闘携帯獣伝説 サトシ〜何故か憑依していた闇に舞い降りてない天才〜 作:アルピ交通事務局
目を覚ませば知らない天井だった。
「!?」
声にこそ出さないのだがオレは当然驚いた。見知った天井ではない、一体どういう事だと慌てるが変に慌てては意味は無い。どうなっているのか1つずつ状況の確認を行おうと先ずは体を起こし、周りを見回す。ベッドの上だ……ベッドの上だがコレは……
「っ!?」
何処から事を片付けようと考えていると頭痛に襲われる。
なんだと思えば記憶の様なものが流れてくる……そう、コレはマサラタウンのサトシの記憶だ。アニメのポケットモンスターの世界、オレはマサラタウンのサトシになっている……憑依したのが正しいのか?
「随分とご丁寧な事だな」
マサラタウンのサトシの記憶と同時に曖昧な記憶がハッキリと流れ込んでくる。
コレはアニメのポケットモンスターで巻き起こる出来事での記憶だ、マサラタウンのサトシが経験する予定の出来事が記憶として流れ込んでくる。アニメのポケットモンスターは見た記憶がある。ポケモンショック云々も記憶してある。だが、1から10まで全てを覚えているわけじゃない。その筈なのに1から10まで全てを記憶している。
「状況を整理しよう……オレは杉浦開智、奨学金借りて調理師専門学校に通って卒業しホテルに就職した……明日は休みだからと酒を飲んで眠った……明晰夢ってやつじゃないな」
先ずは自分の名前を確認し、プロフィールも呟く。
酒を飲んだが酒に飲まれた覚えはない。コレは夢か夢じゃないかの認識が分からない明晰夢と呼ばれるものでもない。
人間の記憶は穴の空いたバケツだ。ある一定量を越えれば水が漏れるように記憶も忘れてしまう。それなのにハッキリどころか覚えてないことまで覚えている。神様的な存在がオレをマサラタウンのサトシにしてアニメのポケットモンスターの原作知識を送り込んできた。
「オレにどうしろ……いや、違うな」
なにか理由があってマサラタウンのサトシになったのだと考えるが直ぐに否定をする。
「チャンスが巡ってきた…………上に這い上がるチャンスが…………」
近年、親ガチャだ子ガチャだチー牛だなんだと言われている。それに関して答えはなんとも言えない。
例えば沖縄で生まれてプロのウィンタースポーツの選手になったという話をオレは聞いたことがない。単純にオレが聞いたことがないだけかもしれない。だが、沖縄という場所は暑い地域の代表格でウィンタースポーツ出来る場所じゃない。1つしかスキー場がないと聞いている。
沖縄出身のプロのスポーツ選手は探せばかなりいるだろう。だが、それでもウィンタースポーツに関係するスポーツ選手を見た覚えはない。世の中にはある程度は努力や国の支援でどうにかこうにか出来る場面もあるが、何処かの段階で親という環境に恵まれてないと子供はなにも出来ない。オレが小学生の頃は中学受験を前提にした学習塾は少なかったしタブレット端末を用いた授業は無いが今ではそれらが当たり前になっていて……普通の中学に通い普通の高校に通い、いざ現実を目の前にして衣食住ならば職に困ることは無いのだと調理師専門学校に入学しなんとかホテルの厨房に就職出来た……だが、こんなご時世で日本は年功序列の給料制度、料理の大会で優勝する事が出来たとかそういうのはないから先ずは下働き。奨学金を借りて約250万円の借金を背負ってからの社会人、給料の一部は奨学金の返済に当てなくちゃいけないそれに加えて税金だのなんだの色々とややこしい事が存在していて貯金が難しい……政令指定都市の様な大きな街ならばまだしも、それ何処の県の何処の町?と言われるようなところ出身、言えばクソ野郎と言われるだろうが親ガチャにはやや失敗だろう。進研ゼミですら金の無駄とハッキリと言い切るくせに煙草を止められない、煙草さえ止めれば習い事の1つぐらいはさせることが出来るのに煙草を吸い続ける。ワンコインで煙草が買えなくなっても吸い続けるヤニ中だ。
完全な毒親とは言えないが、最高の親とも言い難い。大人になって分かった事は若い内に贅沢を学ばないといけない。贅沢とは浪費でなく、経験を買うということ。蕎麦打ち体験やジェットスキーでもなんでもいい、普通の非日常を味わう事で人生を豊かにさせる。
