闘携帯獣伝説 サトシ〜何故か憑依していた闇に舞い降りてない天才〜 作:アルピ交通事務局
「ふぅ……ん!」
「うわ!?」
「お、おい、サトシ!?」
ミクリカップ2日目、一次審査を終えて二次審査に至った者達でコンテストバトルをする。
1回戦と2回戦を行い明日に準決勝と決勝戦を行う……が、そこにはハルカの影しかない。ヒカリの影は無い。
ヒカリが居るか居ないかはどうでもいいこと……オレ達と関わり合いが無いのでそこは興味を抱かない。
「おい、なにやってんだよ……」
「人払い」
2日目に突入した。
一次審査を落ちたコーディネーターは去っていくのか、それとも最後までミクリカップを見ていくのかそこはコーディネーターによって異なる。オレ達はハルカとノゾミを応援するのだが……オレ達に奇異の目が向けられている。羨ましいや嫉妬の視線も向けられている。
その原因は言うまでもなく昨日のスイクンだろう。ハッキリとスイクンなんて反則だなんだと言う意見が聞こえないわけじゃねえ……この世界はゲームと違って全員が同じポケモンをゲットする平等な機会は訪れない。不平等だ……平等や平和は求めるもんじゃねえ。
「も、もうちょっとあるだろう」
「クククッ……この程度で引いてるんじゃ意味ねえぜ」
そんな奇異な視線や嫉妬の視線はハッキリと言って鬱陶しい。
文句を言ってくるのならば堂々と倒してやるのだがなんも言ってこない、陰口だけで終わらせようとする。
堂々と言ってこいと思っているがそんな事を出来る度胸は無い……だからオレは軽く殺気を放ち威圧感を与える。
タケシとスズナがオレの殺気に威圧された。いや、威圧されたってよりは驚いている……驚いているが、ビビってはいない。
ホントに突如として放たれた殺気に驚いている……伊達にジムリーダーじゃない、肝は据わっているか。
「お前、そんな事が出来たのか」
「ああ、ちょっと覚えるのに時間がかかったがコイツは色々と便利だ」
軽めの殺気を感じ取ったルカリオ。オレからそういうのはあんまり感じることはないので意外そうにしている。
この殺気を放ち威圧する技術は意外と便利、やる気が無かったり口先だけの奴を跳ね除けたりすることが出来る。
「大丈夫よ、ルカリオ。ただの威嚇だけだから」
「アレが威嚇か……セレナは効かないのか?」
「……え?だって私に対して全くそういうの向いてないわよ?」
ルカリオがオレの殺気にビンビンに反応しているのだがセレナはケロッとしている。
人の意識に対して敏感なところがあるルカリオだから過敏に反応しているのだがセレナは全くと言って効いていない。
そういう殺気を放ってきているが殺気に込められているのはただただ純粋に威圧するだけの力、特定の誰かに意識を向けているわけじゃないのでセレナは全くと言って怖くなかった……この技術を最初に披露した時も同じ反応だったな。
「クククッ……今ので底が見える奴は見えたな」
「そういうのホントによくないと思うぞ」
軽く放った殺気に怯えてビクッとなったコーディネーター達。
真剣勝負の場ではコレぐらいの威圧感は普通に感じ取れる。それに怯えることはなく前に進めなきゃ弱いままだ。
アランがオレの言いたいことは分かるがそのやり方はあまり褒められたものじゃないと言う……アランにも殺気を当てられたが全くと言って通じていない。軽めの殺気とは言えアランには通じてない。アランもアランで修羅場を……作っているな。
「さ、座席を確保する事が出来たし試合を見るか」
今回は観客としているから2人を応援しないといけねえ。
4回行われる試合で今日は2試合、ポケモンリーグと違って明日に動けないレベルの重傷を負うことはないだろう。
コンテストバトルを見るが……心配する要素は何処にもない。昨日の一次審査でハルカがスイクンを出したことで他のコーディネーター達が霞んでしまった。だがそれでも一次審査を勝ち抜いた猛者達だ。
