便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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青春真っ盛りな少年少女の煌めきは擦れた吸血姫には眩しい


No.10『キラキラと眩しいクラスメイト』

 あれから教室にはそれなりの人数が増えたくらい時間が進む。その間にもレイミィは先に知り合った三人以外にも同性異性問わず話し掛け、同級生との会話を楽しむことを忘れない、忘れないが思うのはコミュ強が多過ぎるこの教室という感想、寧ろ大人しい感じの少年こと『障子 目蔵』や中二病が入ってるがだからこそ口数が少ないのを演じている『常闇 踏陰』の方が彼女としては話しやすいとすら思うレベルに。

 

 お陰で自身が便利屋を営んでいるということも済し崩しというべきか、流れでというべきかあっさりと知られてしまったことも必要経費だと割り切ってはいるが、中には自分から口を割ってしまったものもあるので自身の机にて。

 

「(こんな有り様を話したら血染や被見子に何言われるか……)はぁ」

 

「どうしたのさ、急に疲れた感じのため息なんて」

 

 どうやら溜息を見たらしいクラスメイトの一人、長くコードのように伸びた耳たぶの先がプラグになっている少女『耳郎 響香』、彼女もまたレイミィが便利屋の人間だと知るが否定せずに寧ろロックじゃん? と感想を告げて逆に驚かせた一人である。

 

「いえ、あれよ。便利屋だって知っても何も言われないことに人間が出来てる子が多過ぎるでしょと困惑してるだけ」

 

「ん~? 寧ろそういうところの所長やってるって凄いと思うのが普通じゃない?」

 

「真っ直ぐと言われるとなんだか恥ずかしいわね」

 

 もしかしなくても今まで関わってきたプロヒーローが色々とあれだってのではと思うくらいに真っ直ぐな言葉と視線に、若干頬を赤くし髪先を指で弄り始める。あまり褒め慣れていないことがよく分かる態度に響香はニヤニヤとした表情のまま、それにと言葉を続けることを選ぶ。

 

「私とか、まだ将来云々を漠然としか思えてないのに同い年の娘がもう組織の長で、所員のために難しいこと考えてるって、普通じゃ出来ないよ」

 

「そりゃまぁ普通じゃないもの。寧ろ貴方達のほうが普通ってやつよ、だから羨ましいって思うわ」

 

 これからをあれこれ悩み、学び、成長する。その過程をまだちゃんと踏めるクラスメイトにレイミィは本気で羨ましいと感じている、自分はその過程を全てすっ飛ばして今此処に居るのだからと。

 

 自分は何だったら2歳の頃から、母親の血を吸い尽くしてしまったあの時点で精神が成熟し、知識も得てしまった。だから、その過程を感じる暇すら無かった、あったのは親殺しをしたという重すぎる咎と、あの人が成したかったことを変わりに成し遂げなければと言う使命感だけ。

 

(だからこそクラスメイトが眩しく見えてしまう)

 

 故に響香からの真っ直ぐな言葉と眼差しは嬉しくもあるし、恥ずかしくもあるが、もっと言えば眩しすぎるのだ。だからこそ自分は、自分たち便利屋は彼らから犠牲者が出ないようにしなければならない、と改めて決心をすると一人の生徒が教室に入ってきた。

 

 その生徒は金髪碧眼のパット見だけで言うならフランス人だろうかという感じの男子生徒、クラスメイトに挨拶する姿を観察するにナルシストが入っているのかもしれないとレイミィがのんびり観察していたが彼が座った机で、彼女の表情が変わった。

 

 彼が座ったのは最前列の一番右の席。五十音順の一番前、つまりその席に座った彼が彼女が監視するべき存在、名を。

 

「(青山優雅、名は体を表すなんて言うけど本当なのかしらね)ごめんなさい、ちょっと彼に挨拶してくるわ」

 

「ん? あいよ~」

 

 響香に一言かけてから席を立ち、優雅の元へと向かう。途中、周りから見えない部分からモスキートを一匹だけ彼の元へ放ち、それから友好的な笑みを浮かべ前に立ってから。

 

「はじめまして、レイミィ・バートリーよ」

 

「ご丁寧にありがとう、僕は青山 優雅さ」

 

 キラッ! なんて効果音すら聞こえそうな雰囲気を出す優雅にレイミィが感じ取るのは見栄だなという本質。何かから目を逸らすために、潰されないようにするための偽りの仮面を被っていると、けれどそれは彼女自身が彼の正体を知っているから分かることであり、それがなければ騙されていただろう。

 

「(強いわね。本当に)これから三年間、仲良くやっていきましょ?」

 

「あぁ、勿論だとも。ただ、僕のあまりの眩さに目を晦まさないでくれよ」

 

