便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

101 / 191
 月曜日に体力を消耗し尽くして火曜日も職場が修羅場でもう疲れちゃって、全然書けなくてぇ……(コログ並感)

 まぁそんな理由で更新できませんでした、ごめんなさい……


No.101『物凄くマイルドな轟家』

 相変わらず立派な正門の前、ここは轟家なのだがそこに私達は来ていた。目的は冷さんの退院祝いがメインにあとはあれこれ色々となのだが、その色々が私の胃を虐めてきている。

 

「大丈夫かい、所長、さっきからお腹を擦ってるけど」

 

「腹痛か? 珍しいな」

 

「あの感じは胃が痛いって感じですね、これからのことを思ってのストレス性だと思いますよ」

 

「んだよ、私には覚悟を決めなさいとか言っておきながら嬢ちゃんが決めてねぇじゃねぇか」

 

「いや、お前の件じゃないだろうな。大方、自分のことを焦凍の母親に伝えるのがってところだろ」

 

 血染の指摘が全てだ。そう、私はあれを、殻木との接触で判明した自分のアレそれを話すということをまだ迷っていた。

 

 だったら言わなきゃという指摘も来そうだが、どうせエンデヴァーがホークス経由で彼に渡した資料を読むだろうと考えれば時間稼ぎ程度でしか無い、なのでここで話してしまうつもりだが。

 

(拒絶とかをするような人じゃないってのも理解してるし、躊躇するようなことでもないとは思ってはいるんだけどね)

 

 どうにも迷いが生じている、下手に同情されるのが嫌なのかとも考えたがそうでもない気がするし、自分のことだと言うのにいまいちこの感情が理解しきれていない。

 

 あとついでに言えば、自分の生い立ちを知ってしまったがゆえに冷さんにどんな顔で会えば良いのかが分からなくなったってのもある。

 

「今更、迷ったってしょうがないだろ、行くぞ」

 

「うぐっ、そうよね」

 

「つか何を悩む必要があるってんだ。吹っ切ったんだろ、なら堂々と言っちまえってんだ」

 

 簡単に言ってくれると思ったけど火伊那の言う通りね。くよくよ悩むなんて私らしくもないし、話さないっていうのはこう、信頼してないって感じがしちゃうから嫌だもの。

 

 今日までで相当長い付き合いだからこそ、あまり隠し事はしたくないじゃない?

 

「の割には、まだ轟には心臓の事とかは言ってないんだがな」

 

「それはそれ、これはこれってやつよ。それじゃ、行きましょ」

 

「まぁ話したら絶対に焦凍くんは所長を戦わせないと無茶しそうだもんね」

 

「クラスメイトも同じですよ圧紘くん、だから皆にも内緒にしてるんですし」

 

「それ、後で絶対に拗れるやつだと思うんだが……」

 

 あーあー、聴こえなーい。でも仁の懸念は私も持ってはいるけどね、だからっておいそれと話せる内容でもないし、と思いつつ玄関のインターホンを鳴らせばパタパタと女性の足音がし出迎えたのは

 

「あ、いらっしゃい皆さん」

 

「こんにちは、冬美さん。今日はごめんなさいね、家族水入らずで退院祝いしたかったでしょうに」

 

「何言ってるの、お母さんがこんなに早く退院できたのはレイミィちゃんのお陰でもあるんだから、寧ろ来てくれなかったら悲しいかな」

 

「あ、レイミィちゃん照れてます」

 

 笑顔で真正面からそう言われて照れないわけ無いでしょうが。それよりも玄関前で大人数が長々と話してると迷惑だろうから早いところ入っちゃいましょ、あぁそれと火伊那、仮面外して。

 

「あいよ、ヘアピンは?」

 

「……居間まで解除は待って、冬美さん、全員集まってるのよね?」

 

「うん、お母さんも午前中に帰ってきて揃ってる」

 

 全員、ね。アイツも流石に早めに切り上げて帰ってきたってことでいいのよね、いや、まぁこれで居なかったら直ぐにでも呼び出すだけなんだけど。

 

