闘携帯獣伝説 サトシ〜何故か憑依していた闇に舞い降りてない天才〜 作:アルピ交通事務局
「……………」
「なんだ、ジムバッジを見て……汚れでもついてたか?」
私、セレナ……サトシと一緒に旅をしているサトシの、ガ、ガールフレンド(予定)の筈。
サトシがグレンジムを制覇して7個目のジムバッジを手に入れた。ジムバッジには専用の金属が使われているからそれを磨く用の専用ワックスでサトシがグレンジムを勝った証のクリムゾンバッジを磨いている。
私はそれを思わずジッと見ている。
「いいなぁ……」
私の口からポロッと言葉が溢れた。
それはサトシがクリムゾンバッジを持っているのが羨ましいからじゃなくて、サトシが真剣に熱中する事が出来ていて更には成功しているのが羨ましいから。私はママにポケモンレーサーにされかけてそれが嫌で家を飛び出てなにか自分がしたいことがあるとか見つけられるかもしれないと思ってここまで来たけれど、今のところはなにも見当たらないわ。
「悩んでるのか…………悩めるだけ幸福だぞ。物心付く前に刷り込みで頭の中に埋め込まれてそれがやりたいことじゃないがやらなくちゃいけない事になってるって事もあるんだからよ」
「サトシは悩んだりしないの?」
私から出たいいなの言葉にサトシはクリムゾンバッジが羨ましいんじゃなくて夢中になれる物があるのが羨ましいことに気付く。
悩むことが出来るだけ良いかもしれないって言う考えはわかる。疑問に思ったけどもサトシは悩んだりしないのか聞いてみた。
「…………そういう深い事は考えても無駄、自分には合わねえって避けてるからな……そうだな……ある意味、惰性に生きていると言われればその通りなのかもしれねえ」
「どうして?」
「ポケモンを貰ってポケモントレーナーを目指す……皆がやってることで極々普通の事だ、その事に関して疑問を抱かずにオレは生きている。確かに熱くなるものはあった。だが、まだオレは生きていると言う実感は薄い」
「今見ているのは夢物語とかってこと?」
「お前に出会う少し前まではそう思っていた。だがそういう意味じゃないんだ……オレは何者なのか?コレこそがオレだと言うものを積み上げていない」
「生きがいとか生きている証は積み上げていくものじゃなくて、1つの道になってるじゃない」
サトシがまだサトシらしくなってないと言っているけども、そういうものはゆっくりじっくり時間をかけて積み上げていくものじゃなくて歩いていくもの。色々と道があるように思えても最終的には自分が通っている道はたった1つしかない。
「お前は道と考えるか……確かにそうとも考えられる。だが、人が生きているのでなく生きていたと言う証は積み上げなきゃならねえ……積み上げて積み上げて積み上げて、最後のピースを入れることで終わる……死ぬことで死を知ることで生きていると言える」
「……怖いわね、死ぬって……」
「目を背けてどうする?オレもお前も何時かはくたばっちまう運命にある。お前の言うところの道の終着点は成功でも失敗でもない、死だ。もしこの世に完全なる平等があるならば死というものは誰もが最後に手にする義務があるものだ……その義務だけは放棄出来ねえ」
いきなり死ぬだなんだと物騒な話をするサトシ。
何時かは誰かが最後は自分が死ぬ命がある……私の道の考えもサトシが積み上げる考えも最終的には死で結末を迎える。
「サトシってなんの迷いもなく危ないこととかが出来るのは死ぬことを受け入れてるから……だから一生懸命生きたいのね」
「生きたいんじゃない、死にたいんだ」
「え!?」
「例えばジェットコースターがあるとして、お前はなぜそれに乗る?」
「……スリルがあって面白いから?」
「そう……スリルがあるからだ。オレは本気になってる奴を喰らうのも好きだがスリルがあるから好きなのもある……平穏や平和が1番だなんて考えを持っている人間は多く居る、無駄な喧嘩や争いをしたくないってのは分かる。だが、心の何処かでこんな惰性に生きるんじゃない今までにない非日常を味わいたいスリルを求める助平心がある。お前だってなにかを求めてる心があるから色々と憧れたりするんだろ」
「……そっか……そうよね」
私は心の何処かでスリルを求めている。ただの日常じゃない非日常を欲している。
サトシとの冒険でその欲求が満たされているけど、自分がコレをやりたいって熱くなれるものが見つかってない。後は熱くなれるものを見つけるだけ……でも、サトシを見てると熱くなるってホントに難しいわね。常に本気、命懸けのサトシ……負けた姿は見ないし負けを想像することが出来ない。常になにか対策をしているからとかじゃなくてなんというか常人じゃ底が見えない、無欲に近い領域になってる。
