詐欺と勘違いしたってどういう言い訳なのよ。なんてことを思いつつ、つい勢いでラブラバに私って貴女にそんなに嫌われてる? 的な感じのことを聞けば溜息を吐き出された。
しかも電話の主のラブラバじゃなくて近くで聞いてた被身子に、割と本気で驚くしか無いんだけど?
「いや、私はその当時に居なかったですけど、話だけを聞いたらそりゃ嫌われても不思議じゃないですよねって思っただけですよ?」
《貴女の秘書はよく分かってるじゃないの。まぁ安心して、本気で嫌ってたらそもそも電話に変わることもしないから》
「一応、貴女の雇い主でもあるんだけど私……」
そりゃ、外部協力組織と言うか協力者だから厳密には雇用の契約をしているわけでもなんでもないけど、恩人ではあると思うのよ。それをここまでボロクソに言う必要あるのかしら、私だって凹むときは凹むのよ。
確かにファーストコンタクトは最悪だったかもしれないけど、いえ、最悪だったわね。ってそういう話がしたいんじゃなかったのよ、ラブラバに話すことがあって電話したんだってば。
《そう言えばそんな事を切る前に言ってたわね。で、要件は何なの》
「次の学校が休みの日、そっちに顔を出すわ。その時に依頼したいことがあるのよ」
《電話越しじゃマズい案件ってこと。はぁ、絶対にやばいことに首突っ込むことになるじゃないの》
「良いじゃないの別に、それ相応に報酬は出すんだし出来ないことは言って事ないじゃない」
《報酬とかの問題じゃないのよ。はぁ、分かった分かった、一応は受けるつもりではいてあげる》
その辺りは何だかんだ言いながら、受けるには受けてくれるので心配はしていないわ。あんな小悪党みたいなことしてたけど、ラブラバもジェントルも根は真面目だし善寄りな人間だし。
今回の依頼も詳細を聞かされれば、断るってことはしないでしょ。もちろん、報酬も色を付けるつもりだし、今朝も事務所で言ったけど向こうには成功報酬の七割は出すつもりだし。
《な、七割!? 元の金額次第だけど随分な大盤振る舞いじゃないの》
「それくらいの事をするってことだし、貴女だって貯金を増やしたいんでしょ?」
シーンと電話の向こうが静かになった、まるで何故それを知っているのという感じの反応だが散々に人を煽っておきながら自分が無事で居られると思っているのは中々に笑える話よね?
まぁ知ってる理由は前に会った時にモスキート経由のいつもの流れなんだけど、向こうにはそれを話してないから知る由もないわけなので。
《な、何でそれを知ってるのよ貴女》
「ふふ、何でかしらね。でも知ってるわよ、前々から報酬の何割かを別の口座に貯金してるって、用途までは流石に分からないけど」
《いや本当に何でそこまで知ってるのよ、怖すぎるわよ流石に》
因みに用途も推測できると言えば出来てしまう。概ね、ジェントル関連でしょ、二人の仲の良さは語られなくても分かっちゃうほどだし、普段浮気調査で荒んでるのしか見てないから尚の事、良いわよねあれって被身子と語る時もあるし。
「まぁそうよね、二人が出会ってどの程度かは知らないけど、そろそろとか考えちゃうわよね~」
《大人をあまり誂うもんじゃないわよ。良いのかしら? 私がその気になったら便利屋が一日も要らずに崩壊させられるのよ?》
へぇ、私を脅そうっての。面白いじゃないの、その程度の脅しで私に勝てるって思ってるならあまりに低く見られてると言わざるを得ないわ。
と言うか、そっちがそれが出来るなら私だって同じこと出来るけど? 良いかしらラブラバ、脅しってのはこうやるのよ。
「やってもいいけど、その場合は貴方達とこの国を道連れにするから、そのつもりでね」
(国……?)
(今、あのコウモリ女、この国って言いやがったか?)
(まぁ、やれるかどうかって言うなら出来ても不思議じゃねぇな)
(国を道連れ????)
(え、なに、バートリーってやろうと思ったら国家転覆とか出来ちゃうの?)
(こわぁ……)
ん? なんか耳郎達から視線感じるけど、まぁ良いか。それよりもほら、どうするのかしらラブラバ、やるの? やらないの?
