闘携帯獣伝説 サトシ〜何故か憑依していた闇に舞い降りてない天才〜 作:アルピ交通事務局
レアコイルをジバコイルにし、グレン島に迎える船がある港に向かう。
「……廃村か?」
「ダークシティ……普通の街の筈なんだけど」
寂れているとは言えないが、人っ子一人居ない街に辿り着いた。
セレナが端末でこの街の情報を出してくれるが、極々普通の街だと言うが殺伐とした雰囲気を醸し出している。コレは原作知識を引き出すかと原作知識を引き出しながら町中を歩く…………厄介な事に巻き込まれるのは確定か。
「腹減ったし取りあえず飯でも……」
「ダメよ!外に出ちゃ!」
「ポケモントレーナーが現れたら危険だわ!」
「……トレーナーがなんで危険なの?」
街の子どもと思わしき子供が外に出れば保護者が物凄く慌てながら建物の中に戻す。
トレーナーが危険だと言う言葉がよく分かっていないセレナ。頭に?を浮かべていて警戒心を無くしていたので直ぐにセレナを抱き抱えて飛んでくる石を回避させる。
「サ、サトシ!?」
「随分と手荒い歓迎じゃないか。それがこの街の流儀だって言うなら受けてやるぜ?」
「お前等、ポケモントレーナーだろ!!ポケモントレーナーなんて、ポケモントレーナーなんて!」
石を投げてきた子どもたちを睨めば睨み返す。その目に宿っているのは憎しみや怒りの憎悪、子供が宿していい眼差しじゃない。
ポケモントレーナーであることに憎悪を剥き出しにしていると洋食屋から大人が出てくる。
「お前達、やめないか!!旅の人は関係無いだろう!!」
「あの……なにが……」
「子ども達が申し訳ない。お詫びと言ってはなんですがうちのオムライスを食べていってください」
「ああ、悪いな」
洋食屋の主人がオムライスを勧めてきたのでオムライスを頂く。
オムライスは王道的なケチャップライス、都会指数が高いところの中華料理屋にはカレーとかオムライスが常備されてる。昔、食ったけども普通のイメージしているオムライスとは異なっているが中々に絶品だった。
「子ども達が申し訳ありません……旅の人達に危害が加えるとは」
「なにがあったんですか?」
「その……き、来た!?」
カランコロンと警報音が鳴り響くと店の窓を1つ残して完全に閉じる洋食屋の主人。
これから起きる惨劇を見ていて欲しいのだと1つだけ窓を残しておりオレ達は窓を覗いた。
「ゴローニャ『メガトンパンチ』」
「カイリキー『かえんほうしゃ』」
「パルシェン『つららばり』だ!」
「ポケモンバトル、あ!トレーナーを攻撃してるわ!!」
外で起きているのはKのマークが入ったジャージの男達とYのマークが入ったジャージの男達との喧嘩だった。
最初はセレナはポケモンバトルをしているのだと思ったがルール無用なバトル……いや、バトルと呼ぶことが烏滸がましい事をしている。セレナも最初はバトルをしていると思っていたが途中からトレーナーが殴り合いになったりトレーナーに攻撃したり住居を破壊したり等の行為があるのでコレはもうポケモンバトルでもなんでもないのだと気付く。
「実はこの街にポケモンリーグ公認の公式ジムが建設されると言う話が出まして……ヤスジムのヤスという男とカズジムのカズと言う男たちが主体でどちらが公認のジムに相応しいのかポケモンバトルを」
「あんなのポケモンバトルじゃないわ!」
「クククッ……お前にゃ分かってても、彼奴等には分かってねえみてえだ」
「そんな……」
「もうすぐポケモン監査官がやってくるから何としてでも相手のジムを叩きのめしたいと連日バトル続き、更には自分達がジムリーダーになるからと飲食店でツケで踏み倒そうと」
ジムリーダーはジャンルで言えば地方公務員でそんな権限は何処にもねえよ。
毎日の抗争に店のツケとヤスジム、カズジムの両方にもううんざりなんだと洋食屋の店主は言いたそうにしているが何処に聞き耳が立っているのか分からないので下手な事は言えない。
「ポケモンバトルは喧嘩じゃねえ……そんな初歩的な事を知らねえならポケモン取扱免許を剥奪すればいい。上に通報しねえのか?」
奴等の目的はポケモンリーグ公認の公式ジムになること。