 仲良く、その言葉を聞いた瞬間、彼の表情がよく見なければわからないほど微妙に歪んだのをレイミィは見逃さなかった。見逃しはしなかったがそれには気付いてないふりをしつつクスクスと彼の軽口が心地よかったという感じに口元を手で隠しながら笑う仕草をする。

 

 優雅のそれが面白かったというのもあるが、この行動は記憶の読み取り、帰ってきてたモスキートを口に含むための行為で、血を吸収すると同時に脳内に溢れてきた記憶を処理し、やはりと確信する。彼が【内通者】であると、だが悪意はないというのも読み取れたことに内心で安堵の息を吐き出す。

 

 もしこれが悪意の元だとしたら色々と面倒だったと。流石の彼女も同年代の少年を(ヴィラン)として扱い、時が来たら排除できるように動くのは簡単ではない、だからただ脅されていますというのはレイミィとしては楽な部類になる。

 

「あら、吸血鬼のように見えるからって心配かしら? 安心して頂戴、日光浴は大好きだから……」

 

「……チッ」

 

 このままもう少し話でもと思った矢先、やや乱暴に開けられた扉、あまりの音に教室が騒然としレイミィも誰よ全くと視線を向けた瞬間、例の狂喜の笑みを堪えることになり、相手は彼女を視界に収めると同時に苛立ちを隠す素振りもなく舌打ちを繰り出す。

 

「ごきげんよう、爆豪勝己」

 

「喋りかけんなクソコウモリ女!」

 

「あら、つれないわね。首席同着同士なのだから仲良くしましょ」

 

「誰がテメェなんかと、つか黙ってろって言ってるだろうが!」

 

 あら怖いわね。と言葉だけのそれに勝己は苛立ちながら席に座り、そのままドカッと机の上に足を放り出すように乗っけるのだが、今度はそれを見た天哉が注意に入り彼との言い争いが始まる。

 

 もはやヒーローとは言う感じの言葉に天哉も聞いている他のクラスメイトも若干引き気味の中、レイミィだけは心地よいとばかりに聞き入るばかりか、その顔には堪えていたはずの例の表情が浮かび上がっており、これには優雅の後ろの席で目撃してしまった『芦戸 三奈』が思わずといった感じに。

 

「レイミィちゃん顔怖い!! 女の子がして良い顔してないよ!!」

 

「おっと、フフッ、ごめんなさい、ちょっと抑えれなくて」

 

(抑えられなくなるって何を!?)

 

 ここに来てS気質なのかという疑惑が浮上に、また別の騒然としたものに襲われるA組の教室。しまったと言う表情をするレイミィだったが、悪いのは相手だしと開き直り折角だしもう少し親睦を深めることにしましょうと言い合う勝己と天哉のそばまで向かう。

 

「楽しそうね、混ざってもいいかしら?」

 

「さっきっからうざってねぇなテメェも! ぶっ殺すぞ!」

 

「君さっきから本当に酷い言動だな!?」

 

 そこに混ざりに行くという選択肢が取れるの凄いと思う。クラスメイトの気持ちが一つになる瞬間だがレイミィ本人からするとあの程度は挨拶のようなもので怖くも何とも無いのだからグイグイ言って是非ともその屈折した感情をぶつけて欲しいという気持ちのほうが強いの混ざらない選択肢なんて初めから無いのである。

 

「まぁまぁ、飯田もそんなにカリカリしないほうが楽よ? 彼、出力される言葉が物騒ってだけだから」

 

「そ、そうなのかい?」

 

「んなわけねぇだろ、いい加減言ってんじゃねぇぞゴラァ!」

 

「本当にそうなのかいバートリー君!? っておや?」

 

 ふと、天哉が何かに気付いたという感じの声を出し、彼の視線をレイミィも追えば少しだけ開かれた扉から顔だけを出している一人の少年の姿。緑の癖っ毛が強いモサモサ頭のそばかすに大きい目、特徴的ではあるが平凡でもあるように捉えられる彼に天哉が近付き、会話を始める。

 

 どうやら実技試験の際に隠しポイントであった救助Pに気付いて云々という話なのだが、少年の方は気付いてなかったよ!? という感じの表情を晒しているので彼の勘違いだろうと思いながらふと、勝己を見れば苦虫を噛み潰したような表情に変わっていた。

 

(……しまった、モスキートを飛ばしておくべきだったわ。まぁ良いけど、代わりにあの少年に飛ばしてっと)

 

 突こうかとも思うが流石にそれは無遠慮が過ぎるということで触れないことにして、モスキートをまた飛ばしてから少年の方に向かい、今日だけで何度したかわからない自己紹介と挨拶をしてからニコッと笑みを浮かべてみる。すると相手は一気に顔を赤らめて、キョドり始めた態度になるほどそういうタイプかと一人納得する。

