闘携帯獣伝説 サトシ〜何故か憑依していた闇に舞い降りてない天才〜   作:アルピ交通事務局

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知恵と知識と勇気の一騎打ち

 

「リザードン、『かえんほうしゃ』よ!」

 

「ヘラクロス『メガホーン』で突き抜けろ!」

 

リザードンと別れを告げてヒワダタウンを目指す。ヒワダジムに出すポケモンはもう決めてあるのだとヘラクロスを育成している。

今回のヒワダジム戦は出番は無いかもしれねえが次のコガネジム戦では頑張ってもらわなきゃならねえ。なにせコガネジム戦はあのポケモンが出てくるからな。

 

「ラクロ!!」

 

「グォウ!」

 

『かえんほうしゃ』に向かってヘラクロスは『メガホーン』で突撃する。

苦手なタイプもこういう風にすれば捌く事が出来るのだと『メガホーン』で突撃してリザードンを突き飛ばせばヘラクロスがガッツポーズを取る。

 

「ハッサム!」

 

「ハッサム……」

 

「サム!」

 

まだまだ鍛えるぞと思っているとハッサムが現れた。

こんな所にハッサムとは珍しいなと思いながらも見ているとハッサムは威嚇してくる。一先ずはポケモン図鑑に図鑑登録をしたのだが既に誰かのポケモンだった……が、ハッサムのトレーナーらしき存在は見当たらない。

 

「ハッ!」

 

「『メタルクロー』か。だったらこっちは『かわらわり』だ」

 

ハッサムがハサミを輝かせ『メタルクロー』を撃ってくる。

勝負を挑まれたのならば答えるだけだと『メタルクロー』に対して『かわらわり』をぶつける。

技と技のぶつかり合い、勝負を制したのはヘラクロス、だがまだバトルは終わってない。

 

「お見事!!」

 

「……誰?」

 

「知らん……おっさん、何者だ?」

 

他の技を指示しようと考えているとおっさんが出てきた。

拍手を送ってきて見事だと褒めてくれるのだが全く見知らぬ人にお見事と褒められたとしてもなんも嬉しくねえよ。

このハッサムのトレーナーなのは大凡の見当がつくが、なにをしに来たんだ?

 

「そこの君、腕自慢なポケモントレーナーではないか?」

 

「ええ、そうよ!サトシはあのセキエイ大会のチャンピオンなの!」

 

「な、なにぃ!?」

 

なんでセレナが言うんだ?

おっさんが腕自慢なトレーナーかを聞いてくればセレナがオレがセキエイ大会で優勝を果たしたトレーナーだと言う。

それを聞いた爺さんはオレの手を取ろうとしたので回避した。なにを考えてるか知らねえけども気安く触るんじゃねえぞ。

 

「あの……なにをしてるんですか?ポケモンバトルならサトシは引き受けますけど」

 

「すまん……実は腕自慢なトレーナーを探していたんだ」

 

「なんだ?大会でも開かれるのか?」

 

「歩きながら説明をする……実は、息子を倒してくれんか?」

 

また随分と物騒な事を言ってきたな。爺さんは近くのポケモン道場の偉い人らしい。

偉い人がどうしてここにいるのかこんな事をしている理由を聞けば息子を倒してほしいと言う。

 

「それはアレか?強くなったと自惚れてるからか?」

 

「ああ……いや、強いのは確かなんだ……ただ……………」

 

「対戦相手が居ないならいっそのことジョウトリーグに出ればいいだけの話じゃねえか」

 

おっさんが息子を倒してほしいと頼みに来たのだが、息子が強くなって天狗になってるパターンかと思えば強いらしい。

それだったら道場なんかに閉じ籠もらなくてもいい。ジョウトリーグを目指して旅立てばいいだけの事なのに何故そんな事を言うんだ?

