闘携帯獣伝説 サトシ〜何故か憑依していた闇に舞い降りてない天才〜 作:アルピ交通事務局
「あ、映画の撮影が行われるんですって」
「ふ〜ん………………安易に人気漫画を実写化させたゴミ系か?」
アサギジムを目指している立ち寄った街のポケモンセンターでポケモンを回復させる。
セレナが掲示板に映画の撮影がこの街で行われているのだと言うのだがオレは思いっきり毒を吐いた。
「サトシ、そういうとこ厳しいわよね」
「CGのクオリティが年々上がってるが、実写化させていいものと悪いものがあるんだよ」
あの人気漫画を実写化!的なのを割とよく見る、と言うか一時期それが流行ってるんじゃねえかと思うぐらいに実写化していた。
しかしその結果、大半がコケている。超人気アイドルのアイドルパワーを使うことでなんとか数字を手に入れることが出来ているがそうでない俳優を用いての実写化、特に殴り合いのバトル物に関してはコケにコケまくっている。るろうに剣心とかは成功しているがアレは場合によっては時代劇と認識出来るからな。
「大体監督側も監督側で悪いからな……ネタを考えてこその商売だ。同人活動ならばともかく他人が作り上げて成功した作品をネタに実写化したのはいいがオリジナリティを安易に加えれば原作ファンはキレる。設定や世界観が独特だったりするものだったら新規の客は入ってこねえ……2,5次元は洒落にならない程に難しいんだ」
コケにコケまくる作品はとことんコケる。
CGを利用してだ人気俳優を利用してだ原作自体が名作な作品を利用してだ色々と頑張っているだろうが、それでもコケる。
漫画だからこそ出せる演出があり、それをアニメ化出来るかどうか……最近だとアニメ会社もガチャだからな。演出や作画がちゃんと出来ている話ならばまだいいが……アニメ会社のせいでコケる可能性もある。どっかの誰かが京アニレベルの作画演出はその気になれば出来る云々を呟いていたがなんでしねえんだとは思う。
「派手なアクション系よりも人間ドラマ要素が強い方が売れるんだよな……」
るろうに剣心は成功したが、実写で成功したのは大抵は人間ドラマの要素が強い漫画ばかりだ。
ミュージカルとか舞台劇ならば話はまた変わるが基本的には人間ドラマ、役者がどれだけそのキャラを演じきれるのかが重要だ。
「実写じゃなくてちゃんとしたアクション映画みたいよ」
「そうか……見に行くか……」
「意外とミーハーね」
「貴重なものを見れるのはいいもんだぞ」
京都の太秦映画村で見た殺陣だったか?アレは中々に見応えがあった。
こういうのは面白いか面白くないかで決めるもんだと思っているとポケモンの回復を終えた。
ポケモンの回復を終えたので撮影現場に向かおうかと何処で撮影されているか情報を集めれば撮影現場が判明し撮影現場に向かう
「ん?」
「待て!!」
「っく!!」
向かっている途中に追いかけられているイケメンがいた。
スキンヘッズの男達に追いかけられておりなんかヤバそうな雰囲気を醸し出している。
コイツは嫌な予感がするなと思いながらもセレナと顔を合わせて頷いた。
「いけ、カビゴン!」
「カンビ!」
「テールナー、お願い!」
「テーナ!」
「テールナー『サイコキネシス』よ」
「テール!」
「ぐわぁ!?」
「カビゴン、道を塞いでやれ」
「カァビィ」
スキンヘッズの男達をテールナーの『サイコキネシス』で弾き飛ばしカビゴンが壁になる。
コレで少しの間は凌ぐことが出来たと追いかけられていたイケメンの方を見る。
「大丈夫ですか?」
「すまない、助かった」
「あ〜……助けておいてなんだが……闇バイト的なのじゃねえよな?」
セレナが大丈夫かどうかをイケメンに聞くとお礼を言ってくる。
追われている側の住人だったから深く考えずに介入したが追われている側のイケメンがなんかヤバい事に関わってるのならマズい。
今更聞いても大丈夫なのかと思い聞いてみる。
「いや、そういうのじゃないんだ……別方向から追手が来る……すまない、君にコレを託してもいいか?」