 

「あ、あああ、えっと、その」

 

「はいはい、落ち着きなさいなっての。とりあえず深呼吸して……」

 

「あ! そのモサモサ頭は!! 地味目の!!」

 

 落ち着かそうとした矢先に背後から茶髪のショートボブの少女に声を掛けられてビクッと跳ね上がる。この間の悪さにはレイミィは口元に左人差し指を当てる形で苦笑を浮かべつつ、モスキートを取り込んで、思わず驚愕の表情を浮かべそうになった。映し出された記憶は何気ない今日までの日常、いや、無個性がとか言う話も十分驚きの範疇なのだが、それよりも驚いたのはチラッと写った一枚のプリントに記されていた名前。

 

(『緑谷 出久』……!?)

 

 入試の日に見てしまった驚愕した記憶は2つ、片方は青山優雅の件。そしてもう一つ、ホークスにも話さなかった方の記憶で出てきた名前が『緑谷出久』、そう呼んだのは誰であろう『オールマイト』、彼に修行をつけてもらい、ギリギリの所で目標を達成、そして……

 

(彼が、オールマイトの個性を【譲渡】された存在)

 

 少女と出久の会話から凄いパンチで0Pロボを殴り倒したとなれば疑うよりはもう無い。そもそも個性の譲渡ってどういうことよと言いたくもなるが本人が隠していることから、迂闊に漏らすとかなりやばい案件ってことだという事を察し難しい顔をすることしかできなくなる。

 

 初日からどうしてこうも疲れなくちゃいけないのよとレイミィは内心で愚痴りながらも、その顔には笑みが浮かぶ。退屈しないどころではないと、便利屋としても様々なパイプを繋げることだって夢ではないと、ならば上手くこの全てを使い立ち回るだけだと。そこでふと思い出す、そう言えば準備ができたら来ると言ってた相澤がまだ来てないことを、時計を見るにそろそろ現れてもおかしくないけどと開けっ放しだった扉の先、廊下に何かが転がってるのに気づき、顔が引き攣る。

 

(え、何やってるのかしら彼)

 

 寝袋が転がってた、よく見なくても誰かが入ってるし、その誰かは間違いなく相澤だという事に気付いたレイミィ。同時に向こうも視線だけで何も言うなと送ってくることに目を逸らすことで答えてた所で寝袋が喋った。

 

「お友達ごっこがしたいなら他所(よそ)へ行け」

 

「おはようございます、相澤先生。ほら、静まったほうが良いわよ、彼怖いから」

 

 え、先生? 先手を取って、今朝の焼き回しのような挨拶をしつつ、クラスメイトを静まるように掛けたレイミィの言葉にクラスメイトが一気に静まり返った。狙ったかのような行動に相澤は視線を彼女に動かしてから

 

「あぁ、おはよう、それと余計なことは言わなくて良い。ま、時間が掛からずに静かになったのは良いことか。時間は有限、合理的にやってかなきゃいけないからな」

 

 寝袋から出てきた風貌の先生にレイミィを除いた全員の視線が集まる。その彼女はと言うとしれっと席に座り、グッと伸びをしていた、もうこの時点で普通に入学式とかやらないわねこれはと思いながら、相澤の次の言葉を待つ。

 

「担任の相澤消太だ、よろしくね」

 

(((担任!?)))

 

「早速だが体操服(こ れ)を着て、グラウンドに出ろ」

 

 寝袋からゴソゴソ学校指定の体操服を取り出して、そう指示だけ告げると教室から去っていく相澤。残さえた面々は唐突とも言える指示に困惑しつつも、とりあえず言う通りに動こうかとなり、男女で更衣室に向かって、軽く会話を挟みながら着替え、グラウンドに向かった彼らに担任が告げたのは

 

『個性把握、テストォ!?』

 

「入学式は!? ガイダンスは!?」

 

「ヒーローになるならそんな悠長な行事、出る時間無いよ」

 

 バッサリとした言い分にさっき教室で出久に話し掛けた少女、もとい『麗日 お茶子』が驚く。だがそんなものに出るくらいなら、さっさと把握するものは把握し次に繋げる、徹底した合理主義ではあるがレイミィとしてもそれに関しては納得しか無いと頷けるし、もっと言うとすれば

 

「体操服で入学式とかガイダンスは無いわよね、そりゃ」

 

 これ着た時には察しなさいよと言わんばかりの言葉に、クラスメイトは確かにそうだとなったのは言うまでもないだろう。




 便利屋メモ
 被見子に言わせるとレイミィはSでM

 この吸血姫、好き勝手に喋っては勝手に疲れたり笑ったりしてるの変な娘じゃない……?
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