スイクンのインパクトが強すぎて、このコーディネーターはここまで上手いのか……そんな展開が巻き起こるのだがそれでも一際異彩を放っているのはハルカだった。
「ホウエンリーグ準優勝はまぐれでもなんでもない、ハルカ自身の真の実力……それをコンテストにも活かす事が出来ているな」
試合の制限時間は5分間だった。
5分間は短いがそれでもハルカは活躍した。5分という短い時間、相手のポケモンをポケモンバトルで倒さなかった。コンテストバトルで倒す、コンテストゲージを削り切った。コンテストのパフォーマンスもしっかりとしている。だがそれの下にポケモンバトルがしっかりとある。タケシはホウエンリーグ準優勝の実力は本物でありコンテストに応用出来ていると頷く。
「……」
ノゾミも1回戦、2回戦を勝ち抜いた。ハルカも1回戦、2回戦を勝ち抜いた。
ヒカリが居ないからコレは決勝戦はノゾミvsハルカだなと思っているとセレナが浮かない顔をしている。
どうしてそこに自分が立っていないのかという悔しい思いをしているからじゃない、どうしてそこに立とうと思えないのか。
1回戦と2回戦を終えてセミファイナルの対戦カードが発表される。ノゾミとハルカの試合は決勝戦に持ち越している。
「セレナ……ポケモンバトルをしないか?」
「え?」
セミファイナルとファイナルは明日の3日目に待ち構えている。
ノゾミもハルカも持っているポケモンが大きなダメージを負ってしまって翌日に動けないドクターストップはかからなかった。
ただ……このままじゃセレナが息詰まっている。止まっちまってる。生きるって事が出来なくなっている。
オレがなにかを言うのもいいかもしれねえ、でもそれよりもセレナと純粋なポケモンバトルをした方が良い。
「どうしたの急に」
「このまま見ているだけなのも意味が無くてな……普通にポケモンバトルをしたい……嫌か?」
「嫌ってわけじゃないけど……ハルカを応援しておかないと」
「大丈夫よ、明日に出すポケモンは決めてるし今からジタバタしても意味が無い……特別な事をしなくて何時も通りにするから……セレナ」
「なに?」
「今、楽しい?」
「……それは……」
「……セレナ、サトシとバトルをしたらいい。結果も大事だがもっと大事なものが見えるかもしれない」
ハルカに今が楽しいか聞かれればセレナは即答出来なかった。
ホウエン地方で一緒に旅をしていた頃と異なっている。停滞しているなとハルカも感じており、バトルをしたらいいとタケシにも勧められる。
「使用ポケモンは1体のシングルバトルだ……オレはフローゼル、お前で挑む」
「フォウ!」
「フローゼル……………マフォクシー、頼んだわよ!」
「フォオ!」
「『みず』タイプのフローゼル相手にマフォクシーか……油断はしねえ」
そんなこんなでセレナとバトルをすることになった。次のジム戦で出番があるかどうか若干だが怪しいフローゼルを選出する。
『みず』タイプのフローゼルを相手にマフォクシーを出した。サトシくんの様な根性論で行く奴じゃない。セレナは両頬を叩く。
オレがバトルをしたいと申し込んだ。セレナはそれを受けた。このままじゃダメなのはセレナが1番分かっている、だからここでなにかを掴むしかない。
「フローゼル『アクアジェット』だ!」
「マフォクシー『でんげきは』よ!」
フローゼルは『アクアジェット』で突撃する。
マフォクシーは『でんげきは』を放つ、フローゼルは回避しようとするが纏っている水を経由して『でんげきは』の電気が流れる。
マフォクシーの近くにまで近づいて途中で『アクアジェット』を解除してしまう。
「マフォクシー『シャドーボール』よ!」
「フローゼル『アイススピナー』で弾け!」
マフォクシーが『シャドーボール』を撃ってきた。
回避は難しいとその場で『アイススピナー』を使い回転をし『シャドーボール』を弾く。
