
「どうだウチの看板メニュー、美味かったか?」
「ああ、とても美味かった。また機会があれば来てもいいだろうか?」
それを聞いた大将は嬉しそうに尻尾を振っていた。やはり犬だった。
「そうかそうかなら良かった!折角だからこれ持ってってくれ、サービスだ。」
対象が渡してきたのはこの店の割引クーポンだった。俺はそれを大事にMISCインベントリにしまった。その後、会計を済ませて生徒達と店を出た。
「いやぁー!ゴチでしたー、先生!」
「ご馳走様でした〜☆」
「うん、お陰様でお腹いっぱい。」
「早く出って!私が居ない時意外は二度と来ないで!仕事の邪魔になるから!」
「うへ、元気そうでなによりだー。」
「あはは、またねセリカちゃん……。」
「もうみんな嫌い!死んじゃえーっ!」
色々ありながらも、先生たちは帰って行った。
そして日が落ちた頃、セリカのバイトもようやく終わった。
大将の「お疲れ様ー!」と言う労いの声とともにセリカはバイト先を後にした。
そして街頭が照らす暗い帰り道でを一人愚痴をこぼしながら歩いていた。
「はあ……やっと終わった。目まぐるしい一日だったわ。」
「みんなで来るなんて……騒がしいったらありゃしない。」
「人が働いてるってのに…先生だって!」
「……先生だって…。」
アイツにも何か文句のひとつくらい言ってやりたいと思った時、彼が言っていたあの言葉が胸につっかえる。
『もう…いない……誰も。』
一体どんな意味だったのだろう?それに、あの顔の傷は何故?
それに、
「なんなのよ、あの感じ。」
「まるで自分は独りぼっちみたいに…。」
「どうしてどこか寂しなんだろう……。」
彼への疑問は尽きることはなく、謎ばかりが彼女の中で深まっていった。
そんなモヤモヤする気持ちを抱えながら、に帰り道を歩いていた頃、暗い物陰から黒いヘルメットの集団がバイザーをギラギラさせながらセリカをつけ狙っていた。
「……。」
「あいつか?」
「……はい、そうです。アビドス対策委員会のメンバーです。」
「準備はいいか?次のブロックで確保するぞ。」
ヘルメット団はセリカを人質にするため生け捕りにしようとしていた。
それに気づいていない彼女はただ独り、人の気配がないアビドスの暗い夜の街を歩く。
そんな街を見渡しながら、1人つぶやく。
「……。」
「ふぅ……。」
「……そういえば、この辺も結構人が居なくなったなあ。前はここまでじゃなかったのに。」
「治安も悪くなったみたいだし……。」
すると、彼女はハッとする。
「もしかして先生も……あの時…。」
徐々に廃れていく街を眺めながら、彼が抱いていたものを少しわかった気がした。
「と、とにかくこのままじゃダメ…。私達が頑張らないと……そして学校を立て直さないと…。」
「とりあえずバイト代が入ったら、利息の返済にあてて……。」
タッタッタッタ……
そんなことを考えていたセリカの周りを突然、たくさんのヘルメット団たちが取り囲んだ。
「……!?」
「何よ、あんたたち。」
奴らは彼女の質問に質問で返す。
「黒見セリカ……だな?」
セリカはすぐに思考を切り替え、鋭い視線をヘルメット団達に向ける。
「……カタカタヘルメット団?あんたたち、まだこの辺をうろついてんの?」
「ちょうど良かった。虫の居所が悪かったの。二度とこの辺りに足を踏み入れられないようにしてやるわっ……!!」
ダダダダダダダッ!!
そして、激しい銃撃戦が始まった。
ヘルメット団による暗闇からの強襲は、必死の抵抗をするセリカにとって、あまりにも不利な状況を生み出していた。まさに奴らの作戦通りだった。
「くっ、ううっ!!」
背後にも敵!?……こいつら、最初から私を……。
「捕らえろ。」
連中のリーダーの合図と共に、セリカは強烈な爆発に襲われる。
ドドドドドオオオオオオオン!!!
それは改造された対空兵器の砲撃だった。
いくら銃撃に耐えられるキヴォトス人でも、この砲撃の前では一溜りもなかった。
「ケホッ、ケホッ……。」
対空砲……?違う……この爆発音は、Flak41改?
