便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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なお、完璧に覚醒した起きたのはこれが初めてのものとする


第七章【林間合宿と便利屋と敵連合】
No.111『朝きちんと起きただけでこれよ?』


 買い出し当日の朝、私は自室にて軽く悩んでいた。目の前には複数のオフの時に着る服の数々、私が前に体育祭の打ち上げで友人と遊びに出たということから被身子が更に増やしたらしいのだけれど、だからこそ悩んでいた。

 

(どれを着ていけばいいのかしら)

 

 流石に二度三度も言われるようになれば着ていく服というものを気にするものにはなる、なるが今まで考えてこなかったが故に何が似合うとかの自覚がないのよね……うーん、被身子が来るまで待ってたほうが良いかしら?

 

 って言ったところから分かると思うけど、朝まだ早すぎたのよね。何時もだったらアラームまで目が覚めないんだけど、これもあれかしら吸血をしたことによる変化ってことかしら。

 

 なんか考えるも面倒になってきたし、前の打ち上げのときと同じ服で良いかもしれない。あ、でも同じっていうのは芸が無いとかになるかしらね……? ってそうだ。

 

(そう言えば、前の体育祭後の打ち上げのときに服買ってたわよね?)

 

 確か買ったは良いんだけど着てなかったのよね。単純に機会がなかったってだけなんだけど、こういう時に着ていくのが丁度いいと思うしと考えていたタイミングでスマホのアラームが部屋に鳴り響く。

 

 なるほど、寝ぼけてない頭で聞くと割と煩いわねこれなんて思いながらアラームを切れば、今度は扉がノックされ

 

「レイミィちゃん! 起きてますか!!!」

 

「今開けるわ!」

 

 相変わらず元気だねとか思いながら返事を返せば、扉の先で動揺された気配を感じ取った。なんで? 普通に返事をしたら動揺されるとかちょっと本気で意味が分からないんだけど?

 

 とりあえず、扉を開けてみれば目を見開いて驚き固まっている被身子とまた巻き込まれたのか、はたまたルーティンとして組み込まれたのか、こちらもまた軽く驚いた表情をしている火伊那の二人の姿。

 

 それは良いんだけどさ、なんで驚かれてるのかしらね? 普通に反応を返しただけだと思うんだけどさ。

 

「その普通が今まで無かったんだから驚いてんだって話だが?」

 

「快挙です。今日まで一度もなかった展開にトガは驚いてます」

 

 言われそんなまさかと思いたくもなったけど、よくよく思い出してみれば確かに朝のこの時間からこんなに意識がはっきりとした状態で被身子に挨拶をした覚えはない。

 

 大体が覚醒しきってない顔か死んだ顔をしてるかの2択だったなと。そう考えれば2人の言い分は分からなくはない。

 

 分からなくはないけど、あんまりな言われようじゃないかしら? 私だってやれば出来る人間のつもりなんだけど。

 

「少なくても中学から出来た試しがないですからね?」

 

「……そうだったわね」

 

 真顔で告げられる言葉に私はぐうの音も出なかった。でも大丈夫よ、やっとあの日に吸血した分が馴染んできたからなのか調子も良いんだから今後はこうやって起きれるわよ。

 

「それはそれで大丈夫なのかって問題があるけどな、馴染んだってことはその分、【吸血姫】の力が増して身体の負荷が強くなるってことだ」

 

「心配は分かるけど、こればかりは今後はもう割り切って付き合っていくしかないわよ」

 

「何かしら異常を感じたらすぐに言うんですよ? さて、それよりも朝の準備しちゃいましょ! 確か今日はA組のみんなと買い出しに出るんですよね?」

 

「えぇ、あ、それで相談なんだけどさ被身子……服を幾つか出してみたんだけど、どれがいいかしら?」

 

 会話の流れからそう切り出し、私としては前の打ち上げで買ったやつが良いと思ってるんだけどと続けたのだけれど、返事が返ってこない。

 

 どうしたのかと見てみれば目をこれでもかと見開き驚いている被身子の姿とそれを見て、私と同じようにどうしたのかと疑問に思っている火伊那の姿。

 

「被身子?」

 

「か、火伊那ちゃん、今日のお夕飯は豪華なステーキにしましょう。明日は間違いなくこの国が滅びますから」

 

「マジかよ、短い付き合いだったがまぁ悪くはなかったな」

 

「ちょっと失礼が過ぎるんじゃないかしらねぇ!!」

 

 解せないのよね、なんで今日着ていく服の話をしただけでこの世の終わりが明日に迫ってるみたいな反応されるのがさ。

 