当たり前だけど出来るから私はそう言ったから、口からの出任せでもなんでもないわよ、やろうと思えば本当にこの国だけなら無政府状態に変えてあげられるから。
《待ちなさい、国って何よ!? なんで私達だけじゃなくて国まで人質に取ってるっていうか、国を人質に取れるとかどうなってるのよ!?》
《愛美くん!? 何で急に話がそこまで大きくなってるんだい!?》
あ、ジェントルまで釣れちゃった。それに血染と火伊那と被身子からの視線もそろそろ痛くなってきたから流石にこれ以上は止めておきましょう。
私だって別にラブラバたちと仲違いしたいとかじゃないし、寧ろ彼女たちの存在には助けられてるのだから、そんな事する意味もないのよねと。
《本当に、貴女って人を何だと思ってるのかしら》
「だからごめんなさいって。ちょっと楽しくなっちゃっただけよ」
《楽しくなったで人を煽るなって副所長にも言われてるでしょうに。まぁ良いわ、今度の休みってことは土曜日に来るのね、時間は?》
「とりあえず午前中には向かうわ。空けておいて」
そう伝えれば、なんだか疲れた感じに分かったと告げて通話が終わる。ちょっと長話しちゃったけど、反省会は終わったかしらと目を向ければ全員が私を見ていた。
正直に言えばちょっと後退りしたのは秘密だ。いや、オールマイトまで私を見てるのは想定外だったと言うか、血染たちも呆れた感じに人を見てるし。
「あ~、その、どうしたのかしら?」
「いや、誰と話してるんだろうねって所から急に国家転覆染みたことを言い出して何事かってなってる」
麗日からそう言われて気づいたけど、冷静に考えれば私が言ったことって堂々とした国家転覆予告よね、テロよテロ。まぁ、実際の爆発によるとかじゃなくて、機密情報とかをぶちまけることによるタイプのテロだけど。
でも結局は大罪なわけで、そうとなれば確かにこんな顔になるわよね。安心して頂戴な、〝今のところは〟そんなつもり無いから。
「そ、そうか……ん、待ちたまえバートリー少女、〝今のところは〟とはどういう事だい?」
「聞きたい?」
意図的に感情を削ぎ落とした声で再度オールマイトに問いかける、多分、聞いたら貴方達はずっと私の顔色を伺いながら生きていくことになるけど、それでも聞きたいかしら? と
もちろん、表情からも感情を消しているので不気味にしか見えなかったのでしょうね残像が見えるくらいに首を横に降るオールマイトに思わず、クスクスと笑っていた私だったが急に襲った頭部への衝撃で蹲ることになる。
「うわ、痛そ」
「エグイ音がしたけど、だ、大丈夫なん、レイミィちゃん」
何が起きたかって? 血染の拳骨よ、しかも結構本気のやつを直撃したから私は頭を抑えながら蹲ることしか出来ない、いや、本当に痛いんだけど!!!
「ベラベラと話しすぎだ阿呆」
「なぁんで自分から手札をばら撒くようなことしてんのかね、嬢ちゃんは」
「楽しくなっちゃったから、ですかね」
何呑気に話してるのかしらウチの所員たちは……!! あー、痛い、タンコブが出来たとかじゃないでしょこれ、軽く脳みそ揺れた感じするし……
「バートリー、氷いるか?」
「けっ、いい気味だっての」
「か、かっちゃん」
「何と言うか、バートリーくんの便利屋での立ち位置というものがハッキリと分かるな」
轟が出してくれた氷を拳骨を受けた箇所に直に当てながら、ゆっくりと立ち上がる。痛みは幾分はマシになってきて、血染に抗議の視線を飛ばすが
「貴様の自業自得だろ。要らないことまで喋る癖は早急に直せと何度か言った記憶があるからな」
「だからって警告なしの拳骨は止めてほしいわね、頭はデリケートなのよ」
「ふん、その程度で駄目になる頭じゃないだろうが」
それはそうだけど、痛いものは痛いのよ。え、だったら悪癖を早急に直せだって、それは、そうね、えぇ、はい、ごめんなさい……
反省しながら、オールマイトに視線を飛ばす。一応、今回の特訓のために余計なことは絶対にするなと釘を差し、実際に今日のヒーロー活動は最小限まで抑えてもらったのでまだマッスルフォームを維持できるとは思うけど時間は無駄にしたくない。
「HAHAHA、さて少年たち休憩はそろそろ終わりにしようか!」
「うぅ、まだジンジンする。それでオールマイト、悪いけど次もさっきと同じ模擬戦にしてもらって良い? ただし、次はオールマイト側にホークアイを付けるわ」
「む、オールマイトだけでも厳しいと言うのに……」
ま、勝ちの目は更に薄くなるでしょうけど、耐久することは出来るとは思っている。さっきの四対一でもオールマイトが手加減していたとは言え、時間いっぱいまで戦えてたんだし。
ならホークアイこと火伊那が援護に着いたとしてもなんとかなるでしょとは思っている。ただ今回はホークアイにもハンデは付けてもらうつもりだけど。
「ハンデ? どんなのだ」
「普通の弾丸のみで頼める? 曲射弾とかは無しってことで」
「その程度で良いのか? 正直な話、それじゃハンデになるのかすら分かんねぇぞ」
良いのよそれで。と伝えれば、向こうも何かを察したのだろう、それ以上は何も言わずに了解と配置に付きに行くを見送る。
今回、ホークアイをオールマイト側に付けたのは四人の特訓というのも勿論あるが、それ以上に今後のAFO戦を見越してと言うのも存在している。
もしAFOと対決するとなれば間違いなくオールマイトも現場に居るだろうし、その際の戦闘は空間が乱れに乱れる戦いだと想定して、火伊那にはその場面で狙撃をしてもらおうと考えているからだ。
「うーん、その間は私は暇ですね~」
「あ、じゃあまた私と組み手をお願いできませんか?」
「ウチも良いかな、そもそも武術とかはからっきしだけど……」
「おぉ! 良いですよ、響香ちゃんにも初心者からでも出来る簡単なのを教えてあげますから安心してください!」
どうやら被身子は麗日と耳郎に色々と教えるつもりらしい。私もそっちの手伝いに入ろうかしら、これでも教導は出来なくはない方だからね。
それに向こうの大怪獣バトルは私じゃどうしようもないとも言うし、血染、頼める?
