便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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今日までのレイミィのタスク
青山夫妻保護作戦の事後処理

林間合宿での訓練メニューの作成

敵連合壊滅作戦のプラン作成及び公安との摺り合わせetc


No.117『林間合宿開幕』

 林間合宿当日、目的地は夏休み前日に変更になったと相澤に告げられ場所も分からぬままバスに乗り込むために集まったA組の面々だったのだがそこで見たのは今まで以上に死んだ目と表情をした一人の少女、レイミィの姿だった。

 

「レイミィちゃん、死んだ目をしてるけど大丈夫……?」

 

「あぁ、うん、へーき、ちょっと仕事が立て込んでただけ」

 

「平気には見えないのだけれど、合宿前だからってお仕事を詰め込んだのかしら?」

 

「そんな所よ。ふわぁ、駄目ね、バスの中で寝るわこれ」

 

 もっと詳細を話すとすれば、青山夫妻の保護の件と林間合宿での訓練内容、そこに加えて敵連合壊滅作戦についてのホークスとの摺り合わせなどで毎日夜中まで起きてることが連日だったので今のレイミィが存在してしまっている。

 

 因みに血染にそれとなく説教されたのは言うまでもないだろうから置いておく。だがその詳細部分を梅雨ちゃんを始めとした面々には〝まだ〟話せないので適当に誤魔化しつつバスに乗り込み、相澤から1時間後に一度休憩を挟むと聞いたその2分後には

 

「わぁ、この騒がしい中で本当に寝ちゃったよ……」

 

「こりゃ相当に無理してた感じだね。……そうだ、とりあえず寝顔、撮っておく?」

 

 スッと慣れた手つきでスマホを取り出して、耳郎が聞く。彼女からしてみればこうして無防備な姿を晒しているレイミィというのが新鮮でしか無く、せっかくだから写真という形に残しておこうという心である。

 

 対して麗日はその提案を聞いて反対する理由はないよねと思うと同時にふと閃いた。被身子もこの姿を見たいかも知れないと、なので笑顔で被身子への死刑宣告を告げた。

 

「いいね。あ、渡我さんに送ってみるのどうかな?」

 

「絶対に大騒ぎになると思うよそれ、やってみようか」

 

 彼女たちは知らなかった。この何気ない写真の送信が一人の秘書の理性諸々をぶっ壊すことになるとは、場面は森の中で配置に着いている被身子に切り替えてみよう。

 

 先程の定期連絡でA組とB組が出発したとは聞いていたが、到着にはまだ時間があるから暇だなぁと思っていた彼女のスマホが唐突に着信を告げたところから始まる。

 

「ん? 誰ですかね、こんな時間に」

 

「緊急の依頼か?」

 

「ちょっと失礼って、お茶子ちゃんからショートメッセージですね」

 

 【スクープ】という短い文章に何やら画像データが付属しており、もしや何かあったのではと真剣な表情のまま付属ファイルを開き、それを見てしまった被身子の思考は完全に停止した。

 

 映されていたのは我らが所長のレイミィの寝顔、彼女自身も滅多に見れるものではない制服姿の寝顔というレアな写真を見て彼女はスマホを持ったまま固まってしまい、それを近くで見ていた仁はどうしたのかと聞くが。

 

「……」

 

「被身子? おーい、マジでどうしたってんだ……」

 

「カアイイんです」

 

「え、あ、何が?」

 

「カアイイんですよ、レイミィちゃんの寝顔」

 

 あぁ、いつもの発作かとなるのに時間は要らなかった。仁からは何も見えないが内容は大体察しが付いている辺り便利屋での被身子の立ち位置というものがよく分かる光景である。

 

 だがそれはそれとして時間的には余裕は確かにあるが今は依頼中、なのでその発作は早く落ち着かせて欲しいんだがと伝えたのだが返ってきたのは

 

「これを見てないからそんな事言えるんです!!! ほら、見てください!! 完璧で究極にカアイイレイミィちゃんの寝顔を!!!!!」

 

「分かった、分かったから押し付けるなっての!」

 

 やばい、今日の発作は何時もよりも重症だとグイグイとスマホを押し付けてくる被身子を抑えながら仁は思う。思いつつもチラッと見えたその写真を見て、とりあえず所長が学生として楽しめていて、無防備に寝れるくらいにはクラスメイトを信頼しているんだなと安心もするのであった。

 

「バートリー、起きて。一旦休憩だって」

 

「ふがっ? あぁ、そう、もう一時間経ったのね」

 

 その後はどうにかして落ち着かせようとする仁と良いから見ろカアイイだろと押し売りしてくる被身子の攻防戦が繰り広げられ、最後には火伊那と血染からいい加減にしろと言われる場面があるのだが割愛し、場面は一時間経過したレイミィへ。

 