 いや、普通に考えて失礼でしょあれ。着替えと朝の準備を終えて事務所にて朝食中にその時のことを血染と圧紘と仁に話してみれば、返ってきたのは。

 

「悪いお嬢、俺も多分同じ反応すると思う」

 

「朝、起きれたことに関しては所長なら出来ても不思議じゃないと思うけど、服を自発的にっていうのは驚いちゃうかなぁって」

 

「出来るなら普段から起きろ」

 

 よもや、味方が居ないとは思わなかったわ。血染に至ってはもはや興味がないという感じの反応だし、何よ、私がそういうのを考えちゃ悪いって言いたい訳かしら貴方達は、拗ねるわよ。

 

 良いのかしら、私が拗ねたら面倒だってことは知ってるでしょ? 本気だからね?

 

「あはは、ごめんごめん所長。でも今日までそういう話は一度もしてこなかったもんだからみんな驚いちゃったんだよ」

 

「うーむ、はぁ、まぁ納得しておくわよ。それじゃ、今日の流れを確認しておくわよ」

 

 なんてことがあったのが今朝の話。現在は既に買い出しのために打ち上げでの時にも行った木梛区ショッピングモール、合流早々に話の種にと便利屋の今朝の話をしてみれば。

 

「一緒に住んでる人間全員から言われるってことはそういうことなんだよ、バートリー」

 

「渡我さんもよく話してるなぁ、レイミィちゃんは朝が本当に弱くてカアイイんだけど困りますって」

 

 被身子、私が帰ったら覚えておきなさいね。思わぬところから私の個人情報が流れてたことに米神をピクつかせそうになるのを堪えつつ、耳郎の言葉に対して私はこう答える。

 

「長い時間一緒に過ごしてたがゆえにってことかしらね?」

 

「多分ね。それと赤黒さんなんかは少しは嬉しいんじゃない? だからこそ普段からって事を言ったんだと思うし」

 

「あれが? それは笑える冗談ってやつよ耳郎。彼はそんな甘い人間じゃないわ、えぇ」

 

 そんなまるで子どもの成長を喜ぶようなタイプには間違っても見えないってと答えれば、何故か優しい目線を全員から貰った、解せないわね。

 

 解せないので近くに居た緑谷にどういうことなのこれと圧を込めて説明を求めれば

 

「へ!? あ、ええっと、あ、あはは」

 

「ちっ、笑って誤魔化せるとでも思ってるのかしら?」

 

「あの人なら別に不思議じゃねぇと思うけどな。何だかんだでバートリーを一番心配してるのはあの人だと思うし」

 

 呟くように出された轟からの言葉に私はぐぬぅと唸ることになる。確かに何だかんだで心配かけてるのは血染であるのは間違っていない、彼が一番側で私を見て、段々と不調になっていくのを知っているのだから。

 

 ともすれば吸血のお陰で〝個性〟が強くなってっていう部分にも心配しつつも快方している部分は素直に良いと思っての言葉、なのかしらねあれ? 本当に?

 

「まぁ、今考えても仕方がないっか。それよりも買い出しするならしちゃいましょ?」

 

「そうだな! さっき聞いた感じだとみんな目的はバラバラな感じだし集合場所と時間を決めて自由行動すっか! な、爆豪!」

 

「あ? あぁ、良いんじゃねぇの」

 

 そうそう、爆豪も来てるのよね。本当なら彼と行動も考えたけど、思考を読まれたのかもしれない、葉隠と芦戸がそれぞれ私の肩をゆっくりと叩いてから首を横に振ってきた。

 

 まぁこんな人混みの中で爆発させるのは悪いものねと思い頷き返したら安堵の息を吐き出されたので私の扱いがどうなってるかがよく分かる場面である、泣くわよ。

 

「ということで自由行動になったんだけど、何か買い物ってあるの?」

 

「いや、昨日の内に家で確認したら大体は揃ってたから問題ない。バートリーこそ無いのか?」

 

「これって言ったものはね。だから耳郎達に着いてきてるわけだし」

 

「そうだね。さり気にいちゃつくの止めようか二人共」

 

 イチャつき……? ごめん、本気でそれは理解できないんだけど耳郎、え、今のやり取りがって? ハハッ、こんな手の掛かる弟みたいなのにそんな感情持てるほうが凄いわ。

 

「えらい言われようだけど、轟は良いのこれ?」

 

「別に、それに俺もバートリーは手の掛かる妹って感じしてるし」

 

「その喧嘩買うから表出るわよ」

 

「お二人共、あまり周りのお客様の迷惑になるようなことは……」

 

