便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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こういう動きしている時が一番書きやすいな便利屋ってなる。


No.114『青山夫妻保護作戦開始』

 時間にして深夜、辺りに明かりは殆ど存在せず誰も外を歩いている様子もない高級住宅街の一角に存在する一軒家、そこが今回の物語の舞台となる。

 

 辺りはこの時間だからだろう周りの家からの明かりもなく、あるのは街頭の僅かな光を除けば何も見えないほどの暗闇、その住宅街をパトロールするかのように歩いている二人組み。

 

 見てくれはプロヒーローの巡回と言えるだろうし、実際彼らはプロヒーローではある。あるのだが実を言うと彼らは(ヴィラン)であり、ここを巡回しているのもその(ヴィラン)から監視して欲しいと頼まれたからにすぎない。

 

 とは言っても直接的に何かをするわけでもなく、ただ家の周りをパトロールを装って巡回し他のプロヒーローなどが此処に来ないか、或いは監視対象が怪しい動きをしないかを見ているだけであり今日までその手の動きはなかったので彼らは端的に言えば油断しきっていた。

 

 それこそ適当な雑談をしながら無警戒に歩いてしまうほどには。だが油断しきっているとは言えプロヒーローであることには違いがなく、ふと彼らの耳になにか普段と違う物音がすれば即座に警戒態勢に入る。

 

 例えるならば野良猫が何かを倒したかのような音、その発生源はすぐそこの路地、けれど気配も何も感じられず、かと言って無視もできないと一人が近寄り確認するが……

 

「何も、無いな」

 

 一言呟くもその声も暗闇に吸い込まれ、それを聞いた相方も路地から意識を逸らした刹那、路地から伸びてきた手が確認していた方の男の口と体を抑え路地に引き込んで気配が声も音もなく消えた。

 

 無論、気配が消えたとなれば相方も気付き何があったかと振り向くのだがその男は何事もなかったかのように路地から出てきた姿に息を吐きだしつつ

 

「どうした?」

 

「いや、路地をよく見たら子供が居たんだが、逃げられた」

 

「はぁ? この時間帯に子供が居るわけ無いだろ……もしかして異形型の〝個性〟持ちが入り込んだか?」

 

「かも知れない、だが俺じゃ暗すぎてな……そっちの〝個性〟で確認できないか?」

 

「任せろ」

 

 特になんとも無い普段通りのやり取りで相方は路地を〝個性〟で覗き込むが映るのは何も無い空間、強いて上げるなら空き缶が倒れていることくらい、なので怪訝な表情で何も無いぞと言おうとした時、バチッ! というスタンガンによく似た音と共に彼は倒れ伏すことになる。

 

「まぁ、その子供っていうのは私のことなんですけどね~」

 

 気を失う直前、彼が見たのは男の所持品ではないはずの電気が走っている機械仕掛けのナイフのようなものを握り、声は彼のものだと言うのに口調がまるで違う事を言う姿に誰だお前と言うよりも先に気を失うことになるのだが。

 

 その男が気を失ったあと、彼は即座に路地に男を引き込んでからふぅと息を吐き力を抜くと同時にドロっと表面が溶け、現れたのは仕事着を着用した茶髪少女こと被身子、つまりはそういうことである。

 

 更に言えば、路地には今運ばれてきた男が気付かなかっただけで圧紘と仁の姿もあり、二人は帰ってきた被身子を見て良かったという感じの雰囲気を醸し出してから、仁は目に装着したモノクルのような機械越しに男を見ている間に。

 

「えっへっへ、ちょろいもんですね~」

 

「声落としてね〝ミラー〟ちゃん。さて、と〝トゥワイス〟、計測は?」

 

「完了してるから圧縮してもいいぞ。コピーはすぐに作っておく」

 

「了解っと。こちら〝コンプレス〟担当地区の制圧及び替え玉は完了、どうぞ」

 

 耳元の通信機に手を当てながらそっと夜空を見上げるが映るのは僅かな月明かりと星々だけでそれ以外は何も存在しない夜空。けれど、限界まで目を凝らせば人型の微かな空間の歪みのようなものが発生していることが分かる。

 

 そしてそこに彼女、レイミィ・バートリーは居る。彼女はサポート科がもう一着作った光学迷彩マントを羽織り上空から監視の任に着いていおり、今の一連の流れも、この街に点在する監視の目の位置情報も全て把握しながら便利屋の面々に指示を出しているのだ。

 

「こちら〝スカーレット〟確認したわ、今確保したそいつが今夜の訪問係だからミラーは変身してから圧縮状態のトゥワイスとコンプレスを家まで運んで頂戴」

 

「了解です、直ぐに動いちゃいますか?」

 

「少し待ってて、〝ホークアイ〟、〝ステイン〟状況報告」

 

 言うまでもないが現在、便利屋は青山夫妻の保護作戦を展開中であり現在はその前準備として監視についているAFOの手先を確保しつつ仁の〝個性〟で替え玉にすり替えている段階。

 

 こうすることでただ無力化するよりも入れ替わりの発覚を遥かに遅らせることができ夫妻の身の安全を更に長く保証できるということでそういう作戦を組むことにしている。

 