 彼に、いえ、轟家全員に私達が今日来る理由は退院祝いだけじゃないことは焦凍を通して伝えている。なので帰ってないほうが問題だと言えばそうなんだけどね。

 

 なんてことを思いながら冬美さんの後を着いていき私達は居間へ。着けば、既に揃っている轟家の面々に代表として私が正座してから

 

「お久しぶり、というのもなんだか少し違う気がするけど。退院おめでとうございます、冷さん」

 

「ありがとう、バートリーさん」

 

「俺からも言わせてくれ、お前のお陰で冷も早く回復した。本当に感謝している」

 

 刹那、私は思わず立ち上がって後退りしそうになったのは覚えている。いや、だって、あのエンデヴァーが私に頭を下げるだけじゃなくて感謝の言葉を述べたのよ?

 

 世界が明日には滅びますとか言われても信じられるくらいには異常な光景でしか無いのよ、ほら見なさい、焦凍も夏雄さんも冬美さんだって目を見開いて驚いてるし。

 

「ど、どういう風の吹き回しよ」

 

「どうも何も当たり前の礼をしただけだ、寧ろそこまで言われる筋合いこそ無いだろう」

 

「そう、ね。悪かったわ、さてと……」

 

 雰囲気を祝っていたものから真面目のものに切り替える。正直に言えば、退院早々の冷さんにこんな話をしたいわけではないのだけれど、向こうもこの情報は待っていたと考えれば後回しには出来ない。

 

 向こうもそれを感じ取ってくれたようで全員が真剣な表情で私を見つめる。先ずはそうね、火伊那のことを話すべきよね、まぁエンデヴァーは薄々勘づいてる感じだけど。

 

「ヘアピン、解除していいわよ」

 

「あいよ、人前でこの髪色に戻すのは久しぶりだな」

 

「まぁ、迂闊に解除した時には間違いなく騒がれちゃいますからね~」

 

 火伊那が来てから少ししてから一度だけで商店街の人たちや、依頼で偶々出会したプロヒーローに写真でレディナガンを見せたら割と知られたからね。

 

 存外、10年以上経ってても覚えてる人は覚えてるものだと感心したのは記憶に新しいわ。そして、つまりそれは轟家にも言えるわけであって、先ずエンデヴァーがやはりかと口にしてから

 

「ホークスから話だけは聞いていたが本当とはな」

 

「もしかして、レディナガンさん……?」

 

「あぁ、まぁ今はその名前は捨てて筒美火伊那として便利屋に雇われてるけどな。にしても結構覚えられてるもんだ、そこの坊主も知ってる感じだろ?」

 

 焦凍を指させば、彼も小さく頷く。頷くのだけれどなんかリアクションが薄い気がする、なので反応薄くないと聞いてみれば

 

「バートリーなら、ありえなくないかと思っただけだ」

 

「すげーな、ここまで説得力しか無い言葉は中々に見ないぞ」

 

「そうだねとしか返せないや、所長」

 

 信頼度の高さってこういう事を言うのね、まぁでも一々説明が省けるから助かるし、別に怒る理由もないから良いんだけど。これがもしエンデヴァーの口から出てきたら即刻開戦も辞さないつもりだけどね。

 

 ってあまりこの話で長々と時間は取るつもりはないからもう良いかしら? 夏雄さんも冬美さんも聞きたいこととかがあるかもしれないけど、今は置いといて欲しい。

 

「え、あぁ、いや、特にはないかなって。レイミィちゃんが迎えたってことは大丈夫だってことだろうから」

 

「寧ろ、それをさらっとやり遂げるの凄いなとしか俺も思えないな」

 

 無いのね、それはそれで良いのだけれど、私の評価は何処かで一度は聞いたほうが良いのかもしれない、とは言えそれは今ではない。

 

 火伊那とのやり取りで若干空気が軽くなっていたけど、今度は間違いなく重くなる。

 

「ふぅ、火伊那の件については後にしておきましょう。どちらかと言えばコレが本題なのだから」

 

 言いながら私は鞄から書類の束を取り出し、そのうちの一枚を轟家の面々に差し出す。そこに書かれているのは殻木から貰った一人の人物の詳細な情報。

 