地元で最強とかそういう状態になったらとりあえず他所の地域に行けよ。少なくともこの世界、そういう感じなんだからよ。

 

「息子を倒してほしいと言ったがただ倒してほしいんじゃないんだ……目を覚ましてほしいんだ」

 

「……あんた父親だろ?こういう時にガツンと言ってやるのが親の務めだろ?間違ってる事を間違ってるって教えられねえなら親失格だぞ」

 

「うっ…………いや、まったくそのとおりだ」

 

息子の目を覚まして欲しいのだと言うのだがそういうのはオレの仕事じゃない。

天狗になってる奴を倒してくれという話ならばまだ理解出来るが間違ってると思える事ならばオレに頼むことじゃねえ。

おっさんにその辺の事を言うのだがおっさんは一切の反論が出来ずに受け入れる……受け入れるならば自分で動け……いや、動いた結果が強いトレーナー探しか。

 

「でも、なにが間違いなの?」

 

「……息子のシンゴはポケモンバトルのデータを頼りにしている……いや、頼りにし過ぎていると言うべきか」

 

「データだけは嘘をつかねえ……とはいえ、データだけを突き詰めても意味は無い。オレ達トレーナーは人間で心を持っている、ポケモン達も心を持っている。だから理外の理を学ばなきゃならねえ……」

 

息子のなにが間違いなのかを聞けばポケモンバトルをデータ化しているのだと言う。

別にそれ自体は悪いことじゃない。データだけは嘘をつかねえ。ポケモンバトルは基本的には理詰めなところがある。そしてどうしても予想することが出来ない部分も存在している。それが死線と呼ばれる世界だ。その世界では合理的に動くことはむしろ悪手、偏った動きをしなければいけない。

 

「いや、そうじゃなくて……こう、ポケモンバトルは熱くこみ上げてくるものがだな」

 

「そういうのを教えるのはオレには向いてねえぞ……オレが欲しいのは生を感じる為の死だ……狂っていると言われても構わないギャンブルだ」

 

おっさんはポケモンバトルは熱くこみ上げてくるものがある的な精神論を教えたい。

だが言わせてもらうがポケモンバトルに関して向き合い方は人それぞれだ。価値観は異なる。

マサラタウンのサトシは勝っても負けても最後は仲良く握手な価値観だがオレは勝たなきゃ意味がないと思っている。

 

「おっさん、勘違いをしたらダメだぞ……勝っているから綺麗な言葉は通じるんだ。勝者だから流石と言える……世の中は勝たなくちゃ意味がねえんだ。もしチャンピオンマスターのシロナが負けていたらただの天然ボケの考古学者、ダイゴが負けていたらただの親の七光り……彼奴等は勝っているから綺麗な言葉を言える」

 

負けたとわかった時点で世間は注目をしてくれないんだ。負けは死ぬのと同じ、逆に勝つことは生きると言うこと。

コレがオレの価値観だがそれを他人にまで押し付けようだなんて考えていねえ。

 

「まぁ、会うだけ会ってみるがよ…………勝つぞ?」

 

「構わない……ついたぞ。ただいま帰った!」

 

「「「押忍!師範、おかえりなさい!!」」」

 

ガッチガチの体育会系のノリだな……苦手だな。

道場に連れて来られれば門下生達が大声を出して挨拶をしてくるので五月蝿えなと思いながらも足を運び道場に上がる。

 

「シンゴ、お前にバトルを申し込むトレーナーを連れてきた」

 

「ふーん、そう…………君かい?」

 

「ああ、マサラタウンのサトシだ」

 

「マサラタウンのサトシね……………セキエイ大会のチャンピオン?また随分とスゴいのを連れてきたね」

 

「なにをしてるの?」

 

「データだよ……この5年間で出てきた優秀なトレーナーのデータの一覧さ。セキエイ大会を優勝してチャンピオンリーグに進んだが意識不明でベスト16か……まぐれでセキエイ大会を優勝したんだね」

 

「かもしれねえな」

 

「サトシ!?」

 

シンゴに挨拶をすればシンゴはパソコンを操作してオレの情報を集める。

一応はセキエイ大会を優勝しているから見直すかと思ったがまぐれと言われた。セレナがその事に関して怒ろうとするのだがかもしれねえなとオレは頷いた。

 

「オレがセキエイ大会を勝ち抜いたのはまぐれだ……そしてジョウトリーグもまぐれで勝ち抜く……勝負は水物だからな」

 

「おいおい、最後には運に頼るってのか?」

 

「なんだ?間違ってるのか?…………だったらよ、今のオレの手持ちを当ててみろよ」

 

最後は運に頼ることに関して言えば呆れられるのだが、最後は運に頼らねえといけねえんだ。

シンゴは運頼りを呆れているのでならばデータ頼みをしてみろといいオレの今の段階の手持ちを当てるように言ってみせる。

 

「オレの手持ちを当てることが出来たならばなにも言わねえさ……あるんだろ?オレがゲットしたポケモンのデータが」

 

「君の持っているポケモンは………………先ずはゲッコウガだ!君の絶対的なエース」

 