「こちらステイン、今しがた完了した。にしても世も末だな、ヒーロー共が(ヴィラン)と手を組んでるとは」

 

「全くだ、私がアレコレしてた時代から何も変わっちゃいねぇ。嫌になるなおい」

 

 別の箇所では血染と火伊那、そしてコピー体の圧紘と仁が同じように監視の目を無力化、入れ替えを行いそれが今しがた終わったタイミングらしい。因みに血染にも今回からサポート科の発目が試作品とした制作した三段式警棒の機能を組み込んだ刀とも言える形をしたスタンロッドを装備している。

 

 また冒頭で被身子が扱っていたスタンナイフも同じく発目が作成したものであり、この2つは無力化する以外にも刀身を当てると僅かに皮膚を切りそこから血を採取出来るようになっており、これにより二人の〝個性〟が扱いやすくなるような機能も付いている。

 

 とは言ってもこれらはまだ試作品であり、しかも今回が初運用ということなので何か問題などが起きてないかと聞けば

 

「軽くてコンパクトで扱いやすいですし特に不満点はないですね、すっごく良いものですよ」

 

「俺の方も大きなものはない、寧ろ学生が作ったと考えれば上出来な仕上がりだ。まぁ強いて言うなら強度くらいだろうが、携帯性を考えれば高望みというやつだろう」

 

「それは重畳、武器関連は初めてとか言いながら結構やれるじゃないのあの娘。トゥワイスとコンプレスは?」

 

 それとは別に仁と圧紘にもそれぞれ彼女の試作品が送られているのでレイミィの内心ではサポート科にも足を向けられなくなったわねこれとか思いつつ聞いてみれば、便利なのが送られてきたねと圧紘の称賛から始める

 

 二人のは武器ではなく個性のデメリットの部分を解消するものになっており、圧紘のは圧縮したそれを格納することが出来る入れ物なのだがこれに入れることで本来は解除するまで確認できない圧縮状態の中身を確認できるようになるという代物。

 

 仁のは相澤が使っている捕縛布の素材を利用した戦闘にも使えるメジャーと先ほど見せた機械仕掛けのモノクルはこれに映すことで対象の各部位の長さや全長などを即座に測定してくれるという代物になっており、曰く。

 

「譲ってもらって大助かりだけど、もう頭が上がらないねこれ」

 

「なぁサポート科の依頼はもっと優先的に聞くべきなんじゃないかお嬢……」

 

「だと思うんだけど、パワーローダー先生が試作品を受けてくれるだけで大助かりだって言うのよね」

 

 彼女は未だ知らないが、発目が便利屋と最近では出久の装備を作るようになったことで教室が爆破される頻度が大幅に激減、それだけで彼にとっては十分な報酬となっている。

 

 曰く、以前と比べて遥かに大人しくなったので助かっているとパワーローダー本人から言われるのは後日の話である。という余談は置いておくとし、レイミィは第1段階が無事に完了したことを確認してから通信機を起動し今回の協力者に繋げる。

 

「こちらスカーレット、ラブラバ聴こえる? この区画の監視カメラは掌握してるわよね」

 

《こちらラブラバ、掌握完了してるわ。かなりチョロいセキュリティだったわね、ただ……》

 

「ただ?」

 

《ターゲットの家に設置されてるのだけは特別製な感じがあるわ、嫌にセキュリティが固い、突破は出来るしダミー映像は流せるけど30分が限界だと思って》

 

 ラブラバからの報告に問題ないと返答するレイミィだが、本音を言えば〝嫌にセキュリティが固い〟という言葉に引っ掛かりを覚えていた。事前にラブラバが調査した時はそんな事を言ってなかったはずなので、固くなったのはつい最近。

 

 ともすればこちらの行動がある程度予測されている危険性があると考えるべきかも知れないと。ここまで上手く自分たちが立ち回っていたので若干の油断をしていたが相手は裏社会で帝王として君臨できる存在、この程度は予測されてても不思議じゃないと。

 

「(当初の予定よりも早めに動いて作戦を完了させたほうが良いかもしれないわね)ラブラバ、家の監視カメラの掌握準備を進めて。ジェントル、ホークアイ、ステインは周辺の監視を、誰かが接近、或いは計画にない人物が来たら報告を上げて」

 

《ステイン了解、警戒態勢に入る》

 

《ホークアイ了解、もう少し監視しやすい高所に移動しておく》

 

《ジェントル了解、しかしこのヒリ付く感じは慣れないね……》

 

 この手の裏での動きには慣れてないジェントルからの言葉にまぁそうよねと思いながらレイミィは次に被身子たちにも指示を飛ばす。その間に自分はバレないように青山夫妻の家の上空に移動を開始、マントなのであまり速度を出すと捲れてしまうので事前移動が大事なのである。

 

「ミラー、トゥワイス、コンプレスはさっきの指示通りに動いて。ノックの暗号は覚えてるわよね?」

 

《勿論ですスカーレットちゃん、先ず二回、相手の三回、その後に一回って流れですよね》

 

「よろしい、じゃあ行動を開始して頂戴、ここからはスピード勝負になるわ」

 

