闘携帯獣伝説 サトシ〜何故か憑依していた闇に舞い降りてない天才〜 作:アルピ交通事務局
「拝啓、マサラタウンに初夏の日差しが浴びるこの頃そちらは如何お過ごしでしょうか?誠に残念な事に私の住むマサラタウンから隣町までかなりの時間が掛かります。マサラタウンは自然豊かに溢れるところがありますが人が住んでいる限界集落みたいなもので野生のポケモンを見ますが人同士の繋がりがあまり見ないです。間もなく私はポケモン取扱免許を頂きます。税金対策や国の支援を受けてマサラタウンから10歳になる子供は追い出されるしきたり(笑)で、私は一刻も早くにポケモントレーナーになりたいと猛勉強に励んでおります。渋い味というのがどういう味なのかよく分からないのでカゴのみを口にしましたがなんとも言えない味でした」
ポンジャンから数年が経過し間もなくポケモンが貰える。オレはポケモントレーナーの修行……ではなくセレナと文通をしていた。
別にトレーナーの修行をサボっているというわけじゃない、サマーキャンプのあの日に互いに連絡先を交換していて手紙を送っている。カロスからカントーなので1枚500円ぐらいかかるがこの程度ならば問題は無い。
「ポケモントレーナーの修行に励んでいるのですが、ポケモントレーナー以外の業種について気になったので調べました、意外と多くてビックリです。ところでですがカロス地方のミアレシティに野生のこのポケモンを見た覚えはありませんでしょうか?割と珍しいポケモンですがもし見かけたのであれば私のもとに連れて来てくれないでしょうか……貴女のやりたいことを見つけ夢を掴める事を祈っています。PSマサラタウン、私が旅立つ日に私以外にも3人居るので最初のポケモン最初の3体以外が溢れる。オーキド博士が事前にイーブイ的なのを用意してくれてない。最初の3体で足りないならイーブイを出すのが筋じゃね?」
セレナに対する手紙を書き終えた。誤字脱字が無いのかと確認をした後に便箋に手紙を入れて500円切手を貼ってポストに投函する。
「どうしたもんかな……」
ポケモントレーナーとしての修行をはじめてから数年が経過しているのだがそろそろ限界を感じている。
オレ自身の才能云々じゃない、ポケモントレーナーに必須なもの、つまりはポケモンを一切持っていないという事実だ。オレ自身の肉体は鍛えている。素手での殴り合いよりも武器があった方が好ましいと警棒を手に入れて竹刀の様に振り回して鍛えている。飛天御剣流でなく無明三段突き、牙突、龍飛剣を覚えて今では水の上を走れるぐらいには運動能力がパワーアップしている。だがまぁ、こんなのは悪党退治にしか使えないゴミ技能だ。
「仕方がない、釣りでもするか」
ホントにやることが無いのだと困って考えた結果、釣りをすることを決めた。
ルアータイプの極々普通の釣り竿を手にしては釣りに向かえば……シゲルが向こう岸で釣り竿を垂らしていた。
「おい、なにしてるんだよ」
「見れば分かるだろう、釣りだよ釣り……暇と時間を持て余してるんだ」
「そうじゃないよ、ここは僕が見つけたスポットだ!釣りをするなら他所のスポットでしてくれ」
「クククッ……良い釣り場の独占ね、実に面白くねえことをしてるな」
「なんだと?」
「ここで明日の飯を釣ってるわけじゃねえんだろう?オレ達はまだモンスターボールを貰えない。だから水系のポケモンと遊ぶのが良いこと……ポケモンと触れ合いたければオーキド博士の研究所のオーキド庭園に向かえばいいだけなのにな」
「……なにが言いたい」
「釣りのスポットの独占なんてしても意味ねえんだ、マサラタウンで釣れるポケモンはたかが知れている。今からそいつをキープするにしても難しい……オーキド博士の孫なら逆にあの日が来るまで待ってなさい、そう言われる。遊びの釣りは出来てもマジの釣りは出来ねえんだ」
もっとも、お前が最初に選ぶポケモンはゼニガメだ。
ゼニガメはみずタイプのポケモンだ。だから心の何処かで水系のポケモンが不要だと思う。その判断は間違いじゃない。この世界にはタイプ統一パーティの理論が薄い。ただ純粋にそのタイプのポケモンが強いだけでタイプ統一パの様に役割を活かすパーティを作っていない。
「じゃあ君はポケモンをキープに来たのかい?」
「そんなわけあるか。言っただろう、暇潰しだって」
オレがここに来たのは純粋なまでの暇潰しだ。そこに裏も表も存在していない。
