ちび先生とゲマトリア会談   作:うろ覚え

2 / 4
ちび先生と便利屋68

 

 

 キヴォトスでも悪名高いマンモス高であるゲヘナ学園。問題児ばかりで悪名高く、いくつもの違法サークルがある混沌の庭で一際問題視されている部活があった。キヴォトス最強の一角と名高い空崎ヒナを擁する風紀委員会と対立し、なおも逃げ延びて学外にオフィスを構えて活動している【真のアウトロー】。

 

 悪意渦巻くブラックマーケットの只中に企業として組織化され、【金を貰えばなんでもする】をモットーに手付け金を貰わずに立派なオフィスを構えていると言えばこの企業が如何に狡猾で凶悪な集団であるのかがご理解頂ける筈だ。

 

 しかも、直近の依頼に於いて単騎で迫る空崎ヒナを企業の経営顧問の指揮に依って撃破しゲヘナを更なる混沌に陥れた。

 

 此れはゲヘナ全体の地盤に多大な被害を与えている温泉開発部や予告無しの爆破解体で店を粉微塵にする美食研究会でさえ成し得なかった偉業であり、単純にこの企業がキヴォトス最強の一角を担えると対外的に証明したもの。

 

 今まで派手な被害を出して、非常に凶悪な集団だと噂が一人歩きし、その悪名を利用した要人の救出依頼や建物の警備依頼が殆どであった為に依頼達成率は100%で無いものの、それは攻撃力の高い破壊殲滅部隊に要人救出依頼をする依頼主にこそ問題があると言うもの。

 

 ハッキリと言いますが餅は餅屋、鍵は鍵屋です。八百屋に行って魚を買い求めるのは賢い判断とは言い難い。先程も申し上げたが彼女達の本領はターゲットの破壊と殲滅。チェスのナイトにポーンと同じ働きをさせる事は出来ない。差し手の皆様に付きましては、それを踏まえて依頼のご相談を受け付け致しますよ。

 

「って言ったら依頼いっぱい来たよ。」

 

「な、なんですってぇ〜!」

 

 ブラックマーケットに居を構える便利屋68の立派なオフィスの中。上座には社長専用の執務机が置かれ目下の下座には長いローテーブルを挟んで柔らかいソファーに座る四人の少女たち。

 

「・・・うん。依頼料がいつもの5倍以上だね。」

 

 そして先程、ヨタヨタと紙束を抱えてオフィスに入ってきた先生から課長の鬼方カヨコがさり気無く紙束を取り上げて1枚、書類を確認した。

 

 先生から、そっち行く。と連絡を受けて直ぐにオフィスの入口に近い下座のソファーに陣取る様に寝転んでスマホを弄り始めたのは、社長机で脚を組みながらブラインドの間を指で開けて明るい外を眺める【出来る女探偵ごっこ】をしていた社長、陸八魔アル以外の全員が気付いていた。

 

「カヨコありがと。」

 

「ん」

 

 何故か熟年夫婦のような空気感を出し始めるカヨコを遮り、室長・浅黄ムツキがカヨコの持つ残りの紙束を長いローテーブルに広げた。

 

「えー、これ全部殲滅依頼!?あっ依頼料が少ないのもあるね。」

 

 ムツキは依頼内容が戦闘依頼のみである事に驚いた様だ。便利屋は何でもやると銘打っているが為に、町内の清掃から猫探し、ターゲット捕縛や要人警護と活動内容が幅広い。当然、雑務とも言える清掃や猫探しに多額の依頼料を求められる筈も無く、割の良い仕事とハズレの仕事とで二分されるのはしばしば。

 

 それでもハズレの仕事を請け負うのは「依頼主が便利屋を頼って来たんだから、応えないのは女が廃るわ!」という矜持のため。それはそうとしてハズレはハズレである。

 