「あのままじゃただ惰性に生きていただけだ、酒は嗜む程度でギャンブルも煙草も手を出していない。趣味と言えば漫画飯再現ぐらい……」
無かったんだ、一発逆転のチャンスが。
YouTuber等の動画配信者は無理だ、アレはもう既にYouTuberとして成功している人達やそこそこのお笑い芸人の独占市場になっている。
RTAが出来るほどにゲーム上手でもないのでゲームの配信者は不可能だ。ゲームの配信はゲームの上手さか口の上手さかのどっちかだ。投資家になったとしても円安だ円高で日本企業に金を注ぎ込むよりも実力成果主義の外資系の方がいいのが現実だ。
幼い頃からスポーツ漬けじゃないからプロのスポーツ選手にはなれない。かと言って電子工学を1から学ぶには電子専門学校辺りに通わなければならない。ただでさえ奨学金の借金があるのに更にそこで金を借りるなんてバカがするだけの事だ。
「なにを思っているかは知らないが感謝するぜ、神様……こんな面白くて嬉しい事をしてくれたんだからな」
ただ単純に惰性に流されて生きていく、地道にコツコツ頑張っても報われなくなっているのが今の社会だ。
だから地道にコツコツ以外の一発逆転の大博打に出る。その大博打で勝った者の恩恵を受ける者もいる。動画投稿者の動画にテロップを入れて編集したりする人達がある意味成功者のおこぼれを貰っている存在だ……副業禁止だから出来ないしそもそもでパソコン、と言うよりはエクセルとかワードとかパワポとか出来ない。ネットサーフィンやオンラインゲームは出来るが、今は本格的なFPSとかじゃない限りはスマホで大体はどうにか出来る。本格的なFPSしようにもパソコンからリモコンやインカム揃えれば10万以上するから簡単に手を出せない。
小学生でもちゃんとした携帯でなくスマホを持つのが当たり前になる少し前の絶妙なまでの中間の世代……ギリゆとりか脱ゆとりのどっちかだろう。
「……今日はポケモンサマーキャンプの日だが、ママさんが用事で出掛けていて起こしてくれない……行くか」
服を着替えて自分の部屋を出た後にキッチンに向かう。
ママさんがレンチンして食べておいてねと作り置きを用意している……6歳の子供に味噌汁を温めるだけとは言え火を扱わせていいものか。
「美味いな……」
モグモグと塩鮭と卵焼きとほうれん草のお浸しを食べる。
自分で作るよりも美味いと感じるのは流石はサトシのママさんである事だけはある。ご飯を食べ終えて食器を洗えば、リュックを背負ってマサラタウンのバス停に向かう。バス停前には子供たちとその保護者が沢山居る……こういう感じの場面で保護者が居ないのは辛いな。でもまぁ、こういうところで繰り広げる井戸端会議は基本的には家族や他人の悪口だろう。うちの親もゴミ捨ての自治会はともかくPTAなんかには絶対に参加したくないと言ってて役員に強制的に任命されてもただの1度も会議にも活動にも出た事が無かったからな。
「良い子のみんな、はじめまして。ワシはオーキド博士、ポケモン研究家じゃ!今日はこのサマーキャンプに参加をしてくれてありがとう!皆は将来ポケモン研究家達からポケモンをもらい旅立つ。今日は是非ともそれを学びポケモンと触れ合って欲しい」
バスに揺れられてやってきたのはほのぼのとしたキャンプ場だった。
最初の方のオーキド博士の声でこの声が再び聞くことが出来るのかと若干だが感動しつつ、オーキド博士の説明を受ける。
オーキド博士の説明はザックリと言えばオーキド博士がポケモンを解説して人懐っこいポケモンに対して実際に触れ合ってみよう的な感じでありくれぐれも勝手な行動はするなと釘が刺される。
「クククッ……悪かねえな……」
ただただ惰性に生きていくよりもこういう非日常が楽しい、面白いのだと感じる。
まだポケモンに触れ合ってすらいないのに楽しいのだと感じ取れる。
「では、ワシの後ろについてきなさい……先ずはあのポケモン」
「ポッポ!」
「そう、ポッポじゃ。カントーのそこかしこで見かけるポケモンでカントーではメジャーな鳥ポケモンじゃ」
オーキド博士に連れられてポケモン見学ツアーが開始する。