 ちっ、八百万に言われちゃ引き下がるしか無いわね。それに別に本気で喧嘩するつもりもないし、ていうか本気でやり合ったらここじゃ狭いわ、学園の一角が欲しいところね。

 

 因みに私と轟は特に何かというわけでもなく耳郎と八百万が大きめのキャリーバッグを見ていくらしいので着いてきたと言うだけ、それと途中で峰田には釘を差しておいたこともあったわね。

 

(堂々とピッキング道具と小型ドリル探しに行くことを宣言するのは笑うしか無いし許すわけ無いっての)

 

 これでも一応は善寄りの組織の長なのでクラスメイトが黒に落ちそうなら止めるのが人情ってやつかもしれないと彼の脳天に一撃加えてから一言告げておいたので大丈夫だろう、えぇ。

 

「その一言が怖すぎたって話しても良い?」

 

「駄目」

 

「いや、クラスメイトに買ってきてもいいけどお前の頭を開けてあげるなんてドスの利いた声で言えないよ中々」

 

「じょ、冗談ですわよね?」

 

 勿論冗談に決まってるじゃないのって……本気で信じかけていた八百万にそう答えた時、ふと私の中で何かが引っ掛かった、それは視界の隅、大勢の買い物客の中にチラッとだけ見えた一人の男。

 

 黒一色のフードを被っているので顔が見えたわけじゃないけど、背丈と体付きだけ男だというのは断言できる。でもそれだけで引っかかりを覚えるはずがない、それと同時にこのまま活かせてはならないと勘が私に告げる。

 

「……轟、ごめんちょっと一人で行動するわ。何かあったら連絡して」

 

「何かあったのか?」

 

「少し、ね」

 

 短く、多少誤魔化しつつもそれだけの返答に彼は小さく頷いたのを確認してから私は感謝をしつつ行動を開始。向こうにバレないように一般人として気配を抑え紛れるように人混みをすり抜けていき、そして

 

(見つけた)

 

 先程見た黒一色の男の背中を捉える。こうしてしっかりと捉えることが出来てはっきりと分かるくらいに異質な雰囲気を、例えるならばこの平和な空間に似付かわしくないじっとりとした気配に追ってきて正解だったと一人思う。

 

 あのまま見過ごしてた場合、何が起こっていたか。或いは何も起こらずもあり得たかもしれないけど、と考えながら一度顔を見るためにスルリと彼を追い抜き近くの店に入ってからチラッとフードを奥の顔を確認って。

 

(何であいつがここに……? だとしたらあいつも? けど気配は感じない、一人?)

 

 顔を見た瞬間、私は驚きで声を上げなかったのを褒めたかった。だが同時にあの感じ取れた気配にも納得はできる、あいつならば不思議じゃないと。

 

 どうする? 何気なく捕らえに掛かることも選択肢には存在する。だが彼が一人だというのは考えられない、気配を感じないだけであの二人だって居ても不思議ではないし、もし居たとしたら間違いなく抵抗され周りの買い物客に被害が出る。

 

 ともすれば捕らえるに動くのはあまりにリスキー過ぎる。彼に危害を加えるのは悪手、かと言ってこのまま監視だけというのも向こうが急に動きを見せた場合の対処が遅れる。

 

(ならどうする? 考えるのよバートリー)

 

 捕らえることも監視だけに留めることも出来ない。もう少し視点を変えましょう、現状でアイツのことで欲しいのは何? 身柄じゃないのなら、もっと他のもの、そうね。

 

 現状で足りないのは情報よ。特に彼らに関することはまるで無いのだからその辺りを手に入れることが出来れば今後にも繋がる、なら取る選択肢は?

 

 そこまで考え、私は一つの決断を下す。勿論、周りにも自分にも、そしてアイツにも危険が及ばない平和な手段よ、なんて誰にしてるか分からない言い訳をしつつ男が私のいる店を通り過ぎたところで動き出し、直ぐに追いついてから。

 

「そこの良い感じのお兄さん、ちょっと良いかしら?」

 

「は、俺に用?」

 

「そうそう、そこのカフェで私とお茶なんてどうかしらって、ね?」

 

 言いながら伊達メガネを外せば男の表情が驚愕に染まる。まるでここで接触してくるなんて欠片も思ってなかったような驚き方を見て私はクスクスと笑いながら。

 

「あら、どうしたのかしら、私が誰かに似てるとでも思ってるの? 【死柄木弔】」

 

「レイミィ・バートリー……!!」

 

 絞り出すように私の名前を告げる死柄木へスルッと腕を絡めてからニコリと笑みを向け、一言告げる。答えは『はい』? それとも『YES』 と。




出久くん、またイベント潰されてる……
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