 彼女の一言で全員が気を入れ直したという感じの声と同時に一気に動き出す。先ず被身子が再度、始めに無力化したプロヒーローに変化、続けて圧紘が仁を圧縮後に携帯ケースを被身子に渡し自身も圧縮、その状態になった二人をケースに収納してから被身子は青山夫妻の家へと向かう。

 

 レイミィがそれを上空から確認しつつモスキートを回収、記憶から今日の監視状態が自分が知ってるのと齟齬がないことを改めて確認してから偵察用のモスキートを再射出、次にラブラバに掌握の状態の確認の通信をすれば。

 

《合図一つで直ぐにダミー映像を流せる状態よ》

 

「重畳、ただ一応警戒しておいて、もしかしたらダミー映像を流したら発動する罠があるかも知れないから。その時はすぐに逃げて」

 

《言われなくてもそうするわよ。貴女こそ気を付けなさいよ、報酬も貰えずに死なれても困るから》

 

 何も知れない第三者が言葉だけ聞けばなんともドライな関係となりそうだが、実際の声は心から心配しているというのとその場面になっても見捨てて逃げるつもりは無いというのがよく分かるものでありレイミィも彼女には気付かれない程度に笑ってから。

 

「それこそ言われなくてもってやつよ……〝色男〟、そっちもすぐに動けるようにして頂戴、夫妻の保護したあとはすぐに回収してもらうから」

 

《ねぇ、おじょ、スカーレットちゃん。なんで俺だけ色男っていうあんまりな奴なのかな……》

 

 色男もといホークスからの抗議とも言える声にレイミィは他に何も浮かばなかったんだから仕方がないじゃないと返せば、向こうは小さくため息を吐き出す。

 

 彼のヒーローネームは当たり前ながら使えない、かと言って他の適当なものでも繋がりからバレるかも知れないとなって結果出てきたのは彼女との電話のやり取りで使っている色男というコードネーム。

 

 冷静に考えなくてもあんまりなものであるとホークスは思うが今回だけのやつだし良いかと割り切ってから

 

《色男、了解。保護したらすぐに通信を入れて貰えれば直ぐに回収に向かうよ》

 

「ふふっ、失礼」

 

《流石に俺だって怒る時は怒るからねお嬢様?》

 

 思わず吹き出してしまったのは失礼だったと謝罪をしてから視界を青山家に向けると丁度、被身子が例のノックの合図を行っていた場面。それから玄関が開き出てきたのは眼鏡を掛けた男性、その様子は今日もこの時間が来てしまったという不安と罪悪感に押しつぶされそうになっているという感じを見てレイミィはただ一言。

 

「見てられないわね……」

 

《だがそれも今日までだ。もっとも息子さんの方は林間合宿まで耐えてもらうことになるけど》

 

「そこは仕方がないわ。じゃ、行ってくる、ラブラバお願い」

 

《掌握完了、ダミー映像の展開、成功。ここから三十分よ、手早くね》

 

 ラブラバの仕事の速さに感謝しつつ玄関先でやり取りをしている被身子の後ろに音を立てずに着地、そのタイミングで被身子は優雅の父親とともに玄関まで入り込み、それから。

 

「青山さん、奥さんを呼んできてください」

 

「妻を……? あ、あの、貴方は一体……?」

 

 普段のやり取りとはまるで違う展開に困惑する優雅の父親、それに対して被身子は〝個性〟を解除してからケースから圧縮状態の二人を転がす。

 

 転がせば即座に解除され、現れるのは男二人、何が何だか混乱の渦で分かっていない優雅の父親だったが三人が道を開けるように動き、そこにいつの間にか立っていた少女を見て。

 

「き、君は」

 

「こんな夜更けに押し入る形で申し訳ございません。私は便利屋チェイテのレイミィ・バートリー、貴方達、夫妻を……」

 

 保護しに参りました。安心させるような声でそう告げてから、カーテシーと呼ばれるお辞儀を行う。今ここで物語の歯車は更に別のものに変えられようとしていた。




あれ一話で終わらせるつもりだったのになという顔。

便利屋メモ
今回、サポート科と言うか発目から寄贈された試作品は
血染
スタンロッド:三段式警棒の機構を組み込んだ刀、殺傷能力は勿論無いが血を採取出来る程度には傷をつけることができ、その血は刀身の側面に流れるので舐めることで〝個性〟を発動できるようになっている。

被身子
スタンナイフ:MGS4のあれ、こちらも血染のものと同じように血を採取でき、その血は柄の部分に集まって飲めるようになっている。

圧紘
携帯ケース:圧縮したものを楽に持ち運べ、更にスロットごとに分かれておりそこに入れるとそのスロットに入っている圧縮の中身が表示される優れモノ。


特別製メジャー:相澤の捕縛布と同じ素材で作られたメジャー、計測自体は測れば機械が自動で正確な数値を出してくれる。また素材が素材なので咄嗟の戦闘にも耐えられる。

自動測定モノクル:離れていても対象の身長などを測定してくれるモノクル、とは言え現状は試作品なので偶に数値が正しく測れない場合があるのがネック。
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