火力支援?どこから……?ち、違う、これは……まさか……。
こっ、こいつら、ハンパじゃない…ヤバい……。
意識が……。
―――――……。
ドサッ……
今までとはとは比べ物にならないヘルメット団の本気の攻撃により、セリカは意識を失った。
そして団員の一人がリーダーに尋ねる。
「……。」
「続けますか?」
「いや、生かさなければ意味がない。この程度でいいだろう。車に乗せろ、今からランデブーポイントへ向かう。」
「了解。」
ガチャ……。
ブロロロロ……。
ヘルメット団たちは意識を失ったセリカをトラックに乗せ、アビドスの街の闇夜へと消えた。
一方その頃アヤネは昼間の出来事を思い出し、セリカの家に向かっていた。
ドアを開けてもらうため玄関のインターホンを鳴らす。
ピンポーン…
「セリカちゃん?セリカちゃん、いる?」
返事などなかった。
ピンポンピンポーン…
もう一度、インターホンを鳴らす。
だが当然、セリカからの返事はない。
心配になったセリカは、ドア越しに居るはずもないセリカに呼びかける。
「セリカちゃーん?どうしたんだろう、電話にも出ないし…。」
「スペアキー、どこだっけ……。」
ガチャ…。
アヤネはしかたなく、預かっていたスペアキーで部屋の中へ入った。
「セリカちゃん……?まだ帰ってないのかな?」
「……こんなこと、今まで一度もなかったのに。」
「ま、まさか……!!」
嫌な予感がしたアヤネは急いで学校へと向かった。
アヤネからの話を聞いたノノミはアヤネに尋ねる。
「電話はしてみました?」
「……はい。でも数時間前から、電源が入ってないみたいで……。」
「店員にも聞いてみたけど、バイト先では定時に店をでたみたい。その後、家に帰ってないってことみたいだね。」
「こんな遅くまで帰らないなんてこと、これまでなかったですよね……?」
「まさか……ヘルメット団の連中?」
シロコの鋭い直感が、アヤネやノノミの不安を煽る。
「えっ!?ヘルメット団がセリカちゃんを……!?」
「とりあえず待とう。ホシノ先輩と先生が調べてるから。」
「……。」
ガチャ……
部室の扉開けたのは、調査から戻ったターキンとホシノだった。
「みんな、おまたせー。」
ホシノは至って冷静な様子だったが、ターキンの方は違った…。普段の友好的な立ち振る舞いと打って変わって、殺気にも似た何か近寄りがい雰囲気が出ていた。
「ホシノ先輩!先生!」
「…今戻った。」
「どうだった、先輩?」
シロコは調べた結果をホシノに尋ねる。
「先生が持ってる権限を使って、連邦生徒会が管理するセントラルネットワークにアクセスできたんだー。」
「セントラルネットワークに……先生、そんな権限までお持ちなのですね…。」
「なくてもハッキングでこじ開けてたがな。」
「うへ〜もちろんこっそりだけどね。バレたら始末書だよー?」
「セリカの身の安全が最優先だ。始末書なぞ後でいくらでも書いてやる。」
「先生……。」(なんだかお昼と様子が……。)
「それで、どうでしたか?」
ノノミがホシノに尋ねる。
ホシノはノノミ達に端末の地図を見せながらいう。
「うん、連絡が途絶える直前のセリカちゃんの端末の場所、ここだったよー。」
地図のマーキングされた場所を見ながらノノミが言う。
「ここは……砂漠化が進んでいる市街地の端の方ですね?」
シロコがそれに続き、そこがどんな場所なのか述べた。
「住民もいないし、廃墟になったエリア…治安が維持できなくて、チンピラばかりが集まってる場所だね。」
それを補足するような形でアヤネは不安そうに言う。
「このエリア、以前危険要素の分析をした際にカタカタヘルメット団の主力が集まっている確認できた場所です。」
