便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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因みに仕事中のレイミィちゃんは大体こんな感じになるよ。


No.115『私達を信じてください』

「私達を、保護しに……?」

 

 事態が飲み込めていないという声が優雅父から漏れ出ると同時にそれはそうでしょうねという感情だけが私の中に生まれる。

 

 しかもそれを言ってるのがどう見ても息子と同い年の少女というのが半信半疑を加速させている要因だろうとも。けれどあまり悠長に説明も説得もする時間はない。

 

「直ぐに信じられないのは理解できます。ですが今は信じてくださいとしか言えません、詳細等は保護した後に公安からされますので」

 

「こ、公安も動いているのですか?」

 

「えぇ、今回の作戦はプロヒーロー以外の国の機関が動いて遂行されています。勿論、保護した後の貴方たちの身の安全も保証しております」

 

 公安が動いている、私からのこの言葉にハッキリと揺らいだのを感じ取る。それから少しの沈黙の後、彼はゆっくりと頷いてから

 

「分かり、ました。一度、妻を連れてきます」

 

「感謝します」

 

 とりあえず先ず一歩、自分たちの息子である優雅を連れてこないのはまだこちらを信じきれてないというのが理由でしょうね。親としては当然の動きだと思うし、それに今回に限っては彼らには酷だけど優雅は連れて来ないほうが助かるわ。

 

 後で夫妻にも話すけど、彼には二人がコピー体に入れ替わったことはギリギリまで知らないでもらったほうが私達には好都合なのだから。

 

「ふぅ、ステイン、周囲の状況は」

 

《変化なしだ、ホークアイ、ジェントルからも通信は来てない》

 

「分かった、引き続き警戒をお願い。ラブラバ、カメラの方は?」

 

《大丈夫というか、まだ五分しか経ってないわよ。何を焦ってるか知らないけど、落ち着きなさい、時間は区切りごとに通信入れるから》

 

 そうラブラバから言われそこで初めて、自分が若干の焦りを見せていたことに気付かされる。血染からも特に何も言われなかったが、もしかしたら気付いたうえで下手に指摘するのは良くないと思われたのか……

 

 正直に言えば、緊張しているが正しいのかもしれない。夜逃げの手伝いというのは依頼で何度かしたことがあるが、ここまで大規模な事は私だって初めて、しかもミス一つで死体が一家分増えるというのも分かっているからこそ緊張しているしラブラバが言うように焦っている部分も確かに存在している。

 

「……そう、ね。ありがと、ちょっと落ち着いたわ」

 

《急に何よ気持ち悪い、貴女がミスって仕事がパーになったら報酬が貰えないからってだけよ。とにかく、カメラの方は気にしなくてもいいわ、何かあったら通信をいれるわ》

 

 言葉だけなら乱暴と言うかそういう感じだけど声はこちらを心配しているということが分かる感じにラブラバから通信を切られ、私は緊張をほぐそうと後頭部を軽く掻く。

 

「はぁ、私らしくもないわね」

 

「無理もないよ、それくらいには難しいし綱渡りであるには変わりない仕事だからね」

 

 いつの間にか身体に入っていた力を抜くように呟くと圧紘から同意の言葉が返ってきた、どうやら彼も決して緊張していないというわけではないらしい。

 

 違うわね、この作戦に参加している全員が緊張しているのは間違いないだろう。けれど、それを表に出さないで遂行しているだけ、やれやれこれじゃ所長の名が泣くわね。

 

「でもでもあと少しですよ。残りは二人を説得してっとと、あまり口にしないほうが良いんですよね」

 

「頼むわよミラー、カメラとかラブラバが介入できるものは抑えたけど、それ以外のがあったらどうしようもないんだから」

 

「盗聴器、とかか」

 

 一番怖いのは今、仁が言ったような盗聴器の類。寧ろ無いわけがないとすら思っているので警戒は当然してあるし、だからこそ絶対に存在してないと確認が取れている玄関から先に私達は入ってない。

 

 だけどあくまで〝玄関〟には存在してないってだけであり、高性能の盗聴器だったら距離があろうとも音が拾えてしまう危険性がある。なのでさっきの優雅の父親との会話も可能な限り声量を低くして行っていた。

 

「お待たせしました。家内です」

 

 呼びに戻って30秒というところだろうか、優雅の父親が女性、まぁ言うまでもなく奥さんを連れて戻ってきて、紹介をすれば向こうはゆっくりと頭を下げてくる。

 

