便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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Q 先週はどうして更新がなかったの?

A モデムが金曜日に故障して替えが来たのが月曜日だったからですね……あとジークアクス見て情報量で死んでたのもある。


No.127『幼馴染との改めてよろしく』

 本来であればマスキュラーと戦うのは洸汰を(たす)ける為に駆け付けた緑谷出久一人だけのはずだった。正確に言えば増援を呼ぼうにも洸汰を守るために体を張った結果、連絡手段を失ってしまったからというのも事情があるのだが。

 

 ともかく、その状態で格上の相手と死闘を繰り広げ両腕に再起不能寸前の大怪我をしての勝利、となるはずだった。だが今日まで便利屋というイレギュラーが関わった結果、流れが変わっていた。

 

「AP……ショットォォォォォ!!!」

 

「!? か、かっちゃん……?」

 

 まさに戦闘開始というタイミングに上空から聞き覚えしかない叫びとともにマスキュラーに対して爆破が直撃、衝撃と爆炎から洸汰を守るように身体で庇ってから視線を前に戻すとそこに居たのは自身の幼馴染の姿。

 

 マスキュラーから視線を外さないまま、だがその背中からは怒りともう一つなにかの感情を感じるそれにもう一度、呼びかけようとした彼に対して勝己は怒りを抑えるように口を開いた。

 

「てめぇは何時だってそうだ、自分の命をなんとも思っちゃいねぇ」

 

「かっちゃん……?」

 

「一人で何でもしようとしやがって……あぁそうだよな、俺がそうなるようなことをしちまったんだもんな……!!」

 

 それは出久への怒りにも聞こえた、けれどそれ以上に彼への懺悔のようにも聞こえた。

 

 実際、懺悔でもあった。彼自身が過去に出久へしてしまった取り返しがつかない仕打ち、ただただ己が幼馴染の精神性を異常だと恐怖し突き放そうとして、やらかしてしまった幼稚なイジメ。

 

 結果として、OFAという力を手に入れた緑谷出久の精神性の歪みは更に強くなってしまった。自分が貰ったこれを正しく使うために、命も投げ捨ててるとしか思えないヒーローとしての動きを見せるようになった。

 

「そうだ、俺がやらかしたことだ……」

 

「……」

 

 もし出久と真っ向から喧嘩をして本音をぶつけ合ってなかったらこの言葉は出てこなかっただろう。だが本来よりも遥かに早く本音をぶつけ合い、その後も特訓を共にした時間が彼に己の悪行とも言える昔の事を考えさせる時間を生み出し、想いに変化を与えていた。

 

 己の出久に対する感情を受け入れたとも言えるかもしれない、自分は彼の精神性を恐れていたと。その上で緑谷出久と向き合い、今こうして彼の前に立っている、幼馴染が一人で突っ走り抱え込まないようにするために。

 

「話はあとだ。まずはあいつをぶっ潰すぞ。やれるよな、〝出久〟」

 

「っ!? あ、う、うん! 僕とかっちゃんなら勝てる。洸汰くん、物陰に隠れてて、多分だけどこの辺一体は危なくなるから」

 

「だ、大丈夫なのかよ兄ちゃん達……」

 

 本当なら二人で何とか洸汰を連れて逃げるべきだろう、だが目の前の(ヴィラン)がそれを許してくれるような相手ではないと察しての言葉に洸汰がそう問いかける。

 

 あいつは自分の両親を殺した存在だと分かっているからの不安の言葉、それに対して出久と勝己はマスキュラーから目を逸らさないままはっきりと答えた。

 

「大丈夫、あいつを倒して絶対に(たす)けるから」

 

「けっ、足引っ張んじゃねぇぞ」

 

「ハハハッ、良いねぇ。何処にでも現れて正義面してくるヒーロー志望者らしい言葉じゃねぇか」

 

 不退転の決意とも言える態度をする二人に対してマスキュラーが心の底からおかしそうに笑みを浮かべながらそう告げ、来るならばいたぶって殺してやろうと羽織っていたマントを脱いで戦闘態勢に入る。

 

 無論、相対している出久と勝己も相手が格上であることは百も承知としており、その上で負けるつもりはないと構えればマスキュラーが〝個性〟を発動しつつ、あぁそうだと思い出したように質問を投げかける。

 

「てめぇら二人あれだろ、緑谷出久と爆豪勝己だろ? 殺す前に一つ聞きたいんだがよ、レイミィ・バートリーってガキが何処に居るか知ってねぇか?」

 

「(バートリーさん? いや、それよりも)何だあの〝個性〟」

 

「(あのコウモリ女、敵連合に狙われてるってことか。疑問はあとだ、)んだありゃ、筋肉ダルマに自分からなってやがるってことか?」

 

「黙ってるってことは知らないってことでいいんだよな。んじゃ、遊ぼう……ぜ!!」

 

「っ!?(フルカウル、35%!!)」

 

(速い、だがな!)