「おい、スゲえ怪しいぞ」
カビゴンが道を防いだが一本道じゃない。
他の方向から追手がやってくるのだと感じたイケメンが抱えていた鞄をオレ達に渡してくる。
受け取ると了承してねえのに押し付ける形でイケメンが抱えていた鞄をオレ達に押し付けていきイケメンは逃げていく。
追いかけている人達はイケメンを追っていく……捕まえられるのは時間の問題だろうな。
「あの人、何処かで見たような……」
「アイツが誰でも構わねえだろ……人に厄介事を押し付けやがって……コレでなんかの受け子とかならスイクンの『ねっとう』浴びせてやる」
セレナがイケメンに見覚えがあるのだと思い出そうとするが誰だって構わねえ。
人に厄介事を押し付けやがってとなにを押し付けてきたのかと思えば鞄がモゾモゾと動きムチュールが出てきた。
「このポケモンは……ムチュールね……」
「ルージュラの進化前のポケモンだな……コイツを託したって事はコイツがなんかの鍵を握ってるって事だが……」
ポケモン図鑑を取り出してムチュールのデータを確認するセレナとオレ。
色違いとかなんか特別な個体なのかどうか分からねえ……どっからどう見ても普通のムチュールだ。オレのポケモンじゃないから覚えてる技や能力値なんかを測る事が出来ねえが……何処からどう見ても普通のムチュールだ。
「ムチュ?」
「えっと…………………どうすればいいのかしら?」
「さっきの奴にムチュールを返すのが普通だろ……問題は何処に居るのか……」
ムチュールが貴方達は誰?と首を傾げている。セレナも首を傾げている。
どうすればいいのかと聞かれてもムチュールをさっきの奴に返すのが普通だろうが問題は何処に居るのかが分からないことだ。
追手の数からして捕まえられるのは時間の問題だ……怪しい感じの闇バイト的な受け子的な仕事じゃねえと言っている。密売されているムチュールじゃないとなれば違和感を感じるのでとりあえずはと最初の目的であった映画の撮影現場に向かうが撮影現場で撮影されていなかった。
「ムチュ!チュール!」
「おい、暴れるな」
「サトシ、暴れてるんじゃなくて何処かに行きたいんじゃないかしら?」
撮影現場に辿り着けばムチュールが暴れる。
押さえつけようとすればセレナが何処かに行きたいんじゃないかと言うのでムチュールを放せばムチュールは走り出す。
何処に向かうんだと思えば映画に出ている俳優達の控室に向かっておりムチュールは目を輝かせて目当ての人物、つまりはさっきのイケメンの部屋に辿り着くが部屋の入口のドアノブに手が届かないとピョンピョンと弾むのでセレナがドアを開いた。
「ムチュウ!!」
「ムチュール!」
「あ、ブラット・キタオさん!」
「ああ……映画の主演か……」
ドアを開けばさっきのイケメンと再会する。
セレナはやっと何処で見たのかを思い出す。今、撮影を行っている映画の主演を務めているブラット・キタオだった。
映画の主演俳優のムチュールだったのかと思っているとブラット・キタオは即座にドアを閉めた。
「あのよぉ、いきなり説明もなく託すなよ……怪しくて困惑したぞ」
「すまない…………ムチュールを守るためには君達に一時的に託すしか道が無かったんだ」
「ムチュールを守る?……このムチュールはなにか特別なムチュールなんですか?」
「ああ……俺にとっては最高のムチュールなんだ」
ムチュールを説明もなく託したことに文句を言えば普通に謝ってくるブラット・キタオ。
ムチュールを守りたかったからオレ達に託したと言うのだが普通のムチュールなのにどうしてと聞けばブラット・キタオにとっては特別なムチュールだという。
「今でこそ俺は超一流の売れっ子アクション俳優として成功している……でも、最初から成功していたわけじゃないんだ。道行く主演俳優に肩がぶつかるだけの地味な役をこなしていた下積み時代があった。その下積み時代は苦しかった。俳優として売れずアルバイトとの両立で一時期は俳優の夢を諦めかけた事もあった……けど、ムチュールが支えてくれたんだ」
