闘携帯獣伝説 サトシ〜何故か憑依していた闇に舞い降りてない天才〜 作:アルピ交通事務局
「サトシ……おめでとう」
決勝戦が無事に終わった……オレはギリギリのところでジョーイさんに勝つことが出来た。
控室に戻ればシゲルがオレにおめでとうの言葉を送ってくる。
「…………そいつは本心じゃねえだろう?」
「いくら僕でも君の優勝を喜ばないほど嫌味じゃない……君が優勝したのは1人の人として嬉しいよ」
「クククッ、認めたな……1人の人としてオレの優勝は嬉しいこと、喜ばしいこと……だが、1人のトレーナーとしては悔しいんだろ?」
「……………君には見透かされてばかりだよ」
1人の人としてオレの勝利をシゲルは喜んでくれている。だが、1人のトレーナーとしては喜べなかった。
どうして自分が決勝戦の舞台に立っていないのか?どうしてサトシと1、2フィニッシュを決められなかったのか?どうしてそこに自分が居ないのか?本当ならトレーナーとして決勝戦に挑みたかったがその高みにまでシゲルは至れなかった。
「で……どうするんだ?……まさかこのままトレーナーを引退してポケモン研究家の道に進むだなんて逃げの道を選ぶんじゃないだろうな?」
「ポケモン研究家か……確かにそれも面白そうだ……でも、君と戦うことすら出来ないままポケモン研究家にならない!仮にポケモン研究家になったとしてもアローラのククイ博士の様にポケモンバトルも出来るポケモン博士を目指すさ!」
シゲルはポケモン研究家になるのかと思ったがまだならないと宣言する。
ポケモンバトルも出来るポケモン研究家……それはアランのことじゃねえのか?
「サトシ!」
「……勝てたぞ」
「うん!勝ったわ!サトシは約束通り、決勝戦で勝ったわ」
シゲルが控室を出ていくのと同時にセレナがやって来た。
さっきの試合を観ていたセレナは感動的な試合だったとオレに抱き着いてくるので頭を撫でる。
「……第一世代最強格のポケモン相手によくやったな」
「……正直な話、危なかったな」
セレナを堪能し終えるとアランが現れる。
今回出てきた相手は第一世代の中でも特に強いポケモン達であり技構成も中々のものだった。正直な話、勝てたからよかったものの負ける可能性は充分にあった。
「フーディンをジバコイルで倒したのが大きかったな……そこがターニングポイントだ」
「そこなのか?」
「ああ、そこだ……あのままラプラスを倒せてジバコイルが相討ちになってたとしたらフーディンが待ち構えていた……フーディンは厳しい」
決勝戦で1番の良かったところはフーディンをジバコイルで相討ちに引きずり込んだことだ。
勿論、ジバコイルを戻すという手は普通にあった……だが、そうなるとラプラスも戻り他のポケモンでフーディンを倒さないといけなかった。オーガポン、ゲンガー、リザードン、ゲッコウガのどれかで倒さなければならない。オレはゲッコウガで挑んだだろう。
ゲッコウガで倒してエレキブルが出てきたのならばオーガポンに交代し、試合運びを同じようにするがそうなると最後の戦いでゲッコウガの体力が足らずに敗北してしまった。
「クククッ……死ぬのを恐れてチキってしまったのが運の尽きだな。『ほろびのうた』は強力な技だ。だがポケモンをボールに戻すという選択が出来る以上は最後の最後でボールに戻しちまう……………余計な事を考えずに最後まで振り切る。安牌を狙ったのかどうかは知らねえがジョーイさんは死線を踏み込むことが出来なかった。コイツさえ倒せれば負けてもいいという覚悟が無かった」
「ゲンガーを前にした際に『ほろびのうた』じゃなくて『あまごい』を使った……後に繋げる戦法は悪くはなかった……お前、出さなかっただけでやろうと思えばリザードンやゲッコウガで挑んでただろ?」
