便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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前書きに書くようなことじゃないと思うんですけど、すみません。来週の火曜日もちょっと更新が難しいので日曜日、金曜日更新になります。


No.108『B組、育成計画』

 演習試験が始まりモニターからは各陣営が戦闘を始めた音が流れる中、私はと言うとリカバリーガールの出張保健室に用意された個室に居た。

 

 もっと正確に言えば、私とブラド先生が、だけど。どうやら話があるというのは彼のことだったらしい。

 

「それで話っていうのは?」

 

「実はな、君たち便利屋に依頼を出したいと思ってこの場を用意してもらった」

 

 依頼? 思わず聞き返してしまった、別に学園関係なら個別で依頼って形にしなくても普通に頼めば学園からの依頼の延長線でやるんだけど。

 

 と思ったがよくよく考えれば自分はA組に居て、基本的に彼らの訓練やいざという時の警護を務めていると聞いているのならば彼が個人的にと言う形で話を持ってくるのは納得の内容だった。

 

「あぁ、今度の夏休み中に林間合宿があるのは知っているな」

 

「そりゃ勿論、だからA組の皆も期末テストを頑張ってるんだし」

 

「その林間合宿の際、便利屋としてB組に訓練を付けてもらえないだろうか?」

 

 そこで上記のようにあぁと私は納得した。確かに私はA組に在籍して、結果として彼らの成長に手を貸している状態だ、彼からすればA組とB組の差が明確に現れ始めてしまっていると。

 

 彼の懸念も理解できない訳では無い、特に現状のA組とB組にある明確な差としては一つ大きなものもある、それは。

 

(ヴィラン)との戦闘経験の差、そこね」

 

「そこばかりはどうしてもな、かと言って教師としての立場からすればそういう現場に対策もなしに出すことも出来ない」

 

「だからこそ私たちに頼む、合理的ね。相澤先生の助言かしら?」

 

 言いながらチラッと相澤先生の演習試験が映されているモニターを見る。映っていたのは丁度、八百万と轟が相澤先生と接敵し、応戦を始めた場面。

 

 見た感じ、八百万は問題なさそうではある。もっとも、【抹消】された状態では不利なのは変わらず二人は翻弄されてはいるけど、突破できないという感じではなさそうね。

 

「察するに合宿中か、或いは宿場に向かう途中に便利屋がB組に襲撃でもしたほうが良いって感じかしら? 彼らは私達のことはあまり知らないと思うし」

 

「受けてもらえるのか……?」

 

 え、そこで驚かれるの? 別に受けないとか考えるとかって言った記憶ないんだけど、それに合宿の時には確実に敵連合の襲撃もあるって考えれば受けない理由もないし。

 

 流石に本物の(ヴィラン)って訳じゃないから雰囲気も可能な限り近付けたものでしか無いけど、それらしい振る舞いは便利屋は全員できる。

 

 というよりも便利屋としての依頼の中にはヒーローショーの敵役だったり、学校の避難訓練の敵役を頼めるかというものがそれなりに来るから自然とできるようになったが正しいけど。

 

(何が笑えるって、皆して(ヴィラン)面と雰囲気が出せるもんだからウケが良いのよねあれ)

 

 と言うよりは元来の性質が(ヴィラン)寄りの集まりなのよね私達って。ただちょっと、歯車が良い方向に噛み合って便利屋っていう灰色の集団に集まってるだけで、特に血染なんかは私が居なかったら現在進行系の凶悪(ヴィラン)だったに違いないわ。

 

 いや、それ言ったら被身子も結構危ういわね、あの娘って誰かと同じになりたいで血を吸わせてほしいって思考になりやすいし、今も偶に私の血を吸ってくるし……つか、なんだろ、私が居なかったら全員して敵連合に入ってそうよね。

 

「いや、君はA組に力を入れてたと思っていたからな、まさか即決で受けてもらえるとは思ってなかったというのが本音だ」

 

「校長から話は聞いてないのかしら? A組は今年はほぼ確実に(ヴィラン)に狙われるから重点してたってだけで合宿となればB組も絡まれるだろうしって話よ」

 

 正直、私がここまで手を貸してたもの緑谷が基本だし、その彼も今やA組の主力の一人になったからそこまで気にしなくても大丈夫になっている。

 

 ともすれば、合宿時に巻き込まられる形になるB組の面々のほうが心配だというのが本音でもある。なので正直に言えば、このタイミングでブラド先生からその話が出てきてくれたのはありがたいとすら思う。

 

 じゃなかったら当日に突発的に始めるつもりだったので後で揉めたりすると面倒だなぁとか考えてたし、なんてことを話せば苦笑された、でしょうね。

 

「その気持ちはありがたいのだが、突発的だと我々も要らぬ混乱を引き起こすかもしれないから止めてもらえるとありがたい」

 

