闘携帯獣伝説 サトシ〜何故か憑依していた闇に舞い降りてない天才〜   作:アルピ交通事務局

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タマゴから生まれた命

 

「マサラタウンのサトシくん、電話が掛かってきているわよ」

 

フスベジムを突破しポケモンセンターに向かった。

一応はダメージが無いのかの精密な検査をスイクンに受けてもらっていると電話がかかってきているとジョーイさんに伝えられる。

電話と言えばオーキド博士に連絡を入れておかなきゃならねえなとテレビ電話があるところに向かう。

 

『おぉ、やっと出たか』

 

「オーキド博士……と、ウツギ博士?」

 

『やぁ、久しぶりだねサトシくん』

 

オレに電話をかけてきた相手はオーキド博士だった。

オーキド博士側から連絡を入れてくるのは珍しいと思ったが何時もの研究所じゃない。何処だそこと思っているとウツギ博士が映っているのでどういう組み合わせなのかを考える。

 

『実はの、お主に頼みたいことがあるんじゃよ』

 

「オーキド博士、オレは今からシロガネ山に向かうんですけど……あ、バッジ8個手に入れましたので」

 

『お前さんなら楽勝じゃろう……シゲルから連絡があっての。フスベシティに居ると予想しておったんじゃが連絡が間に合ってよかった……お前さんポケギアの1つでも買わんのか?』

 

「いや……最終的に……」

 

ありとあらゆる機能が搭載されているスマホロトムが登場する。

ならばポケギアやライブキャスターを買うのは無駄金なんじゃねえのかと買うのを躊躇っている。

 

「それでオーキド博士、ウツギ博士……オレになにをやらせたいすか?」

 

『ポケモンをシロガネ山の自然保護区に届けてほしいんだ』

 

「ウツギ博士……そういうのは業者に頼んでくれよ……」

 

シロガネ山の自然保護区に届けてくれという依頼だ。通り道だから別に不都合な事は無い。

だが、ジョウトリーグ・シロガネ大会を控えている身で余計なもんは背負いたくねえんだとそういうのは業者に頼んでくれよと言う。

 

「サトシ、なんか事情があるみたいよ」

 

『実は……まだ生まれてないんだ……君達がフスベシティに居るのは分かったから急いで向かうとするよ』

 

『詳しい事情は後で説明をする……ではの』

 

「あんの狸爺、オレが引き受ける云々を一切言ってねえのに切りやがったな……」

 

「オーキド博士やウツギ博士が動くってことはかなり重大な事よ!」

 

「ええ、その通りよ」

 

「ジョーイさん!」

 

この話を蹴ってやろうかと考えているがセレナは重大な話があるのだと聞く耳を持とうとする。

大凡の見当はついているのだと思えばジョーイさんが現れヘビーボールに入ったスイクンを返してもらい……ポケモンのタマゴが入ったタマゴケースを手にしていた。

 

「オーキド博士達はこの子をシロガネ山に連れて行ってほしいのよ」

 

「だからそういうのは業者に……大方そのポケモン、レアなポケモンで密売される感じだろう」

 

「ええ……ここ最近、シロガネ山でポケモンハンターが活動しているの。シロガネ山には稀少なポケモンが多く生息していてそれを狙っているのだけれどこの子もそう…………だからどうにかして連れて帰らないといけないの」

 

「確かに……サトシならポケモンハンターが相手だとしても勝てるしタマゴを孵した経験もあるわね」

 

「…………………」

 

やっぱりこういう流れかと半ば諦めながらもオレはタマゴをジッと見つめる。

オーキド博士とウツギ博士が全速力でこっちに向かってきているのならば諦めるしかねえなとタマゴを受け取る。

オーキド博士がどの辺に居るのかは分からないが1日で来れなさそうだしなととりあえずはタマゴを抱き抱える。

 

「…………」

 

タマゴが何時孵化しても問題無い様にしている。

ここならばポケモンハンターは襲ってこないだろうが早いところタマゴから孵そうと思いながらも眠った。

すると視点が切り替わる……バイクに揺らされ川に流され車に轢かれかける。なんともまぁ、絵に描いたような不幸だった。

 

「死にてえなら勝手に死ね。生まれたいなら気張ってでも立ち上がれ……死にたいと思える時に死ねる。最近は医療技術が進歩しているから死にたいと思っても死ぬに死ねねえ。お腹や体に針ぶっ刺して点滴だなんだ色々とやって生きてるんじゃなくて生かされてるって言うのが多々ある……オレはハッキリと言えばアレは嫌いだ。生きてるんじゃなくて生かされてるんだからよ」

 

「…………」

 

「外の世界は暗いし怖いのは確かだ……だから、お前にとっての生きるってのがなんなのかを考えとけ」

 

