便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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どうも明けましておめでとうございます。

とりあえず抱負としては今年中にはこの作品は完結させたいですねというところですかね、多分まぁ終わるとは思います、一応ですが最後までネタは浮かんではいるので。

そんな無計画作者ですが今年もよろしくお願いします。


No.122『やるからには徹底的に、ね?』

 翌日、合宿二日目の朝5時30分、A組は全員が宿泊施設の前に集められていた。勿論、そんな朝早くということでほぼ全員が覚醒していませんという表情と雰囲気を醸し出している。

 

 そんな中で一人絶好調と言わんばかりの表情と雰囲気をこれでもかと溢れさせている少女が一人、と書いたが誰かなんてものは言うまでもないだろうレイミィである。

 

 吸血してからというものの彼女の朝の調子はうなぎ登りであり、昔を知っている被身子達からすると豹変とも言えるレベルでしかない。

 

「んっん~、やっぱり血を吸うと体の調子がすこぶる良くなっていくわね」

 

「……え、今なんか凄いことを聞いた気がするんだがオイラ、え、吸った?」

 

 眠気が吹き飛ぶような一言に峰田がレイミィを凄い勢いで見つめ、見つめられた側の彼女はえぇと特に隠す素振りもなく頷く。続けて女子組に目を向ければ、代表だろうか蛙吹が頷いてから

 

「昨夜にね、レイミィちゃんから頼まれたのよ」

 

 昨夜、血染達のところから女子組の部屋に戻ってきたレイミィは蛙吹達からそれはもうガッツリと温泉での件で説教をされての話。

 

 丁度終わったタイミングで部屋の扉がノックされ麗日が出てみれば、そこに居たのは。

 

『あれ、渡我さん?』

 

『こんばんわ~、レイミィちゃんに呼ばれてきたんです、大丈夫ですかね?』

 

『うん、平気だけど』

 

 何かあったのだろうかと思いながら部屋に案内、突如来た客人に驚くもレイミィは被身子を見て来たわねと呟いてから、真剣な表情に顔を変えて麗日達にこう頭を下げた。

 

『突然なんだけど、一人15秒だけ血を吸わせてもらえないかしら』

 

『血を……? 別に大丈夫だけど、急にどうしたん?』

 

 聞かれれば隠す必要もないからと個性の強化による身体への悪影響は伏せたうえで頼んだ理由を全員に話していく、己の個性の強化の手段がこれしかないこと、今までしなかったのは過去のトラウマのせいだということ。

 

 この辺りまでは彼女たちもなるほどと言う感じに聞いていた。だが最後におまけ程度の感覚で出てきた話で場は騒然と、或いは鬼気迫る勢いにガラッと変わることになる。

 

『入学してから(ヴィラン)との戦闘が多かったからなのか、カロリーが致命的に足りなくなってたらしいのよ。まぁ本来は吸血で生き血を吸って補うんだけどさ、今までやってなかったツケって……』

 

『なんでそれを早く言わないかな!? ほら、遠慮しなくていいから吸いなって!』

 

『へ? え、あ、ありがとう、てかどうしたの急に』

 

『いやレイミィちゃん、普通に考えて栄養失調起こしてますとか言われたらこういう反応になると思いますよ?』

 

 更に言うとすれば今日まででレイミィに負担をかけてしまっていると自覚しているからこそ、少しでも彼女の助けになるならばとクラスメイト全員は思っているのもあり、すんなりと彼女はA組女子全員から血を貰うことに。

 

 という事を話せば、瀬呂からふと思ったという感じの質問が飛んでくる。曰く、吸われてるときはどんな感覚なのかということ、これに答えたのは耳郎だった。

 

「どうっていうか噛まれた直後はくすぐったいって感じであとは特に何も感じなかったんだよね。みんなそんな感じだったって」

 

「なんでぇ、ちょっとこう、漫画チックにピンクな感じとか……ふぅ、ま、そういう事言うのは良くないよな」

 

「凍らすか……」

 

 峰田の周囲から人間が居なくなった瞬間である。これには流石のレイミィも軽く引き、被身子は珍しいと言えるほどにお目にかかれない絶対零度の視線を送っていた。

 

 そんな空気ではあるが、当然というべきかA組の前には相澤が居るわけであり彼は急にワイワイガヤガヤし始めた生徒たちを咳払いと鋭い眼光で黙らせてから

 

「お早う、諸君。朝から元気そうでなによりだ」

 

 誰が聞いても皮肉だとよく分かる声とセリフだが騒いでた自分たちが悪いのは分かっているので黙って彼の話を聞くことに。

 

「本日から本格的に強化合宿を始めるのは昨日も言ったな。今合宿の目的は全員の強化及びそれによる〝仮免〟の取得」

 

(〝仮免〟まで駒を進めるのね。私達が敵連合を今週には潰すとして問題が片付くわけじゃないから当然と言えばそうだけど)

 