「分かってるわ。とは言っても何も手を出さないってわけにも行かなかったから考えてたってだけで、今こうして話を持ってきてくれたお陰で憂いなく行動に移せるわ」

 

 因みにだけど彼から個人的な依頼とは言われたが報酬は校長に請求するつもりだ。なのでブラド先生が懐を痛める必要はないわ、いや、どうせあの校長のことだから今回のことも見越しての報酬でしょうね。

 

 寧ろ私がB組を気にしなさすぎたかもしれない、タイミングがなかったからとは言え接触は体育祭の塩崎以外とは本当に無かったし、ともすれば今回の合宿は彼らの方を重視しても良いかもしれないわ。

 

「ってことなんだけど、どうかしら?」

 

「それは願ってもいないことだが、A組は良いのか?」

 

「心配がないわけじゃないけど、あとは学校側と自主訓練でなんとかなるレベルだと思うから大丈夫よ。あっと、勘違いしないで頂戴、B組が弱いとは言ってるわけじゃないから」

 

 A組は個々の〝個性〟が強力であり身体能力の方も決して低いわけではない、少し前ならクラス全体での協調性が主に個性の強さで不安だけど、そこは合宿でどうにかなると思う。

 

 逆にB組は実際に見たわけじゃないけど、〝個性〟も弱いわけじゃなく塩崎と拳藤の話を聞く限りは現状で結束と連携も悪くない。

 

 なので彼らに足りないのは実戦経験、(ヴィラン)と相対した時のプレッシャーに晒されたことがないの一点。それだけで現状ではA組と差が出来てしまっていると言っても過言ではない。

 

「だから合宿の初日には一度体験してもらうわ。最も、私達も本物ってわけじゃないから完璧というわけじゃないけど」

 

「……話には聞いていたが、合宿中に敵連合が本当にくるのか?」

 

「えぇ、間違いなく。と言うか、このタイミングで向こうを壊滅させるつもりだわ、そのための準備も進めてるわけだし」

 

 もし今回で壊滅出来ないとなるとあとが怖い、内通者と言うカードも失って殻木の裏切りに死柄木弔も離反みたいな動きを見せているとなればAFOがどんな行動を起こすか……

 

 最悪、なりふり構わずとかやってきても不思議じゃない、なので勝負はこのタイミングなの。

 

「それは理解できるが、ならば偽の情報でというのはだめなのか?」

 

「向こうが油断する確実性が欲しいの。相手は馬鹿じゃないわ、けれど手の内だと思い込んでる間なら油断してくれるなら一気に攻めることが出来るの」

 

 教師として、プロヒーローとして生徒を危険に晒したくないというのは分かるんだけど、どうせヒーロー科なんだし将来的には(ヴィラン)と相対することになる。

 

 ならそれが遅いか早いかの差でしか無いと私は思っている。早い内に相対しておき慣れておく、ついでに不測の事態への経験も積めるならば良いこと尽くめじゃないの。

 

「悪いけど、私は無菌室で彼らを育てるつもりはないわよ。それに分かってるからこそ対策は練ってあるし」

 

「うぅむ、いや、そうだな。君の言う通りだ、危険に積極的にさらすのはどうかと思わなくはないが、何も起こさずに外に出すのも間違い、か」

 

「教師として、プロヒーローとしてならば間違えてないけどね。寧ろ私達がちょっと厳し目だと言われても納得できるし」

 

 崖から突き落としてからが本番とか思ってるし、ヒーローに対して厳し目だと言われてもそうねとしか言えないし、でも悪いのは血染だと思うのよ。

 

 あいつのヒーロー評はすっごい厳しいから……長年、一緒に居た私も自然とそっちに引っ張られて今に至るわけだしって今はいいかこれは、それよりも

 

「んじゃ、当日の私達の動きを決めちゃいましょうか。確かB組はA組とは別の地点から合宿場に向かうんだったわよね?」

 

「何故知っていると聞きたいが、あぁその通りだ。彼らとは別地点から登山という形を取るつもりだ、距離にして大体、慣れてる人間ならば三時間程度と言ったところか」

 

 どうやら話がここまで進むことを見越して地図を持ってきていたらしいのでブラド先生とそれを見ながら当日の計画を立てる。因みに地点が違うとかが知ってたのは言うまでもなくモスキートである。

 

 A組は【ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ】が相手をする、そこに便利屋からは被身子と仁を貸し出しているのでB組に出せるのは血染、圧紘、火伊那の三人、まぁ必要なら仁に〝二倍〟で増えてもらって被身子も仁も出てこれるから便利屋、総出とも言えるけど。

 

 流石に私は向こうに顔を知られているし変装しても翼とかで物間は気付いてくるだろうからコウモリを使ったサポートが精々、それにリカバリーガールが私が本格的に動くのを許さないだろうし。

 

「とりあえず、開幕と同時にブラド先生には退場してもらうわ。不測の事態ってやつね」

 