「殲滅と言うか、戦闘が主だね。依頼場所でターゲットを見つけたら撃破して欲しいってさ。依頼場所にターゲットが来なかったら報酬の2割、戦闘した時点で半分、撃破成功時に全部出る契約だよ。依頼料が少ないのは直ぐに終わりそうなのに加えて高めの依頼料の地域の近くで戦闘が予想される依頼をピックアップしてきたよ。サブ報酬だと思えば良いんじゃ無い?依頼期間、拘束期間は1週間。全部受けて成功したら860万。便利屋68の収入1年分以上だね。ハルカ、ゲヘナ周辺の地図とペンを持ってきて。」

 

「はっはい!」

 

 何時もは自己肯定感が低い平社員の伊草ハルカも先立っての依頼で活躍した事もあり、少しは自信が付いた模様。未だ自身を卑下する癖はあるものの以前よりは遥かにマシになった。ハルカだけに(激ウマギャグ)

 

 地図上に依頼場所をペンで書き加えていく。地図上の赤い点がゲヘナ学園を基準に扇状の円弧が作られた。

 

「これは。」

 

 私はテーブルに広げられた地図を指差しながら説明する。

 

「依頼中にヒナが来た場合の逃走経路を考えると1日毎に近場の依頼で固めるしか無い。初めの依頼場所の戦闘開始から逃走時間を考えるとゲヘナ学園に最も近い場所で直線距離にして車で1時間以上、便利屋68の戦闘時間平均は4、5分だから長距離移動を車にしてサブ依頼合わせても拘束期間は1週間、1日辺り半日で終わる。ターゲットを捕縛したらそのまま放置、依頼主が回収に来る手筈だよ。」

 

 ムツキは目を光らせて乗り気に言う。

 

「へぇ〜悪く無いじゃん。先生の計算が間違ってないなら残りの半日で通常の依頼も受けられるし、弾薬補給に途中で怪我しても多少の回復は見込める。純粋に、無理の無い計画だねぇ。で、アルちゃんはどう思う?」

 

「ええ、依頼は全て受けるわっ!けど、先生?私たちに見せてない依頼も有るわね?」

 

「あれ、バレちゃった。」

 

「貴方とは相棒でしょ。解って当然よ。複数の依頼人が居るのにスケジュールの都合が良すぎるわ。それと、失敗した依頼に対してお金は受け取らないわ。その条件で先生が問題ないと思った依頼は私に全部任せなさいっ!このゲヘナに便利屋69の名を轟かせるわよ!」

 

 アルは立ち上がり、天に向かって指を指す。暖かい陽の光が彼女の指先を照らした。

 

「あ、アル様。68では・・・?」

 

「素で間違えたね。」

 

「アルちゃん。急にえっちなネタはちょっと・・・。先生も居るんだし、さ?」

 

 ハルカ、カヨコ、ムツキが困惑しながらもツッコミを入れた。

 

 先生はアルの袖を引っ張り追撃を掛けた。

 

「69ってえっちなネタなの?教えて相棒。」

 

「な、なんですってぇー!?」

 

 ショックを受けた白目のアウトローの絶叫がブラックマーケットのオフィスに響いた。

 

 

 

----------------------

 

 

 

 

 便利屋68のオフィスには応接室の他に居間と調理場が有る。メンバーは基本的にオフィス内で暮らしているのだが、ブラックマーケット内にオフィスを構えている関係で偶に爆発するので食材の買い置きはせずに、食べる時に買い出しに行く事が基本となっていた。

 

 今日は先生が良い依頼を持ってきたので前祝いとして英気を養うべく、夕飯はすき焼きとなった。調理場では先生とムツキが今晩の主役達の下拵えをしていた。

 

「先生ってば意外と手際が良いねぇ。」

 

「一応、カフェを経営してるからね。お客さんに食べさせられる位の腕はあるよ。」

 

 トントンとリズミカルに具材達が均一に切られていく中で、すき焼きのタレを調味していたムツキが私の真後ろへ近付いて囁くように耳元で話しかける。

 