その為には色々とジムリーダー相応しいのか審査を受けなきゃならねえが確実にこの段階で落ちるだろ。
向こう側が暴力に訴えるならこっちは権力っていう理不尽を武器に使う、暴力に対抗して暴力も悪くはねえが同類にはなりたくねえ。
「もしそれがバレたらムラ・ハチブに」
カプ・コケコと同じイントネーションで言うな。どうしたものかとセレナは考えているのだがオレはもうどうするのかを決めている。
ゆっくりと席を立って後ろの席でアイスコーヒーを飲んでいるトレンチコートに帽子にサングラスにマスクという怪しさオンパレードな人に声を掛ける。
「運の要素もあるがルールがあるからこそポケモンバトルと言われている……ルールが無いならただの獣だ。そのルールを教えに来たんだろ?」
「…………」
「オレ達に誤魔化してもいいが、それじゃあ永遠にこの街の人達がポケモントレーナーに対して誤解している……もう既にあんたの中じゃどちらもダメになった腐ったミカンだ。腐ったミカンを増やさない為に行動しなきゃならねえ」
「なんで分かったの?」
「ジョーイさん!?……ポケモン監査官もジョーイさんなの!?」
ツッコミどころはそこか?ポケモン監査官は既にお忍びで監察しているのだとジョーイさんが素顔を晒す。
この人がポケモン監査官なのかと分かれば洋食屋の店主は頭を下げた。
「お願いします、ヤスジムとカズジムの抗争を……もうこれ以上は」
「ええ、分かっているわ……でも、彼等をただ成敗するだけじゃ意味は無いのよ」
「出たよ、お決まり文句」
「……随分な言いぐさね」
「バカは死ななきゃ治らない……死を知ってはじめて自分がバカだと認識出来るんだよ」
自分が表に出れば抗争は直ぐに納まるだろうがそれでは意味が無いのだと綺麗事をほざく。
あの手のタイプは改心するには1回痛い目に遭わなければ意味が無い。そして痛い目に遭わないように安全策を取っている。自分達が優位に事を進める自分達が捕食する側、勝利側の人間だと思い込んでいる。薄っぺらい人間だろう。
「そしてバカを貫ける奴こそ、神域に達する事が出来る……バカと天才は紙一重だ」
ただ見る方向を変えるだけで、天才か愚者か変わる。
「ポケモンバトルに熱中するバトルバカならなにも言わないわ。でも、彼等が目指しているのはジムリーダーなの……」
「人として正しくあれか……その正しいってのはいったいなにを基準に正しいって言うんだ?正しさに馬鹿正直に向き合う、向き合うって事がおかしいんだよ。向きあうってことはその向きに本来は自分は居ない、向いてないってこと……そういう意味合いでならまともって奴に向き合おうとしない
正しさを教えてほしいのならば宗教や道徳に頼ればいいだけだ。
正しいのを歩まなければならないのは一種の脅迫概念、確かに誰もが成功を求める。誰もが失敗を恥じらい嫌う。だが、失敗が無いのを成功したと果たして言えるだろうか?
「まぁ、今回は正しさを教える以前にルールそのものを履き違えてる馬鹿野郎だ。ポケモンバトルはお前の好き勝手にしていい玩具じゃねえ……痛い目に遭わせて欲しいって言うなら動くぞ」
「それじゃあ一緒よ……ポケモンバトルは胸を熱くしてくれるものなの!だから、そのワクワクを思い出させるのよ!!」
「ワクワクを取り戻すか……そいつは1番難しい事だな」
ポケモンバトルの楽しさを、勝つことだけに拘る以外を教えなければならないとジョーイさんは主張するがそいつが1番難しい。
勝つことに拘るのは極々普通な事、勝っても負けても最後は握手で笑って終わりを迎えようはホントに平等を押しつけている不平等だ。
平等なんてものは求めちゃいけないんだ。理に適わない、死への道の中に不平等だから生まれる僅かな隙があるからこそ逆転が出来る。それがあるからポケモンバトルは面白えんだ。
「実はその算段はついているのよ……君、手持ち何体持っているかしら?」
「手元には今6体」
「じゃあ、ちょっと行ってくるわね」
ジョーイさんはそう言うと……ラティアスを出した。
このジョーイさん、ガッチガチのジョーイさんだなと思えば『りゅうせいぐん』を指示して隕石の雨を落として暴動を止める。
ジョーイさん、強すぎないか?