「なるほどねー、帰宅中のセリカちゃんを拉致して、自分たちのアジトに連れて行ったってことかー。」
「考えてもしかたありません、急いでセリカちゃんを助けに行きましょう!」
「うん、もちろん。」
皆がそれぞれ武器を手にして、今すぐにでも…と言った様子だったが…。
その中に一人だけ、さっきから明らかに様子がおかしい人物がいた。
「それじゃせんs……」
ホシノが呼びかけようとした先に見えた先生の顔は、凄まじいの一言に尽きた。
その顔は怒りに顔を歪ませ、サイコをキメたかのように青筋が立ち、目が血走っていた。
顔中にある傷跡も相まって、それは鬼の形相と呼ぶに相応しかった。相応しすぎた。
セリカが誘拐された事実が彼の過去の傷に触れ、完全にブチ切れたのである。
彼がブチ切れた……その理由は彼のトラウマにある。
ブラッドイーグル、彼は奴らを激しく憎んでいる。
再生の日から半年、彼がファイヤーブリーザーになってから日が浅い頃…
奴らとの戦闘中、背後から不意打ちを喰らい気を失いそのまま奴らのアジトに攫われた。苛烈な拷問を受けた。アジトには彼以外の者も捕らえられていて、仲間になる事を拒んだ者等奴らの意にそぐわない者が悉く虐げられていた。中にはその苛烈な責め苦に耐え切れずに、命を落とした者も多い………。
俺はそれでも奴らの責め苦を根性で耐え抜いた。そして自力で拘束を解いた後、その連中を皆殺しにした。
叩き、斬りつけ、殴り、噛みつき、引き裂き、千切り、自身と他の囚人が受けてきた苦しみの数々をありとあらゆる方法で味わせた。
その手で。
その血と暴力に染った惨劇が、Vaultで学んだ倫理が、ウェイストランドで歪み、崩れ、混ざった事で彼の人格は…
さながら原子力の様に不安定な人間性を持った。
そうして己の死も恐れずただひたすらに人々を助け出すレスポンダーに成った。
その過去の自分とセリカを重ねる度、その表情は歪みを増す。
勿論、そんな背景を知る道理もない生徒たちは始めてみる彼の激しく荒れる感情に酷く動揺した。
「……だ、大丈夫?先生、すごい顔になってるけど………。」
「……………………。」
「せ、先生……?」
だが彼は答えることなく、そのまま部室の出口に向かう。
そしてドアノブに手をかけながら、小さく呟いた。
「……待ってろ、セリカ。」
「絶対に同じ目にはあわせはしない……!」
彼は教室を飛び出して行った。
そして校庭まで走り出し、ジェットパックを装備して我先にと言わんばかりに飛んで行った。
ゴオオオオオオオオオ……!!!
「い、行ちゃった!」
「早く追わないと……!」
追いつく暇もなかった彼女達も、ジェットパックの轟音を聞きながらセリカ救出の為急ぐのだった。
その頃、ヘルメット団のトラックに乗せられていたセリカの方は…。
ガタンガタン……。
トラックの揺れで、セリカは目を覚ました。
「う、うーん……。」
「……へ?」
今自分がいる場所に驚き、目を点にしながら周りを見る。
「!?」
「こ、ここは!?私、さらわれた!?」
「あ、う……頭が……。」
動揺する彼女などお構い無し、と言わんばかりにトラックは砂の上で車体をガタガタ揺らしながら走り続ける。
ここ……トラックの荷台……?
ううっ、ヘルメット団め…私を一体どこに連れて行くつもりなの……。
暗い……けど、隙間から少し光がもれてる。
外……見えるかな?
そう思い、外から布で覆われた窓の僅かな隙間から外の様子を見る。
その光景はセリカに無情な事実を叩きつけた。
……砂漠…線路!?
線路がある場所って……ま、まさかここ、アビドス郊外の砂漠!?