釣り糸を垂らしているとシゲルは睨んでくるがそんなに闘志を剥き出しにしても意味はねえ。今やるべきことはただ待つだけの事だ。
「来たか」「来たぞ!」
オレとシゲルは同時に釣り糸が引いた。
急いでルールを巻くのだが違和感を感じる、引っ張られる力が弱いのと向こう岸にまで引っ張られている。まさかと思い原作知識を呼び起こそうとするとコレと似た光景が思い浮かぶ。
「「モンスターボール!」」
コレと似た光景、モンスターボールを釣り竿で引き当てた。
シゲルとオレは同時に引き上げるのだがシゲルが物凄い力で引っ張ってくる。既にベンチプレス80kgは余裕のオレの筋肉と同等とは流石はこの世界で1番の耐久力を持つオーキド博士の孫だと思っている。
「神様が先に僕にモンスターボールをくれたんだ!サトシ、コレは僕のだ!!」
「構わねえぞ……ただ釣り竿を川に落とすわけにはいかない。向こうの橋にまで持っていくぞ」
「…………え?」
オレならばてっきり挑んでくるのかと思っていたのかキョトンとするシゲル。
モンスターボールが糸に絡んでいるからと合流する事が出来る橋のもとに向かい釣り糸が絡まったモンスターボールを解く。
突起部分があるとは言え球体状の物が釣れるのは幸運か不幸か、まぁ、いい流れになっていると考えてた方が良いだろう。
「ほらよ、錆びついているから錆落としはちゃんとしとけよ」
「待て、サトシ……君は、君は欲しくないのか!?モンスターボールだぞ!!」
「目先の欲望に囚われるなよ、ちゃんと起動してみな」
間もなくポケモントレーナーになるんだから早くモンスターボールが欲しいのだと思うのは極々普通な事だ。
だから目に見えてない物がある。冷静になってみれば簡単なことなんだとシゲルはモンスターボールのサイズを変えるボタンを押した。
普通ならばモンスターボールが大きくなる、ボールと呼べるサイズに変わるんだがボールと呼べるサイズじゃないピンポン玉サイズのままだ。
「壊れてる……」
「水中にモンスターボールが落ちていた、じゃない。川にモンスターボールが捨てられていた……中には一切ポケモンが入っていない。仮に入っているのならば誰のポケモンなのかオーキド博士に調査してもらう……どう転んでもオレに美味しい要素は一切無いんだ」
ホントのホントに意味が無い事をするつもりは無い。
今ここでシゲルと争ったとしても壊れたモンスターボールを手に入れるだけ、そんなショボいのは要らねえよ。
「……分かっていたのか?」
「このモンスターボールがオレにとっちゃただの鉄屑ぐらい直ぐに気付いたさ……こんなところでモンスターボールが都合良くあるわけねえ。仮に持っててもオーキド博士に没収されるオチが見えるぜ」
マサラタウン、いや、この世界の決まりで10歳にならなきゃポケモン取扱免許を貰えねえ。
モンスターボールの購入もトレーナーじゃないと出来ないこと、その為にマイナンバーよろしくトレーナーIDが存在している。
オーキド博士は変人に近いが良識ある大人だ。孫に甘いところが仮にあったとしてもあの日が来るまでのお楽しみだとモンスターボールが取り上げられるオチが見えている。1人の特例は良くないことだからな。
「っ…………!……サトシ」
「経年劣化だろうな」
シゲルがボールを強く握ればパカッとモンスターボールが赤い部分と白い部分に分かれた。
ぼんぐりで作れるとは言えモンスターボールは機械製品、最近の機械は錆防止云々があって色々とコーティングされている。
モンスターボールはポケモンをゲットするのを前提に作られているから当然水による錆やカビは対策している……まぁ、大量生産を前提にしているのならば高級なコーティングはしてない。よくある錆とカビ対策のコーティングをしているぐらいだろう。
パカッとモンスターボールを割ったと思えばモンスターボールの赤色の部分をオレに渡してくる。
「この屈辱、僕は絶対に忘れない!!この屈辱を晴らす方法は1つ!……どうやら僕の認識が甘かった様だよ。僕がポケモンリーグの舞台、6vs6のフルバトルで君を倒す!そしてその時にこのモンスターボールを1つにする!僕が1番だと上だと君に教えてやる!!」
「クククッ……それでいいのか?」
「なに?」
「お前の才能は確かでお前自身もマメな性格だ、ポケモントレーナーとして優秀な成績を納めるだろう。お前なら絶対にポケモンリーグに出場することが出来る」
「な、なんだよ急に。褒めてもなにも出ないぞ!」