 

 端から答えられるとは思ってなかったのだろう。マスキュラーは二人から返答がないと即座に判断したと同時に足に力を込めて一気に動き出す。

 

 それは洸汰から見れば一瞬とも言える速さ、けれど二人にとってはまだ反応できる速度であり勝己は持ち前のセンスと爆破で、出久は自身の現在の上限であるフルカウル35%を発動し回避に成功、その間もマスキュラーを視界に入れているが。

 

「一部だけとはいえ、マジで筋肉ダルマになりやがった。おい、出久、どうだ?」

 

「はっきり言えば100%で殴ってもあそこまで筋繊維に纏われてたら防がれると思うし、一発でもまともに食らったらヤバいのは確かだと思う」

 

「正真正銘の脳筋ってことか、ムカつくがてめぇが言うならその通りなんだろうな」

 

「あぁそうだ、俺の〝個性〟は【筋肉増強】皮下に収まんねぇ程の筋繊維で底上げされる速さ! 力!」

 

「でも……」

 

 自慢げに己の〝個性〟を語るマスキュラーだったが出久がそれを遮るように勝己を真似たかのような笑みを浮かべて、はっきりと告げる。

 

 確かに力は自分たち以上だし、速さだって並以上どころではないのは認めるしかない。けれど力と速さだけの相手なんて彼らからすれば油断は出来ないが極端に恐れる相手ではないと言うのを知っている。

 

 自分たちの特訓を見てくれている彼らを知っているから、力と技術で薙ぎ払ってくるオールマイトという存在、マスキュラーとは比較にならないほどの速さで蹂躙してくるレイミィという存在を知っている、だからこそ言えるのだ。

 

「それだけの相手に負けたら、師匠たちになんて言われるか分かったもんじゃないし、僕達も負けるつもりはない」

 

「何が言いたいって? 脳筋に負ける俺達じゃねぇってことだよ、筋肉ダルマ!」

 

「……舐めた口聞くじゃねぇか、良いぜ、ガキってのはそれくらい生意気じゃねぇとな!!」

 

 さっきのリプレイとも言えるマスキュラーの力任せの右ストレートを左右に飛ぶことで回避する二人だがその衝撃波には冷や汗が流れる。あんな啖呵を切ったがやはり単純に強力なパワーと言うものはプレッシャーになる。

 

 特に一撃でも喰らえばアウトというのは精神的にも負荷が掛からない訳ではない。だがオールマイトとの模擬戦を思い出すことで落ち着きを取り戻しつつ、出久はその伸びきった右腕の肘部分に向けて飛び上がりからの踵落とし【MANCHESTER SMASH】を放つが

 

「くっ!(蹴りならって思ったけど、そこまで甘くはないか!)」

 

「伸び切った部分にか、中々やるが力が……」

 

「一撃で終わるわけねぇだろうが、筋肉ダルマぁ!!」

 

 クリーンヒットをしてもなお筋繊維の鎧を貫くことが出来ないことが分かればマスキュラーは笑みを深めて彼に対して反撃をしようとするも、咄嗟にカバーするように現れた勝己がダメージを与えた部分に追撃するように爆破を加える。

 

 刹那、マスキュラーの表情が歪む。見れば黒く焦げた筋繊維の部分が嫌な音を立てており、千切れる寸前であることが分かる、余裕の表情をしていたが決してダメージがまるでないというわけではない、ないのだが

 

「足りねぇ! 無駄に頑丈だなおい!」

 

「だったらってくっ!?」

 

「出久!!」

 

「あ~、クソっ。やるじゃねぇか、えぇ?」

 

 己の自慢の〝個性〟の鎧に明確な傷を付けられた、しかも格下だと見下していた相手に、この事実にマスキュラーは〝遊び〟を捨て、反撃で二人を吹き飛ばしてから一つの義眼を取り出してはめ込む。

 

「わりぃわりぃ、お前らのことを甘く見すぎてたわ。こっからは本気の義眼でやるわ、てめぇら強いもん」

 

「……(空気が、変わった!)