……そ、そんな。ここからじゃ、どこにも連絡が取れない!もし脱出できたとしても、対策委員会の皆んなにどうやって知らせれば……。
どうしよう……皆、心配してるだろうな………。
………。
そしてセリカの脳裏にこんな考えが過ぎる。
………このままどこかに埋められちゃうのかな。誰にも気づかれないように……。
連絡も途絶えて...私も他の子たちみたいに、街を去ったって思われるんだろうな……。
裏切ったって思われるかな………。
誤解されたまま、みんなに会えないまま死ぬなんて……。
そんな不安と後悔に、彼女は身を震わせた。
「そんなの………ヤダよ……。」
「……。」グスッ
「う……うぐぅ……。」
「うっ、ううっ………。」
そして、自身に待ち受けているものへの恐怖に、堪えきれなかった涙が溢れた。
「ううっ……ひぐっ……。」
「やだ、死にたくないよぉ……。」
「誰か助けてよお……。」
その時、火事から親子を救い出した彼の姿を思い出す。
その記憶に縋り付くように…恐怖で高鳴る心臓を抑え、涙を流しながら震える声で言う。
「せんせぇ……たすけ、てぇ…………。」
その時、トラックから大きな衝撃が伝わる。
ガッシャアアアアン!!!
「……ふぇ?」
それはまさに彼女の言葉に応えるが如くのことだった。
一体何が起こったのか、それは遡ること十数分前…。
ゴオオオオオオオオ……
誰よりも先にセリカ救出にのりだしたターキンは、アビドス郊外の砂漠…その遥か数十メートル上空を飛行していた。
シッテムの箱を左腕のピップボーイに接続する。
「アロナ、聞こえるか。」
『はい先生!』
「ピップボーイのバイオメトリックセンサーで、この周辺を高速で移動する生体反応がないか調べてくれ。」
『わかりました、やってみます!』
「頼むセリカ……無事でいてくれ…頼む。」
そうやって祈りながらしばらく飛行しているとアロナは先生に反応があったことを報告する。
『先生!あちらに7体の移動する生体反応を検知しました!』
「わかった。追跡を続けてくれ。」
『はいっ!』ビシッ
追跡した生体反応の先には、3台のトラックがあった。
「アロナ、生体反応が発せられている場所の正体をリアルタイムで表示してくれ。」
トラック内部の反応確認していると、真ん中のトラックの荷台に生物の存在を示す点が見えた。
間違いない……セリカはそこに閉じ込められている。
彼はすぐさまそのトラックに狙いを定め、急降下する。
そのままそのトラック追い抜き、数十メートル先で着陸。
それに気づいたヘルメット団の運転手が助手席にいる団員に声を掛ける。
「おい、正面に人がいるぞ!」
「構わん、そのまま轢け。」
帰ってきたのは非情な選択だった。
「でもあいつヘイローがない、普通のにんげんだ。」
「このまま突っ込んだら死んじまうぞ?」
「後で上がもみ消す。いいからそのまま行け!」
「クソッ……誰か知らねえけど悪く思うなよ。」
悪く思うことはなにも無い。これから彼女たちの身に起こることに比べれば…。
ターキンは正面から突っ込んでくるトラックをそのまま迎え撃つため消火斧を取り出す。
「力ずくでも止めてやるからな……。」
唸るように呟きながら構える。
そして……
「うおらあああああああああああ!!!!」
ガッシャ――――――ン!!!
そして現在の状況に至る。
斧の全力フルスイングを叩きつけられたトラックのフロント部分は見事ぺしゃんこになり、バンパー部分はその原型を保てていなかった。そして、その衝撃により運転席のチンピラ二人は完全に気絶した。
キキ―――ッ!
他二台のトラックがこの異常事態に気づき急停止する。
その隙を彼は見逃さず、すぐに振り返りM79グレネードランチャー2丁をお見舞した。
ドカアアアアアアアアン!!!
残った二台のトラックも無惨に爆散した。
そしてセリカは、突然の衝撃と外から聞こえる爆発音に困惑していた。
「な、何が起きてるの……?」
ドンッ!ドンッ!
「セリカ!無事か!?」
戸惑いの中、トラックの向こうからドアを叩きながら自分を呼ぶ声がする。
「そこから出す!今すぐドアから離れるんだ!」
俺は斧を振り上げドアに力いっぱい叩きつけた。
「…フンッ!」
ドゴォッ!
しかし装甲車なだけあり、その扉はかなり頑丈で中々壊れない。
「セイッ!」
ドギャッ!!
とはいえ彼もウェイストランド人、デスクローの鱗に比べれば装甲車の扉一つくらい数回叩けば破壊できる。
「もういっちょ……それッ!」
バギャアアッ!!
今の一撃はかなり手ごたえがあった。次で確実に壊す。
「これで……最後だ!」
「があああっ!!」
バキッ!