「そしてそれが何時かコンプレックスになる……オレと言う越えられない壁にぶち当たって」
最終無印じゃポケモンワールドチャンピオンシップスなんて言う裏技のお陰でサトシは世界最強になれた。
ここぞと言う時のバトルで勝てるが普段のしょうもねえバトルで負けてしまうという。場の流れを掴むのは天才だろうがサトシは安定した強さを持っていない。ここぞと言う時をサトシは勝てなかった時が多い。しょうもないところで星を落としちまう。
「これでもお前の実力を買ってるんだ、オーキド博士の孫なんて言う色眼鏡無しでもお前の才気は本物だ……だからこそ、屈辱に変わる。オレに負け続けてな」
オレをライバル視したりするのは勝手な事だ。10歳の子供の特有の心だろう。
だが、オレはそれでもお前に勝つつもりだ。勝てる算段があるとかそうじゃない、勝たなきゃオレは無意味で無価値で死んだも同然なんだ。1回はいい試合だったで終わる。だが2回3回と数を重ねればそれは何時か屈辱に変わる。
負けたけどもいい試合だった……この言葉ほどに矛盾している言葉は無いだろう。皆が求めているのは過程じゃない、失敗という経験を買うことでもない。勝った者にのみ貰える白星だ。
シゲルがオレと戦いたいと言っているステージは地方リーグだ、アニメのサトシが出場しているポケモンリーグは地方リーグだ。
地方リーグを勝ち抜けば地方リーグ優勝者のみで戦うチャンピオンリーグ、チャンピオンリーグを制覇すれば出場した地方リーグの四天王に挑み四天王を全員倒せばチャンピオンへの挑戦権を与えられてチャンピオンを倒せばその地方のチャンピオン、負ければその地方の四天王で誰かが四天王をクビになる。そして地方のチャンピオンのみが出場出来るチャンピオンマスターズリーグで優勝すれば晴れて世界最強のポケモントレーナーになれる。地方リーグで戦おうだなんて中々に甘い考え……そう考えればポケモンワールドチャンピオンシップスは気楽な道だな。制作陣営がサトシを引退させたりサトシを世界最強にする為の考えだろう。チャンピオンリーグまで書くの制作が難しかったんだろう。
「いい試合だったが屈辱に変わるかもしれない……オレはこのモンスターボールには興味ねえ。お前に勝ったとしても1つにしない。いや、お前に勝ったからこそ1つにしない」
オレというトレーナーにシゲルは勝つことが出来なかった。それを教えるのにこの上なく最適なものだ。
「こんな所で呑気に釣りなんてしてられない、家に帰ってポケモントレーナーの修行をしないと」
シゲルを煽れば遊んでいる場合じゃないのだと走り出した。だから、お前はダメなんだよ。
お前はポケモンを貰ってない段階で充分過ぎる能力を持っている。オーキド博士の孫だからじゃない、オーキド・シゲルとして充分な才気を持っている。だが、此処から先は才能云々の世界でも努力の世界でもない、時間が解決してくれないとなにも始まらない時間なんだ。オレだって本音を言えばこんな所で呑気に釣りをしている場合じゃない、ポケモンを1体でも鍛えておきてえよ。だが、それは無理な事だと心にゆとりを持たせねえと。
「コイキングはホントによく釣れる…………オーキド博士の研究所の方がレパートリーが多いな」
2時間ぐらい頑張ってみたものの無理だった。
ポケモンを釣ることは出来るが大抵はコイキング、稀に異なるポケモンだったがオーキド博士の研究所に送られてきたポケモンの方がレパートリーが多い。田舎の細い川辺に激レアなポケモンが居たらそれはそれで大問題だ。
2時間耐えてみたがやはり退屈だ。暇を上手く潰すことが出来ないなと家に帰るのだがママさんが困っている顔をしていた。
「困ったわね……」
「どうしたの?」
「サトシが育ててるラムのみが無くなったのよ」
「…………なんだと?」
『もうどく』『どく』『やけど』『まひ』『こんらん』『ねむり』『こおり』の状態異常を回復させる万能アイテムなんでもなおしやかいふくのくすりは高い。だからラムのみで妥協している。ラムのみは状態異常を治せる万能なきのみ、時と場合によってはカゴのみやキーのみの方が良い時もあるが持っておいて損は無い。ラムのみを乾燥させて粉末にした漢方薬の作り方も学んでいる。
万能なオボンのみとラムのみを栽培しているのだが、盗まれた。どういう事だとラムのみを育てている植木鉢を確認するとラムのみが1つもぎ取られている。小学生の頃に育てたくもない野菜の苗を夏休みの宿題と称して育てていた時にカラスとかに食われるアレと同じことが起きているのかと考えるが、ラムのみだけがピンポイントに取られているのが気になる。