セレナのマフォクシーはかなりのレベルだからかフローゼルは『シャドーボール』を弾けば『アイススピナー』を止める。『シャドーボール』を弾くのに少しだけダメージを受けており……シャドーボールの追加効果である特防が一段階下がる効果が発揮した。
「それを待っていたわ!マフォクシー『アンコール』よ!」
「……そう来るか……だが、攻撃が出来ねえわけじゃねえ。『アイススピナー』だ!」
「『かえんほうしゃ』よ!」
マフォクシーに『アンコール』を使わせて『アイススピナー』しか使えないようにした。
『アイススピナー』だけでどうにかなるほどセレナのマフォクシーは甘くはない。『アイススピナー』で回転しながら突撃すれば『かえんほうしゃ』に防がれる
「っ」
「元が『みず』タイプだ……『かえんほうしゃ』が直撃してもある程度は軽減し『アイススピナー』の回転で炎を拡散させる事が出来る。お前がするべき手は1つ、『アンコール』からの『おにび』だ。『おにび』を使えばフローゼルの強力なパワーを半減させる事が出来た……勝ちを求めるのは構わねえが、いきなり倒せるほどに甘くはない……『かえんほうしゃ』で勝ちを焦らず『おにび』で一歩ずつ追い込めば倒せる勝ち目はあったぜ」
炎を弾くフローゼルの『アイススピナー』
『かえんほうしゃ』自体は当たっている……だが、『かえんほうしゃ』の追加効果の『やけど』は引き当てていない。
『かえんほうしゃ』が当たっているがフローゼルには大したダメージになっていない。なんだったら『シャドーボール』を当てた方がまだダメージになる。
「『アイススピナー』だ!」
「フロゥ!」
「フォウゥ!?」
フローゼルの『アイススピナー』がマフォクシーの『かえんほうしゃ』を突破した。
『かえんほうしゃ』を突破するのに力を使ったから『アイススピナー』の威力は低い。
マフォクシーは直ぐに起き上がる。まだ戦うという意思が伝わってくる……だが……セレナが戸惑っている。
冷静になることが出来ていない、勝負を焦ってミスった選択をしている。もっとなにかがと考えている……
「セレナ、お前にとっての原点はなんだ?」
「え?」
「お前にとっての始まりはなんだ?消えかけている熱が最初に灯ったのは何時だ?」
迷っているセレナに、自分の原点がなんなのかを聞いてみる。消えかけている熱が最初に灯ったときそれがなんなのか。
「お前はコーディネーターとしてもトレーナーとしても才能はある。お前にとっての強さはなんだ?お前のスタートはなんだ?」
「私にとってのスタート、原点……」
「フローゼル『アイススピナー』」
「マフォクシー『でんげきは』よ!」
セレナ相手に色々と揺さぶってみる。
フローゼルの『アイススピナー』をマフォクシーが『でんげきは』を浴びせることで『アイススピナー』を止める。
「私の強さ……私の強さの原点は……カッコいいサトシに追いつきたかった!!背中じゃなくて隣に立ちたかった!」
自分の強さの原点を振り返る。
セレナの強さの原点は源はオレに追いつきたい、オレの背中を見るんじゃなくてオレの隣に立ちたいという思い。
素直で嬉しい事を言ってくれる……でも、それは儚いもの。何時の間にか変わっていたところがあるのだと気付くが……セレナは原点に戻った。
「……顔つき、一気に変わったわね」
「ポケモンバトルを心の底から楽しむ愛しさ、強さの原点に戻り儚さを思い出す切なさ、己の強さと弱さを知った心強さの3つの内の1つ、強さの原点に戻って儚さを思い出し切なさの輝きを取り戻した……でも、アレでもサトシには届かない」
セレナの雰囲気が一気に変貌した。マフォクシーもそれに呼応するかのように表情が変わる。
スズナが顔つきが変わったことを気付きアランがセレナは自分の強さの原点に戻った事に気付く。そしてそれでもオレに届かないと思っている。
「アレでもサトシに届かないのか?」
「サトシは負けたらそこで終わりの真剣勝負を心の底から楽しんでいる。サトシの強さの源は原点は自分が自分らしく生きるという思い。サトシの強さは勝つにせよ負けるにせよ自分であること。サトシの弱さは勝つにせよ負けるにせよ自分らしくあること……3つの心の強さを持ち合わせている最高品質な状態だ……」