ようやく叩き壊し、留め具か緩んだドアを無理やりひっぺがした。
そしてようやく、セリカの顔を見られた。
「……セリカッ!!」
「せ、せんせぇ……?」
良かった、彼女は無事だった。
しかし、目の周りが少し赤い…床には数滴の液体が落ちてる…涙か。
きっと彼女はさらわれている間…泣いていた、かわいそうにな…。
そんな中、セリカは俺に尋ねた。
「せ、先生……なんでここに?」
ここは電波も届かない郊外の砂漠、本来なら探しだすなんて不可能だろう。
だが、それを可能にしてしまうのが彼だった。
「君の携帯の電波が途絶えた場所が、ちょうどこの方向を示していた。」
「だから、この辺りをジェットパックで飛びながら君の生体反応を探っていた。」
「それで見つけられた。」
「………君が無事で本当によかった。」
俺はトラックで縮こまるセリカに手を伸ばした。
しかし彼女は手を取れなかった。まだ晴れてない疑問があった。
「ど、どうして?」
「私…先生に酷い態度取ったのに………。」
「何を今更、そんなことをいちいち気にするタマじゃない。」
「どれだけ拒絶されようとも君は生徒で、守られるべき存在だ。」
「である以上は、私は先生として君達を守り、助ける義務がある。」
「それにもう私にとって人様から悪態をつかれるなんてことは珍しくもなんともない。慣れっこさ。」
相変わらず俺の言葉は回りくどい、柄にも似合わず感情的なのがよけいにそうさせる。
でもまぁ、その分彼女に気持ちが伝わりつつある。
「つまり何が言いたいかっていうと…もう心配しなくていい………。」
俺は両手を大きく広げた。
「………さあ、学校に帰ろう。」
「~~~~~ッッ……!」
彼女は空いた彼の胸に飛び込んだ。
「ううっ……ぐすっ……。」
「もう大丈夫だ。私が守る…絶対に。」
「せんせいぃ~……!」
声にもならず泣く彼女を抱いてる間に、聞いた声が聞こえた。
「……見つけた!」
シロコだった。
彼女だけじゃない、ホシノ…それにノノミもいた。
「アヤネ、泣いてるセリカを見つけた。先生が抱きしめてる。」
シロコは教室でオペレーターをしているアヤネにセリカの無事を伝えた。
『ほ、本当ですk……え、今なんて』
アヤネはシロコのその報告を聞いて安堵した直後耳を疑った。
一方セリカは、仲間が来たことにあたふたしながら俺の腕から離れた。
今の姿を見られたのがとても恥ずかしかったらしい。
「み、皆まで、どうやって……。」
「ああ、俺がピップボーイで現在地を送っていたんだ。」
「そうそう、でもおじさん驚いたよー?」
「何せ、先生ったら鬼の形相で一人で学校から飛び出してちゃったんだもん。」
「ん、文字通り飛んでた。」
「でも……セリカちゃんを見つけられて本当に良かったです!」
ノノミの一言にホシノは頷く。
「うん!本当に無事でよかったよ~!」
「にしても本当に無茶するよねー。」
「トラック3台に一人で突っ込むなんて。ママびっくりしちゃったー。」
「ママ……?まあ、トラックに関してはこれがあったからな。」
突拍子のない台詞に困惑しながらも、俺は懐から斧をを取り出す。
「それは?」
「ただの消防斧、これでトラックを正面からぶっ潰した。」
「じゃ、じゃあ、あの外されてるボッコボコの荷台のドアは?」
ホシノはそう言って俺が破壊したトラックのドアを指さす。
「これで叩き壊した。一刻を争う事態だったからな。」
「それじゃあの燃えてるトラックの残骸は?」
「グレネードランチャーで吹っ飛ばした。」
「わざわざ降りてくるチンピラを一人一人相手にするほどの暇がなかったからな。」
「一刻も早く助けたかった。」
全てを聞いたホシノは……ただ一言。
「やっべー……。」
そんなやりとりをしている時、シロコは辺りを見渡しながら冷静に声をかける。
「……皆、まだ油断は禁物。トラックは先生が制圧したけど、ここ敵陣のど真ん中だよ。」
「そうですね、油断大敵です!」
ノノミが切り替えていると、直後にアヤネから通信が入った。
噂をすれば影がさすとはよく言ったものだ…。
『アジトの方から多数の敵勢力の接近を確認、まっすぐこちらに向かってきます!』
「おお、奴さんたち相当お怒りのご様子だねー。」