 今日まで私とエンデヴァーで集めてもまるで出てこなかった彼の情報。その名は……

 

「轟燈矢についてよ。単刀直入に言えば彼は生きてるわ」

 

 正確に言うとすれば生きてはいるけど、と言う注釈が入るけど。あの山火事の日、瀕死に状態の彼を後の敵連合のブレインである殻木がとある目的のために拾い治療を施される。

 

 けれど目覚めるのに三年掛かり、その治療の過程で体質も弱体化、声も顔も別人のようになってしまい、だからこそ私達の捜査は空振りを続けていた。

 

「殻木……? 蛇腔総合病院の理事長のことか?」

 

「えぇ、アイツが敵連合のブレインとして協力してたわ。ともかく、その後は彼、というよりもその親玉の誘いを断って保護されていた孤児院を焼き払って逃亡して今に至るまで所在不明らしいわ」

 

 けれど見た目が分かったおかげで私と公安、警察組織に秘密裏に調査を手伝ってもらい情報をかき集め、その結果で分かったのは。

 

「彼は今、裏社会で【荼毘】と言う通り名で活動していることが分かった。件数は〝個性〟故に多くないけど、何件かは関わってる痕跡も発見したわ」

 

「……そうか」

 

「燈矢、バートリーさん、あの子は今、どんな姿をしているのですか?」

 

 聞かれ、私は1枚の写真を提出する。そこに映されている一人の男性は言われなければ、もしこうして私が情報を持ってくることがなければ自分たちの息子だとは気付けないほどに変わっているが、確かに彼が轟燈矢なのだ。

 

 夏雄さんも、冬美さんも、そして焦凍も写真を見て二人はあまりの変わりように言葉を失い、けれど焦凍だけは何かに気づいたかのように一言。

 

「目、母さんと似てる気がする」

 

「この空気の中、それを言える貴方が凄いと思えるわ、私」

 

「焦凍くんらしいと言えば、らしいですけどね」

 

 けれど、ほんの少しだけ空気が軽くなったのも事実だ。けれど流石に重い話題なのは確かであり、しかも息子が件数が多くないとは言え犯罪に手を染めているという事実はショックが大きいだろう。

 

 それこそ、冷さんの体調がまた不安定にならないかと心配になるくらいには。だが彼女はショックを受けてるのは確かなのだが、それ以上に生きていたという安堵のほうが大きかったのだろう、その顔には嬉しさが混ざっているようにも見えた。

 

 いえ、それは冷さんだけではないわね。冬美さんも夏雄さんもその部分には安堵の息を吐きだしてる、やっぱり家族の安否が分かるというのは安心するものらしい。

 

「だが、所在不明とすると今後も探すしか無いか」

 

「いえ、次の林間合宿、そこで敵連合が仕掛けてくる際に彼は居ると睨んでいるわ」

 

「どうして断言できるんだ、バートリー」

 

 焦凍の疑問もご尤もだけど、その答えは至極単純、向こうに戦力が足りないからよ。今日までの襲撃で敵連合は脳無を毎回の如く失い、雇ったチンピラ連中も毎度の全員捕縛、決め手に殻木が今後は脳無の生産をあの手この手で遅らせるからそれも当てに出来ないとなれば、裏のブローカーを利用して戦力を集めるだろうからよ。

 

「待て待て、どうして殻木がそんな事をするんだ」

 

「あ、そう言えば言ってなかったっけ? あいつ、こっちに引き込んだのよ。だから燈矢の情報も手に入ったし、向こうの内情も知ってるってわけ」

 

「ホークスが言ってたのはこの事だったのか……」

 

 まぁ引き込んだ手段が手段だから詳細は話せないし、話さないけど。ともかく、敵連合の戦力集めの過程で燈矢にも声がかかり加わると思う、なんたって雄英高校の林間合宿だもの、焦凍が居るのは分かってるでしょうからね。

 

 そして、そのタイミングで私は彼を便利屋に引きずり込む、何があっても絶対に。

 