「あ、タマゴが光ってるわ!」
私がスリルを欲していると自覚させられればサトシが管理しているポケモンのタマゴが光った。
もうすぐ生まれる証拠だと喜んでいると手で待ったをかけてくる。
「最初の刷り込みが大事だからセレナは出ないでくれ」
タマゴが孵える前にサトシはタマゴを抱き抱える。
生まれたポケモンは最初に見た人をトレーナーだって思うって本に書いてあるのを見たことがあるわ。
タマゴが孵える瞬間を見ることが出来ないのは残念だけど、これは仕方がない事よね。
「チョゲプリィイイ!!」
「このポケモンはトゲピーか……オーキド博士に報告するか」
タマゴから生まれたポケモンはトゲピーだった。
トゲピーは大きく鳴き声を出しているけどサトシは特に驚かない。まるでタマゴがトゲピーになるって分かっていたみたい。
サトシはポケモン図鑑を取り出してトゲピーを確認するけどサトシのポケモン図鑑はカントー地方のポケモンしか対応してないからトゲピーが出てこない。オーキド博士に報告しようと近くのポケモンセンターに立ち寄りオーキド博士に連絡を取る。
「オーキド博士、タマゴが無事に孵ってトゲピーが生まれました」
『おぉ、ちょうどいいタイミングじゃの!』
「なにがですか?トゲピーは渡せないですよ」
『いやいや、ポケモン図鑑がアップデートしたんじゃよ。パソコンにポケモン図鑑を入れてくれ、アップデートする』
「分かりました」
サトシはポケモン図鑑をパソコンに入れてアップデートをした。
ポケモン図鑑の見た目はなんにも変わってないけれどトゲピーに対応をしているみたいでトゲピーのデータが出てくる
0175 トゲピー♂ はりきりポケモン 『フェアリー』タイプ 特性『てんのめぐみ』
『なきごえ』『てんしのキッス』『あまえる』『ゆびをふる』
「クククッ……当たりだ…………博士、オーガポンに対応してないんですが?」
『いやぁ、オーガポンはの…………』
トゲピーが目当てのポケモンだと分かれば今度はオーガポンが入っているモンスターボールを確認する。
オーガポンのデータはアップデートしたポケモン図鑑に載ってないみたいでその事についてサトシは問い詰めるけどオーキド博士は困った素振りを見せる。
『ベトベトォ!』
『あ、こら、やめんかベトベトン!』
「はぁ……まぁ『ツタこんぼう』を覚えてるからそれでいいか」
サトシがゲットしたベトベトンがオーキド博士にのしかかる。
サトシはこれ以上は話し合いをしても無駄だと分かれば大きくため息を吐いて……クールね!
『このっ!!……オホン。ところでお前さん、グレンジムを制したと前に言っておったの?確かそれでジムバッジは』
「7個目で最後にトキワジムに向かいます……どうしたんですか?」
『いや、実はアムとヤヒコがジムバッジを集め終えてマサラタウンに帰ってきとるんじゃよ』
「……またオレが遅いとか言って責めるんですか?オーキド博士って何時もそうだな、オレをなんだと思っているんだ!?」
『なにを言っとるんじゃお主は……お前さんが最後のバッジと決めとるトキワジムじゃが、アムとヤヒコも挑んでの……負けたんじゃよ』
「負けたんですか……」
『うむ、シゲルの奴がバッジを10個集めた事を教えれば自分達もとバッジ集めに意気込んでおったのだがトキワジムで大敗しての……ポケモンリーグに出場するのに必要なジムバッジの数を満たしておるから絶賛猛特訓中なんじゃよ』
「へぇ………………話はまだあるんですよね?」
『アムとヤヒコは途中までは順調じゃったが最後に出てきたポケモンが異常なまでに強かったと言って』
「そうですか……それは実に楽しみですね」
『では、最後のジムバッジのゲットの報告を待っておるぞ!』
「言うは気楽だな……クククッ……まぁ、期待値は平等か」
最後のバッジは苦戦しそうな感じだけどサトシは笑っている。
「どんなポケモンでどんな負け方をしたとか聞かなくてよかったの?」
「トキワジムの情報は知っているから大凡の見当は着いている……そいつを倒す為の作戦も練っている……ただ今までと比較することが烏滸がましいレベルの相手だ」
「確か、トキワジムはカントーでも上から数えて直ぐのジムなのよね」
マサラタウンを出て一番最初の街のトキワシティのトキワジムにサトシは挑まなかった。
トキワジムはカントーのジムの中でも特に強いから今の自分達じゃ絶対に勝つことが出来ない、だからトキワジムを最後にした。