「……丁度いい機会だ、あの不良達には自分がした事の愚かさを身をもって知ってもらおう。」
彼はさっきまでの穏やかな表情を一変させ、ニヤリと不敵な笑みを浮かべていた。
「先生顔が、顔がまたすごいことになってる!」
セリカはやる気満々の彼に警告する。
「気をつけて。あいつら、改造した戦車持ってるから。」
「戦車か、なるほどな…。なら、アレの出番か……。」
「アレ?」
そしてピップボーイのインベントリから取り出したのは……
かつて消防局でT-45をベースに自作したパワーアーマー*1だった。
「しばらくご無沙汰だったからな……かるーく肩慣らしと行くか。」
彼はフュージョンコアをハッチに差し込み、乗り込む。
威圧感のあるヘルメット、重厚で堅牢な装甲、無骨ながら逞しい双肩から威圧的に主張する回転灯。
目に映るその全てが、この歩く戦車がどれほど強力な兵器であるのかをこれでもかと誇示していた。
彼はその鉄塊のような拳をガシン!ガシン!とぶつけ、闘牙を。
『君たちはここにいてくれ、すぐに終わらせる。』
ヘルメット越しに伝わる声すら、脅しにも似た低く禍々しいものだった。
ドドドドドドドドドド!!!
次の瞬間、彼は橙色の回転灯を激しく光らせながら
「な、なんだあのデカいの!?こっちに突っ込んでくるぞ!!」
「う、撃て!とにかく撃って撃って撃ちまくれー!」
迫り来る鋼鉄の鎧に、ヘルメット団はパニックを起こす。
ダダダダダダダダダダダ!!
カンッ!カカンッ!キンッ!
「嘘だろ!?弾が全く効いてねぇ、なんだあの装甲!?」
パワーアーマーの装甲の前では小銃の弾など豆鉄砲も同然だった。
「大砲だ!砲撃であいつを吹き飛ばせ!」
リーダーがそう叫ぶと、戦車の砲塔が旋回し彼に向く。
「撃てーーーー!!」
ズドオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!
砲弾は轟音を周囲に響かせ迫るが……
『……なんの。』ガシッ
ゴシャァッ………!
彼は飛んできた砲弾をそのまま掴み、握り潰した。
その瞬間驚嘆の声が自陣と敵陣から同時に発せられた。
「「「えええええええええええええええ!?!?」」」
『もはや撃つ手なし……といったところか?』
『覚悟しろ。』ニブニブニブニブニブ………
唸るように声を絞りだすと眼前に捉えたflak41改に対してその鉄腕を横薙ぎに力一杯に振り抜いた。
ドゴオオオオオオオオオン!!
その戦車の重たい車体あっという間にひっくり返り、ギャルルルルッ!!っと音を立てながら回転、大破した。
ガッシャアアアアアアン!
もはや灸をすえるだとか懲らしめるだとか、もうそういう次元ではなかった。
その様相は正しく一方的な蹂躙、殺戮だった。
唯一の違いはヘルメット団は死亡したのではなく……全員気絶しているということだけだ。
もう十分暴れただろうが、彼はダメ押しとばかりにガトリングレーザーを取り出した。
ここまで来たら彼のすることはそれはもう徹底していた。
銃口を残党に向け、スピンアップを開始し回転数が最大になるとすぐさま一斉掃射が始まった。
バババババババババババババババッ
「ぐああああっ!?」
「がああっ!」
「うあっ!」
高速で打ち出される赤色の閃光が、ヘルメット団達を次々と薙ぎ払っていく。
そして、ガトリングレーザーの銃身の回転が止まった時、そこにはヘルメットが少し溶け、シュー…と煙を登らせながら気を失っているチンピラ達しかいなかった。
『……制圧完了。』
彼は破壊した戦車から
『作戦終了。少し暴れすぎたかもしれない。』
「ん、この世の終わりを見た気がする…。」
「何というか、先生が味方でよかったよ…うん。」
生徒は改めてコイツがヤバい事を再認識した。
『さて、もう遅い時間だ。そろそろ学校に戻ろうか。』
砂に埋もれたビル群を背に、学校へと戻った。
そして、教室に戻ると例によってアヤネが出迎えてくれる。
「皆さんお疲れ様d」
『タダイマ。』ズイッ
彼女の目の前に身をかがめて半ば食い気味にアーマー越しの低い声であいさつしてしまった為、彼女は面食らった。
「うわああっ!?」ビクゥッ!
