今後もちょっと怪しいですが更新は止まらないようにするのでよろしくお願いします。
下手しなくてもトップヒーローよりも強いんじゃないかこいつ。それが死柄木組と戦闘を開始した数分経った血染達の感想だった。血染が戦っている大男こと【マグネ】とミルコが相手をしていた脳無は強いが強いだけの程度だったので問題ない。
問題があるのは赤霧一人。二人を即座に戦闘不能にして三対一の形にしたというのにまるで押し切れる構図が見えないのだ。
「ちっ……平気か、二人共」
「あぁ? 私はこの程度じゃへばらねぇぞ!」
「とは言っても俺達三人で一人を攻めきれないっていうのはちょっと厳しい状況じゃないかな」
しかも向こうから攻められてないってのに。ホークスの額に冷や汗が流れる、実力だけで言えばここに居る三人は上の方だと言うのに赤霧一人を突破することが出来ない。
ホークスの速さ、ミルコの突破力、血染の巧妙さ、この3つを即興とは言え連携を組んでの攻勢を赤霧は顔色一つも変えずに対処してくる。この事実にホークスは驚愕するしか無く、対して向こうは。
「あ~、マグネと荼毘以外は全滅したっぽいなこりゃ」
「思ったよりも役に立たないな。まぁいい、どうせ此処で捨てていくつもりだったんだろ」
「まぁな、あんなお荷物抱えてる余裕ないっての」
戦力はほぼ全滅、作戦の失敗が決定的になったというのに焦りの一つも見せない様子にホークスはやっぱりかと聞かれないように呟く。
ここまでの過程を考えても始めから勝つつもりがないと言われたほうが納得するような動き方なのは全員気付いていた。
もっと言えばこの襲撃に対してやる気がないとも、一応この作戦は遂行するけど成功したらまぁいいかな程度でしかないからこそ脳無及び
と、ここで思考を一旦打ち切る。未だ戦闘中であり敵の眼前であまり考え込めばそれはただの隙にしかならない、なのでホークスは死柄木の今の言葉に対してニヤリと笑いながら。
「へぇ、そりゃ良いことを聞いた。つまり後は君たちを捕まえれば俺達の完全勝利ってわけだ」
「言うじゃん、赤霧に全くダメージを与えられてないくせに」
「ハッ! そいつの背中に隠れてるだけのやつに言われたくはねぇなぁおい」
あからさまな挑発にミルコが乗っかるように兎だと言うのに猛獣のような笑みを浮かべながら突撃、〝個性〟【兎】によって強化された脚力による踏み込みはそれだけで並の
「っ、なるほど、思ったよりも重いな」
「チッ、涼しい声して防ぐじゃねぇか(駄目だ、点で動かねぇぞ!)」
それを赤霧は差も当たり前のように腕一本で防ぐ。一応、防いだ右腕が若干ながら震えているのを見るにダメージがないわけではないのだろうがほぼゼロとも言えるその光景にミルコは舌打ちしつつ反動で間合いを空ける。
今のを見て男二人はさてどうするかと思考を巡らせる。互いの武器での攻撃もミルコのときと同じように防がれるだけ、不思議なことに反撃をしてこないので膠着状態になっているだけであり赤霧が攻めに入れば一気に形勢は傾いてしまうだろう。
沈黙が支配する、動きに動けないヒーロー側と相変わらず防御以外で動く素振りを見せない赤霧、永遠とも言える沈黙を破ったのは死柄木の素っ頓狂な声だった。
「んあ? はぁ? あの所長が素直に付いてるだって? どう考えても何かを企んでるだろそれ」
「どうした?」
「ターゲットを確保したって荼毘から、どうするよ、素直に連れて行くか?」
(所長? お嬢様のことか、ってことは)
どうやら彼女が事を進めることに成功したらしいと向こうに気付かれないようにハンドサインで二人に告げる。続けてこれ以上は攻めないでおこうと、それはあたかもレイミィが人質に取られたことによって動けなくなったという風に装う。
「はぁ、別に連れてけばいいだろう、あいつからの指示もあるしな」
「そうすっか。黒霧、撤退するぞ、俺達を送ったら荼毘を回収、コウモリは先生の所にでも放り込んでおけ」
「畏まりました。では、直ぐに……おっと、動かないほうがよろしいですよミルコ、子供の死体が見たいというのならば別ですが」
「……ケッ、クソ野郎共が」
ミルコの殺意を込めた悪態を吐くが死柄木はヘヘッと態とらしく笑ってから黒霧のワープで姿を消し、続けて気絶していたマグネ、最後に赤霧も霧に飲まれるように姿を消す。
その後、荼毘もレイミィを連れて撤退したという報告を聞いてからホークスは大きく息を吐きだしてから懐からスマホを取り出し起動させるととある地区の地図と二つの発信機らしき反応。