「ポケモン監査官のジョーイよ!!貴方達、ジムリーダーになりたいのならば先ずは強さを示しなさい!明日に代表者を1名決めてポケモンを6体用意してこの場でポケモンバトルよ!」
ジョーイさんはバトルをするのだと言う……此処でもう喧嘩は終わりとは言わない。
ポケモンバトルの楽しさやワクワクを思い出してもらうのだと最後のチャンスを与えてくる……だが、この時点で既にチャンスなんて無いと言っている。あくまでも頭を冷やさせるための措置に過ぎない…………上手いことを言って誤魔化そうとしているな。
「ちょっとミックスフライ弁当10人前はまだなの!」
「あ、あんた達何時になったら金を払ってくれるんだ!?」
「なに、カズジムが公認のジムになれば一括で耳揃えて払うさ」
「そんな事を言ってもう1週間以上も……これ以上は店が潰れるから勘弁してくれ!」
「あら、カズジムを応援してくれない……さてはあんたヤスジムの手先ね!!」
「……随分と痛い三文芝居だな」
「ニャ、お、おミャーは!」
ロケット団の例の3人組が洋食屋の代金をツケるどころか踏み倒そうとしていた。
店主はもう無理だと言いそれを反抗勢力だと認識して踏み倒す、実に痛い三文芝居だ。その事を笑えば睨んでくるのだが直ぐにニャースがオレだと気付いた。
「このジャリボーイ!私達に勝ってるからって生意気よ!いけ、アーボック!」
「シャーボ!!」
「マタドガス、大人の恐ろしさを思い知らせてやれ!」
「マータドガース!!」
「2対1なんて卑怯よ!ウーラオス、お願い!」
「ラァオウ!」
「え、っちょ、なによあのジャリガール。なんかめちゃんこ強そうなポケモン持ってるわよ!?」
「ウーラオス『すいりゅうれんだ』よ!」
「ウラウラウラ!」
マタドガスとアーボック、そしてニャースに『すいりゅうれんだ』を叩き込むウーラオス。
目にも止まらない技でロケット団のポケモンを戦闘不能にしたのでオレはジバコイルをボールから出した。
「『10まんボルト』だ」
「「「ぎゃああああああ!?やな感じぃいいいいい!!でもなんかしっくりと来るかもぉおおおお」」」
『10まんボルト』を浴びせればロケット団は星になった。
ギャグ補正を持っているから死ぬことはないのだと思っていると拍手が送られた。
「お見事です!カズジムの用心棒を蹴散らすだなんてお強い御方!!」
「また随分と……Yって事はヤスジムのジムトレーナーか?」
綺麗な女性が拍手を送ってきた。
明らかに媚びているがこれがいい機会だとヤスジムのトレーナーかと聞けば女性は頷いた。
「はい!貴方達を見込んで頼みがあるのです!」
「クククッ……っ!?」
オレの両手を手にとってあからさまな色仕掛けを仕掛けに来たなと笑っていれば殺気を感じた。
女性の方はなにも感じていない、オレにだけ濃密濃厚な殺気が当てられてるのだと何処から殺気を向けられているのか振り向けばセレナが目玉を見開いてジッと見ていた。ウーラオスは殺気に気付いて怯えている。ジバコイルも怯えている……思えばこういう感じの展開は無かったが、オレなんかにその手の感情を向けるなよ。ちょっと無責任だけども逆にそれがかっこよく見えるおじさん程度の認識で居てくれよ。
「サトシ」
「落ち着け、別になにもねえし……というかその手の感情を向けてることが意外なんだが」
笑顔を向けているが全然笑ってない。この人とはなにもない、なにかがあるわけでもないと言えばハイライト状態の瞳だけは戻る。
気付かない間にとんでもねえ爆弾を抱えていたみてえだが今はそこを気にしている場合じゃないとヤスジムのお姉さんに連れられてヤスジムに向かった。
「リーダー、腕自慢を連れてきました!」
「ほぉ……って、どっちもガキじゃねえか!」
「ガキでも強いやつは強いもんだ……口で説明するよりもコイツで語った方が早いだろう。いけ、ケンタロス」
「ブモォオオオ!!」
「ふん!雑魚だったら覚悟しておけよ!いけ、ストライク!」
「ストライッ!!」
「ケンタロス『のしかかり』だ」
「ブモォオオオ!!」
「ス、ストライ!?」
ケンタロスの『のしかかり』一撃で戦闘不能になったストライク。