「残念だがゲッコウガは手元にはいねえよ」

 

「なんだと!?絶対的なエースを手元に置いてない……だったらリザードンだ!ここから一番近いジムはヒワダタウンにあるヒワダジムだ!『むし』タイプのヒワダジムに『ほのお』『ひこう』タイプのリザードンは必要だ!」

 

「クククッ……そいつも間違いだ……そらどうした?」

 

「っ……」

 

「絶対的なエースならば手元に置いておく、次のジム戦を備えて『ほのお』タイプを用意しておく……別になんにもおかしくはねえ……だが、それで通らねえのがこの読み合いだ……お得意のデータはどうした?」

 

「……オーガポン」

 

「手元にねえ」

 

「ならトゲキッス」

 

「そいつもいねえ……残り2回だ」

 

次のジムはヒワダジム、それに対して有効打を持っているポケモンを出すのだが尽くハズレる。

オレは折角だからとヒントを出してみるのだがシンゴは全く気付かずにパソコンを操作しており画面とにらめっこしている。

 

「ポケモンバトルで出すポケモンがなんなのか?それを当てるだけの行為だ。ポケモンリーグに挑んでいるポケモントレーナーならば必ずぶち当たる壁だ……………お得意のデータは悪くはねえ……だが、安牌だけがポケモンバトルじゃねえんだ」

 

「……ベトベトン」

 

「そいつもいねえ」

 

「………………………っ……………………」

 

「どうした?顔色が悪くなってるじゃねえか……お前、バトルをしてねえんだぞ?ただ単にオレの手持ちを当てるだけでいいんだ。それなのになにを焦ってる?」

 

オレの持っているポケモンの数は少ない方だ。シゲルは100種類以上をゲットしていたりするしヤヒコ達も30種類以上はゲットしている。オレのデータがビッチリと揃っているのならばそこからは予測しなければならない……だが、そのデータから生まれるものが尽くハズレている。残りはケンタロス、コノヨザル、ジバコイル、ゲンガー、エアームド、ラプラス、カビゴン、ヘラクロス、サンドパン……ヘラクロスさえ言えばコイツは当てることが出来る。

 

「………………………最後の…………最後の1体は…………」

 

「クククッ……最後の1回だぜ……」

 

残っているポケモンからパーティを構築してみせるシンゴ。

なんとしてでも当てなければならないのだととにかくデータとにらめっこをしている。ヘラクロスとさえ言えれば簡単だが今のシンゴには心の迷いが生まれている。自分の持っているデータが通じない、なんとかしてとデータを修正しようとしているが歪んでいく。

 

「……ケンタロスだ!」

 

「フフフ…………お前は所詮、その程度か」

 

「サトシの手元には今、ケンタロスは居ないわ」

 

「なっ……じゃあ、じゃあなにが居るんだ!?」

 

「エアームド、ヘラクロス、ラプラス、カビゴンの4体だ」

 

「4体だと!?6体じゃないのか!?」

 

「オレは6回チャンスを与えただけで手元に6体ポケモンが居るだなんて一言も言ってねえぜ」

 

「クソっ……クソっ……………………」

 

ポケモンリーグに出るには手持ちが6体以上じゃないとダメな規約がある。

それは純粋にフルバトルがあるからだが、旅をしていく上では手持ちを6体にしておかなきゃいけねえ決まりはない。

だがシンゴはデータばかりを見ていた。オレの持っているパーティを割り当てようとしたがその時点で視界が狭まっている。

定石を外した事により奇策が生きる。奇策が生きたことで相手は疑いを持ってしまい視界が狭まる。そうすることで定石を外した奇策があるかもしれないという疑う心を植え付ける事が出来る。王道的な主人公属性の人間ならば最後は気力だ根性だの精神論で誤魔化す。そういう場合は奇策を使って嵌めりゃいいし純粋な王道的な方法で力で叩きのめせばいい。

 

「さて、じゃあ早速ポケモンバトルと行こうじゃねえか。使用ポケモンは1体のシングルバトル、時間は無制限の一本勝負だ」

 

「ェア!」

 

「エアームドか……いけ!ブレード!」

 

「ハッサム!」

 

腹の読み合いをする段階で負けている。データだけでは見えないものがあるのだと証明すればポケモンバトルを挑む。

オレが出したのはエアームド、それに対して出してきたのはハッサム、親父譲りのそれなりに強いポケモンだろう。今のエアームドには最適なポケモンだ。

 