「『あめ』状態だからサトシゲッコウガになって即座に決める……そうなるとゲンガーにはエレキブルを『みちづれ』で落として、リザードンとサトシゲッコウガの2体で挑んでサトシゲッコウガの体力が足りなくて詰んじまう」
だからジョーイさんがあの時に引いたのとフーディンが出てきたのは幸運だった。
今のオレの手持ちで伝説のポケモンを倒せる実力を持っているのはリザードンとゲッコウガだけだ。今回のジョーイさんのフリーザーはただのフリーザーじゃなくてよく鍛えられているフリーザーでリザードンで倒しきれなかった。純粋にリザードンのレベルが足りないだけなのとこの世界の一部の伝説は無駄に強い。至近距離からの『ブラストバーン』を耐えて威力が低い『バブルこうせん』2回でリザードンを倒した。仮にゲームだったら『ブラストバーン』の時点でリザードンはフリーザーを倒すことが出来てんだ。
「サトシ、やったわね!」
「セキエイ大会であのサトシが優勝するとは……しかしあのゲッコウガはなんなんじゃ?はじめて見たぞ」
「オレのとっておきですよ……ここはオレにとっての通過点に過ぎません」
ママさんとオーキド博士も選手控室に入ってきた。
優勝したことを喜び涙をハンカチで拭うママさんとあのサトシが優勝したとはと感慨深いオーキド博士。
優勝したことを喜びたいんだが……ここはオレにとっての通過点に過ぎない。アニポケでポケモンワールドチャンピオンシップスとか言うのが出てしまったから死に設定に近いが、サトシが毎回出ているポケモンリーグは地方予選でそこを勝ち進んで地方予選優勝者同士が戦うチャンピオンリーグへの切符が開かれる。
「じゃが、少しぐらいは勝利の余韻に浸りなさい……」
「いけ、フーディン」
「ディン!」
「ん?」
「フーディン、俺達を『テレポート』でセントラルのポケモンセンターに」
「ディン!」
少しぐらいは勝利の味を噛み締めたらいいのだと言うが、ここは通過点で浮かれるわけにはいかない。
ここからどうするべきかと考えているとアランがフーディンを出して『テレポート』でオレ達をセントラルのポケモンセンターに連れて行く。
『さぁ、優勝したサトシ選手に突撃インタビュー……あ、あれ?サトシ選手がいません!?ちょっと、何処に行ったの!?』
「一応は気を回してやったぞ」
「ああ、すまねえ…………まだ勝利の実感が薄いしなんとも言えねえ状態だからよ。インタビューが来てもなにも答えられない」
フーディンで『テレポート』した理由がわからないと思っていたがその理由が直ぐに分かった。
優勝したオレにテレビ局が突撃インタビューをしてくるのだとアランは察してくれていたみたいで『テレポート』で逃がしてくれた。
今のオレは勝利の味に浸ろうとしている…………相手は本気でオレを潰しに来てそれをオレは倒した。1手1手真剣に考えて行動をする。そしてオレもそれに合わせて動き……相手の本気を喰った。
「真剣勝負……悪くはねえな」
一度でも負ければその時点で敗北の真剣勝負、今までそんなもんをしてこなかった。
ただただ惰性に生きているだけの日常が変わった。なんの目標も立てずに生きていたが……今の気分は最高だ。
「ジョーイさん、お願いしますね」
「ええ……と言っても1日は掛かるから覚悟しておいてね」
セントラルのポケモンセンターなのでフェンネル谷のジョーイさんが居た。
ジョーイさんにポケモンが入っているモンスターボールを預けたが予想通りかドクターストップが掛かるレベルのダメージを負っている。ジョーイさんは1日は休ませなきゃ絶対に治らない……コレが決勝戦でホントによかったと思う。準決勝とかだったら明日に試合が控えている云々で……ケンタロス、ベトベトン、トゲキッス、コノヨザル……他2体で挑まなきゃならねえんだ。それはバランスが悪い。確実に負けていただろう。