 

「今度こそ正真正銘の筋肉ダルマになりやがったなおい」

 

 今までのが遊びだとすれば、先程までの速さと力ではないということは嫌でも分かる。だからこそ二人は思考を巡らせる、このまま戦うか、それとも洸汰を連れ逃げるか。

 

 相手のそれが〝個性〟由来と分かっているので施設まで逃げて相澤と合流するというのも選択肢としてはあるだろう、だがと出久はその案を捨てる。

 

(それを許してくれる相手じゃない、仮に上限を超えたフルカウルで動いても分が悪い)

 

 かと言って、出久と勝己の二人で勝てるかと言われればこれもまた微妙というよりも負けの目が強いだろう。慢心と油断をしていた先程までの状態ならばまだしも今度はそれを捨てているのだから。

 

 どうする、もうマスキュラーも動き出そうという状況で思考を巡らせるが時間が足りないと思った出久だったが、隣の勝己を見て閃いた。そうだ、確かに救援は来れないかもしれないが援護をして貰える方法があるのではないかと。

 

「かっちゃん、ホークアイさんって射程距離どのくらいだっけ!」

 

「あぁ?! 今それを……いや、そういうことか」

 

「んじゃ、行くぜ!!」

 

 ブンッ! という音が聞こえたのはマスキュラーが二人の目の前に現れた時だった。音を置き去り、というほどではないが音とほぼ同時の速さに驚きながらも、何とか回避しようと動き出す出久だったが回避したはずの腹部に強烈な一撃が突き刺さる。

 

「遅いんだよ!!」

 

「グッがっ!?(蹴り?! しまった、パンチだけに気を割きすぎた!)」

 

「オラァ!!!」

 

「もう通らねぇな、そのチンケな爆発じゃ!!」

 

「兄ちゃん!!??」

 

 幸い崖の方向ではなかった事に安堵しつつ立ち上がるが、そこには追撃をしようとしたマスキュラー。それに対して今度は勝己が追撃を阻止するようにさっきよりも火力を上げた爆破を放つも、全身を覆うほどになった筋肉の鎧に阻まれ、反撃とばかりに大きく腕を振るわれ、直撃こそ避けるが衝撃波は彼を襲い、大きく吹き飛ばされる。

 

 しかも飛ばされた方向が崖だったので洸汰は思わず叫んでしまったが勝己は【爆速ターボ】で復帰、安堵の息を吐き出すが吹き飛ばされた本人としては自分よりも直撃を受けた出久がきになるようで。

 

「おい、大丈夫か?」

 

「な、なんとか……ケホッ」

 

 なんとかとは言っているが明らかにダメージは大きいのは言うまでもなく分かり、たった一度の攻防で状況が悪くなったのを感じ取り思わず舌打ちをしてしまう勝己。

 

 けれど勝機がないわけではない、それは二人も分かっている。問題は都合よくその展開に持っていけるかという部分である。

 

(ここまで派手に音を立ててるなら気付くと思うんだけど……)

 

「おい、なんとかしてあいつを上空に上げるぞ」

 

「え? あ、そうか!」

 

 今のやり取りだけで何かを決めた二人は少なくなくないダメージを負った身体に活を入れてマスキュラーと向き合う。恐らくはチャンスは一度きり、これに失敗すれば自分たちの命も、後ろの洸汰の命も無くなるかもしれない作戦。

 

 だが不思議と失敗するとは思えなかった。これは慢心でも油断でもなく、仲違いこそしてたがそれでも幼馴染であり、実力を知っているからというのがあるのだろう。

 

 先に動き出したのは出久と勝己だった。今までとは違う防戦ではなく攻勢の態度にマスキュラーは特に疑問にも思わずに迎撃を選択、振り下ろされる一撃を二人は避けるも。

 

「グッ!」

 

「グゥッ!」

 

 紙一重の回避となり衝撃波が二人を襲う、もはやそれだけでも物理的な攻撃であり苦悶の声を上げてしまうが止まること無く、出久はその振り下ろされた右腕を掴み上限を超えたフルカウル50%を発動、身体中から聴こえる嫌な音を無視しながら

 

「おおおおおおお!!!!」

 

「グッおぉ!?」

 

 ジャイアントスイングの要領で回転を加えて投げ飛ばす。だが筋肉の鎧の重量とやはり無理をしたフルカウルであるせいで万全とは言えない力の入り方だったせいでほんの僅かにマスキュラーの足を地面から浮かばせた程度に留まってしまう。

 

 だがその僅かでもあれば勝己には十分だった。爆速ターボで一気に加速しマスキュラーの背後に回り込んで筋繊維の一部を力任せに鷲掴みにしてから更に爆破の勢いを強めて無理やり回転力を追加する。

