個性『呪言』のヒーローアカデミア   作:入魂ロフス

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2話

「………マジでなんもないな」

 

 AFOに『個性』を奪い・与えられるという恐怖体験から早くも5年が経った。この5年間でAFOからの接触はマジで皆無。

 原作ではAFOは都合の悪い個性を「消す」ことはできず「押し付ける」ことしかできない…ってな感じの描写があった事を考えると、もしかしたら俺はいわゆる弱個性を押し付けられたのかもしれない。在庫整理みたいな感覚なのだろうか。

 

 とにかく、自分が弱個性だと予想がついていれば身の丈に合った夢…人生の目標を立てることなど容易い。

 俺が赤ちゃんの時に母さんが独り言として話してくれた身の上話は、前世で大きな不自由も無く暮らしてきた俺にとって、幸せにしたいと望む理由として十分なものであった。

 

 母さんの両親は母さんが幼い頃に(ヴィラン)に殺され、孤児として育った母さんは愛に飢えていた。何度も何度も男に弄ばれ、それでもなお愛を求めた母さんは、4人目のDV彼氏に殺されかけた。

 その時に近所の人の通報でやってきたプロヒーローが、俺の父さんだったらしい。

 町に根付くご当地ヒーローだった父さんは、治安の良い街で働いていたこともあってかなり暇を持て余していたらしく、怪我の治療で入院していた母さんの元へ何度も見舞いに来てくれたそうだ。

 

 これまで他人に優しくされたことのなかった母さんは父さんの優しさに一瞬で堕ちた。初恋だったらしい。

 それからなんやかんやあって付き合うことになりそのまま結婚した二人は、それから2年間幸せな新婚生活を送った。

 母さんは求めてやまなかった愛を手に入れ、過去の心の傷を癒し、父さんとの愛の結晶…俺を妊娠した。

 そして…父さんが殉職した。

 小さな町のヒーローだった父さんは、都会から流れてきた凶悪(ヴィラン)からたった一人で町の人々を守り切り、(ヴィラン)と相打ちになって亡くなった。

 

 母さんは強い人だった。最愛の人を失ったショックは計り知れないものだったろう…それでも母さんは父さんの形見を守る為、父さんの両親に助けられながら無事に俺を産んだ。

 そして今、母さんは父さんの分まで俺を目一杯愛してくれている。

 

 そんな母さんを俺は幸せにしてみせる。いわゆる親孝行ってやつさ!

 

 とかなんとか決意した次の日…遂に俺に個性が発現した。

 母さんと一緒にこっちの世界にも存在してた○まむらで子供服を選んでいた時、原作で幼少期の緑谷が着ていたオールマイトパーカーを見つけた俺はもうめっちゃくちゃにテンションが上がり…鏡に映った口元の模様に気付かず、母さんに話しかけてしまった。

 

「お母さん"見て"コレ…!?」

 

 声を発した瞬間、自分の声の持つ強制力に気付いた俺はやばくね?とガチ焦りするが時すでに遅し。

 俺の声を聞いた母さんは首を「ゴキッ」と鳴らしながらこちらを向いた後、泡を吹いて倒れた。

 

 やばいやばいやばい個性事故だコレ!!!

 周りに店員もいない…俺の声には強制力がある…どうやって助けを呼べば…ハッ!!(天啓)

 

 発現したばかりの強めの個性と未だに現実感のない転生ライフ、そして突然の母さんの命の危機で、当時の俺は多分頭がトんでいた。

 

「すぅ………"助けて"!!!」

 

 ぶっちゃけこの時の選択を後悔してるか聞かれたらかなり悩む。

 それでも、目の前の母さんを助けるためにはその方法しかないのなら…俺はもう一度同じ選択をするだろう。

 

 俺が大声で助けを求めた数瞬後、ガラスが割れる音がしたと思ったら…

 

「マイト聴覚(イヤー)で少年の声を聞いた私が来た!!」

 

 俺はオールマイトの腕に抱えられていた。

 

「え?え?え?」

 

 オールマイト!?嘘だろそんなすぐ来るもんなの!?

 咄嗟に周りを見渡すと○まむらのガラスが一枚だけ割れていた。恐らくあそこから入ったんだろうけど器用すぎない!?

 

「少年、声を出さずに返事を、彼女は君のお母さんだね?」

「…!」コクコク

 

 オールマイトの問いかけに頷いた俺は驚愕する。

 状況把握早すぎない!?

 

「YES!状況を把握したぞ!」

「オ、オールマイト!?どうして!?」

 

 俺の声で走って来たっぽい店員さんがオールマイトを見て驚く。

 

「ここの店員さんだね?個性事故が発生したので飛んできたのさ!

 私は少年と彼女を病院に連れて行くので…さらば!!」

 

 "風が吹いた"そう思った次の瞬間、俺は大きな病院の前でオールマイトに抱えられていた。

 もうなんでもアリかよ。

 

「オールマイ…個性事故ですね?」

「Exactly!言葉に強制力がある常時発動型の個性だ!よろしく頼んだ!それでは私は次の事件に…行く!」

ドヒュンッ!!

 

 駆け寄ってきた看護師の人まで状況を即座に把握しやがった。プロってすごいんだなあ(小並感)

 無限の彼方に飛び立ったオールマイトを見送る間も無く、病院の人達が母さんを担架に乗せて運んで行き、俺は病院所属のカウンセラーの人と一緒にぬいぐるみがたくさんある部屋で個性との向き合い方を習うことになった。

 

「棘くんは喋らないようにするのと、合言葉で話すようにするの、どっちがいいかな?」

「………しゃけ!ツナツナ!」

「良いね!おにぎりの具!梅とかは言わないように気をつけてね!」

「しゃけ!」

 

 カウンセラーの人は大病院に所属しているからかかなり有能で、思ってたより自然な流れで狗巻棘の語彙を使えるようになった。

 ちなみに母さんの首は大丈夫かを筆談で聞いたら「怪我してすぐに搬送されたからラクショー」って返された。

 アレでラクショーなのか…(困惑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へえ…あの時の子が…予備には丁度良いね」

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