「先生さぁ。さっきの依頼、まだ何か隠してるでしょ。便利屋の経営顧問なんだからぁ隠し事は無しなんじゃないの〜。」

 

 一応、詳細を訊かれるだろうとは思っていた。彼女は何かを感じると目を細めてニンマリと笑う癖がある。ムツキの唇と息が耳に当たって擽ったい。くすぐったいのは嫌いなので、辞めて欲しい。

 

「隠してると言うか、言う必要が無いかなって事はあるよ。そもそもの発端はヒナが風紀委員の執務でしなしなに弱るまで働いた後に偶然、ゲヘナでランチしてたハルカと僕に遭遇した事で始まった。」

 

「ちょちょちょっと待って。何でハルカちゃんとランチ行ってんの!?」

 

 急に耳元から離れて普通の音量に戻った。

 

「うん?本当に偶々だよ。ハルカが僕の後ろを隠れて着いてきてたから僕が誘っただけ。続けるけど、ランチに入った店が美食研究会に爆発されて短距離なら車より早く走るヒナが単騎で出動。ハルカと僕が美食研究会と同じ方向に逃げちゃって、逃げた先でアルちゃん達と合流。ガチギレヒナが美食研究会鎮圧後に便利屋と遭遇戦に入ったからそのままなし崩しで僕が指揮したってだけ。」

 

「え”、あれってヒナがアルちゃんを見つけたからサーチアンドデストロイで襲って来たんじゃ?」

 

「その割には殺意高かったでしょ?イオリ曰く18轍で執務してたらしいよ。笑えるよね。」

 

 外の世界の『月月火水木金金』と『蟹工船』をイオリに送ったら、ビビり散らされた思い出が蘇る。

 

「笑えないんだけどっ!?気絶したらそのまま死体撃ちされるかと思って皆んな必死で闘ってたんだけど!」

 

 あの時のヒナは悉くを滅ぼす顔してたし私もそう思ったので同意しておく。

 

「キレ過ぎて後ろで指揮する僕にも気付いて無かったから負けたら多分ヤラれてたね。ヒナが万全なら大抵の攻撃は効かないけど、今回は殺意溢れるしなしなヒナ状態だったから勝てただけだよ。まあそれは置いといて、ヒナを撃破しちゃったからゲヘナ学園が混乱しててね。自治が追い付いてないワケ。先生としてはちょっと問題があるって考えて生徒会の休み取れてないメンバーに1週間の休みをあげたのが経緯。」

 

「えぇ。じゃあ今回の依頼って風紀委員会の自治の代行って事ぉ?」

 

「正解。依頼料は僕から出すから安心してね。あっそうだ。」

 

 さっきの仕返しで正面から抱き付く様に後頭部を捕まえて耳に唇を当てながら小声で囁く。

 

「他の子には内緒ね。」

 

 ムツキがビクビク震え出したのでさっさと離れて素材を切り始める。むずったいと私もそうなる。この感覚が私は嫌いだった。ムツキは顔を赤くして目を細めた。

 

「・・・くっふぅ〜。まぁ?ムツキちゃんを驚かせちゃったんですからぁ?それ位のお願いは聞いてあげますけどもお。」

 

 わかる。だから急に囁くのは辞めましょう。私も驚くのだ。

 

 

 





ちび先生から見た生徒達

・アル
偶に遊ぶ友達。彼女達がゲヘナの河岸でテント生活してる時にご飯を差し入れるくらいには友好的。野生の犬っぽいと思っている。

相棒はペット枠。いけ!ぴかちゅー。

・カヨコ
距離感が良い。ベタベタ触られないのも良い。社交性のない猫っぽいと思っている。先生からの好感度は高め。

・ムツキ
イタズラはあんまりされたく無い。一緒にイタズラするのは良い。ムツキにやられたらイタズラをやり返す位の漢気はある。

・ハルカ
子犬っぽい。弱き者。見捨てたら生きて行けない濡れた犬っぽいと思っている。雑草を食べてる所を見たので、それ以来餌付けしてる。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。