追記
なんかあらゆる場面で洸汰くんの呼び方が混ざってたみたいですね、すみません……
どうしてこう、私はなにか行動を起こすたびに説教をされるのかしらね。あの場面だって、緑谷も動いていたとは言え万が一があるからって救出しただけだってのに。
なんてブツクサ文句を言いながら温泉から出て更衣室にて寝間着に着替えてからマンダレイが居ると思われる場所へと歩を進めている、と言うか緑谷は着替えないで出ていったわねこれ、廊下に水が垂れてるもの。
「あ、バートリーさん……」
「悪いわね緑谷、ゆっくりしてたのに頼んじゃって。彼の様子は?」
「ただ気を失ってるだけみたい、多分だけど落ちそうになってってところだと思うよ」
なら安心だわとマンダレイの言葉に息を吐く。鼻血も出てたからそこが心配だったし、どれくらいあの場に居たか分からないから、その辺りの症状も出てないかって不安もあるにはあったのよね。
それにしても、なんであんな所で待ち構えてたの彼? 偶々ってわけじゃなさそうなんだけどと聞いてみたんだけど、まぁうん、悪いのは完全にこっちだったわ。
「イレイザーに〝一人、性欲の権化がいる〟って聞いてたから見張ってもらったんだけど、最近の女の子って発育もだけど、結構、大胆なんだねぇ」
「あ~、いや、大胆云々は私が悪いのよ、ごめんなさいね。本当なら私と轟で止めるつもりだったんだけど、まさか突破されるとは思わなくて」
「あの時の峰田くんの動きは今までで以上の動きだった、轟くんも驚いてたし」
ちっ、変態ってのはこれだから……とりあえず峰田には後でキツく制裁を加えるとして緑谷はこのまま話すんだったら一度着替えてきなさい、風邪引くわよ。
と言うか、なんでその姿で来たのよ。別段、着替えてからでも十分大丈夫だったでしょうに、え、意識がないから慌ててたって? 分からなくはないけど今後もヒーロー活動するなら安否確認は正確にできるようになりなさいっての。
「うっ、確かにそうかも。と、とりあえず着替えてきます」
「いってらっしゃい。ていうかマンダレイの前にあの格好でって恥ずかしくなかったのかしらね」
今どこかでお前が言うなって聞こえた気がするけど気の所為よね。それにしてもとソファで横になっている洸汰を見る、彼の行動はある意味でヒーロー活動であり彼が嫌いと言っているそれであった。
ともすれば根っこの部分は善良なのだろう、それこそ彼の両親と同じように。子は親を見て育つ、ヒーローであった両親を見てたとすれば、彼も両親のようなヒーローになりたいなんて〝らしい〟夢も持ってたのかもしれない。
「……」
「ねぇ、一つ聞いていいかな」
気付けば彼の頭を優しく撫でていた私にマンダレイが口を開いてそう聞いてきた。見れば真剣な表情の彼女、どうやら些細な疑問とかいうものではないらしいと思いながらどうぞ、と頷いてから返事をする。
「貴方の秘書さんが言ってたのだけど、洸汰の両親に怒ってるって」
遠慮気味に出された内容に私はやらかしたと思わざるを得なかった。まぁタイミングはここに到着してのあの場面、自分でも迂闊だったなとは思ったけどそこまで気にされるくらいだったし誤魔化しも甘かったかと己の脇の甘さを呪いたくなる。
出来ることなら触れてほしくはなかったが本音だけど、そうも行かないわよねそりゃ。態度から見ると聞こうかどうかも結構迷っての選択っぽいし、それくらいには気になってたってことでしょ、なら答えるしかない。
「そうね、どうかと言われれば怒ってるわね」
「……洸汰を遺して死んでしまったから?」
「分かってるじゃないの。えぇそうよ、はっきり言えば私はこの子の両親を嫌ってると言い切れるわ」
そこでバートリーさん? と緑谷の声が聞こえ見れば……何そのTシャツ、え、なんでTシャツに〝Tシャツ〟って書かれてるの?