この『のしかかり』を受け切るポケモントレーナーのポケモンはそれなりに居る。それなのにこのストライクは一撃で倒れた。
元々街を代表するポケモントレーナーも居なくて腕自慢と言っても井の中の蛙……だが、それが逆によかったのかヤスは笑みを浮かべる。
「勝てる!お前なら、カスジムのカスどもに勝つことが出来るぜ!!」
「気に入ってもらってなによりだ。明日の試合、オレに全部やらせろ……オレを買うってならそれが条件だ」
「ふっ、安すぎるぜ!」
あっさりとヤスジムの用心棒になった……原作通りならば喧嘩両成敗をするだろうが、オレは喧嘩両成敗は嫌いだ。
どっちかが勝ってどっちかが負ける、例え向こう側が白だろうが場合によっては勝つことが出来る。いじめを我慢しろって言うやつはゴミだ。いじめてくるならとことんやり返す。向こう側が悪いことを自覚して泣いたとしても叩きのめす。開戦の狼煙を上げたのは向こう側だ……それが原因で色々とあろうが後悔はしないさ。
「サトシ、このまま行けばヤスジムが勝っちゃうわよ……いいの?」
「随分と嬉しいことを言ってくれるな」
「だって……ホントの事だし、多分カズジムも腕利きのトレーナーを雇うはずよ」
「クククッ……ホントにバカだな、どいつもこいつも」
「え?」
「ジョーイさんはある意味、最後のチャンスを与えた。それにすら気付いていない」
「最後のチャンスって、カズジムとヤスジムの長い抗争を終わらせる為で……」
「確かにそれもある。だがここで出てきてほしいと代表者によるポケモンバトルをすると言っているだけで勝った方が公認のジムになるだなんて一言も言ってない。ジョーイさんに見せなきゃいけねえのは強さじゃねえ、ポケモンバトルに対する誠意だ」
「…………それが無いからこんな事になってるんでしょ……」
「ああ……ここでヤスジムがヤスを、カズジムがカズを出して挑んできたのならばそれでいいが……クククッ……」
どうせだからもう少し場をメチャクチャにしてやろうじゃねえか。
既にジョーイさんは喧嘩両成敗な裁きを与えようとしているがそれじゃあ意味がねえ。死による償いだって世の中にはある……ポケモンバトルはポケモントレーナーは人生を賭けた勝負なんだ。ただの用心棒じゃ生温い。
「サトシじゃねえか……お前もか?」
翌日、街の人達が見守る中でバトルフィールドに向かう。
オレの対戦相手はヤヒコ、この前アムに会ったしこんなところでヤヒコに会う……もとから原作崩壊してるみてえなもんだが、ヤヒコに会ったことで更に崩壊をする。
「クククッ……こんなところで会えるとはな……」
「それではこれよりヤスジムと」
「ちょっと待ってくれ」
「え?」
「この勝負、このままじゃ意味はねえよ……ヤスジムとカズジムがバトルをしろってだけでバトルに負けたらどうなるのかが聞いてない……」
「なに言ってるんだよ!ポケモンバトルに勝てばジムリーダーになれる!」
「お前こそなに言ってるんだ?ポケモンバトルに勝てばそうなるかもしれねえ、だが負ければなにも失わない。そいつは賭けとして成立してねえだろう」
カズジムのジムトレーナーが勝てばジムリーダーになれると言うが負ければなにも失わない。今と同じ状態だ。
勝てば利益を得て負ければ損害を被る、それなのにこの勝負は負けても損害を被る事は無い。勝負として成立してねえ。
「負けた方のジムの人間はポケモン取扱免許の剥奪……それでどうだ?」
「なっ……ぉぃ、違うことするなよ!」
ここで熱いポケモンバトルを繰り広げてワクワクを思い出させようとしている作戦だろうがそれじゃあ面白くねえ。
負けたら終わり、ポケモン取扱免許の剥奪……幸いにもそれが出来るポケモン監査官が目の前に居る。ジョーイさんやヤヒコは予定に無いことをしているオレに驚いている。変な顔をしてどうする?口裏合わせてる不正がバレるのが1番ややこしい。
「いいじゃねえか!コレでカスジムはもう2度と戦えねえ!」
「はん!ヤスジムが歯向かわなくなってせいせいするぜ!」
「クククッ……賭けは成立だな…………」
「こんなところで」
狂気の沙汰ほどバトルは面白い……こういうスリルは最高だ。