「出来るのか、バートリー」

 

「やるわ、彼の前科云々も前例があるからなんとかなると思う」

 

「前例って、あ、そういうこと」

 

 まさかこんな所で、あの二人にやって裏工作が役に立つとは思わなかったわ。正に棚からぼた餅っていうやつよねこれ、あぁ安心して頂戴、真っ黒な手段じゃないから。

 

「あれを真っ黒じゃないと言える度胸よ。どう考えたって真っ黒だろ嬢ちゃん」

 

「何言ってるのかしら、やらかしたのは【荼毘】であって【轟燈矢】じゃないわよ」

 

「物は言いようってやつですね、分かります」

 

 一々、茶々を入れないでくれるかしら? それにそうじゃないと流石に灰色の便利屋でも難しいっての。ただ、問題があるとすれば治療の方面よね、殻木の資料が正しければあまり長くないって話だし……

 

 何か、こう、便利な〝個性〟持ちでも居ないかしら。エンデヴァー、心当たりとか無い?

 

「すぐには浮かばんな。だが、その手の情報も集めてみよう、俺が出来る贖罪であれば何でも」

 

「私の方も出来る限り聞いてみるよ、学校って結構、その手の情報も集まりやすいし」

 

「俺も大学で聞いてみる、もしかしたらあるかもしれないし」

 

 そうしてもらえると助かるわ。一応、殻木の医療技術もあるから時間を掛ければ完治が出来るかもしれないけど、手札は大いに越したことはないから。

 

 あと、焦凍、林間合宿の時に向こうから接触してくるかもしれないから放課後の特訓は少し力を入れて行うわ、そのつもりで。

 

「分かってる。燈矢兄と話にしても戦えなきゃ、聞いてくれそうにないだろうし」

 

「安心しろ、焦凍、そんときゃ俺達もサポートに回ってやるからよ」

 

「そうそう、便利屋はこういう時に利用してくれて良いんだよ」

 

「ありがとうございます、仁さん、圧紘さん」

 

「バートリーさん、それに便利屋の皆さん、私は何も出来ませんが。息子を、燈矢をよろしくお願いします」

 

 深々と頭を下げる冷さんの隣でエンデヴァー達も同じ様に頭を下げる。けどね、違うのよ冷さん、何も出来ないって言うけど、私はそうじゃないと思ってる。

 

 だって、最後の最後、彼を迎える役目は貴女にしか出来ないと思っているから。家族を迎えるのは貴方達の役目、私達ができるのは彼を前に突き出すまでなのよ、だから。

 

「任せてください、絶対に冷さん達の前に燈矢を連れてきてみせますから」

 

 さて、思ったよりもいい感じに話も終わったし、折角だから退院祝いとして私がオムライスを作ることにしましょう。冬美さんにも焦凍経由で伝わっているわよね?

 

「うん、聞いてるよ。久しぶりにレイミィちゃんのオムライスを食べれるから私も楽しみなんだ」

 

「バートリーさんのオムライスですか?」

 

「母さん、間違いなく驚くと思う。俺も初めて食った特は驚愕するしか無かったし」

 

「作れるのか、お前が?」

 

「親父、バートリーの腕は凄い」

 

 端的なけれど実感しか込められていない焦凍の声にエンデヴァーが怯むのを見て私は思わず笑いながら冬美さんと被身子を連れて台所へ向かい、腕を振るって……

 

 おかしいわよね、腕を振るってそれを食べてもらって絶賛してもらい、軽く話してから帰ろうっていう流れのはずじゃないの、何だって……

 

「レイミィちゃんの肌とか髪とか本当に綺麗だよね」

 

「ですよねですよね! なのにスキンケアとかしてないんですよ、卑怯だと思うんですよ!」

 

「本当に!? うわぁ、羨ましいなぁ」

 

 なんで冬美さんと被身子と一緒にお風呂に入ってるのでしょうね?




次回も轟家、こういう時じゃないとレイミィちゃんの日常ほのぼのが稼げないからね、仕方ないね。

まぁ、その分、後に彼女には色々と背負ってもらうことになるんですけど
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。