先ずは羽ばたいているポッポについて説明を入れようとするのだがそれよりも前に1人の男の子がポッポだという。
オーキド博士はよく勉強しているなと感心するが、直ぐにそれが迷惑行為になるのだと気付く。
「アレは」
「ニドラン♂とニドラン♀!ポケモンの名前の中でオス・メスが唯一付いているポケモン」
「あっちは」
「オニスズメ、ポッポのライバルだ!」
「く、詳しいのぅ」
オーキド博士がポケモンについて説明をしようとする前に男の子が答えてしまう。
オーキド博士がポケモンに関するあれやこれやをレクチャーする場面で知識を広げてドヤるのはやめといた方がいい。オーキド博士レベルに詳しいわけでもなければ本で見た程度の知識だ……ポケモン廃人レベルの知識……流石に1から10までポケモンの種族値とか覚えてねえからな。洒落にならんガチ勢でもRTAでもないネットで出てるパーティのポケモンコピーしてる勢、韓国にいる例のリアルポケモンマスターとは違うんだ。
「それでは実際にポケモンと触れ合ってみよう。ここにポケモンフーズがあるから、それを食べさせてみるんじゃ」
「「「『はーい!』」」」
自由時間になった。オーキド博士がポケモンフーズが入った袋を俺達サマーキャンプの子供に渡してくる。
ポケモンにご飯を与えて実際に触れ合う、よくある動物園の動物に餌やりするのと同じ理論だろう。
「…………不味いな」
ポケモンフーズは人差し指の第一関節みたいな形をしている。
ポケモンにとって最適な栄養素があるご飯であって美味い物では無い。食べてみるのだがハッキリと不味い……こんな物をポケモンが好んで食べるのかと思ったがオーキド博士は追加できのみの粉を渡してくる。
「それはポケモンに必要な栄養素のみが詰まっておって味は追求しとらん、このきのみの粉をかけることでポケモンがバクバクと食べてくれるんじゃ」
「そうですか……」
意外と奥が深いんだな。調理師専門学校で人間の料理は学んだが、動物用の料理は学んでないからな。
オーキド博士からきのみの粉を受け取ったので袋に入れてシャカシャカとポケモンフーズを振った。完全にシャカシャカポテトの絵面だ。
「……コミュニケーションを取れと言うがコレは無茶だぜ」
ポケモン取り扱い免許を持っていないに加えてここはマサラタウンの外でバスで1時間以上はかかる。
仮にポケモンと仲良くなったと言ったとしても美味い餌を与えただけに過ぎない……いや、だからこそだろうな。この近隣のポケモン達は安全だとオーキド博士は言っていた。それは美味い飯にありつけるから。行儀良くしていたら栄養価の高い美味い飯にありつける。言語は喋れないが人間レベルの知性を持ち合わせている……躍らされているのはオレ達か、それともポケモン達か。気付かなければ互いにWin−Winな関係性だがどうもオレは捻くれてるから変な風に考えちまう。
鯉の餌やりのように適当にポケモンフーズを池に投げればポケモン達は寄ってくる。我こそはとポケモンフーズを喰らいに来る。
「……さっきの奴は……少し見ていくか」
オーキド博士がポケモンに関して説明をしようとした際に先にポケモンの名前を言っていた男の子、アレはポケットモンスターの最終章に出てくるメインキャラクターのゴウ。オレのこの原作知識に間違いが無いのであればゴウが現れるサマーキャンプにサトシは参加出来ない。シンプルに寝坊して遅刻するという事をやらかす。
「…………これ以上はまずいな」
ゴウをコッソリと追いかけてみるのだが、これ以上は危険なギリギリのラインに来ている。
ここから先は縄張り争い等の生存競争をしている人間に慣れていない野生のポケモンが生息している。これ以上はまずい、だがここから先に足を踏み入れている。ゴウはワクワクをコハルはドキドキしている。
1人の大人として止めるべきかと思ったが、コレを逃せばここで見たかったものが見れない。2人は野生のニドキングに遭遇した。野生のニドキングを見てさっきとは格別のポケモンだと興奮をするゴウだが直ぐに様子がおかしい事に気付く。
