便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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 所員からは末っ子みたいな扱い。


No.13『便利屋所長の朝の光景』

 翌日、今日からは通常通りの登校時間ではあるが起きる時間自体に変化はなく、あるとすれば今日はまだ制服に着替えずに、部屋着兼寝間着のままベッドで上半身だけ起こしてボケーッとしていた。

 

 コレが本来の朝の彼女の姿。入試当日は遅刻したらマズイからと朝から無理やり意識を覚醒し、入学当日も同じ理由で覚醒していたがそれがない朝の彼女はこんなものである。

 

「レイミィちゃーん? 起きてますかー!」

 

「んあ? あ~……ちょっとまってて」

 

 だからこうして被身子がモーニングコールとして彼女のヘアセットやメイクをしに来るという形を取っている。なので実を言うと昨日は扉を開けたら制服姿で意識を覚醒させているレイミィが居て内心では驚いていたらしい。

 

 レイミィ自身もそれは理解しているのでもうそんな時間だったのかとノソノソとした動きでベッドから降りて扉を開ければ、朝早いというのに自身とは真逆でテンション高めの被身子の姿に朝から本当に元気ねと口から漏れてしまう。

 

「レイミィちゃんが弱すぎるだけだと思いますよ? 昨日は早く寝たんですよね?」

 

「寝たわよ……流石にあれから夜更かしする元気すら無いっての」

 

 それでこの有り様には被身子も苦笑するしかない。このスウェットパンツに焦点が合ってない目をした黄色い嘴の白く丸い鳥のキャラが描かれたTシャツを着た少女はもし自分がこうして来なかったら遅刻ギリギリの時間まで部屋から出てくることすら無いと確信出来てしまう。

 

 けどまぁそれもカアイイところなんですけどと反転させてからグイグイとレイミィの背中を押して部屋に入る被見子は先ず彼女に洗面所にて冷たい水で意識の覚醒を促し、少しすれば

 

「んっ、ふわぁ。おはよ、被見子」

 

「はい、おはようございます!」

 

 漸く意識が目覚めた彼女からの朝の挨拶にご機嫌に答える被身子。こうして朝の準備が本格的に開始、その最中の話題はやはり雄英高校に関連することであり、盛り上がったのは

 

「そう言えば、ヒーローコスチュームって何時来るんですかね」

 

「さぁ、昨日のガイダンス資料にも載ってなかったのよね。そこまで遅くはならないでしょうけど、確か貴女がデザインを細かく書いて出したんだっけ」

 

「そうですよ。じゃないとレイミィちゃん、適当でいいのよこんなのってリクエスト無しで出そうとするんですもん」

 

 だって便利屋業務で着れるものじゃないしと反論すれば、それでもオシャレできるならするべきなんです~と返される。仕事での服装などはキチンと考えるのだがプライベートではこの手の話題に関してになるとレイミィはかなり無頓着な部分が強く出やすく、メイクも被身子が施さなければスッピンで活動することに何の躊躇いも見せない。

 

 なので雄英高校が被服控除としてヒーローコスチュームを無償で用意してくれると言われ、デザインも自由に決めて構わないという資料を入学前に読んでおきながら頑丈で軽くて動きやすいとだけ書いて提出しそうになったのを被身子が阻止、一晩掛けてデザインを描き出し、彼女に手渡したというやり取りがあったとか。

 

「で、どんなデザインにしたのよ」

 

「それは届いてからのお楽しみです。でもきっと気に入ってくれるので安心してくださいね」

 

「フフッ、貴女からのなら余程じゃなければ気に入るわよ」

 

 ニヒヒと言う感じに笑う被身子の顔を見て、レイミィも釣られ笑いそうになるがメイク中なので駄目ですと言われ面倒と口から漏れそうになる一幕がありながらも、準備を終え事務所に顔を出す。

 

 事務所もまた昨日と変わらずの光景であり、男三人衆が業務開始前の準備をしつつも彼女たちが来ると分かれば一旦手を止め

 

「おはよう所長、被身子ちゃん。コーヒー淹れてくるから座って待っててよ」

 

「今朝は起きれたようで何よりだ」

 

「けど、何だかんだで毎日起きてくるじゃないか、お嬢は」

 

「トガが起こしてますからね~」

 

「逆説的に私が一人じゃ起きれないみたいな言い方止めてくれない?」

 

 思わずという感じに朝食の菓子パンを食べる手を止めてツッコミを入れるレイミィだったが、帰ってきたのは寧ろ起きれると思ってたのかという視線。

 

 お嬢と呼び慕っている仁からもそれが飛んできたことに本気で動揺してしまう、まさかこの調子だと圧紘も思ってるのか、いや、そうじゃないと思考を目の前の失礼三人衆に戻してから。