 非常に騒がしかったはずだと言うのに一切起きる素振りもなく熟睡していたレイミィだったが、休憩にするから降りるようにと言う指示が出されたことで耳郎に起こされることに。

 

「本当に熟睡だったね、レミィ。大丈夫?」

 

「えぇ、かなりマシになったわ。んっん~、あ~、でも身体は固くなるわねバスで寝るってのは」

 

「早く降りろ」

 

 これ以上は相澤先生の機嫌を損ねるといけないとイソイソとバスから降りるA組だったが出迎えたのはパーキングエリアでも何でもない、強いて言うのならば景色を眺めるくらいしか出来ない空間というべき場所。

 

 明らかに休憩と言うには何も無さすぎる場所、何よりも同じタイミングで休憩を取るはずのB組もその場に居ないことにA組の面々も疑問を覚え始めていると。

 

「何の目的もなくでは意味も薄いからな」

 

「そりゃご尤もで、ふぅ、やっぱり一時間の仮眠ってのは大事だわ」

 

 相澤の言葉にレイミィが反応してから、何故か体を念入りに解している姿を見て、ここで出久は嫌な予感を感じ取った。具体的にそれが何なのかは分からない、分からないけど多分、いや、ほぼ間違いなく何かが起きると。

 

 そこまで直感した彼はこれだけで察してくれるはずだと勝己に視線を送れば、向こうは即座に受け取り数瞬の思案を挟んでからレイミィの方に顔を動かし、出久もつられ見てみれば

 

(バートリーさんが相澤先生の隣に……っ!?)

 

「よ────う、イレイザー!」

 

「ご無沙汰してます」

 

 これ間違いなくなにかおっぱじめるつもりだと出久が直感から動き出すよりも前に声が響き、二人の女性が現れたことで中断させられる。

 

 決めポーズと共に現れたのは四人で一組のチーム【プッシーキャッツ】の二人【マンダレイ】と【ピクシーボブ】、と一人の少年、そこでレイミィは話に出てなかった存在に誰かしらとなるがまぁ良いかと二人の方を見て。

 

「はじめまして、プッシーキャッツのお二人。私は便利屋チェイテのレイミィ・バートリーです」

 

「あ、これはご丁寧に」

 

 深々とお辞儀をしてから名刺を差し出せば向こうもすぐに受け取り、受け取ってからマジマジとそれを眺め、改めてカーテシーをしているレイミィを見てから思わずという感じに。

 

「名刺!? あ、凄い思ったよりも本格的と言うかきちんとしてる」

 

「ゴホンっ、こちらが今回お世話になる【プッシーキャッツ】の皆さんだ」

 

 あまりに無駄話はしないようにと咳払いの形で釘を差してから、マンダレイが今回の合宿先の場所の説明がされる。されるのだが、どうしてこのタイミングでと麗日が言葉を漏らす寸前、彼女はニッコリと笑みを浮かべているレイミィを見た。

 

 ついでに隣で耳郎もそれを見た、見てあの笑顔ってどういうタイミングで出てたっけとなり、そして彼女は悟った、悟って青ざめた表情を晒した。

 

「今はAM9:30、早ければ12時前後ってところかしらん」

 

「存外、もっと早いかもしれないわよ。まぁでもそれより遅くになることはないのは確実でしょうけど」

 

「みんな、直ぐにバスに戻って!!!」

 

 さも当たり前のようにマンダレイ、というよりも大人組の側を陣取っているレイミィの姿に、残りのクラスメイトも事態に気付き、耳郎の叫び声と同時に動き出すが……あまりに遅すぎた。

 

 彼らが動き出した頃には地面はピクシーボブの〝個性〟【土流】により濁流の如く動き出し、全員を飲み込みながらプッシーキャッツの私有地である森の中へと落とされる。

 

 落とされる間際、勝己はしっかりとそれを見たし一部はこの言葉も聞いていた。

 

「ま、頑張りなさいな。応援はそれなりにしておいてあげるから」

 

「あんのクソコウモリ女ぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!!」

 

 勝己の叫び声を涼しい顔で聞きながら手を振るレイミィ、その姿を見てマンダレイは思った、この娘は結構いい性格してるかもしれないと。

 

 対してそんな事を思われているとは全く思っていないレイミィはA組を見送ってから、耳元の通信機のスイッチを入れ、A組側に潜伏している被身子と仁へ。

 

「こちらレイミィ、A組が魔獣の森に入ったわ。手筈通りにお願い」

 

《こちら被身子、了解です。仁くん、撹乱をお願いしますね》

 

《こちら仁、了解。今回は数攻めで良いんだよな?》

 

「えぇ、強敵との戦いはそれなりに経験を積んでるもの、次は物量の捌き方と撹乱してくるタイプの(ヴィラン)を〝理解〟してもらうわ」

 