ニドキングは戦っている……幻のポケモン、ミュウと。幻のポケモンであるミュウをはじめて見る……まぁ、あえてツッコミはしないが幻とか伝説とか言われているポケモンにハッキリと写真が残っている。アルセウスみたいに世界に1匹しか存在しない系はマジでなんで写真が存在しているんだ。ポケモン図鑑開いたら出てくる画像の出所が気になるな。
「ミュウは見れた……帰るか」
ミュウはおそらくだが『サイコキネシス』でニドキングを倒した。その後に『へんしん』を使いケンタロスに変身して走り去った。
はじめて見る見たことがないポケモンだと興奮して追いかけるゴウを追いかけるコハル、どうせ放置していてもなんも変わらないだろう。別にオレは原作よりもいいハッピーエンドを目指さなきゃいけない使命があるわけじゃない、オレはオレを謳歌するだけだ。
「ん?」
オーキド博士のもとに帰ろうとすればポケモンフーズが落ちていた。
袋ごとでなく粒が落ちていたのだが例えるならば足跡を残すかの様にポケモンフーズが落ちていた。この辺は既に危ない野生のポケモン達が居る区域、なんでここにこんな物があるのか気になったのでポケモンフーズを頼りに歩いていく。
「ママァ……」
「……?」
泣いている女の子がキョロキョロしていた。その女の子を見てオレの中に電流が走る。一目惚れとかそういうのじゃない。
何故ここに居るという疑問を抱いている。あの女の子はセレナ、アニメのポケットモンスターの真のヒロインとも言われているのだが、だからこそ分からない。本来であればこのサマーキャンプにサトシは参加していない。別のサマーキャンプの時にサトシと遭遇する。オレの原作知識が正しければその通りだ……アニポケは初期の頃は色々とややこしい設定だった。3年ぐらいでアニメを終わらせる予定だったが予想以上にヒットした。初期設定だプロットだなんだと練っていて原作が本当の意味での最終回を迎えてから細かな設定が書かれている小説版のアニメのポケットモンスターを出す予定だったが構成作家か作者が死んだとかで結局出すことが出来なかった。
要するにここはアニメのポケットモンスターに似ているが何処か異なる世界、裏設定もあるにはあるが表の設定を最新版に設定してる、そんなところだろう。
「おい、大丈夫か?」
「え、あ!」
「大丈夫みたいだな」
「あなたは?」
「オレはサトシ、マサラタウンのサトシだ……ポケモンフーズが落ちてたから来てみればなにやってんだよ」
「あたし、サマーキャンプに来たいって言ってない!ママが無理矢理参加させて……迷子になるし来たくなかった」
セレナはここにいることが不本意だという。ものは考えよう、どうやって楽しむかなんて偉そうな事は言えない。
原作知識が確かならばセレナは飽き性で色々な事に手を出すが全て所謂ガチ勢みたいな事はしない。まだ小学生になるかならないかぐらいの子供に真剣に物事に取り込んで欲しいという親の気持ちは分からなくもない。
オレだってガキの頃は相撲はデブが裸で抱き合っていると笑っていたが大人になれば物凄く大変な競技でその反面、成功すれば凄まじい世界だと認識を変えている。
「帰りたいって言っても明日になるまでは帰れはしない……考え方を変えておけよ」
「だって、楽しくないもん!自分が楽しくないのに気持ち良くない事をしているのっておかしいよ!」
「……まぁ、そうだな」
「え?」
「なんだ、お前の言ってる事は間違いじゃないぞ。自分が楽しくないのに頑張るのはおかしい事と考えられる」
生きてく上で大事な事は衣食住の3つだ。
約束のネバーランドみたいなディストピアに近い世界ならばまだしも普通の世界じゃ衣食住の3つは人類の文明が滅びない限りは問題無い。野球選手やお笑い芸人、歌手は娯楽という概念を無視すれば無駄で無意味で無価値な職業だ。だが、熱中する事が出来ているからそれで飯を食う事に成功している。
「お前が今、楽しいって思えることはなんだ?」
「えっと……………えっと…………」
「ゆっくりでいい、考えてみろ」
「……………なんにも無い……………色々とやったけど、楽しいとか時間を忘れてママに怒られるとか無かった」
「そうか……やってみたい事は?」
「……分からないよ……サトシには?」
「この身になった以上は最強を目指す…………今からでも笑みが止まらないな」