「野生のポケモンが食べちゃったのかしら?」
「そうだろうけど…………」
ラムのみを取ろうとした痕跡は残っているが足跡は残っていない。
ポッポやオニスズメが持ち去ったと考えるのが普通だが明らかに切り裂いたような痕跡がある。この近隣で切り裂く事が出来るポケモンと言えばコラッタ……だが、それならば万人受けのオボンのみの方が良い。
ポケモンの味覚は人間の味覚とは異なる、だがオボンのみは人間で言うところのカレーやアイスクリームに近い、万人受けの味のきのみだとポケモンフーズの番組に出ていたオーキド博士が言っていた。現にオレンのみとオボンのみを粉末にしたポケモンフーズの味変スパイス的なのが売られている。要するにこのきのみがラムのみだと分かって持っていった。
「田舎はこういう時は分かりやすいな」
上手く足跡を残さないようにしているのだが、バカな真似をしている。
マサラタウンの道路は舗装されていない、都会でよくあるコンクリートな道じゃない地面の道だ。上手い具合に足跡を残さないようにしているのだが問題はそこじゃない。ラムのみを盗み食いをしているという自覚があるのかさっさとマサラタウンの外に出ようとしている。その為に草むらに足を踏み入れていて草が仕分けされている。
これを辿ればラムのみを盗んだポケモンに出会うことが出来るのだと追いかけてみれば……サンドが居た。
「サァ……サァ!?」
「クククッ……別に怒りはしねえよ、そいつが必要なら食えよ」
息が乱れているサンドはキョロキョロしており、オレに気付けば慌てる。
別に怒りはしねえ。ただ誰が盗んだのかが気になった……オレのラムのみを盗んで金儲けを企んでたり我が物顔は許せねえがラムのみをラムのみとして欲しているなら話は別だ。サンドに食べればいいのだと言えばサンドはラムのみを口にし……意識を失った。
「成る程……オーキド博士の所に連れてくか」
大体は読めたとサンドを抱えてオーキド博士のところに向かう。
オーキド博士は今日は研究所に居るのでサンドの事を見せれば驚かれた。この近隣はあまりサンドを見かけないというのもあるのだろうがそれよりもサンドが熱を出していた事に驚いていた。
「オレの育てたラムのみを盗んでてもしやと思ってたんです」
「うむ、ラムのみはポケモンの状態異常を治せる万能なきのみじゃ……しかし、あくまでも状態異常を治せるのであって病気を治せるわけではない」
「重いんですか?」
「いや、ただの熱じゃよ。この近隣はワシの研究所を除けばサンドが住むのに適した場所が無いからの、なにかの拍子で紛れ込んで環境の変化に追いつかずに病気になったんじゃろう」
オーキド博士の診断は軽い熱……医療関係はサッパリだからな、オーキド博士の診断ミスは早々に無いだろうし環境の変化に追いつかないで体調不良はよくある話、五月病がその代表格だ。
「薬は打っておいたから少しすれば安静するじゃろう」
「そうですか……すみません、わざわざお手数をかけて」
「なに、病気のポケモンを見捨てることなどポケモン研究者としては出来ない事じゃからの……と、ちょっとトイレに行ってくる」
オーキド博士はオレとサンドを残してトイレに行った。
オレは……このまま帰っていいのだが不思議とサンドと目があった。サンドもオレと目があった。互いに視線を向け合い、視線を反らす事はしない。
「サァン」
「気にするな、病気の奴を見捨てるほど薄情じゃない」
病気が徐々に徐々に治っていくことを体で感じてるのかお礼を言ってくるサンド。お礼を言われるぐらいの事はしていない。
「………………お前、オレのポケモンにならないか?」
「ンド?」
「なに、欲しいポケモンの目星は付いている。だが、実際に捕まえる事が出来るかどうかは怪しいんだ……この世界は鍛えればちゃんと強くなれる不平等な世界だ」
全員が同じレベルという平等という名の不平等がこの世界には存在しない。
だから、努力は惜しまない。『じめん』タイプのポケモンには優秀なのが割と多い。サンドパンよりコイツの方がいいんだとゲーム的な話をすればそれなりにいる。ランドロスとか特にそうだろう。だが、オレが育てたラムのみを盗んだ。自身が侵されている病を治すためにと……これもなにかの奇妙な縁だとサンドをスカウトしてみればサンドはあっさりと承諾してくれた……先ずは1匹目、ゲットだぜってか。