 今回、この二人をA組にぶつけた理由はレイミィが行った通りであり、今日までに強敵という存在との経験値は積んでいるが物量と撹乱に徹してくるタイプはまだ足りないと思ったが故の選択。

 

 特に仁と被身子のそれは世界を探したとしても中々に代替が聞かないタイプなのでピッタリだろうと彼女は考えていた。

 

「おぉっと、早速、土魔獣が倒された? これはちょっと面白くなってきたじゃん?」

 

「仁、次の土魔獣に合わせて行動開始、被身子、仁のコピー体が撃破されたと同時にクラスメイトの血を使って変身からの撹乱を始めて」

 

《了解(です)》

 

 あとはもう任せて問題ないわねと宿泊施設に向かうバスに乗り込もうとしたレイミィだったが、ふと少年の姿が目に入った。〝個性〟を使っての戦闘が始まっている森の方を見ているのだがその目と顔は興味があるとかいう年齢特有のものではなく、言うとすれば軽蔑しているという感じのものに彼女は興味を唆られた。

 

「(面白い表情してるわね)ちょっといいかしら、少年」

 

「あ? んだよ」

 

「そう言えば名前を聞いてなかったなって思ったのよ。私はさっき聞いたと思うけどレイミィ・バートリーよ」

 

「……便利屋ってのもヒーローと変わんねぇんだろ。そんな奴に名前を教えるつもりはねぇ」

 

 吐き捨てるように出されたその言葉に、レイミィは特に反応を示さなかった。いや、無表情が反応だったのかもしれない、彼が言った一言はそれほどまでに彼女にとっては面白くないものだった。

 

 便利屋とヒーローを=で並べたその物言いが、彼女には不愉快だった。それを露骨に見せなかったのは便利屋の所長として、子供相手に大人げない態度は見せないというプライドだったのだろう。

 

「ああっと、ごめんね。洸汰、ヒーローを嫌ってて。だから便利屋も同じ感覚なんだと思ってるの」

 

「いいえ、別に気にしてないわ。それに子どもの癇癪に一々怒ったりはしないわよ私は」

 

 言葉ではそう告げ、声も平静さを装っているが人生経験が長いマンダレイには気付けた。彼女が洸汰の一言に酷く傷付いているのだということに、それから受け取った名刺をそっと見つめた。

 

 彼女のことは相澤を始め雄英高校から話は聞いていた。どうして便利屋を営んでいるのかも、彼女自身のことも、ヒーローには似付かわしくないからこそ便利屋を開いていると知っている。

 

「便利屋もヒーローと同じ、か。なるほどね、他人から見ればそうだったの、はぁ」

 

 深いため息を吐き出す姿にマンダレイは何かフォローをと動き出そうとするが、レイミィはそれよりも先にバスに乗り込んでしまい、だったら車内でと考えるも。

 

「マンダレイ、本当に大丈夫だから気にしないで頂戴」

 

「え、あ、そ、そう」

 

 そんな風に先手を打たれてしまえば、どうすることも出来ず、微妙な空気のままバスは宿泊施設へと移動を開始することに。因みに相澤は急な空気の変わりように気にしないようにしつつも若干の頭痛を感じてたとか何とか。

 

 と言う余談は置いておき、移動中のバスの中でレイミィはまた通信機のスイッチを入れる。今度はB組を担当することになった三人の内の一人、血染へと通信を入れる。

 

「こちらレイミィ、A組側は作戦を開始したわ。そっちは?」

 

《こちら血染、B組を確認、もう少し先の拓けた地点にて襲撃をかけるつもりだ。火伊那、圧紘、準備しろ》

 

《こちら圧紘、了解。さてさて、ちょっと恐い思いしてもらおうかな》

 

《こちら火伊那、模擬弾の装填は済んでる。何時でも良いぞ》

 

 B組側にこの三人を選んだ理由は単純に強敵としての(ヴィラン)役に適任だったと言うだけである。期末試験の際にレイミィとブラドが話したように今のB組に足りないのは(ヴィラン)からのプレッシャーへの経験値。

 

 ある日唐突に襲われることという経験、A組がUSJの時に受けたそれを擬似的にとは言え体験してもらおうというのが今回の狙いであり、だからこそ血染はちょっとギアの入れ方を間違えた。

 

「先生!!!???」

 

「がっグッ……」

 

「はぁ、雄英のヒーローといえどこの程度か、嘆かわしいな……」

 

 倒れ伏すブラド、それを足蹴にしてからギロリと鋭い殺意の込められた視線とプレッシャーがB組全員を襲った。なお、近くで見てた圧紘はやりすぎじゃないかなと思い、スコープで覗く形で見ていた火伊那も、あれは駄目だろとボソリと呟いたとか。




なんか思ったよりも話が進まなかった不具合、まぁ最悪、次はそれぞれが合宿場に付いた場面からでええやろ!(キング・クリムゾン
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