話が逸れそうになったわね。ともかく、今の発言を彼に聞かれたっていうか、確かあの場面でも緑谷に私の呟きを聞かれてたわね、ならこのまま話しちゃってもいいか。
「おかえり緑谷」
「た、ただいま。じゃなくて、その、今のは?」
「私から洸汰の両親への印象を話しただけよ。で、他になにか聞きたいんじゃないかしら、マンダレイ」
それとも私が好き勝手に話した方がいいかしら? その場合はひたすらに辛辣なことしか言わないと思うけど、それくらいには私は洸汰の両親であるプロヒーロー【ウォーターホース】にはいい印象を持ち合わせていない。
確かに世間様から見ればヒーローとして立派だったかもしれない、恐らくだけど親としても洸汰へしっかりと愛情を持っていたのかもしれない、だけど
「ヒーロー以前に親が子を残して死ぬなんて人間として失格なのよ」
「随分と、バッサリ言うね。二人のことは何も知らないっていうのに」
「そうね、ウォーターホースのことは何も知らないわ。でも洸汰みたいな子供は飽きるほど見てきたわ」
「それって、両親がってこと?」
緑谷は言葉を濁したけど、はっきり言っちゃえば洸汰のように両親がヒーローで殉職して残された子供というのは私は便利屋としてもそれ以前からも見たことがある。
そして決まって、その境遇に陥った子供は大体が擦れてしまう、それはそうだろう。自分にとって掛け替えのない存在が急に失われたのだから、けど本格的に擦れるのはそこから更に事が進んだところにある。
「世間はその両親を褒め称えるのよ。『ヒーローとして立派な最期だった』と或いは『君の両親は名誉ある死を迎えた』って子供に言う愚か者だって居て、結果として心に深すぎる傷を付けられて擦れていくの」
だってそうでしょ? 自分は親を失ってこれ以上ないくらいに絶望の淵にいるってのに誰も手を差し伸べないで褒め称えて、君も彼らのようにとか言われる。
ちょっとした拷問よ、そんなの。誰も寄り添ってくれないっていうのは、そう考えれば洸汰はまだ奇跡的な立ち位置に居ると思ってる、彼は確かに擦れてはいるけど手遅れではないのだから。
「いえ、この子は強いと言うべきかもしれないわね。心無いことを言われ続けたっていうのに真っ直ぐな部分は残っているもの」
「バートリーさんが見てきた子供は、どうなったの?」
「良くてまぁ擦れたまま成長して、一般人としてそのまま。悪いと黒に落ちるわ、それもとびっきりにヒーロー社会に恨み辛みを持ち合わせた容赦ない
何度かそういった
ヒーロー側は生け捕りしか出来ないってのに向こうは殺すつもりで来るもんだから被害は大きくなる傾向がある。
「それに何があれって、捕まったとして動機も犯人の詳細も詳しくはテレビには流れないのよね。過去に殉職して自分たちが称賛したヒーローの子供が
ま、そんなのネットとかの前じゃ無意味なことなんだけど。お陰でその手の話題で炎上してるのをよく見ることよく見ること、好き勝手に称賛しておきながらいざ何かが起きると自分たちのやったことは棚に上げて誹謗中傷をのたうち回る。
あぁ、思い出しただけでも苛立ってくる。無責任な連中の無責任な行動によって生まれてしまった被害者だと言うのに、そいつらは自分たちが加害者という自覚がないのが腹が立つ。
「それもこれもヒーローとしてじゃなくて親としてしっかりと子供のことを考えていれば起こらない悲劇だったのよ」
「……じゃあ、あの時のウォーターホースはどうすれば良かったのかな」
「逃げれば良かったんじゃない? 勝てないと分かってたか知らないけど、それでも市民のためにって身体張って洸汰のことは考えてないような行動するよりは遥かに良かったんじゃない」
「待って、あの二人は洸汰の事を蔑ろには……」
「してないと? はっ、笑わせてくれるわね。してないんだったら生き延びる方向に舵を切れたはずよ、それともなに?