 なので自分たちも先ほどと同じように自己紹介とともに丁寧なお辞儀をしつつ二人からモスキートを回収、バレないように口に含んでから記憶を確認。

 

(問題なさそうね。というよりも彼らから向こうへ連絡手段はない感じかしらこれは)

 

 今、確認したのは呼びに戻ったあの一瞬にあまり考えたくはないが敵連合に自分たちが来たということを話してないかどうかというのを見たと言うだけ。

 

 無論、彼らのことは信じているが向こうが私達を信じているわけではない。寧ろ命惜しさ、或いは息子である優雅を守るために自分たちを売ることだって可能性は存在しているので、これは自分たちの身を守るための行動でしかない。

 

「奥様、旦那さまからどの程度の話を聞いておりますか?」

 

「貴方達が私達を保護しに来た、というのだけは。あの、確認をしたいのですが息子、優雅もですよね?」

 

 その質問が来た時、私は多分ものすごく冷たく所長としての仮面を被ったと思う。親とした至極当然な質問、AFOに脅され、少しでも変な動きを見せれば命すら危ういこの状況下でも自分たちではなく息子の心配を真っ先に出来るのは人が出来ているというしかない。

 

 だけど、私は〝便利屋〟として彼らのその言葉を真っ向から否定しなければならない。彼は今このタイミングでは保護しないと、冷酷に淡々とその事実だけを告げる。

 

「勿論、保護しないというわけではありません。けれど、今この場ではお二人だけが優先です」

 

「何故ですか?」

 

「彼には林間合宿までお二人がすり替わったことを知らずに過ごしてもらわなければならないからです。敵連合を確実に壊滅させるために」

 

 果たしてこの話をする私をこの夫妻はどう見ているのだろうか。もしかしたら見た目通り悪魔にしか見えないかもしれないわねと思いながら計画を淡々と話していく。

 

 まだ向こうはこちらの考えに同意していないというのに、だけど今この場で隠し立てをするほうが信頼を得ることが出来ないとカードを切っていく。

 

「これが私達〝便利屋〟及び公安の考えた計画です。勿論ですが優雅さんの身の安全は私達が保証します、林間合宿後は雄英も協力し彼を保護することも約束します」

 

「……」

 

「貴方達の大切なお子さんを危険に晒すことになるというのは重々承知しております。どのようなお叱りも罵りも受けます、ですが信じてください、貴方達一家が今後も安心して暮らせるために必要なことだということを」

 

 だからお願い、私達を信じて。そう願うように私達は深々と頭を下げた、二人からの視線が突き刺さる、次の瞬間に罵倒が飛んでこようと甘んじて受け止めようと覚悟していた私に掛けられたのは。

 

「頭を上げてください、バートリーさん」

 

 優しい、声だった。言われたとおりに頭を上げればそこには複雑そうな表情の優雅の父とこちらもまた全てを受け入れたというわけではないがそれでも納得している感じの優雅の母がそこにあった。

 

 強い人、入学初日に優雅に思ったことと同じことを夫妻に思った。あぁ、親子なんだなとも、この無慈悲で無情な計画を聞いてなおも私達にそんな顔ができるのは凄いとしか言葉が出ない。

 

 同時にどうして納得しているのかと疑問が口から漏れ出てしまった、時間がないというのに何をしてるんだかと思ったが答えはすぐに返ってきた。

 

 嘘を言っている人の目ではなかったというのと、貴女自身が計画自体には心を痛めているのが感じたと。真っ直ぐな目でそう告げられれば私は苦笑を浮かべつつ。

 

「……自分で言い出したことだというのに痛めてるのを悟られるようじゃ私もまだまだね。ですがそういって貰えるということは」

 

「はい、貴方達を信じます。どうか、息子を、優雅をお願いします」

 

「私からもお願いします」

 

「その言葉、しかと受け止めました。便利屋の名にかけて必ずや息子さんのことは守り抜きましょう。コンプレス、準備を」

 

「畏まりました、スカーレット」

 

 少々大袈裟な物言いかも知れないがそれくらいの意気込みという話よ。ともかく、二人からの信頼を得たのならば此処に長居する理由もない、すぐにでも撤収準備を進めましょう。

 

 何だか嫌な予感がさっきからするし、先ずは二人に軽く説明をしてから圧紘の〝個性〟で圧縮状態に、その後にケースに収納したのを確認してから

 

「トゥワイス、二人のコピー体を」

 