「エアームド『ちょうはつ』だ」

 

「データに無い……いや、違う。トリッキーな戦法か!だったら『スピードスター』だ!」

 

「『てっぺき』だ」

 

「バカめ!『スピードスター』は特殊攻撃なんだ!『てっぺき』で上がるのは物理防御力なんだ」

 

「目先の欲望に囚われてちゃ意味ねえぞ……『てっぺき』だ」

 

「『スピードスター』だ!」

 

「クククッ……どうした?」

 

「っ……」

 

『スピードスター』を連続でエアームドに当てるシンゴのハッサム。

オレは全く気にせずに『てっぺき』を積んでいくのでここでシンゴの思考が乱れる。

ハッサムが使える変化技は『ちょうはつ』で封じられておりエアームドは頑丈が売りのポケモンだから特殊攻撃の『スピードスター』で攻めるがエアームドは『はがね』タイプのポケモンで『ノーマル』タイプの技は大して効かない。

『インファイト』等の技があるだろうがエアームドに物理攻撃は厳しい。ただでさえ硬いのに『てっぺき』を2回も積んでいる。じゃあ特殊攻撃で攻めていくのかと考えるがハッサムが使える特殊攻撃は限られている。

 

「最善手は出たか?『てっぺき』だ」

 

「『てっぺき』を3回積まれた。これでエアームドの物理防御力は最大限にまで高められている……くそ、データのやり直しだ」

 

「おいおい、何処を見てやがる……………エアームド『ボディプレス』だ」

 

3回目の『てっぺき』を積めばデータの修正だとパソコンを操作している。

シンゴのハッサムは指示は無いのかとシンゴを見つめるがシンゴはパソコンに夢中でハッサムは指示を受けることが出来ずにエアームドの『ボディプレス』にやられ戦闘不能になった。

 

「しまった!?」

 

「信じているデータを疑ってしまった。新しいものに書き換えようとした。別にそれは悪いことじゃねえ……だが、コロコロと変わるデータになんの価値がある?それは頭の四隅に入れておくぐらいでいいんだ」

 

「クソっ……………」

 

「サトシの完全勝利ね……………トレーナーとしての格がサトシの方が上、相手にすらなってないわ」

 

最後までデータを信じようとした。既に死線を潜らなきゃいけないところまで来たのにも関わらず可能性を信じようとした。

可能性を信じるのは別に構わない。だが、必ずしもそれが当たるとは限らない。自分が切り捨てた側が勝馬になるなんて事はよくある話だ。

 

「オレがお前に勝てたのもセキエイ大会に勝てたのも運が良かったから……そして運も実力の内だ……この豪運を呼び寄せる力も、実力だ。自分自身の理の中に閉じ籠もるのは勝手だが、そいつじゃ縛れねえ測れねえ相手だって世の中には大勢いる……なんだったらお前クラスなんざセキエイ大会の2回戦辺りにゴロゴロといた………………そいつを頼るのが悪いんじゃねえ。そいつを頼ろうとしているお前が悪いんだ。機械じゃ判定出来ねえ世界が世の中にはある……不規則な事が出来るのが人間の武器だ。もっとも、大抵は最適解を求めるもんだがな」

 

最適解探しなんて機械に任せりゃいいんだ。既にAIは合理性を追求していて理に適う事ならば読み切れる。

だが、そうじゃない理不尽を見つけなきゃいけねえ……最適解を極めつつも理不尽を見つける。ゲームのポケモンの世界大会が良い一例だ。全員がガルーラを使いガルットモンスターと言う最適解を出しつつも他を読みづらいようにしている……アレはマジで地獄だったな。世界大会の手持ちが殆ど一緒のジャンケンゲー……だが、そういう時に物を言うのが運だ。ゲームの世界大会はレベルが50に統一されている。そんな中で勝ち進むのは心理戦と頭脳戦が上手いだけでなく豪運も持ち合わせている証拠だろう。

 

「データで予測できない事か……そんな世界があるのか」

 

「クククッ……まぁ、オレはやることをやり終えたんでな……………お前がこれからどうなろうが知ったこっちゃねえ。セレナ、いくぞ」

 

「うん………………相手が違いすぎたわね……計算だけじゃサトシは推し量れないわ」

 

おっさんの頼みである息子のシンゴを倒してくれという依頼は果たした。

ならばもうここには用事は無いのだと道場を後にしヒワダタウンを目指す。

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