便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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ついにタグに週一の場合もあるとか言い出して申し訳ないと思ってます、はい。ふふ、リアルがとても忙しいのが虚しいです。


No.136『医者泣かせヴァンパイアガール』

 目が覚めた、あれから何時間経ったのかは分からないけど多分数時間は寝れたんじゃないかしらねと思いつつ起き上がり……そこで手の感触がおかしいと違和感を感じた。

 

 なんというのかしら、ベッドじゃなくて粉を触ったみたいな感じを受けて右手を見れば、灰になり崩れつつある右手、それを意味するのは最期が唐突に訪れたのだという現実。

 

 唐突に始まっていた身体の崩壊を見て私は言葉を失いつつ、すぐにナースコールを押そうとして上半身に力を入れたと同時に身体から力が抜けてベッドから落ちた。

 

 落ちながら見たのは手と同じ様に灰になり崩れ始めている腰から下の自分の身体、情けないけど悲鳴を上げたくなって、でも声が出ないことに気付いて、次第に視界が崩れていって……

 

「っ!!?? はぁ……はぁ……ふふっ、バッカみたい」

 

 跳ねるように起き上がり息を整えながら私はそう呟いた。酷い悪夢だわ、えぇ、それよりも酷いのは、と気付けば震えていた右手を見つめて自嘲気味に笑う。

 

(この間まで死ぬのは分かってるからって覚悟をしてた癖に感覚が分からなくなったら悪夢で死に恐怖するなんて……ね)

 

 今までは心臓の感覚からだいたいこの程度と推測ができていた。けれど肝心の心臓が動きを止めちゃったから今の私には判断するための材料がない、だからこそ〝個性〟と言うバッテリーがそんなにすぐに尽きるとは思えないが残量を見れるわけじゃないから、さっきの悪夢を見たのだろう。

 

 自分のことながら笑えてしまう。散々、自分の命を賭けた戦い方や働き方をしておいて実は死ぬのが怖いですなんて、そう思いながら起こした上半身をまたベッドに倒れるように横になり私は嘲笑い、額に腕を置く。

 

(……冷たい)

 

 人間らしい温もりが抜けきった冷たさが今の私には心地良い。それと腕から伝わる肉の感触もまた夢で見たような崩壊が始まっていないということを直に教えてくれるから自然と心が落ち着いてくる。

 

 こんなことしないと落ち着かない時点でもう色々と駄目な気がしないでもないけど。こうでもしないとまたあの夢を幻覚という形で見てしまうかもしれないなんて恐怖が脳裏にこびり付いてしまっていた。

 

 結局、私はそれから一睡もできずにただ腕の感触だけを感じて気付けば朝を迎えていた。けれど不思議と寝不足とかを感じることはなかった、この辺りもちょっと後遺症と言えるものが出ているのかもしれないなんて考えていると病室の扉の前に複数の気配を感じ起き上がれば

 

「レイミィちゃん、起きて……ますね」

 

「よ、もしかして寝れなかったとかか?」

 

「まぁ、そんなところよ。それより、おはよう二人共、血染達は?」

 

 どうやらこの時間帯の病院待機は被身子と火伊那の二人だったらしい。体を起こしながらそんなことを聞いてみれば被身子がベッド横の丸椅子に座り、近くに火伊那が来てから被身子から血染達は今こっちに向かってるとのこと、だがそれ以上に私のさっきの返事が気になったようで。

 

「それよりも、寝れなかったって何か合ったのですか?」

 

「何かっていうか、ちょっと夢見が悪かったのよ」

 

「どのくらい前から起きてるんだ?」

 

 部屋に時計がないから正確には分からないけど数時間くらい前から? 何気なく言ってみたけど火伊那はすぐに私の異変に気付いた様子で一度腕時計を見てから、真剣な表情で一言。

 

「数時間前って寝れたとして一時間あるかどうかだぞ……」

 

「えぇ、でも一度、目が覚めてからはまるで眠気がなくてね」

 

「……あれ?」

 

 唐突に被身子が一点を見つめて声を漏らした。どうしたのかと視線を辿れば、そこにあったのはサイドテーブルに置かれた水の入ったペットボトルと夜中にお腹空いたら食べてくださいと彼女が置いていった3個のコンビニのおにぎり。

 

 そのどちらも置いていった時のまま、つまりは〝未開封〟だと言うことに被身子は気付けば私に視線を向けてくる。何が言いたいかなんてのは聞かなくても分かるから私は素直に答えた。

 

「喉も渇かないし、お腹も空かなかったのよ」

 

「空腹はまだしも、喉が渇かないって、こりゃ思った以上に深刻かもしれねぇな」

 

「レイミィちゃん……と、とりあえず食べられるなら食べて、お水も飲んでおきましょう! 感じないだけで脱水とかが起きないとも限らないですから」

 

 指摘されれば確かにそうだと、おにぎりに手を伸ばし包を開封してから一口。とりあえず言えたのは普通に味を楽しめたというところだろうか。

 

 ただこれが消化されるかどうかが分からないので今日の検査で見てもらうのが良いかもしれない、同じように水も普通に飲めたけど……これもしかして胃袋に溜まってるだけとかにならないわよね。