「任せておけ、それとバートリー、教えるのは良いが激しい運動は止めておけよ。体に障る」
「分かってるってば、リカバリーガールに怒られたくないもの」
それだけを告げてから私も被身子達の輪に入り、被身子に麗日を任せて、私は耳郎に簡単な護身術のようなものを教えていく、言うまでもなく私と被身子の我流ではあるが寧ろ初心者二人が実用に考えたものなので耳郎にもわかりやすかったのだろう。
「そうそう、そんな感じに相手の力を利用する形で崩すのよ」
「なるほどね。あ、なら私だったら自分の〝個性〟をここで相手に当てるのもありかな?」
「良いと思うわ、音っていうのは防ぐのは難しいし耳郎のは相手の内部に直接だって狙えるんだからやらないのは損ってやつよ」
確かに耳郎の〝個性〟【イヤホンジャック】は伸ばせるが故に中遠距離になりやすいかもしれないけど、近距離からの不意打ちが最も輝くと私は思ってる。
まぁそれでも上位勢とかには通用しない可能性もあるから相手をしっかりと見極めるのは大事だけど、なのでこれは攻めると言うよりも不意の攻撃へのカウンターと覚えておくほうが良いわよ。
「攻められたってことね、んじゃその格上とかち合った場合ってのはどうするべき?」
「逃げれるなら退くべきだけど、そうじゃなかったら策を巡らすしか無いわね。その辺りは経験が物を言うから常に考えておくのが良いわ」
彼女にアドバイスを送ったタイミングで盛大な爆音と主に私達の身体全体を襲う衝撃波、どうやら爆豪が新技を閃いて使ったらしいが、地面に穴が空いてるように見えるのは私だけかしら。
「ウチにも見えるから気の所為ってわけじゃないねこれ、何やってんのアイツ」
「血染、分かる?」
「爆破を一点に集中させて撃ち出した感じだろうな、
なるほど、下手な範囲爆破じゃオールマイトにダメージにならないから一点に火力を集中させて撃ち出したと、閃いたってだけで出来る技じゃないっての。
あとしれっと轟も炎をエンデヴァーみたいに撃ち出してるし、緑谷は明らかにAFOの出力と危機感知の使い方が上手くなってるし、飯田も動きがさっきとは全然違う、直線的だったのがフェイントも織り交ぜたものになっている。
はぁNo.1ヒーローと本気で模擬戦するだけで経験値が溜まっていくものなのね。
「オールマイトも実戦形式なら教導が出来るらしいからな、それも関係してるだろう」
「ふぅん、一応は師匠のメンツは保ったってことね」
もしかしたら早めにこれをするべきだったかもしれないなんて思いつつ時間いっぱいまで模擬戦を行い、本日の特訓は終了。
たった一日、しかもこの一時間ちょいだけだったというのに四人の成長が凄まじかったのは良い収穫だった。今後もオールマイトにはこれを頼みたいくらいだわ。
それと火伊那の狙撃はあの状況下でも8割は命中したとのこと、ただ本人は9割以上に近付けたいとは言ってた。
「ふむ、分かった。可能な限り顔を出してみよう、それと今後の施設の補修代は私からにしておいてくれ」
「あら、ありがたいわ、それじゃ明日は駄目ね。私が予定があるから」
そう、明日は放課後はすぐに行かなければならない場所がある。なんて言ってもこの場のオールマイトと爆豪以外は全員知ってるんだけど。
なので緑谷達も分かっていると頷き、爆豪は分かってないが何かあるのは察したようで興味なさげに帰り支度を始め、オールマイトは
「ふむ、君が予定となると便利屋かな?」
「……まぁそんなところ?」
「そこは言い切りましょうよ、疑問系は駄目だと思いますよ」
いや、だって便利屋関連かってなると微妙だったから。けどオールマイトは納得したので良しとし、翌日の放課後、私達、便利屋は轟家の門の前にいた、それはつまり
「なぁ、間違いなく私はバレると思うんだが」
「分かってるわ、覚悟を決めなさい」
その日は冷さんの退院祝いであり、彼らに轟燈矢の近況を報告する日でもあり、便利屋がタルタロスから火伊那をスカウトしたとエンデヴァーに一応の報告をする日でもある、胃が痛いわね。
と言うか百話なのにまだ期末始まってすらいないとか鈍亀進行が過ぎないかこの小説……