絵に描いたような不幸を見せられてオレはハッキリと死にたいならキッチリと死ねと言った。

オーキド博士達が頼んだタマゴから生まれるポケモンがなんなのかを知っている。不幸な生い立ちがあるのも知っている。

それを理由に外の世界に怯えているのも、誰かと関わりを持つのを怯えているのも理解している……だったらさっさと死ねとオレはハッキリと言いそれと同時に生きるってのがなんなのかを考えるように言えば……オレは夢の世界の中から現実に戻り抱き抱えていたタマゴが光を放ちヨーギラスが生まれた。

 

「…………………」

 

「こりゃまずいな……ジョーイさんに頼まねえと」

 

ヨーギラスが生まれたが眠ったままだった。

意識があるのかと確認をしようとすればヨーギラスは酷く冷たかった。幸いにも日は明けているのだとジョーイさんのもとに向かいヨーギラスを見せる。通常のヨーギラスよりも遥かに低体温で衰弱している。生まれたばかりなのに衰弱しているのはおかしいと感じながらもジョーイさんはヨーギラスの治療に当たる。

 

「サトシ、セレナから話は聞いたぞ!」

 

「ここは僕達に任せてくれ」

 

ジョーイさんはヨーギラスだけを診ていられない。他のポケモン達も診ないといけない。

ポケモンセンターはブラック企業だなと感じているとオーキド博士とウツギ博士がやって来てヨーギラスの事は任せてくれとヨーギラスを安全な状態にまで治療する。

 

「あのヨーギラス……大丈夫かしら……」

 

「オーキド博士とウツギ博士が治療したんだ。それで治らなきゃセレビィにどんな病気でも治る薬の1つでも持ってきてくれねえと治らねえ」

 

「そうじゃなくて……トゲピーの時と全然違うかなって……トゲピーは元気ハツラツだったのにヨーギラスはとっても元気が無さそうで」

 

「ま、無さそうって言うよりは無いんだろう…………生きようっていう気力がよ」

 

「…………タマゴの頃から酷い目にあってるのよね……ヨーギラスは」

 

「死にたいなら死ねばいい……生きたくないって言うならば生きなくていい……」

 

「っ、サトシ!」

 

「セレナ……生きるってのはなんなんだ?」

 

「……それは……明日を迎えること?」

 

「そいつは生きると言うことじゃない生きてるんだ……」

 

生きることに対しての質問に対してセレナは明日を迎えることと答えた。

そいつは生きると言うよりは生きているということ、ホントの意味で生きているとは言えねえ。

 

「………………」

 

「よぉ、やっと目を覚ましたか…………起きるならせめてもうちょいしっかりと起きてほしかったぜ」

 

1日掛けてヨーギラスを健康な容態にまで持っていった。

流石はオーキド博士とウツギ博士と言うべきだろうがヨーギラスは……生まれてからまだ1度も声を出していない。

ボーっとしながら遠くの景色を眺めているのでヨーギラスを連れ歩きながら草原に向かう。

 

「……………………」

 

「………………えっと………………………ど………………どうすればいいの?」

 

ヨーギラスはただ無言で遠くを見つめている。

セレナは雰囲気からなんとなくでポケモンがなにを言っているのかを理解することが出来るがヨーギラスは鳴き声1つ出さない。更にはなにを考えているのかが分からないのでオレにSOSを求めてきた。

 

「すまねえな……お前を生かしたいって思う自分勝手な連中が原因で死に損なった」

 

「………………」

 

「ここで死にたいなら適当にほっつき歩け。近くに川辺があるからそこで溺れて溺死しろ」

 

「…………………………」

 

「だが……お前の命は今はじまったばかりだ。なんの為に生まれてきたかなんて知ったこっちゃねえ。だが、お前にとっての幸福がある……胸の傷が痛むって言うならばそれはまさに生きてるって証だ。お前がまだ生きたいって思っている証拠だ……ホントに手遅れならばもうなにも感じねえ……痛みは生きているって証なんだ。痛みが無いことは生きていねえ」

 

某ゲームじゃ痛みを無くすだなんだで人の感情を抑制したり人間を完全に支配したりしている。

そうすることで痛みから人を解放する……だが、痛みの1つも無ければそれは生きているとは言えねえんだ。

 

「痛い思いをしたくねえって思いは分かる、傷つきたくないって思いも分かる……だが、それを拒めば生きているとは言えねえ生き方だ」

 

昔のオレが現にそうだ。

失敗を恐れているからとかでなく目標もなにもなくただただ惰性に生きていた。挑戦することちょっとした冒険をすること、そういうことを拒んでいた。我慢が出来ないからじゃない、最初から無理だしめんどくせえと興味を抱くことすらしてなかったんだ。

 

「傷つき痛み苦しみ悩む……そして藻掻くんだ……確かにお前にゃ辛いことは多い。明日が怖いと思っちまう。実際そうだ……だが、足掻くんだ。藻掻くんだ。そうやって1日を過ごしていき明日を迎える……傷つきや痛みは成功のもと、傷つかなければ痛みが無ければ成功したとは言えねえんだ」