 

「その場合ってどうなるんだ? やっぱ吐き出すとかなのか」

 

「聞くだけだと拒食症みたいな辛い状況にしか聞こえないので、トガは本気で消化されてることを願います」

 

「考えたくもないわねそれ」

 

 思わず想像してしまって苦い顔になったじゃないの。まぁ言っちゃうとこの場での私達の心配は杞憂に過ぎなかったわ。

 

「結局、何もかもが不明及び経過観察、か」

 

 あれから直ぐに血染達が相澤先生、校長、それとリカバリーガールと共に来て直ぐに診察を行ってその結果を見て表情を変えない血染の一言が全てだった。

 

 胃の中もカメラで見たけど内容物は一切無し、ただそれが消化されたのか、はたまた不可思議に消えたのかは不明。栄養素になってるのかすらも分からずじまいで、私は明日には退院するという流れになった。

 

 あぁ、でも一つだけ新しく分かったことと言えば、心臓は形だけのハリボテなのに血液を循環させる部位としては働いているという状態だということくらい、間違いなく〝個性〟で血液を循環させてるだけよねこれ。

 

「だろうね。けど経過観察がっていうのなら丁度いいじゃないかい、校長」

 

「そうだね、バートリーくん、今後についての話をしても大丈夫かな?」

 

 大丈夫も何も、これ以上この件で私達が頭を捻らせても仕方ないので問題ないけどと返せば先ず相澤先生から数枚のプリントが手渡され、私と後ろから被身子が覗き込んだそれの内容は全寮制導入検討についてとのこと。

 

 読み進めていけば、ふむと私は一つ唸る。内容を簡単に言ってしまえば、AFOと言う巨悪が消えたことによる(ヴィラン)の活性化を懸念、それに伴いヒーロー科の成長を促すため、つまりは強化合宿の延長としてが一つ。

 

 もう一つとして雄英高校としては遠方でもここで学べるようにしたいということで今回の件を利用して試行してみるという意味も含まれているらしい。

 

 それに伴い、雄英高校と共同状態である便利屋も事務所を雄英の敷地内、もっと言えば寮の近くのビルに一時的に移転してもらいたいと、なるほど、確かに〝それらしい〟理由での話だと感心してから

 

「で、本命は青山の保護ってことよね?」

 

「あぁ、AFOが消えた今、自宅も安全という保証は全くとは言わないが殆ど無いに等しい。故にこのタイミングで学園で保護したいというのが我々の考えだ」

 

「ともすれば息子の警護を青山夫妻から依頼されている便利屋の移転も必要、か。だから丁度いいってことか、それに燈矢のことも考えればこっちとしても悪い話じゃない」

 

「それに今の事務所もちょっと面倒になってるからね」

 

 圧紘が言うには昨日、火伊那とともに一度様子を見に行った時には既にマスコミ及び不審な人物が数名ほど張り込んでいたらしい。この混乱してる状態でも取材しようとしている連中がいるのは逞しいことだと思うと同時に

 

「張り込まれてるとなると迂闊には戻れないし戻ったら動けなくなる可能性もある、か」

 

「ちっ、あいつら本当に面倒なことしかしねぇな」

 

「逆に言えばあそこを囮に出来るとも言える。夜逃げの依頼を受けたときの手段を使えば流石に連中も事務所を移転したとは気づかんだろう」

 

「……夜逃げの依頼?」

 

 ギロリと相澤先生の視線が私に突き刺さるけど勘違いしないで頂戴。血染が言う手段っていうのは青山夫妻を保護したときのと同じものを指してるだけよ。

 

 あと夜逃げも依頼者が不当な借金を背負わされてとか、DVから逃げたいとか、虐待された子どもの保護だったりとかで犯罪者の手助けはやってないから安心して頂戴。

 

「そうか、すまない、変に疑ったな」

 

「ま、話だけ聞けば怪しさしか無いから仕方ないってやつだ」

 

 仁の言う通り夜逃げの依頼って聞けば誰だってそうなるのは私も理解できるので正直に言えばさほど気にしてはいない。とりあえず、移転の際にはいつもの手順でお願いするわね、仁。

 

「おう、にしてもまさか俺達自身にやる日が来るとはなぁ」

 

「なんだかんだであそこにも愛着湧いてたんですけどねぇ。うぅ、トガは泣けそうです」

 

「はいはい、あっと、じゃあ校長、そういうことだから、便利屋としては異論もなにもないわ」

 

「うん、助かるよ。それじゃ私達は一度学園に戻るよ、本当ならばもう少し話をなんだけど予定がちょっと詰まっててね」

 

 まぁでしょうねとしか言えない。昨日の今日なので学園も色々とやることは山積みだろうことは聞かなくても分かるし、そこに全寮制導入検討の話も上乗せされてるんだから見える以上に忙しいのだろう。

 

 いや、それを言ったら私達も変わらないんだけど。今は言わないでいこう、うん、だって口に出したところで解決する問題じゃないし……なんてことを表情には出さずに思いつつ病室を去っていく校長たちを見送る。

 