「全然笑ってないよ?」
「心の中で笑みを浮かびあげてるんだよ」
顔に出せばなにを言われるか分からない。色々な事を妄想したりすることが多いからな。
オレの目標は一応は世界最強のトレーナー、ポケモントレーナーになって最強を目指す……いや、最強を目指すよりも最高を目指す方が面白いか。
「私は……………無いな…………羨ましいな……」
「世界はオレ達の思っている以上に広いし不思議な事が多い、やりたいことが無いんじゃない。見つけてないだけなんだ」
少なくとも今はまだ夢を探す時間がある。
大人になれば夢を持つなんて事は出来ない、出来るのは現実という理不尽を如何にして上手く使うか考えることだけだ。
理不尽は正すものじゃない、それをどうやって利用する側の人間に回るかを考えるんだ。平等なんて求めても必ず特例が生まれる。1人の特例を認めるが他は認めない。腐ったミカンに連鎖して他のミカンを腐敗させないようにするのが学校側の意図だったのをハッキリと覚えている。
「見つける、か……………サトシはもう見つけてるんだ」
「ああ、ポケモン取扱免許を貰えば旅立つ……一緒に来るか?」
「いいの?」
「オレはジム巡りのポケモントレーナーの旅に出る、お前は時間を忘れて夢中になれる事を探せばいい……1人が不安で怖いのはお互い様だ……だが、その恐怖のアクセルを振り切れば面白いものが見えてくる」
怖いって思いは誰もがある。オレにだってある……もしかしたら杉浦という人間は死んでいるかもしれないなんてネガティブな考えだってしていないわけじゃない。だがそれを振り切ることで今を楽しめる。自分という人間を嘘偽りなく貫くことが出来るのは実に楽しい。
「不合理や不条理にチップインは面白いんだ……人間の本質が出てくるからな」
地道にコツコツなんてやったとしても最初から大きい存在には一生勝てない。
だからこそ命をチップインする。命の代わりになるものがあるとするならばプライドだろう。それをチップインした大博打、命と同等の誇りを賭けて戦うポケモントレーナーは面白そうだ。
「あたし、セレナ……アサメタウンのセレナ」
「マサラタウンのサトシだ……ところで足は大丈夫なのか?」
「え、なんで」
「片側だけ裸足ならなんとなくで分かる」
セレナは左足には靴があるが右足には靴どころか靴下が無い。
赤く腫れてたりしないから大きな怪我ではない、湿布を貼って1日2日放置すれば治るレベルの怪我だろう。
「ほら……乗れよ」
「うん……サトシ」
「なんだ?」
「カッコいいね」
「そうか」
ただ単に惰性に生きていて、偶然にもチャンスが回ってきた。
オレはチャンスが来たのだと命をチップインしている。なにせこれから先、マサラタウンのサトシは世界を破壊する悪の組織と戦い続けるのだから。セレナを背負って来た道を戻ると冷や汗をかいているオーキド博士が居た。
「こら、サトシ!お前さん、行ってはならんと言った区域にまで行ったじゃろう」
「すみません、オーキド博士。メタモン以外に『へんしん』を使うポケモンが居て追い掛けてたら……ああ、この子、オレを止めようとして追い掛けて足を挫いたんです」
「なに!?」
「腫れてたりしないですし、取りあえずは安静にしておいた方がいいですよ」
「むっ、むぅ……分かった。サトシ、勝手に出ていった罰としてテントを組み立てるんじゃ。君はそこで休んでおきなさい」
「は、はい…………サトシ、よかったの?」
「なぁに、怒られて長い説教をくらわない。それもお互い様にな」
オレが怒られたのだと心配してくれるセレナだが、オレからすればこれでいいんだ。
オーキド博士が怒って説教してくるよりもこういうなにかしらの罰1つで事が片付く。テントを組み立てるだけでそれがチャラになる……知ってるぞ、この世界は10歳でポケモンを貰って旅立つのが当たり前だからテントが物凄く組み立てやすいのを。
オーキド博士がテントを組み立てろと言うので早速組み立てるのだがもう既に組み立てが終わってて後は地面に突き刺したりするだけの至ってシンプルなテントだった。この世界はオレが杉浦だった世界と比較してキャンプ用品の文明が大きく進歩してるな。