 

「……………………ヨギ…………………」

 

「傷つくのは怖いのは皆、一緒だよ……だが、中にはもっと他の事を恐れてる奴も居る。自分って奴を失う事を恐れてる……オレもそうだ」

 

今はマサラタウンのサトシだが明日には惰性に生きていた自分に戻るかもしれねえ。

オレは……こういうのはアレだが運が無かった。人のせいにしていいのならば親ガチャなんかが失敗したと言える。

いったい何処の誰がオレをマサラタウンのサトシにさせたのかは知らねえがオレにはチャンスが回ってきた。自分って奴を手に入れてから生きるチャンスが。二十歳過ぎの大人がいい歳して夢見るなってよく言われる……実際それで諦めていた口だ。

 

「お前は先ず生きるってよりも自分を貫く事を学べ……外の世界が怖いって言うならば支えてもらえる誰かを探すしかねえ」

 

「………………………ヨギ……………………」

 

生きろ!とは言わず自分を貫け!と言う言葉にヨーギラスは反応を示す。

生きるのが怖い……だが、こうして生きてしまっている。死ぬのも怖い……だが、生きたいとは思えない。

生物学的には生きているというのは正しいだろう。だが心を持った生き物として生きているかと聞かれれば話は別だ。ヨーギラスはまだ生まれていない。生きていない。

 

「ヨギ…………………」

 

ヨーギラスに響いたのかヨーギラスは歩き出す。さっきよりも変わっているのだと感じ取れる。

向かっているのは直ぐ近くの森……そこには沢山のポケモン達が居る。なにか目的があるのかと思ったがただボーっと眺めているだけ。

自分からなにかアクションを起こすかと思ったがそういう気配を感じねえ……だが……ヨーギラスは外の世界を見る目を変えている。

自分とはいったいなんなんだろうかという哲学的な考えを持っている。

 

「……スゴいわね……元気どころかなにも感じれなかったヨーギラスが……」

 

一連のやり取りを見ていたセレナは言葉が出なかった。

元気どころかなにも感じれなかったヨーギラスの心を動かすことが出来た。生きる希望を見つけることは出来なかったが自分というものがなんなのか分からねえ感じだったので探そうとしている。

 

「クククッ…………生きるってのは大変だな……………だが、それが運命って言うならよ……抗うんじゃなくて受け入れてやれよ。お前の苦しみはお前の全てじゃねえ。だがお前の一部でもあるんだ……ん?」

 

「クォオン」

 

「おい、どうしたスイクン?」

 

生きるってのはなんなのかは人次第だがと色々と哲学的な事を考えているとスイクンが勝手にボールから出てきた。

珍しい事もあるんだなと思っているとスイクンはヨーギラスに歩み寄る。ヨーギラスは無言でこちらを見つめておりスイクンは頭を下げた。ヨーギラスは意味がよくわかってねえがスイクンの額の水晶に触れたいのだと手を伸ばし額の水晶に触れさせた。

 

「すまねえな……オレはどうも狂ってるタイプだからな……偏っているからロクな事を教えられねえよ。だが、コイツだけは譲れねえんだ」

 

今の自分を貫くって事が出来るのは大事なことなんだ。惰性に生きていた自分におサラバ出来る。

スイクンはスイクンなりにヨーギラスに生きることについて教えている。楽しいと思える事を教えている。

 

「ヨーギラス、今からオレ達はお前の故郷のシロガネ山に向かう……お前の母親のところにお前を連れて行く……それで構わねえか?」

 

「……ヨギィ」

 

分かったとヨーギラスは頷いてくれた。

 

「よかったわね、ヨーギラスが無事に生きようとして」

 

「ヨギィ!?」

 

「セレナは、違うぞ……生きようとしてるんじゃねえ……自分を持とうとして」

 

「ヨォギィイイイイ!!!!」

 

「あーー!!な、なにこれ!?」

 

「ヨーギラスの『いやなおと』だ……発作みてえなもんだから直ぐに納まる……」

 

「な、なんで……」

 

「大丈夫だ、ヨーギラス……セレナは敵じゃねえ」

 

「ヨギ……………」

 

オレやスイクンに対してはヨーギラスは心を開いてくれた。生きるってのはよくわからねえが、先ずは自分を見つけようとしている。

だがそれでもまだまだ怖いことは多い……ヨーギラスはセレナに怯え『いやなおと』を放つので問題はねえとヨーギラスを抱き抱えればヨーギラスは落ち着いたのか『いやなおと』を出すのをやめた。

 

「ったく……オーキド博士め……」

 

オレならば出来るだろうと思ってくれんのは構わねえ。実際に熟せる……けど、今からが追い込みの時期なのに……場合によっては恨むぞ。

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