 話を聞きながらレイミィは考える。確かに敵連合自体はこの合宿期間中にも片がつく算段になっている。これは皮算用でも何でも無く、万全を期しているからこその自信からの思考、だが同時に彼女は思っていた。

 

 敵連合及びAFOを潰すということは裏で抑えていた巨大な存在が消えるということ、言ってしまえば蓋が外れることに等しいと。

 

(蓋が開けば、今まで抑えられてたから大人しくしてた新たな巨大な(ヴィラン)が動き出すのは容易に想像できる。だからこそ〝仮免〟の取得を一年前倒しにするってことよね)

 

 とここまで思考を巡らせていたレイミィだったが直後に〝くたばれ!〟という爆豪の掛け声と爆風を受けて意識をそっちに戻せば、入学直後のテストと同じように〝個性〟でボールを飛ばした直後の彼の姿。

 

 感想としては出久よりもあとから自分たちの特訓に参加したとは思えない火力の向上っぷりにレイミィは内心で拍手を送り、相澤は記録を見てふむと多少驚いた感じを出してから。

 

「なるほど、バートリーの特訓に参加してたから、か。記録は800ジャスト、本当なら〝個性〟そのものはあまり成長してないというのを言いたかったが便利屋に出し抜かれたな」

 

「ふふっ、私達がその辺りの手を抜くとでも思ってたかしら?」

 

「そうか、〝個性〟も体の一部、だから使わなきゃ成長しない……」

 

 レイミィのような例外的存在は除き、〝個性〟と言うものは使えば使うほどに馴染み伸びていく、確かにここ3ヶ月近くで様々な事があったとは言え、精神的な成長がほとんど、だからこそ。

 

「今日から君たちの〝個性〟を伸ばす。死ぬ程キツイがくれぐれも死なないように……それと今回からは便利屋にも参加してもらう、バートリー」

 

 呼ばれ、相澤の隣に立つレイミィと便利屋の面々。もっとも初対面というわけでもなく今日までの生活で顔は見たことがあったり、そもそも昨日の時点で会話をしていたりもするので自己紹介自体は非常に軽いもので済まされる。

 

「さて、今回の特訓だけど見ての通り、あなた達は人数も少なくないし〝個性〟だってバラバラで育成方針も一つじゃない、そこは良いわね?」

 

 頷いたのを確認してから更に続ける。本来ならばプッシーキャッツ達の〝個性〟により効率よく育成をするという話だが、この場には便利屋という存在が居ることにより効率よくが最高効率に化ける、主に仁の〝個性〟のお陰で。

 

 教える側の人数が足りない? よろしい、ならば増やせばいいじゃない。各々の〝個性〟に合う相手が居ない? だったら雄英高校にいるプロヒーローから見合う相手を出せばいいじゃない。怪我の危険性? 大丈夫、リカバリーガールの用意もあるから安心して怪我してこい。

 

 と力押しも真っ青な説明とそれを可能にしてしまう仁の〝個性〟の存在に全員の心が一つになった。今までもそんな事をするつもりはなかったのだが今の説明を聞いてしまえばこの感情しか生まれないだろう。

 

(絶対に便利屋と敵対するのは止めよう)

 

 後にB組も集まってから説明されると奇しくも同じ感想を抱くことになったがそこは省略しておこう。また今回の合宿ではブラドにレイミィが頼まれたというのもありB組を主軸に〝個性〟伸ばしの手伝いに入るという事をその場で伝える。

 

 伝えた瞬間、出久と天哉、そして日々の特訓を見たことがある麗日と耳郎がそっと黙祷を捧げた。まず間違いなく〝個性〟伸ばしだけで済むような生易しいものじゃないことを彼らは悟ったのだ、そして事実そうである。

 

「ゲホッ、ゴホッ……」

 

「貴様の〝個性〟はコピーの条件を満たすだけでも工夫がいる。煽るだけで触れることが出来るなどと甘いことを考えるなよ、さっさと立て」

 

 一部抜粋という形にはなるが紹介するとまずA組もB組もプッシーキャッツによる〝個性〟伸ばしをしつつ、そこに加えてB組はヒーロー活動に必要な(ヴィラン)の対処法や〝個性〟の運用の仕方を叩き込むという形を取っている。

 

 まず血染は基本的に接近戦主体の(ヴィラン)役という体で近接戦闘の対策を身体に叩き込みつつ、時折〝個性〟の【凝血】を使い変化を加えることを忘れない。

 

「ほら、考えなしに分離しちゃ駄目だってさっきもおじさん言わなかったかな? じゃないと俺みたいな〝個性〟持ちにあっさり無力化されるよ」

 

「これも、駄目!?」

 

 圧紘はトリッキータイプの役を担い、搦手で攻めてくる相手に対してどう〝個性〟を運用すれば良いのか、もしくは自分がどのように動けば良いのかということを考えさせながら〝個性〟伸ばしも行わせていったり。

 

「ほらほら、知ってる顔だからって戦い難いとかは駄目ですよ~。あぁでももしかしたら本物かもしれないですねぇ!」

 

「うわっとと、私は本物だよ!?」

 