「発信機の起動を確認。よし……あとは任せたよ」
そして前回のラストに場面が戻ることになる。黒霧によってワープさせられたレイミィは用意された1人分の椅子に座り、簡素なテーブルを挟んだ先にてAFOと対面していた。
互いに軽い挨拶を交わした後にレイミィは改めてAFOの姿を観察する。その姿ははっきりと言えば、よく生きてるなこいつとしか思えないものであり、この状況でも裏で生きオールマイトを殺さんと動こうとするのは一種の感動すら覚えそうだと思っていると。
「悪いね、お茶の一つも用意できなくて」
「別に構わないわ。と言うか、貴方から出されるものを口に含むつもりなんて無いし」
「おや、随分と僕は嫌われているようだね」
「寧ろ好かれる要因が一つでもあると思っているのならば笑える冗談でしか無いんだけど? と言うか、よく生きてるわね貴方」
物怖じもなくストレートにぶつけられたその言葉がAFOには面白かったのか、その姿の何処から出てくるのだという地の底から響くような声でクツクツと笑ってから。
「お友達たちのお陰でね。最もドクターが言うには三ヶ月早く超再生の〝個性〟があれば必要なかったらしいのだけど」
「超再生でもオールマイトに負わされた傷はどうしようもなかった、だから貴方は吸血姫に目をつけたってわけ」
吸血姫、その一言を出せばAFOはほぉと感心する。それが本心からなのか、それとも態となのかはレイミィには分からないがそこはどうでもいいと切り捨てて、言葉を続けることに。
「本当に苦労したわ。ホークスからの情報を頼りに細い線をひたすらに辿っていく作業をするのは、何だったら途中で途絶えてたのもあるから尚の事ね」
スカーレットデビルの真実を知ってから、彼女は今日まで探り続けていた。自身にある善性が彼女からだとすれば簡単にAFOに縋るはずがない、そこに至るまでの何かが絶対にあったと。
なのでホークスが公安という立場で得られる情報、自分たちでかき集めることが出来る世間からの情報、それらを土台に血の記憶を利用し当時の彼女を襲った何かを調べ、そして辿り着いた。
「AFO、貴方は自身の身体のために吸血姫に目をつけた。けれど当時の時点で永く生き狡猾というものに敏感で、なおかつプロヒーローになっていた彼女を襲撃することも接近することも難しかった」
「……」
「なので一つの策を打ったのよ。始まりはとあるゴシップ誌の一面、内容は【スカーレットデビル、
本来であればなんてことのない噂話、都市伝説レベルのはずだったが掲載されている内容が妙に信憑性が高いこと、あまつさえメディアがそれを拾い如何にもな警察関係者が〝なぜか〟曖昧に濁し答えてしまった。
それらが合わさり民衆の間にその噂が事実なのではという流れが出来てしまった。レイミィはそこまで話してから一息入れる、その間にもAFOからは目を逸らさずに居るのだが表情すら分からず反応も見せないことにツマラナイわねと思いながら
「勿論、彼女は否定するけど周りは情報に流され次第に孤立していき、最終的には石すら投げられるようになってしまうほどに孤立してしまった」
「当時は異形系への風当たりは今よりも酷かったからね。あれは僕から見ても痛ましい限りだった……」
「よく言うわ、曖昧に濁し答えてしまった警察関係者、そもそもの始まりであるゴシップ誌を書いた記者、そして周りに噂を伝播させた一部の民衆、これら全ては貴方のシンパ、つまり」
スッと人差し指をAFOに突き付けながら告げる、その噂の出処はAFO、お前であると。自身のあらゆる場所の伸びている人脈を利用し孤立させることが狙い、AFOは知っていたのだ、スカーレットデビルもといエルジェーベト・バートリーは独りには耐えられない存在だということを。
故に信頼を築き上げたこのタイミングで人々から迫害をされれば心が折れるだろうということも。事実、エルジェーベトは折れてしまった、何を言っても信頼されず化け物だと罵られ、挙げ句には助けた筈の民衆に恐れられたことで。
「再起不能にまで折れた彼女にお前は接触した。ただそっと手を差し伸べ、自分ならば君の望みを叶えられるとでも告げるだけ、簡単だったでしょうね?」
「く、クククッ、見事だよレイミィ・バートリー。しかしおかしいね、真実を知ってるものは大体処理したはずなのだが、どうやって辿り着いたのか教えてくれないかい?」
「悪いけど企業秘密よ。まぁでも今の貴方を見る限り〝個性〟の譲渡は上手く行かなったっぽいけど、そこで私を作り出してってなって今に至るってところかしら?」