「……………動くな…………」
サトシゲッコウガはオレとシンクロしている。
だからサトシゲッコウガが疲れればオレも疲れる。サトシゲッコウガはフルパワーで『ねっとう』で出来た『みずしゅりけん』をぶつけることでフリーザーを倒せたがその時に凄まじい程に体力が減った。疲労感に襲われた。キズナ変化でのサトシゲッコウガは諸刃の剣、本来ならば精神的に疲れるだけのトレーナーが肉体的に疲れてしまう。これがあるからゲッコウガを極力サトシゲッコウガにしない。
「ただいまよりポケモンリーグ・セキエイ大会の入賞式を行う!」
一休みをし、体が動けるようになった頃には日も暮れてポケモンリーグ・セキエイ大会の入賞式が行われる。
本戦トーナメントに勝ち残ったベスト16から表彰状が授与されていく。受け取ったトレーナー達は嬉しそうにし、表彰状を渡し終えれば3つのトロフィーが出てくる。金、銀、銅のトロフィー。
「先ずは3位入賞、マサラタウンのシゲル選手」
「はい!」
「君の今後に期待しておるぞ」
「ええ……今回は届きませんでしたが次こそ絶対に……」
「続いて準優勝!フェンネル谷のジョーイ選手!」
「はい!」
「見事な試合じゃったの……堪らんかったわ」
「ありがとうございます!」
シゲルに銅のトロフィーを、フェンネル谷のジョーイさんには銀のトロフィーが授与される。
ポケモンリーグ会長のタマランゼ会長がいい試合だったと褒めてくれる。いい試合だったと今でも熱が冷めていない。
「最後に優勝!マサラタウンのサトシ選手!」
「はい……」
「他を寄せ付けぬ圧倒的な強さ……ここ数年でずば抜けている実力を持ったトレーナーじゃ……チャンピオンリーグでも期待しておるぞ」
「ええ……頑張ります」
金のトロフィーを受け取る。そのトロフィーは……重さを感じなかった。
物理的に軽いとか重いとかじゃなくて純粋に心の重さを感じなかった。マサラタウンのサトシにとっての激戦区であるポケモンリーグもオレにとっては通過点に過ぎない。チャンピオンリーグに出て優勝して四天王への挑戦権を手に入れるしかない。
「それでは1枚、笑顔でお願いしますね!」
「コウガ!」
「サァン!」
「グォオオ!」
「ゲンガ!」
「ジバ!」
「ガォッ!!」
優勝した記念だと決勝戦で戦ったポケモン達と一緒に1枚の写真を撮る。
これもまた1つの思い出だなと喜びながら撮影をし……ポケモンリーグ・セキエイ大会に優勝した者として殿堂入りを果たした。
「長い戦いだったわね……コレでサトシも一流トレーナーの仲間入りね!」
「クククッ……まだオレには称号も異名がねえから喜べねえよ」
「ほぉ、どういう異名が欲しいんだ?」
「そりゃあ……………なんだろう………」
「マサラの蒼き稲妻とか?」
「絶対に嫌だ」
ママさんとオーキド博士は先にマサラタウンに帰った。シゲルも帰った。
オレ達も帰る予定なのだがゆっくりと徒歩で帰っている。数日すれば帰る事が出来るルートでアランも一緒に帰っている。
セレナがオレの異名を考えてくれるが蒼き稲妻ってなんだ。『でんき』タイプはジバコイルしか持ってねえから似合わねえにも程がある。
「HEY!ユーがポケモンリーグ・セキエイ大会を優勝したマサラタウンのサトシだね!ミーとポケモンバトルだ!」
「……………嫌だね」
「ワッツ!?ポケモントレーナーならバトルに挑まれたら答えるのが流儀でしょう!」
「んなの知るかよ。オレはマサラタウンに帰ってゆっくりとしてえんだ」
マサラタウンの帰路についているとポケモンバトルを挑まれる。
セキエイ大会で一役オレも有名人の仲間入りだと思うがオレはそういう重荷的なのは苦手なんだ。最強だからこうしなきゃいけねえ的なのは、ノブレス・オブリージュの精神は嫌なんだよ。