 

「起きれるに決まってるじゃないの、というより起きてるし」

 

「始業時間ギリギリまで部屋から出てこないのにですか?」

 

 ワンヒット、無慈悲な指摘にレイミィは何も言えない。確かに目覚めてはいるだろう。だがベッドの上でボケーッとしてるだけのそれを被身子が起きたと認めるはずもない。

 

「メイクもヘアセットもしないで、朝食も食べれないくらいに慌てて部屋から出てくるのにですか?」

 

ツーヒット、追い打ちをしっかりかけるのは血染の教えだろう。そしてまるで実体験のように被身子は語っているがこれは実際に起きた話である。過去に偶には起こさないで見たらどうなるんだろうかと実験を行ったのだが結果は言うまでもなかった。

 

「ねぇ、被身子。怒ってる?」

 

「いいえ、ただレイミィちゃんが面白いこと言ってるのでちゃんと教えてあげようかなぁって」

 

「はいはい、あまり所長を苛めないであげなって。はい、コーヒー」

 

 苛めてないです、正論ですと被身子に慈悲もないトドメを繰り出され撃沈するレイミィ。しかし、言われている内容は何も間違ってはいないので否定することも出来ず、ズズッと淹れられたコーヒーを啜り誤魔化すことに。

 

「ところで、今日から普通に授業なのかい?」

 

「そうね。特に変わったことはなかったと思うから通常通りじゃないかしら」

 

 これ以上は所長の拗ねが入りかねないのでと圧紘が話題を変える。昨日は入学式と言う名の個性把握テストだけだったが彼の言う通り本日からは通常通りに授業が行われることになっている。

 

 主に午前は一般的な英語や数学と言った必修科目を行い、午後からはヒーロー基礎学と言う時間割となっている。ヒーロー基礎学についてはまぁ、専門的なのだろうなと誰も触れず、上がったのは必修科目の話で被見子が思い出したかのように口を開いた。

 

「そう言えば、昨日少しだけ必修科目の教科書を見せてもらったのですが、私にはチンプンカンプンでした」

 

「被身子ったら、教科書を開いたと思ったら数分もしないうちになんですかコレって顔するの、笑っちゃったわよ」

 

「チンプンカンプンって、通信制高校とは言えお前の方が先輩だろ」

 

「いやいやいや、雄英高校のはレベルじゃなくて、次元が違うんですよ!?」

 

 その時のことを思い出してクツクツと笑うレイミィにいや、あれを普通に解けるって方がおかしいと思うんですよ私はと力説する被見子。血染が言うように被身子も通信制高校の学生ではあるが、今回に限れば偏差値に絶望的な差があるので彼女の言葉とおり、次元が一つ違うという程に内容が難しいものになっている。

 

「超一流になれるって謳い文句は伊達とかじゃないってことか……つか、俺も教科書見ても訳わかんねぇって言いそうだ」

 

「それを当たり前のように解ける子たちが雄英高校に居るわけで、いやぁ、最近の子達は凄いねぇ」

 

 この中では大人組とされるが仁は出来なくはないがというレベルで、圧紘は結構インテリなので便利屋においては参謀を担うことも多々合ったりする。因みに血染は高校中退組ではあるものの、その後の独学で雄英高校の問題でも多少は解けるくらいには知識がある。

 

 無論、被身子も賢くないという訳ではない。レイミィの秘書を名乗れるくらいには猛勉強をしているし、このままもし大学にとなっても困らないくらいには現在の彼女は勉強ができている。なお、昔は色々と悲惨だったのはいい思い出。

 

「まぁこれで授業が追いつけませんとか言ったらなんで便利屋の所長やれてんのよって話になるじゃないの。ごちそうさまっと」

 

「そりゃそうだ」

 

 現状で便利屋一番の高学歴となったレイミィは菓子パンを食べ終え、衝動を抑えるための人工血液を飲み始め、血染も簡単に答えてからおかわりのコーヒーを淹れに立ったと同時に、時計を見て。

 

「っておい、時間大丈夫なのか」

 

「ふへ? まだ間に合うじゃない焦らせないでよ」

 

 別にもう少しのんびりしてからでも遅刻なんてしないじゃないと続けようとするが、それに待ったをかけたのは圧紘。血染とはレイミィの次に長いからこそ行間を読み切ったようで苦笑しながら

 

「余裕持って登校したほうが良いってことだよ所長」

 

「それにお嬢、何かの拍子で電車が遅延するかもしれないと考えたほうが良いかもしれないぞ」

 

「あ~、昨日もなんか(ヴィラン)が出たとかで少しだけ遅延してましたよ」

 