「あぁそうだとも、あれは僕も想定外の出来事だった。そして君が生きて今こうして目の前に居るということも、こちらは嬉しい誤算と言うべきかな」
そこで初めてAFOが動き出す。生命維持装置を担っているのであろうマスクを付けたまま立ち上がったと思えば、ゆっくりとだが確かな圧を感じさせる動作でレイミィの側まで近づく。
対してレイミィはそれを見て顔には出していないが内心ではその威圧感に若干の恐怖に似たものを感じていた。これがAFOと言う悪の帝王かと、ただ歩いてきているだけだというのに感じるそれに引き攣った笑みを浮かべそうになるのを抑え込み、右手を差し伸べてきたAFOを見つめる。
「どうかな、便利屋の全員とともに僕の下に付くというのは。君の〝個性〟は確かに欲しいがそれ以上に君たち便利屋を是非とも迎え入れたいと思ったんだよ。共に
「物事ははっきりと言いなさい。ヒーロー側に便利屋が居ると物凄く困るから
差し出された右手を見向きもせず、余裕ある笑みを浮かべそう告げられればAFOは困ったなという感じの態度を見せる。その姿がおかしかったようでクスクスとレイミィは笑ってから、敵を見る目で口を開いた。
「一つ、勘違いをしているようだから教えてあげる。私は別に貴方の話を聞きに来たわけじゃないのよ、とりあえず答え合わせをしに来たってだけだし、もっと言えば……失望したわ」
「失望?」
「えぇ、悪の帝王様あろう方が結局は白か黒かでしか物事を見てなかったってことに。そこらの
もしかしたら少しは気の利いたことを言うんじゃないかという期待がレイミィにはあった。その場合でも誘いには乗らないが少しは称賛しただろう、だがAFOはそれっぽいことを言いつつも結局は白を壊して黒だけにするという単純な話。
ともすればレイミィにはツマラナイとしか言えない内容でしかなく、なんだ魔王って言ってもこの程度かと言う態度が取れてしまう。だが、ふと何かを閃いたと言う感じにあぁでもと口を開く、このまま決裂と言う感じでもいいがこの方が良いかもしれないと。
「仮に誘いに乗るとしたら一つだけ条件があるわ」
「ふむ、何かな? 僕に出来る範囲であれば聞いてあげるさ」
「難しいことじゃないわ。条件は物凄く簡単……お前の命よ」
もしAFOが目が見えたとしたら最後の言葉を言い切る直前にレイミィの姿がブレて見えただろう、座った状態から出された最高速は言うとすればUSJ襲撃時の赤霧に匹敵するものであり、確実にAFOを仕留めんと突き出した右手は……見覚えしか無い赤い腕によって阻まれていた。
「ッ、まぁ居るでしょうね!」
「ふぅ、危ない危ない。念の為に赤霧を弔の所から私の側に潜ませてて正解だったよ」
流石に読まれてたかと掴まれた右手を無理やり振り払い、懐からスモークグレネードを取り出してAFOの足元へと投げ付けながらバックステップで距離を取り、続けて3つのビー玉のようなものを一つを上空に、残りを向こうに気付かれないように転がす形で投げる。
「スモーク? 僕には無意味だと言うのになぜ? 赤霧、彼女の追撃を頼むよ」
「あぁ」
短く答えた赤霧が動き、レイミィに迫るが直ぐに彼女が何かを投げたことに気付き上を向く。直後、ビー玉の一つが軽い音を立て中から圧紘が現れたのを見て彼女の狙いに気付く。
「させるか!」
だとすれば厄介だとばかりにブラッドチェーンを飛ばし上空で無防備な圧紘を貫くが、貫かれた圧紘はニヤリと笑ってからパチンと指を鳴らしそのまま消滅、ここであれがコピーだったと気付くと同時に彼女の後方で圧縮が解除される音、そして。
「君が誰かの手を借りてここまで来るとはね、オールマイト」
「今度こそ、全てを終わらせる、AFO!!」
「ハァ、熱くなりすぎるなよオールマイト」
残りの二つから出てきたのはフル装備の血染と万全の状態のオールマイト、その姿を見てもAFOは余裕を崩さないが赤霧は何か都合が悪いという感じに溜息を吐き出してから、この状況を作ったレイミィを見据えて。
「なるほど、始めからこれが狙いだったということか」
「えぇ、けど貴女が出てきたのは嬉しい誤算ってやつよ。あの日の望み通り殺してあげるから」
此処で全てを使ってでも。そう告げた彼女は、吸血してから一度も使わなかった【ヴァンパイア・プリンセス】を迷いなく発動させた。
今此処に世紀の大決戦の火蓋が切って落とされようとしていた。その結末はまだ誰にもわからない。
結局全部AFOって奴が悪いんだ!(極論)