サトシならきっと勝つことが出来るけどもサトシはゲッコウガが入っているモンスターボールを見つめる。
「ゲコ?」
「すまなかったな…………何度も何度も邪魔をして」
「邪魔って……なにかしたかしら?」
「セレナは何度も見てるだろ。ゲッコウガに起きる不思議な現象を」
「ああ、アレね……アレを邪魔してたってこと?」
「……正確に言えばアレの完成形態になる前にゲッコウガを戻している、セキチクジムの時もグレンジムの時もそうだ。やっと体が暖まってきてボルテージが高まる出したって言うのにオレはお前をボールに戻している。ここぞと言う時に戦っていない……お前はもっともっと強くなれる素質を秘めている。オレはそれを知っているからお前と一緒に高みを目指そうとしている」
だから、悪かったとサトシはゲッコウガに謝る。
ゲッコウガはジッとサトシを見つめたと思えばモンスターボールをサトシの眼の前に転がした。ゲッコウガはサトシの思いを知っている、勝つために色々な事を考えている……あの現象がゲッコウガと1つになっているのならゲッコウガもサトシの思いに気づいているわよね。
「コウガ」
「そうか……じゃあ頼んだぞ」
ゲッコウガは次は任せろと言えばサトシはゲッコウガをボールに戻した。
男の子らしい青春をしている……青春……う〜ん……サトシが青春をしているって言われたらなんだか違う気もするような気がするわね。
「よーっし!サトシの為にお菓子を作らなくっちゃ!」
今の私が出来ることをしましょう!サトシの応援は出来るけどもサトシを支えることは私にしか出来ないことよ!
ポケモンセンターのレンタル厨房を借りてお菓子作りを始める…………今回はチョコバナナマカロン!
「う〜ん……なんでサトシより美味しくないのかしら?」
「フォコ?」
チョコバナナ味のマカロンを作ったんだけど、前にサトシが作ったマカロンの方が美味しかった。
フォッコもマカロンを口にしてくれて美味しいって言ってくれるんだけど、私の舌にはハッキリと分かるわ。私、サトシより料理が上手じゃないのを。
サトシがポケモントレーナーになる為に色々と修行をしていたのは文通でやり取りしていたから知ってるわ。けど、料理の腕も一流だったらサトシの横に並び立つ要素がなんにも無いわ。なんとかして美味しい物を作りたい
「フォッコ!フォーコ!」
「フォッコ……うん!そうよね!料理はやっぱり愛情が大事だよね!」
「フォウ!」
愛情が大事だから愛の結晶を込めないと……フ負ふ歩……アハッ♪
愛情を込めてマカロンを作り上げていきチョコバナナマカロンだけじゃなくてチョコマカロンとバナナマカロンが出来たわ。
「サトシ、マカロンを焼いたの!食べてね!」
「ああ、ありがとう」
「ガオッ!」
出来立てのマカロンをサトシのもとに届ければオーガポンでバトルをしていたサトシは一旦休憩を取る。
ふふふ……えへへ……サトシが私の愛情を受け取ってくれる……………アーッハッハハハ!………ふぅ……。
「ところでオーガポンとゲッコウガだけじゃなくて後1体なにを出すの?」
「リザードン」
「リ、リザードン!?リザードンを出すの!?」
聞いた限りだとトキワジムは『じめん』タイプのエキスパートでオーガポンとゲッコウガの選出は分かるわ。
けど、リザードンは……確かに『ひこう』タイプのポケモンだから『じめん』タイプの技は通じないけどもリザードンはまずいわ。
リザードンになってからサトシの言う事を聞こうとしない。それに対してサトシがなにかを言うのかと思っていたけどもサトシはなにも言おうとしていない。
「まぁ、コレに関しては一か八かの賭けだ……成功すればリザードンはオレの言う事を聞く可能性が出てくる。失敗すればオレはジム戦に負けてしまう…………負ければ今回のセキエイ大会は出ない」
「え!?……ま、まだセキエイ大会まで2ヶ月以上あるわよ!?もし負けたなら他のジムにでも」
「此処でダメなら他を当たるんじゃない。此処でダメなら他でもダメなんだ……何れ戦うであろうアイツを倒す為には越えなきゃならねえ壁なんだ…………こういう時だから燃えるんだ……このジムバッジ7個とトキワジムのグリーンバッジは同等の価値がある……」
失敗すればその時点で終わる。最初から終わるか続くかのどっちかだとサトシは言い切った。
その時に分かる、サトシの瞳に宿っている闘志の真っ直ぐさが。歪に見えてるけど普通に真っ直ぐを貫いている……サトシが他のトレーナーを圧倒することが出来る理由がここにあるのが分かるわ。
やっぱり………サトシは最高ね!