 仁からのかもしれないと言う予想を裏付けるように、被身子が昨日の出来事をレイミィに伝えれば無視できることじゃないとなり始め、本当ならまだゆっくりとしたかったんだけどとボヤきながら鞄を持ち立ち上がる。

 

「じゃあ、早めに出ておきますか……ふわぁ」

 

「忘れ物はないな? 特に昼飯後用の人工血液を忘れたとか洒落にならないからな」

 

「教科書とかハンカチとかもですよ~?」

 

「子供じゃないんだから忘れてないわよ。いってきまーす」

 

「いってらしゃい、所長」

 

「気を付けてな~」

 

 微妙にまだ頭を覚醒させてないのか、はたまた演技か、レイミィが欠伸を噛み殺しながら事務所を出ていったのを確認してから血染が副所長として朝礼を開始する。本日の流れ、現段階で来てる依頼と割振りなどを大雑把に決めていく。

 

「被身子、お前宛にまた依頼が来てる。机に置いてあるから確認してくれ、急ぎは一番上のストーカーの相談だ」

 

「はいはーい、本当に飽きもしないで来ますね、ストーカー……」

 

 慣れたこととは言え、あれって神経を結構すり減らすんですよねと言いつつメロンパンを平らげる被身子。

 

「圧紘、昨日の(ヴィラン)騒動で発生した建物の倒壊、その事後処理の依頼が来てるから任せて大丈夫か?」

 

「分かった。確かに結構派手に倒壊してたからね、中々大変そうだ」

 

 でもあれ、(ヴィラン)がと言うよりもヒーロー側の一撃がほとんど原因な気がするんだよねとその時の光景を思い出して曖昧な表情を浮かべながらコーヒーを飲み干す圧紘。

 

「仁、商店街の方から警邏の強化のための人手が欲しいってのが来てる。今回も任せるぞ」

 

「おう、任せてくれ。そういや、最近はちょっと物騒になってるらしいな」

 

 とりあえず現地行ったらどれくらい増えればいいか聞いておくかと、二個目のコロッケパンを食べ切り気合を入れるように肩を回す仁。

 

「俺の方は午前は待機、午後から複数の依頼を回ってくる。恐らくはバートリーの方が帰って来るのが早いだろうから、事情説明をまた頼むぞ」

 

 最後に締めとして自身の予定も伝えておいてから、ふぅと自身の席に座り直す血染。こうして一日で数件、数十件を所員で遂行していくのが彼らの日常だ。

 

 とは言っても始業まではまだ少し時間があり、朝食を終えた面々は各自の依頼の書類を確認しているのだが、ふと感じていたことを血染は呟く。

 

「にしても、最近は治安が悪くなり始めてるってのが気になるな」

 

「やっぱり所長が受けた雄英からの依頼も無関係じゃないかもね」

 

 パラパラとここ最近の依頼の書類を眺めれば、少し前までは自分たちに回ってくるのは住民からの雑務や、レイミィが出来る公安や警察からの取り調べの依頼。それがここ数ヶ月では仁が受けることになった治安悪化による警邏や、今回の圧紘が担当する建物の倒壊の処理。

 

 また被身子が言ったストーカー被害の相談も僅かずつだが増えている傾向にあるのも彼には引っかかる情報の一つ。

 

「なぁんか、良くないことが起こりそうな感じですよねコレ」

 

「とは言っても俺達が出来ることは来る依頼をこなすってだけなんだけどな。飽和してるヒーロー達が頑張ってくれりゃ良いんだが」

 

「奴らで回らなくなったら、便利屋が出張るだけだ。雄英高校が俺達に依頼を出したってことはそういう側面もあるだろうしな」

 

 言外にヒーローだけじゃどうしようもないと雄英高校は言ってるのだ。でも無ければ彼ら便利屋にこの手の依頼が来ることは先ずありえない。

 

 無論、ヒーローが主体で抑えることが出来ればそれでよく、自分たちは予備戦力だと言われれば、それはそれで納得するだろう。けれど、血染は確信していた、間違いなく自分たち全員が出るような事態が起きると、その時、一番の懸念として浮かぶのは一つだけ。

 

(バートリーが無茶しなきゃいいがな)

 

「クチュンッ……誰か噂でもしてるのかしら」

 

「めっちゃ可愛いくしゃみなんだな、バートリー」

 

「フフッ、今見たことは忘れなさい、瀬呂」

 

 血染に心配されてることは全く知らないレイミィ、教室に入ろうかというタイミングでクシャミをし、それを『瀬呂 範太』に目撃され、若干顔を赤くする一幕があったとか。




焦点が合ってない目をした黄色い嘴の白く丸い鳥
もしかして:ペロ◯様

便利屋メモ
レイミィが買う部屋着用のTシャツは基本的に安くなってるのを纏め買いするのでデザインに一貫性がまるで無い。
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