「そうなんですか…………でも………なんで追われていたんですか?」
「それは……………マネージャーや事務所が俺とムチュールを離れ離れにさせようと企んでるんだ」
「クククッ……大変だな……人気者ってやつは」
「大変って、幾ら俳優の事務所だからって持っているポケモンをどうこう言うのは間違ってるんじゃ」
「いや、間違いじゃねえよ」
ブラット・キタオが逃げていた理由はムチュールが事務所側が縁を切れと言い出したから。
それを聞けばセレナは間違っていると言うのだがオレから見ればなんにもおかしくはないことだ。
「ブラット・キタオが2枚目のアクション俳優を売りにしているのならばそれに見合ったポケモンを相棒として売り出す……大方、ムチュールとあんたのイメージが合わないと言われて事務所側が強硬手段を取ったんだろ」
「……ああ……分かってるんだ……事務所の言い分は。事務所は俺にリザードンやヘルガーを使って欲しいと思っている」
「……いけ、ヘルガー」
「ヘル!」
「出てきて、リザードン!」
「グォウ!!」
容姿による差別云々は無しだなんだと言うが容姿を売り物にしている商売があるのが現実だ。
事務所側はブラット・キタオのイメージがヘルガーやリザードンとタイアップして売り出したいと言っているので試しにとオレはヘルガーをセレナはリザードンを出した。
「まぁ……………絵にはなってるな………」
「……2枚目のアクション俳優でイケメンを売りにしているのならばこの2匹の方がピンと来るわね」
ブラット・キタオの前にリザードンとヘルガーを並べる。絵になっているかと聞かれればとても絵になっている。
セレナもあまり認めたくはないがブラット・キタオの売り方の方針を決めるのならばこの2体が絵になると頷いている。
「そうでしょう?ブラット・キタオにはヘルガーやリザードン等のイケメンポケモンが合っているんです」
頷いているとスキンヘッズの男が入ってきた。
「っ、マネージャー!!」
「貴方が……ムチュールはキタオさんが売れない頃から支えてきた相棒なのよ!それを無理矢理離れ離れにさせるなんて酷いじゃない!」
「甘えるな!イメージ戦略は俳優として大事な事なんだ!お前達もたった今、リザードンやヘルガーを見て絵になると認めただろう!」
「まぁ、一理あるな……」
2枚目のキャラとして売り出したいと言うのが事務所側の考えだろう。
その為にはイメージとしてクールやイケメンな見た目をしているポケモンを売りに出すのは普通だ。
イメージ戦略は芸能活動をする上で大事な事、芸能人やスポーツ選手にスポンサーが付いてCMを撮影したりするがそれは売っている製品なんかが芸能人達にフィットしているから。サン・ムーンのCMでボルトや吉田様を使って上手い具合にイメージを崩さずに使っていたのが良い一例だ。
「キタオ、冷静になって考えるんだ。お前は今が一番大事な時だ!ここを踏ん張れば大スターの道に入れる!仕事もドッサリとやってくるんだ!」
「っ……」
「そのムチュールについて知らないと言えば嘘になる……だが、今ではお前にとって足枷になっているんだ……もし、お前の相棒がムチュールだなんて知られれば……時間をやるからちゃんと話し合え!」
マネージャーはそう言うと控室から出ていった。
「どうすれば……どうすれば、いいのかしら……」
「マネージャーの言ってることは一部は間違いじゃねえからな……」
ムチュールで売るのでなくリザードンやヘルガーなんかで売る。
今もボールから出ている2体とブラット・キタオを眺めれば違和感無く絵になる。それは皆がイメージする絵になっている。
「クソッ………………俺は………………俺は………………」
「お前…………成功したって思ってるのか?」
マネージャーが言っていることは全てが間違いじゃない。
一部は正しいことを言っているのだと分かっているのでブラット・キタオは苦しい表情を浮かび上げる。
これからブラット・キタオはジャンジャンと売れていくだろうが……果たしてそれが正しいのか、成功したと言えるのか?