 

「とっておきだ、爆破式回転カタパルト(エクスカタパルト)ォォ!!!!!」

 

 マスキュラーからすれば想定外とも言える投げ飛ばしだろう。まさかここまで飛ばされるとは思ってなかったと同時に、それでどうしたという感情が生まれる、このまま落ちたとしても自分にはダメージはない、もしかしたら時間稼ぎかと思ったが。

 

 視界の隅を2つの影が過ったと思えば、出久と勝己が視界に現れる。その姿を見てマスキュラーは何を考えているんだと思わず笑ってしまった、この状況なら逃げればよかっただろうにと。

 

「デトロイト……」

 

「ハウザー……」

 

「おら来いよ、返り討ちにしてやるから!!」

 

 もしかしたら落下の加速力も加えれば自分の筋肉の鎧を突破できるかもしれないと考えているとすればあまりに甘いと、必殺の構えを取る二人に対してマスキュラーは迎撃の構えを……取ってしまった。

 

 刹那、彼の耳に届いたのは何処か遠くからの発砲音と自身の筋繊維が千切れ飛ぶ音だった。見るまでもない、己の自慢の腕は肩から一直線に無慈悲にも貫通され、そこから流れる血を見てやっと何が起きたかを飲み込めるも出てきた声は

 

「は?」

 

「スマァァァァァァッシュ!!!」

 

「インパクトォォォォォ!!!」

 

 〝個性〟による筋繊維が千切れたことで解除され無防備になった身体に叩き込まれる必殺の一撃、そのまま地面に叩きつけられたマスキュラーはそれ以上の事態を飲み込める前に意識を刈り取られることになった。

 

 そして叩き込み地面に転がるように寝転んだ二人は息を荒げながら何度も呼吸を繰り返し、それからゆっくりと立ち上がってから

 

「やった……?」

 

「これで立ち上がったらバケモンだろ……」

 

「な、なぁ、これ生きてるのか?」

 

 恐る恐ると言う感じに出久に近寄った洸汰が聞くがとりあえず息はあるらしいと言えば怯えることになる。だが意識は失っていてまた最後の一撃でまともに動ける身体ではないから大丈夫だろうと言いつつ

 

「とりあえずこいつはここに放置して施設まで避難しよう。これ以上は僕達も戦えないし」

 

「う、うん」

 

 洸汰をおんぶしつつ、行こうかというタイミングで勝己が彼らの前に出てから顔は向けないまま、さっき話はあとだという部分をポツリと呟いた。

 

 それは本来ならばもっと先の未来で紡ぎ出されるはずの言葉、最もそこでは顔を見ての場面ではあったので若干、変わってしまっているのだが。

 

「かっちゃん?」

 

「……悪かった。今まで」

 

「へ? え、あ、え!?」

 

「うるせぇ、行くぞ」

 

 出された言葉に出久は驚き、勝己はそれに対して軽く反応してから歩き出す。洸汰からすればどういうことなのだろうかとなるやり取りだが、二人にとっては大事なやり取りであり、だからだろう出久の顔には笑みが生まれていた。

 

 無論、全く気にしてないということは決してない、けれど彼がこうして謝罪をしたのならば自分から言える言葉はこれだけだと。

 

「良いよ、これから改めてよろしく、かっちゃん」

 

「あぁ」

 

「兄ちゃんたち、喧嘩してたのか?」

 

 そんなところだと答えてから三人は施設へと避難していく、なお避難した矢先に相澤達に説教されることにはなるのだがそこは割愛しておこう。因みにあの射撃は言うまでもなく火伊那からのものであり、彼女としては急に勝己が向かったという場所で戦闘が起きたということと、投げ飛ばされたマスキュラーと追撃しようとする二人を見て、事態こそ把握し彼らへの援護射撃を行ったがただ一言あるとすれば

 

「いや、急に通信もなしに合わせろってよく気づけたよな私って思うわ」

 

 かなり運任せな作戦だった模様。こうして出久と勝己対マスキュラーの戦いは終わりを告げるが、その最中、敵連合の目標とされているレイミィはと言うと。

 

「やっと見つけたわよ、荼毘。いえ、そうね、ハッキリと言うべきよね【轟燈矢】」

 

「へぇ、俺のこと知ってるんだ、レイミィ・バートリー」

 

 決して退けない戦いを始めていた。




Q どうして此処で謝罪イベを?

A どう考えても原作通りの場面が出てこないからだよ(未来予知)
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