機動戦士ガンダムSEED~インペリアル・ガード~ 作:国伊都
コズミックイラ……。
それはかつて『西暦』と呼ばれた時代に起こった終末戦争……再構築戦争を生き延びた人類が、愚かな過去との決別を示す新たな時代であった。
だが、どう時代が進もうとも、人類は良くも悪くも『人類』であった。
コズミックイラ(C.E)15年。
のちに『ファースト・コーディネーター』と呼ばれるジョージ・グレンの告白によって、地球圏に未曽有の混乱が訪れる。
『僕は、僕の秘密を今明かそう。僕は人の自然そのままに、ナチュラルにこの世界に生まれた者ではない――』
彼はそう云って、自身の肉体に行われた『祝福』を語った。
受精卵の段階で人為的な遺伝子操作を受けた彼は、人としての様々な才能……他者より優れた知力、体力、容姿を与えられて生まれたという。
そしてその結果、彼は類まれなる才能を発揮し、傑物として世界中の人々に称賛されることとなった。
彼は確信した。
人類がこの新時代――宇宙へと生存圏を広げるためには、この『祝福』が必要である、と……。
だから、彼は告白と同時にその『祝福』――遺伝子改変技術の資料を全世界に公表したのだった。
それが未熟な人類にとって『呪い』でしかないことに気付くことなく……。
そして、遺伝子操作を受けて生まれてきた人類『コーディネーター』と、自然出産によって生まれてきた人類『ナチュラル』は、時代を経る毎にその溝を深めていくこととなる。
C.E70年2月14日。
のちに『血のバレンタイン』と呼ばれる悲劇によって、ナチュラルとコーディネーターは本格的武力衝突へと至ることとなる。
だが、そんな狂気の時代であっても、戦争を食い止めようと奮闘する国家があった。
極東アジアの島国『日本皇国』である。
人類初の核兵器投下を受けたその島に住み人々は、皇帝の下に集い理性をもって、この戦争と向き合おうとしていた。
――――
日本皇国。
再構築戦争の折、国家象徴であった『皇帝』が緊急避難的に国権を掌握。
当時、中央政府に見捨てられた台湾や、地球温暖化に苦しむソロモン諸島――後のオーブ連合首長国――の島民たちを助け、国家の全力をもって再構築戦争を生き抜いていく。
結果、日本皇国は西暦から続く国家体制を維持しつつ、台湾島を自治区に加え、戦後世界の復興、そして宇宙開発事業を主導していくこととなる。
ラグランジュポイント1――L1コロニー『世界樹』。
月面開拓基地――後の月面都市『コペルニクス』。
これらの一大プロジェクトと再建した国際連合を通して日本皇国は主導し、地球のエネルギー資源問題、雇用問題を解決していく。
が、これらの利益は後に国力を回復させた旧先進国――大西洋連邦、ユーラシア連邦、東アジア共和国によって奪われていった。
ただ、日本皇国は権力闘争を仕掛けることなく、オーブ連合首長国、スカンジナビア王国、赤道連合、大洋州連合を主体とした新たな宇宙開発事業――火星開拓事業『マーズ・ライン・プロジェクト』を主導。
このプロジェクトによって、ラグランジュポイント3に日本皇国とオーブは、資源衛星付随型コロニー『ホウライ』、『ヘリオポリス』を。
スカンジナビア王国、赤道連合、大洋州連合はラグランジュポイント4に、同じく資源衛星付随型コロニー『ギムレー』、『デーヴァローカ』、『カタ・ジュタ』を建造し、火星開拓の前線基地とした。
そしてC.E50年代より火星開拓を本格化させ、地球人類の生存圏を広げることに成功する。
そんな中で起こったのが『血のバレンタイン』の悲劇であり、その報復行動である『エイプリルフール・クライシス』であった。
――――
C.E70年4月2日。
日本皇国・本土首都『帝都・東京』。
明治維新の時より開かれた議会政治の中枢『国会議事堂』にて、皇帝陛下の宰相を務める『内閣総理大臣』榊是親(サカキ・コレチカ)が集まった報道陣に対し、先ほど議会にて決定したことを伝える。
「今年、C.E70年2月14日に発生したL5宙域での核兵器使用と、それによって宇宙コロニー『ユニウスセブン』の破壊……。そしてその報復行動として昨日、C.E70年4月1日に行われた地球規模のエネルギー妨害行動に対し、日本皇国政府は以下の宣言を議会の全会一致で決議、表明することと致しました」
会見場に用意されていた大型モニターに映し出されたのは『積極的武装中立』の文字であった。
「我が国、日本皇国は先日発足した軍事共同体『地球連合』、L5宙域プラント型コロニー群コミュニティ『プラント』および武装組織『ザフト』の双方とも軍事協定を結ぶことは致しません!
今後は日本皇国独自の判断によって、自国を含めた地球圏の平穏を取り戻すべく、また火星航路の安定的維持行動を行うことに決定いたしました」
榊首相の力強い言葉に、報道陣は圧倒される。
そこでさらに首相は外交秘密であろうやり取りを暴露する。
「また地球連合、プラント両勢力から極秘裏に協力要請を受けておりましたが、拒否することを、この場を借りて返答させて頂く」
戦争への協力要請という、最重要交渉の返答をこのような場で行うとは――。
外交儀礼の中で最大の侮辱となるだろう。
この言葉を記録しながら報道関係者たちは戦慄する。
日本皇国――そのトップである『皇帝陛下』はこの戦乱に怒り心頭であると。
こうして、のちに『第一次連合・プラント大戦』と呼ばれる戦争は地球連合・プラント・中立国……そして日本皇国の四つ巴の戦いとなるのであった。