「成功したと言えるのかって……キタオさんは若手を代表する2枚目のアクション俳優よ?」
「確かにそういう立ち位置にある……だが、そこから自由に動けているのか?」
若手を代表する2枚目のアクション俳優は充分に成功している人だとセレナは言う。
確かにそこまで行っているのならば成功していると言えるだろうが、オレからすれば実に不自由な立ち位置だ。
「マネージャーの言うことは尤もだ、リザードンやヘルガーなんかが絵になると言う考え通り絵にはなる。それを見れば女性のファンが喜んでくれる。男のファンも喜んでくれる……だがよ、その代わりにお前は窮屈な事を押し付けられるんだ」
「……………」
「窮屈な事?」
「ブラット・キタオにとってムチュールこそが相棒だ……売れない頃から支えてくれた唯一無二の相棒だ。だが芸能活動を行う為にはイメージ戦略はしねえといけねえ。お笑い芸人なら漫才やコントなんかの武器がある。そこからバラエティ番組に出てトーク力でのし上がることが出来るがアクション俳優はあまり面白さを武器に出来ねえ。如何にして役者として役にのめり込み魅せるかが大事なことだ……その為には本来の自分って奴を押し殺さなきゃいけねえ。ムチュールを愛している心を押し殺す……あんたの映画はまだ見てねえが売れっ子になっていくのは時間の問題だろう。売れっ子になっていけばいくほどにブラット・キタオとはこういうものだというイメージが浮かぶ。そいつに応えなくちゃならねえのが芸能人だ…………俳優として高い地位に、ゴールデンタイムのドラマの主演クラスになれてもこういう感じの役割だと2枚目の役割ばかりを押し付けられる可能性もある……それは成功したと言えるのか?お前は成功したと見えて世間からのイメージを押し付けられて無理矢理圧迫されている。自由じゃねえ……」
「でも……そういうものじゃないの?偉い立ち位置になったりすればそれに伴う責任が出てくるわ」
「ああ、それは間違いじゃねえ……だが、それで締め付けられて自分の思うように行動出来ねえ……ホントに成功したと胸張って言えるのか?」
「それは…………」
世間の思う様な人間として生きてみせると世間のイメージを取り組む。本来の自分を押し殺す。
憧れていた舞台は高いところにある。そこに行く代わりに本来の自分を押し殺す。
「自分が夢を見た場所に行く為に自分を押し殺す。夢見た舞台に立っても尚自分を押し殺す。それってホントに成功したと言えるのか?」
「俺は……っ……」
ブラット・キタオは自分の両手を見た。
アクション俳優として必死になって頑張っている……憧れていた舞台は目前だ。大スターの道は確かにある。
だが、今の自分は底なしの泥沼に足を踏み入れている。世間のイメージなんかの生コンクリートによって体を固められかけている。
「少なくともオレは最強や1番や強い相手、本物と呼べる奴等とは戦いたい。大会で優勝もしたい……だが、チャンピオンなんかの称号にはそこまで魅力を感じねえ。それがあれば胸を張れるがそれのせいで重い足枷が増えちまう……そういう束縛は嫌だ」
「……………………ありがとう………………」
「クククッ…………オレはあんたが不自由な人間だって言っただけだよ」
ブラット・キタオは悩みに悩んでいた……が、振り切れた。
気持ちを切り替えるどころか決意をすることが出来たのだと思えばムチュールを抱き抱えて控室を出ていく。
向かったのは撮影現場、公開収録だと多くの報道陣や女性のファンなんかがいる。
「ま、まずい!ムチュールを抱えたままだ!ムチュールを」
「ムチュールは……ムチュールは俺の相棒だ!!」
マネージャーが決心したのかと思ったがブラット・キタオがムチュールをまだ抱えていることを気付き止めに入ろうとする。
だが、ブラット・キタオはカメラの前で堂々と告白をした。ムチュールは自分の相棒だと……世間はリザードンやヘルガーなんかがイメージ的に似合っているだろうが、そんなのは関係無い。ブラット・キタオは自分が売れない俳優だった頃から一緒にいたムチュールこそが相棒だと言い切る。
「さ、行くか……」
「撮影が見れないのはちょっと残念ね……でも、キタオさんは振り切れたみたいで良かったわ」
ムチュールが相棒だと言い切れば静まり返る。
ムチュールが可愛いと受け入れる人が多く居る……その反面、ブラット・キタオのイメージに合わないという意見も出てくる。
ここからが本番だ……自由な自分が挑んで夢見た舞台に立つことが出来たのであればブラット・キタオは紛れもなく正真正銘の本物だろう。