自分でも分かるくらいに声を荒げそうになってるのを無理やり抑えてマンダレイに吐き捨てるように言葉にする。二人が洸汰の事を考えてないなんて分かりきっている、寧ろ当たり前の話でしかない。
当然のことを反論されてもだから何? としか言えない、大事なのは結果として二人は殉職し洸汰は残され、無責任な市民たちの称賛を目の当たりにして擦れてしまったという事実でしかない。
「結局は考えてないのよ、残された側のことなんて。だからこそヒーローとしてなんて言葉と行動が出てきてしまうの」
寝ている洸汰の頭を優しくまた撫でつつ深呼吸をする、どうにかして気分を落ち着かせないとこのままじゃ爆発してしまいそうだというのが嫌でも分かってしまう。
少し前の私でもこの手の話題じゃ感情的になりやすかったってのに私に関する事実を知ってからはなおのこと感情に流されやすくなってる気がする。
いえ、そうじゃないわねと手を離し、近くの壁に体を預けてこの感情を整理する。今になってやっとデパートの喫茶店で死柄木が言ってた赤霧と同じ存在で、復讐が目的という言葉の意味を理解した。
(あぁそうか、私は何も知らず考えずの無責任な奴らが嫌いなんだわ)
ヒーローをただ称賛し、ヒーローにただ責任を押し付けて、ヒーローが潔白じゃないと分かると石を投げる
「洸汰くんはやっぱり、マンダレイさんたちのことも?」
「え、あぁ、うん。他に身寄りもないから従ってるって感じ。はぁ、でもそうか、厳しいけどバートリーさんからすればそうとしか見えないってことか」
「……ごめんなさい、思ったよりも感情的に言葉を吐いてしまったわ」
「謝らなくてもいいよ、私が聞きたいって言ったんだし」
普通、あそこまで従兄弟をボロクソに言われたら怒るものじゃないかしらね? 要は私の前で便利屋の所員たちを貶されたのとほぼ同じ意味だと思うんだけど、因みに私は相手によるけど即刻開戦するわ。
それはそれとして感情的だったのは事実だから頭は下げておく、下げるけどなんていうか、どうしてヒーローってのは子どもと上手く向き合えなかったりするのかしらね。
「上手く向き合えなかったりで思ったんだけど、バートリーさんって子どもの相手が上手いと言うか慣れてるよね。やっぱり便利屋の仕事で?」
「へ、えぇまぁ。洸汰みたいな子の相手だったり幼稚園や保育園、ベビーシッターの真似事もしてたことがあるから慣れてるっちゃ慣れてるわね」
「聞けば聞くほど便利屋ってヒーローよりも活動内容が過酷な気がしてくるんだけど」
実際、下手なプロヒーローよりは働いてる自信はあるわね。活動内容も文字通り便利屋って感じにあれこれやってるし、じゃないと生活できないんだもの、仕方がないってことよ。
……職業ヒーローもそういう事なのよね、ようは。子供を養うためにヒーローとして体を張る必要があるって、冷静に考えてみれば警察とかと同じってことか。
「やっぱり今の職業ヒーローに全てを丸投げしてる社会は問題でしかないっての」
「どうしたの突然?」
「冷静に考えて駄目でしょ、職業ヒーローに丸投げしてあとは知りませんとかヒーローがやってくれるだろうから自分たちは素知らぬ顔とかがまかり通っちゃってるの」
マンダレイの前で言うことじゃないとは重々承知だけどつい言葉に出てしまったので許して欲しい。それにだからこそ便利屋ってのをやってるのよね、ふぅなんで忘れてたんだか。
或いはただ単に自分で再確認をしただけとも言えるか。とそこで時計を見れば温泉から出て既に三十分近くが経過していた、これ以上は耳郎達に何してたのとか言われそうだし、そろそろ戻ったほうが良いかもしれない。
「もうそんなに時間が経ってたんだ……確か、明日から本格的にスタートするって相澤先生言ってたよね」
「言ってたわね、まぁ私は関係ないと言うか別の仕事をするんだけど。今日の分もまだやらないといけないのが残ってるし」
「あぁっと、ごめんね。なんだか長時間も引き止めちゃったみたいで、それと洸汰をありがとう、二人共」
お礼をしてきたマンダレイに私と緑谷は大したことはしてないという感じに答えてから、緑谷は男子部屋に、私は一度血染たちの方に顔を出してから……被身子、言いたいことは分かるから今日は止めましょ、ね?
「駄目に決まってますよねと言いたいですけど、仕方がないので見逃してあげます」
「話を聞いたときはゲラゲラ笑ったわ、流石だよ、ウチの大将は」
「おじさん、教育間違えたかな、ねぇ血染」
「なんで俺に振るんだよ、コイツのそれは昔っからだ、今更どうすることもできんぞ」
「お嬢、頼むから少しは自分の見た目が人よりもいいってことを自覚して欲しいんだが」
どうやら耳郎から被身子へ、そして便利屋全体に広がったらしい温泉の一件であれこれ言われつつ私は女子部屋に戻った。戻ってからも色々とあったけど、その辺りは次回話すわ。
これもうヒーローアンチってタグ必要だろってくらいにはレイミィちゃん、ボロクソに言ってますね……
ではこれが今年最後の更新となります。来年の更新の始まりは5日(日)からとなりますのでご了承ください。
皆様、良いお年を。