「本気で抵抗するが、問題ないのか?」

 

「はんっ、血染と圧紘、火伊那の不意打ちを凌げるなら見せてもらいたいものだわ。それに私だってサポートに動くんだから、負けるつもりは一切ないわよ」

 

「余程の自信だが分かった、それで行こう。その後はどうする?」

 

「血染に本気で(ヴィラン)としての圧を出してもらうわ。本物とは違うけどほぼ実戦に近いものは感じ取れるはず、それからはB組の動き次第ね」

 

 とは言ってもヒーローの卵の集まり、何も出来ないとか行動を起こさないとかは無いと思っている。最悪、ブラド先生を人質に煽れば勝手に動き出すでしょ。

 

 問題があるとすれば、無茶をして途中で大怪我とかが起きるパターンよね。念の為に仁にはリカバリーガールの測定をしてもらって出せるようにしてもらうけど。

 

「聞く限りなのだが、仁、確か課長だったか。彼のその〝個性〟は凄いのだな」

 

「ん? あぁまぁ? (ヴィラン)じゃないことを感謝しなさいってレベルで凶悪よ」

 

 測定さえすれば〝個性〟も自由に使えるコピーが生み出せるとか冷静に考えなくてもヤバいわよねって今はこの話は良いわね。

 

 その後は少し逸れそうになった会話を戻しつつ、あーだこーだと計画を練っていく、若干ブラド先生が本当に大丈夫かと生徒思いなことを口にしてくるが、何とか飲み込んでもらい、そして。

 

「ではこの流れで当日は頼む」

 

「任せなさい、便利屋は決して手を抜かず完璧に依頼はこなしてみせるから」

 

 笑みを浮かべつつそんなことを述べてみれば、向こうは頼むと言う一言でB組の方に戻ると部屋を出ていく、私も彼の後に部屋から出ればリカバリーガールから。

 

「話は済んだようだね」

 

「えぇ、それでこの後はどうすれば良いのかしら?」

 

「どうも何も、このモニターでクラスメイトの試験でも見て待ってればいいさ」

 

 あ、本気で演習試験は私は免除されてるのね。いえ、免除と言うよりはどうせ便利屋の依頼で合宿には行くのだからやる必要がないって感じ?

 

 でもそれって学校的にどうなのかしら? ほら、試験って単位とかの意味もあるでしょうし、ふと疑問に思い聞いてみれば

 

「今日までに現場に出て実戦を積んでるってのに演習試験なんてお遊びにしかならないだろう?」

 

「まぁ、仮にやるとすれば〝演習〟では収まらないわね」

 

「そういうことさ。それよりもアンタ、どんな鍛え方をしたんだい?」

 

 ふと出されたその言葉に私は小首を傾げれば、リカバリーガールはため息を一つしてからモニターを指差す。そのモニターを見れば映されていたのは緑谷爆豪コンビ、ふむ良い感じに善戦しているようねと感想を述べれば。

 

「ハンデを背負ってるとは言えほぼ本気のオールマイト相手に二人がかりで善戦しているってのが驚くしかないんだがね。他の組もそうさ、相澤が相手してるところなんてもうすぐ突破しちまうよあれ」

 

「クラス最上位の二人よ? 寧ろ一番乗りで突破しようがが不思議じゃないわ、まぁ……」

 

 確かに一番乗りで突破は当たり前とも言えるかもしれないがと八百万轟ペアのモニターを見れば、もうゴール手前を悠々と走る二人の姿。相澤先生はどうやら無力化されたらしい、しておいてカフスを嵌めに行かなかったのは確実を取ったのだろう。

 

 或いは、無力化と言っても撃破ではなく行動を阻害した程度なのかもしれない、が突破は確実であり二人揃ってステージを脱出、それを確認してからリカバリーガールが放送にて

 

「報告だよ。条件達成、最初のチームは轟・八百万チー……」

 

 リカバリーガールがチームを名を言い切るよりも前にモニター越しだと言うのに騒々しいと言えるほどの爆音が響き、私がそのモニターを見れば思わず笑ってしまった。

 

「ハハハッ! まさか本当にやるとは思わなかったわ! えぇ、えぇ、そうよね、貴方達ならそれくらいは出来てくれなきゃ困るわ!!」

 

「マイク、入ってて丸聞こえだよそれ」

 

 何だか呆れた声が聞こえるが私にそれが届くこともなく、モニターを見て笑い続ける。そこに映し出されていたのはオールマイトの両手にカフスを嵌めたうえで脱出地点を転がるように抜ける緑谷・爆豪チームの姿だった。




因みに今年中にパソコンを修理に出すかもしれないので一週間くらい更新が止まるかもしれませんがご了承ください。

便利屋メモ
レイミィが爆笑している場面から全て試験会場に丸聞こえなため、峰田がなんで!?となってたとかなんとか。
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