 去り際にリカバリーガールから異常などを感じたらすぐに医者に言うんだよという小言も貰ったけど、流石に今回はその手のことは無視しないから信頼してほしいのだけれど、。

 

「今日までの実績ってやつじゃないですかね。なんだかんだで黙ってたじゃないですか、レイミィちゃん」

 

「患者が医者に何も言わないとか一番嫌われるやつだからな、嬢ちゃん」

 

「分かってるってば……あ、しまった、ホークスとかオールマイトの事を聞くのを忘れてたわ」

 

「オールマイトなら一応の伝言を貰ってる。どうにもマスコミの対処と今後の方針を決めるとかで来れないらしい、済まないと謝っていたぞ」

 

 マスコミはともかく今後、か。あの一件で残り火がどの程度を消耗したかは分からないけど、今まで通り隠しながらのヒーロー活動は難しくなったってことかしらね。

 

 で、その引き継ぎなどのために東奔西走ってことかしら、No.1ってのは大変ね。

 

「そうだ、伝言で思い出したけどミルコからも一つ預かってるよ。近い内に顔を見せに来るって」

 

「その近い内が今日な気がして止まないんだけど。はぁ、まぁいいわ、それよりもっと」

 

 ミルコのことは苦手意識があるのよね、初対面で(ヴィラン)と勘違いされて危うく病院送りにされそうになったから。当時のことを思い出して苦い顔をしつつベッドから降りる。

 

 降りたついでに身体の調子を見てみるけど特に異常はなし、寧ろ良くなってるような気がするけど気の所為じゃないでしょう、あの時に赤霧から吸血した分が作用してるんだと思うし。

 

「言い方悪いが、今の身体の状態になったから発生してたデメリットを踏み倒せてるってことか」

 

「えぇ、反動も何もかもを無視して身体を動かせるし〝個性〟も使える、ただ使えば使うほどに〝個性〟は消耗していくから調子に乗ればすぐに駄目になるでしょうけど」

 

 でも普通に動く分にはそこも心配しなくていいし、そう考えれば悪い状態じゃないわね。なんて笑いながら言ったら被身子にそんなわけ無いじゃないですかと本気で怒られたので謝罪することになったわ。

 

「嬢ちゃんはもう少しデリカシーってのを学ぶべきだと思うんだよな。んで、ベッドから降りたのは身体の調子を見るだけじゃないんだろ?」

 

「自由に動き回ってもいいって言われてるから、燈矢の顔を見に行こうって思ってね。それに今さっき決まったことも話さないといけないし」

 

「確か今だとまだ燈矢くんのところには轟家がお見舞いに来てると思いますよ。丁度いいんでレイミィちゃんの今の状態を話しておきましょう」

 

「……なんで?」

 

 いや、本気でなんで? え、釘を刺せる人間は多い方に越したことはないって? それにテレビであの瞬間を見られてないわけがなく心配の電話が来てたから?

 

 どうやら騒動が収まって少ししてから轟家から血染にスマホに着信が、クラスメイトからは被身子のスマホにメッセージが来ていたらしい。だとしたら話さない理由もない、か。

 

「分かったわよ。それも含めて燈矢のところに行くわ、着いてきて」

 

 あと冷静に考えれば燈矢に話さないわけには行かなくて、今ここで冷さんたちに話さなくても燈矢経由でバレるかもと考えれば話しておいたほうが後々の面倒はないと割り切れる。

 

 割り切れる、えぇ、割り切ってるわ、だからちょっと病室前で深呼吸していいかしら被身子。

 

「駄目です、ノックしちゃいますね~」

 

「あ、ちょっ……」

 

 私が止めるよりも前に、被身子は病室をノックして返事が返ってきたと同時に扉を開けてしまう、この親友、私に凄く厳しいのだけれど!! などと口にするよりも前に病室から私の姿を見て驚いている轟家の面々に気まずく感じつつ。

 

「あ~、えと、どうも」

 

 なんて声を掛けて良いのかが思い付かなくて笑みを浮かべれば、先ず私に来たのは駆け寄ってきた冬美さんの抱擁だった。これだけでどれほど彼らに心配をさせてしまったのかが分かってしまったと同時に、私の身体に密着するということは……

 

 えぇ、そうよね。貴女ならしっかりと気付いてしまうわよね、何かに気付いてしまったという感じに驚愕の表情を浮かべている冬美さんから名残惜しいと感じつつ離れて病室に全員で入ってから扉を締めて私は口にする。

 

「ちょっと、皆さんに話さないといけないことがあるの」

 

 本当に私ってこの人たちに心配しかかけてない駄目な人間よね。思わずそんなことを考えながら私は今この身体に起こっていることを話していくことにした。




レイミィ「夜逃げのプランは私が考えたわ、そのための〝個性〟の運用法もね、私達自身を対象に遂行するのは初めてだけど」

被身子「出すんですね、レイミィちゃん考案の……」

レイミィ「こうやるのよ!」

なんて寸劇を思い付いたけど入れる余裕も入れる内容でもないと即座に脳内ゴミ箱にダンクしました。

因みに次回か次次回くらいには神野編が一区切りになるんじゃないかなと思います。

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