「サトシを相手にしたいなら俺を倒してからにしてみろ」
「ん?ユーは何者ね!」
「俺はアラン……一応は最強だ……俺に勝てばサトシに話を通してやるよ」
「言ったな!じゃあ、勝負だ!!」
海賊風の見た目の男がオレに挑んでくるんだが上手くアランが引き受けた。
そういえばアランのバトルをまともに見たことがねえな。ガッチガチの廃人だけどもポケモン以外にも色々と手を出しているオタクって自称してた……プリキュアの笑顔を曇らせたいと性癖は歪んでるがその実態はどうなんだ。
「ドンファン、ファイトだぜ!」
「いけ、ゴリランダー!」
アランと海賊風の見た目の男……レイモンドのバトルが始まる。
レイモンドがドンファンを出したのでアランはゴリランダーを出した。すると地面から草が生える……『グラスメイカー』ゴリランダー、オレの『まひるみ』キッスが夢も希望も無いとか言っているがコイツも大概だぞ。
「ドンファン『ころがる』」
「『グラススライダー』だ!」
ドンファンに『ころがる』攻撃をさせようとするのだがそれよりも前にゴリランダーが動いた。
ドンファンに対してスライディングキックを入れて……一撃でドンファンを戦闘不能にした。
「なら、コイツはどうね!いけ、カイリキー!」
「『グラススライダー』」
「ゴローニャ!」
「『グラススライダー』……なんだ『がんじょう』個体じゃないのか」
「…………………………」
ドンファンをカイリキーをゴローニャを『グラススライダー』で仕留める。
『グラスメイカー』+『グラススライダー』でゴリランダーの高い物理攻撃力……『グラススライダー』の威力は弱体化しているがゴリランダーの火力が高すぎる。レイモンドのポケモンを3タテすればレイモンドは負けを認めて去っていった。
「クソゲー過ぎねえか……『グラススライダー』以外にもまだあるんだろ?」
「いや、純粋に『グラススライダー』だけで倒せるから…………」
『グラスフィールド』状態での『グラススライダー』は先制を取れる。
『グラススライダー』だけで倒しているので思わず聞いてみるのだが純粋に『グラススライダー』で倒せるから倒したのだという。
ということは『グラススライダー』以外にも色々と手札を残している。キョダイマックス個体なのか若干だが気になるが聞くのが怖い。
「…………来るぞ」
「え……きゃあ!?」
レイモンドをアランが無事に撃退した。
あの男が出てきたという事はそろそろそういうことだ。アランがオレについてきている1番の目的がやってくる。
「カイリュー?」
「バウ!」
「来たか……」
突風が吹き荒れればカイリューが現れた。突然の出来事にセレナは驚いたがオレとアランは驚かない。
カバンを肩にかけているカイリューは1枚の封筒を差し出した。なんだと思っていると立体映像が映し出される。
『ポケモンリーグ優勝者様ですね。貴方を勇敢で未来あるトレーナーだと最強のトレーナーである我が主が貴方を招待しております。参加の意思があるのならばハガキに送り返してください』
「コレは……サトシへの挑戦状なのかしら?最強のトレーナーだって言うならチャンピオンリーグに出てくる筈よね?」
「クククッ……面白えじゃねえか。どんな奴なのかツラを拝みに行くぞ」
ハガキに最強のトレーナーに挑戦を挑むのだと書いて送り返す。
カイリューは飛び去っていく……ロケット団に途中で妨害されるといったことはない。
「お膳立てはしてやる……だが、最後の部分はお前が決めろよ?」
「ああ……ありがとう」
マサラタウンの帰路から少しずれてニューアイランドをオレ達は目指すことにした……ミュウツーの逆襲のはじまりだ。