「ごめぐっ!?」

 

「えへへ、嘘ですよ?」

 

 被身子は〝個性〟伸ばしがそもそも戦闘訓練になりそうな生徒たちを纏めて相手取りつつ、圧紘と同じように撹乱してくる相手にはこうやって動いてくださいと言う内容を実戦で教えていく。なお、言葉で説明するのが難しいからと言うのが本音の模様。

 

「くっ、はぁ!」

 

「ぐっぬぬ……! 角のコントロールが追いつかないデス!?」

 

「周りの物が、足りない」

 

「ほらほら、集中を切らすなよ。数で押してくる(ヴィラン)なんざ、今じゃ珍しくもなんともないんだからな」

 

「寧ろチンピラなんて数攻めでしか来ないからな」

 

「物量こそが正義ってやつだ、お嬢もよく言ってる」

 

 仁が担当するのは主に広範囲に影響を及ぼす〝個性〟またはサポート系の〝個性〟に対する〝個性〟伸ばしの手伝い。【二倍】でひたすら自分を増やしての数攻めにより常に〝個性〟を使わせることで負荷をかけているというわけである。

 

「がぁ!? これでも貫通される、もっと息を吐き出さないと駄目か!」

 

「ドンッ! ゲホッゲホッ、ぎ、ギリギリだけど次はもう、痛っ!?」

 

「ぬぅ! お二人は私の後ろに、一度息を整え、うぐぅ!?」

 

「いい判断だ、だが獣狩りの銃弾も覚えがないわけじゃない、数発は耐えろよ?」

 

 火伊那はサポート系や異形系の〝個性〟の特訓を担当、弾丸を止めるだけというシンプルながらもレベルは他と比べても高いと言える内容を淡々と行う姿には遠巻きで一瞬だけ見てしまった出久が顔を引き攣らせる光景だったとか何とか。

 

 そして最後にレイミィはと言うと彼女だけはたった一人を徹底的にいじめ抜いていた。というのも彼女自身が吸血を行ってからまだ本格的な戦闘行動をしてなかったので加減がまだ出来てないということなのでそれが可能な相手を選んだとのこと。

 

「(んだこれ、打撃は重いってのにまるで姿が見えねぇ!)うぉおおおおおお!!!」

 

「フフッ、フフフッ、アハハハ!! 最高よ、いい気分だわ! なるほど、吸血するとこうも身体能力が変わるものなのね! 鉄哲、気を抜くんじゃないわよ、ギアを更に上げるから!」

 

 うわぁ、今までに見たことないくらいに絶好調だと思ったのは誰だったか。だが【スティール】の〝個性〟で身を固めている状態でひたすらに攻撃を受けている鉄哲はそんな事を思う暇はまるでない。

 

 早すぎる動きに姿は当たり前だが影すらも目で追うことは出来ず、全力で〝個性〟を使っているというのにその上から着実に無視できないほどに襲い来る衝撃とダメージ、ほんの僅かにでも気を緩めた瞬間にこの打撃の嵐に襲われるかもしれないという恐怖。

 

 己の〝個性〟が破られるなどとは思いたくもないというのに何れは突破されると思わされる乱打、だが同時にこれを合宿中に何度も受け、耐えることが出来たのならば自分は更に上に行けると鼓舞する。

 

「オラァ! 来いや、そんなんじゃ俺の硬さは突破できねぇぞ!!」

 

「いい挑発ね、乗ってあげるわ!!」

 

 言うまでもないかもしれないがレイミィ・バートリーは威勢の良い啖呵が大好きな少女である。なので鉄哲の言葉で上げたギアが更に上がった、上がったということは威力も速度も上がるということであり、ついさっきまでのとは文字通り壁を超えたと言わんばかりの深紅の嵐を前に鉄哲徹鐵の意識はそこで途切れた。

 

「やりすぎだ阿呆」

 

「ごめんなさい、ちょっと興が乗っちゃって……」

 

「いやいや、謝んなって、あれを耐えられなかった俺がわりぃんだからよ!」

 

 なお、鉄哲徹鐵本人的にはこれはいい特訓だから今後も頼みたいとのこと。こうして特訓の時間は流れていき、PM4:00、そろそろ夕食の準備をという時間ではあるが、今回はプッシーキャッツが用意するわけではなく、生徒たちでカレーを作ることに。

 

「確かに、災害時など避難先で消耗した人々の腹と心を満たすのも救助の一環……さすが雄英、無駄がない!! 世界一旨いカレーを作ろう、皆!」

 

「なるほど、救助の一環の訓練、それは考えたことなかったわ」

 

 これはボケか或いは天然か、麗日は割と真面目に悩んだがすぐに考えるのを放棄した。




プッシーキャッツの出番が殆ど出てないというの駄目じゃないかなお前……ま、まぁ、次回、次回ね。

便利屋メモ
今のレイミィの状態
全体的に戦闘力が向上、身体能力も向上、すこぶる健康体とのこと。

なお、〝個性〟の強化による反動は考えないものとする。
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