「了解」

 

「ミラー、此処に来た時のと同じ奴に変身、まだ血は残ってるわよね?」

 

「問題ありません、すぐにでも変身しちゃいますね」

 

 被身子が変身をしている間に仁が生み出したコピー体に念の為に魅了を掛けて、本物と同じように過ごすようにと暗示をかけておく。そうしないと偶にイレギュラーなことをするコピー体が生まれることがあるのよね。

 

 なんてやってる間にも被身子の変身が完了、あとは行きと同じように圧紘と仁が圧縮状態になり私は光学迷彩マントを羽織って空から離脱するだけ、という所で

 

《こちらホークアイ。少し待て、何だアイツ》

 

「何かあったの?」

 

《イレギュラーだ、どっから現れたのかは分からねぇが一人が作戦区域に入ってきやがった》

 

 舌打ちをしたくなった。しかもどこから現れたのかが分からないということは黒霧が関わっている可能性すらある、ともすれば……まさか

 

「(赤霧が!? いや、でもだったら本人が来るしホークアイが誰だか分からないって反応はしないはず)そいつの動きと見た目、それとこちらの動きが発覚してるかどうか、分かる?」

 

《見た目は長髪のサングラス、それなりの巨体の男だな。動きはバレてるって感じじゃねぇが、さっきまでステインが居た所を探してる動きだな》

 

「それってバレてるってことじゃないかしら……?」

 

《なんって言ったら良いんだ、あぁ、そうだ、通報受けてそこを捜索してるサツみたいな動きって言えば分かりやすいか?》

 

 〝通報〟、火伊那から出てきたその単語にブワッと嫌な予感が膨れ上がった。同時に最悪で、合理的で、冗談でしょと言いたくなるような推測すら立ち上がり、私は直ぐにその場全員に指示を飛ばす。

 

「コンプレス、ミラーとトゥワイスを圧縮、ケースに収納した後に貴方も圧縮状態に」

 

「え、このまま離脱じゃ駄目なんです?」

 

「駄目、トゥワイス、被身子が変身してたヒーローのコピー体を生成、出来るわね?」

 

「りょ、了解。にしてもどうしたってんだスカーレット」

 

 悪いけど説明は後よ。もしこの推測が正しければ想定以上に時間は残ってないし、何より監視の目は私達の想定以上に広がっているのだから。

 

「こちらスカーレット、ステイン、ホークアイ、ジェントル、ラブラバ、聴こえてるわよね」

 

《どうした》

 

「全員、直ぐに離脱を開始、ラブラバもカメラの掌握を解除したらジェントルとともに離脱よ」

 

《何かあったってことよね。分かったわ、直ぐに動くわ》

 

《ホークアイ了解、男の方はまだ探してて大きくは動いてない、逃げるなら今だ、ステイン》

 

《ステイン了解、スカーレット、そっちも気をつけろよ》

 

 そうね、もしかしたら私達の方にも誰かが向かってくる可能性があるから血染の言葉は肝に銘じておきましょう。で、そっちは準備は、と振り向けばケースの隣に圧縮状態のビー玉大の球体が転がっていた、どうやら完了してるようね。

 

 それを拾い上げてケースに入れてから自身の服の内ポケットに大切に仕舞い込んで、改めてコピー体の青山夫妻にこの後は頼むわと告げてから光学迷彩マントを羽織ってゆっくりと玄関から出て音を立てないように空中に飛び上がる。

 

(上空に赤霧の気配、なし。ドローンとかも確認できず、油断は出来ないけど、現状は地上のそいつだけってこと?)

 

 考えながらも居ないなら好都合だと離脱後の合流地点へと移動を始めるのだが、もしこの飛び上がるまでの動きが少しでも遅れていたら私達の存在は露呈していたかも知れない。

 

「……何も居ねぇじゃん」

 

 青山宅の玄関前を覗き込むように現れたケロイド質の皮膚で覆われた男〝荼毘〟と鉢合わせるという最悪な形で。けれどそれを回避したことで私達は青山夫妻の保護に成功したわけなんだけど。

 

 ところで、私が何故、あの場面で急に離脱を急いだかっていう理由なんだけど。それは合流地点に到着してからでいいわよね、でもそんなに難しい話じゃないわ。

 

 早い話が監視の目はカメラや(ヴィラン)、悪徳ヒーローだけじゃなかったって話よ。




青山夫妻、名前が出てきてないから凄く大変だった。
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