「……っあ!」
『おっと。』
ガシッ
アヤネは驚いた拍子に尻餅をつきそうになるが、彼がとっさに腕をまわして支えた。
「あ、ありがとう…ございます……。」
『こちらこそ、驚かせてすまなかった。今降りる。』
彼はパワーアーマーから降りて、インベントリにしまった。
一方アヤネはというと、行方不明でずっと心配していたセリカに声をかける。
「セリカちゃん、怪我はない?」
「うん、私は大丈夫。見てよ、もうピンピンし、て……。」ふらっ
「ッ………!」バッ
突然倒れかけたセリカをターキンが慌てて受け止めた。
「セリカちゃん!?」
「私が保健室に連れていく。」
シロコは率先してセリカを抱えて、保健室に運びに行った。
「Flak41の対空砲を食らったんだもん、歩ける方がおかしいって。ゆっくり休ませてあげよー。」
なぜキヴォトス人は対空砲を喰らって生きてられるんだ…。と思ったが異世界だしそういうものなのだと…そこは一旦疑問を飲み込むことにした。
「少しでも遅かったら大変なことになるところでした。先生がいなかったら……。」
「うんうん。先生のおかげでセリカちゃんの居場所を逃がさず追跡出来ました。やっぱりすごいです☆」
「……それと、皆さんこれを見てください。」
「戦闘後に先生が残骸の山から回収した戦車の部品を確認したところ、キヴォトスでは使用が禁止されている違法機種と判明しました。」
「もう少し調べる必要はありますが……ヘルメット団は、自分たちでは入手できない武器まで保有しているそうです。」
「この部品の流通ルートを分析すれば、ヘルメット団の裏にいる存在を探し出せますね!」
「はい。ただのチンピラが、なぜここまで執拗に私たちの学校を狙っているのかも、明らかになるかもしれません。」
「うん、わかった。じっくり調べてみよっかー。」
対策委員会の次の目標も決まり解散、っというところで、俺はセリカの様子を見に行った。
「はぁ……。」
セリカは今日の出来事を振り返りながら、ため息を吐いた。
コンコンコンッ
「セリカ、入るぞ。」
ガラッ
俺は保健室の扉を開け、中に入った。
「あ、れ……?先生!?ど、どうしたの?」
「少し、様子が気になっただけだ。大丈夫か?」
「ああ……うん大丈夫!全然平気!いつまでもこうしちゃいられないし。」
「アヤネちゃんや他のみんなも心配してるし……バイトにも行かなきゃだし。」
「だ、だからお見舞いとかいいから!ほら見て、元気だし。」
「そうか…。」
俺は窓を見つめ、呟く。
「……それにしても…。」
「ん?」
「ここの夜空はいつも、綺麗なものだな………。」
窓の向こうに広がる景色は、アパラチアの山々で眺めてきた空の様に澄み渡っていた。
空はいつも美しい、空の上は疫病が蔓延することも、放射能で汚染されることも、誰かの血で汚れることもない。だから人は天国を見出したのだろう。
俺は故郷で愛飲していたピルスナーを1本を取り出し、栓を抜いてそのまま口をつけた。
キュポンッ!
……ゴクッ。
「……。」カチカチ……
何気なくピップボーイを弄ると、お気に入りのサウンドトラックが収録されたホロテープを再生する。
ピピッ……
Tomorrow, so they say
Will be a lovely day,
A bright new sun will suddenly break through,
But I don't want to see tomorrow,
Unless I see it with you.
Tomorrow, so I hear
The clouds will disappear,
The door to happiness will open wide.
But I don't want to see tomorrow,
Unless you're there by my side.