スズナが雰囲気が変わったセレナならばここから試合を巻き返す事が出来ると思ったが、アランはオレには勝てないという。
セレナが強さの原点に戻った。儚さを知ったがオレもとっくの昔に強さの原点に戻っている。オレの弱さは自分らしさを貫いていること、自分らしさを貫くが故に消してしまっている破綻してしまっている部分もある。
「マフォクシー『シャドーボール』に『でんげきは』を纏わせて!」
「っ!」
セレナの雰囲気が変わった。
単調だった攻撃も変わる。遅めの『シャドーボール』を放つ、フローゼルに当たる前に『でんげきは』をぶつけて『でんげきは』を纏わせた。『でんげきは』を纏った『シャドーボール』は加速していきフローゼルに当たる……
「いけるか、フローゼル」
「フロゥ」
「アレをくらってもまだ倒れないなんて……」
「スズナ、サトシは絶対にキッサキジムに挑みに来る……お前が俺と一緒になる前と比べて何段階もパワーアップしている。サトシは『こおり』タイプのポケモンを倒すのに特化したパーティで挑んでくる。フローゼルが相手になることは無い……だけど、フローゼル以上のとんでもないのが相手になる」
「フローゼル『ウェーブタックル』だ!」
フローゼルに『でんげきは』を纏った『シャドーボール』が当たった。
大ダメージだがそれでもフローゼルは立ち上がる。まだまだ勝負出来るぞと燃えている……ただ気力だけでどうにかなるほど甘くはない。勝負をここで決めにいくと『ウェーブタックル』で突撃しマフォクシーを吹き飛ばし……倒れた。
「引き分けか……いや、『ウェーブタックル』をもっと早くに使えばマフォクシーを倒せていた」
「……オレが選んだ事だ。負けようが勝とうがそれは変わらねえ。オレのフローゼルはセレナのマフォクシーと引き分けに終わった」
『ウェーブタックル』を覚えているのならばもっと早くに使えばいいとアランは言うが、『ウェーブタックル』を出し惜しみしたのはオレだ。開幕『アクアジェット』じゃなくて『ウェーブタックル』が出来たのにそれを使わなかった。息詰まっているセレナに原点を思い出させる為の試合をしていたのでそうなった。結果的に引き分けになっちまったが後悔らしい後悔はしていねえ。
「サトシ……ありがとう……」
「お前はただ思い出しただけだ……それで、なにか掴めたのか?」
「……ちょっとね……試してみたいことがあるの……だから今は、シンオウ地方での旅は力を蓄えるのに使いたい」
「そうか……」
セレナは新しい目標を見つけることが出来た。コレで良かったのだと思い3日目、ハルカがミクリカップを見事に優勝した。
アクアリボンを手にし、ミクリにセキエイ高原で行われるポケモンリーグとグランドフェスティバル、両方を楽しみにしていると言われた。
「やったわね、ハルカ!」
「うん!今まででも特に激戦だったけど無事に勝てた……きっとレベルアップに繋がってる……」
ハルカがアクアリボンをゲットして大喜び。沈んでいたセレナも起き上がり心の底から笑みを浮かび上げている。
自分が一歩また一歩とオレに近付いている事を実感する……
「オレはお前等を待つつもりは無い……ただただ突き進むだけだ」
「うん、サトシ、追いつくから絶対に立ち止まらないで……あ、そうだ!」
オレに立ち止まるなと言えばハルカはなにかを閃いた。
なにを閃いたんだと思えばハルカはオレにキスをした。ただのキスじゃなくディープキス……何時の間にこんな技術を会得したんだ。
「プハァッ……やっぱりサトシは最高ね……」
「お前な」
「修羅場だ!修羅場になれぇ!」
とりあえずアランにドロップキックを叩き込んでおいた。
ハルカとセレナは決して喧嘩はしない……特にこういうことにおいては共謀している。修羅場になることは早々に無い。