ピップボーイを介してホロテープから響く味わい深い歌詞……それはまさに、あの時に感じていた気持ちを的確に表していた。
俺にはもう誰もいない。しかし、彼女にはまだ大事な人達がいる。
それを失う苦しみは…どんな苦痛よりも耐え難い………。
流れ続ける音楽を聴きながら、セリカは訊ねる。
「…英語だからよくわかんないけど、歌手はなんて?」
「……"君のいない明日なんて迎えたくない"…と。」
「……君のいない明日…。」
「皆もきっと、あの時同じ気持ちだったんじゃないだろうか…。」
「……!」
「今まで、君たちはたった5人で支え合ってきた……それなのに…突然、会えなくなったら……。」
そう口にしたとき、俺はあの世界にいた親友達との思い出が過る……もう会う事も無いだろう親友達との……。
そして…一筋の涙が、俺の頬を伝い落ちた……。
「先生……?」
「だから……君を救えて本当に良かった。」
「そう、本当に……。」
「……。」
セリカは、静かに頷いた。
そっと零れた雫を拭う俺の隣で、今度はこんなことを訪ねる。
「先生にもいたの?」
「その……友達とか、さ。」
「親友がいた……4人な。俺を含めると、君達と同じ…5人だったな。」
「だが今の私はもう……独りだ。」
受けとめた筈の現実は、今もまだ俺の胸に突き刺さったままだ。
「……!」
彼女はなぜ彼が今まで自分たちにここまでしてきたのかを理解した。
理解した上で、また何気ない疑問が浮かぶ。
「独り……か。やっぱり、辛いのかな……。」
窓から遠くを見つめながら、セリカは呟き、俺はそれに答える。
「辛いに決まってるさ……。でもそんな辛さは知らなくていい。」
「だから君たちは……死んでも私が守る。」
「そう……ありがと…。」
月明かりが照らす保健室でしばらくの静寂が二人を包んでいたが、突然セリカは立ち上がってこちらに向き直る。
「……あ、あの!!」
俺はキョトンとした。
「……え、ええとね……。」
「そういえば、先生にお礼を言ってなかったなあって、思って……。」
「あ、ありがとう……色々と……。」
彼女はお礼を言った後……やはり気恥しさを感じたのか、ついにいつもの気が強い口調で、ツンデレ全開なことを言う。
「……でもっ!この程度でアビドスの役に立てたなんて思わないでよね!この借りはいつか返すんだから!」
言い切ると同時に彼女は俺にビシッと人差し指を向ける。
「それと、"死んでも"なんてもう二度と言わないで。」
「私達だって、先生に会えなくなったら…少しは寂しい……。」
「あ~~もう!こういうの柄じゃないの!…とにかくわかった!?」
「セリカ……。」
そんな事を生徒に言われてしまったら、流石に死んでも死に切れないな…。
「そうだな、頑張るよ。」
「うん、じゃあ……また明日ね!」
「えっと、せっ……先生。」
彼女のその笑顔は、核爆弾の閃光よりも眩しく、そして美しかった。
「ああ。また明日、セリカ。」
そんなやり取りの裏で、蠢く影が……
場所はキヴォトス某所のオフィスビルの一室。
他のオートマタ達とは明らかに風貌が変わっている男がヘルメット団らへの失望を吐露していた。
「……格下のチンピラごときでは、あの程度が限界か。」
「全く…主力戦車まで送り出したというのにあのザマとは……。」
男は暫く沈潜するとある古代の法典に倣うことにした。
「ふむ………となると、目には目を、生徒には生徒を…か。専門家に依頼するとしよう。」
スマホを手に取り、ある
『はい、どんな以来でも解決すします。便利屋
「仕事を頼みたい、便利屋。」
男が依頼を要求した後、とある港でヘルメット団が謎の生徒達の襲撃を受けた。
制圧したチンピラ達を前にピンクの髪を靡かせる少女が、スコープが怪しく光る狙撃銃を片手に名乗る……
私たちは便利屋68
金さえ貰えれば、何でもする。
何でも屋よ。
Nat king cole は良い。間違いない。
今回も読んでいただきありがとうございます。
もし気に入っていただければお気に入り登録、感想を是非お願いします。