便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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自信あるように見えて、単純に見栄を張ってるだけだった系ガール。


No.137『素でやらかすから手に負えないんです(被身子談)』

 これで場の空気を重くするのは何度目かしらねとレイミィは思いつつ、一息入れるために適当な椅子に座り込む。

 

 話した内容は今までと同じ、違いがあるとすればプロヒーローや鉄火場を知っている人間へではなく、冷や冬美、夏雄と言う一般人にも話したということだろう。

 

 エンデヴァーは当たり前ながら、何度か現場とレイミィの戦いを見ていた焦凍はなんとか飲み込めるが他三人はそうは行かずになんと口にして良いのかわからないという表情を晒す中、燈矢が口を開いた。

 

「ハハッ、俺よりもやばい状況じゃんお前」

 

「全くだわ。貴方のほうが希望があるって話だし、気分はどうかしら?」

 

「まぁまぁかな、でもさっきエンデヴァーの土下座と誠心誠意の謝罪が聴けたから最高に近いかもな」

 

「あら、それは私も観たかったわ」

 

 笑いながら燈矢と会話するレイミィ、こうしてみれば彼女は大して気にしてないとも捉えられる姿ではあるがレイミィという少女を知っている身としてはまるで無理に笑っているようにも見えてしまう。

 

 目前とまでは言わずとも見える範囲に迫っている死に、諦めてしまっているとも。だからだろう、冬見が沈痛な面持ちのまま口を開いた。

 

「……なんとか、ならないの?」

 

 まるで懇願のようにも聞こえた、彼女自身もレイミィ本人からの話でもうどのような手段も取ることが出来ないということは分かっている。分かっていても、眼の前の妹とも言える付き合いがある少女がただ死を受け入れるだけの運命をどうにかしたくて言葉に出てしまった。

 

 その優しさがレイミィには眩しく、嬉しく、同時にそんな顔をさせてしまった事に罪悪感を感じつつ首を横に振る。

 

「さっきも話したけど、今の私は充電の出来ないバッテリーで動いてる状態。なにをどうやろうとも、それこそ奴から残りを吸血しても変わらないわ」

 

 言葉には出さないが仮に赤霧から残り半分を吸血した場合、彼女の身体はまず耐えられない。確かに【吸血姫】を適合させはしたが、それは〝無個性〟だったのを〝個性〟持ちに変えたとかではないので完全な【吸血姫】の出力には耐えられずに一気に崩壊が始まってしまうからだ。

 

 とは言え言葉にしなくても手の施しようがないという言葉でエンデヴァーは既に察しており、むぅと腕を組み唸っていた。彼自身はレイミィを好んでいるとかはないが妻や子供たちが気にかけている存在であるのでどうにかしたいという気持ちはあるらしい。

 

 誰も言葉を発することが出来ないくらいに重力しか感じられない病室の空気、それを感じ取ってレイミィは内心でだから話したくなかったと呟く。こうなることは分かってたし、こんなことを伝えたところで彼らの無駄な心労にしかならないと。

 

「その、本当は話すつもりはなかったのよ。でも被身子が隠しておくのは駄目だっていうから」

 

 とりあえず今の空気を変えよう。その心構えは良かった、良かったがなんでよりによって口にする内容がそれなんですか? と被身子は割と本気で疑問を覚えた。

 

 もっと別に話題はあったんじゃないんですか? 見れば血染と火伊那は頭痛を感じたのかこめかみを押さえ、圧紘と仁は苦笑して、最後に轟家の方を見て彼女は心の中でレイミィに黙祷を捧げた。

 

「……それはどういう理由でかしら?」

 

「もしかしてだけどレイミィちゃん、黙って私達から距離を置こうとか考えてたのかな?」

 

「え、いや、燈矢の件も解決したし、冷さん達に私のことで無駄に心労を掛けたくもなかったから話す必要もないと思って……距離は、まぁ、家族の輪に〝部外者〟がこれ以上関わるのもどうかなって」

 

 もちろん、何かあればすぐに向かいますし付き合いは続けますけどと続ける彼女だがこれはもちろん、依頼だけの付き合いだからとかではなく上記の言葉は全て本音である。

 

 轟家が自分たちを好意的に思ってて何かと気にかけてくれていたということも理解しているが、結局は自分はどこまでも部外者でしかなく、燈矢も無事に戻ってきたのならば彼の為と一度精神を病んでしまったことがある冷のことを思い、自分の身体のことでまた心労を増やしたくはないから出てきた台詞。

 

 後に被身子は語る、薄々そんな気はしてたんですけど、レイミィちゃんの自己評価の低さを甘く見すぎていたと。つまりは彼女の中では自分の立ち位置は気に入れらてるとは思ってるけどいざとなれば距離をとっても問題ないでしょという評価だったが故の上記の発言、だが……

 

「バートリーさん、そのまま座っててください。少しお話があります」

 

「うん、レイミィちゃん、私からもちょっといいかな?」

 

 それが逆に轟家序列ワンツーの逆鱗に触れた! そしてレイミィは急に変わった空気と目の前の二人の姿に血染が自分を本気で説教する前のそれと酷似していると気付くと本気で動揺することになる。

 

 何がどうして説教の流れになったのだと救いと説明を求めるように周囲に視線を向けるが、彼女の視界に写ったのは我関せずと言わんばかりに燈矢に便利屋についての説明を始める被身子達とそっと目を逸らすエンデヴァーと夏雄。

 

 こうなったらもう止められないんだ済まないと素直に口にして頭を下げてくる焦凍という光景に彼女は救いの手が全く無いことに気付き、それでもと反論を口にする。

 

「ま、待って頂戴、え、何が悪かったの今の!?」

 

「そっか、じゃあそこからにしようか」

 

 墓穴である。そこから始まるのはレイミィの自己評価の低さを指摘しつつ自分たちは決して負担や邪険には思ってないことと、それと冷からは自分はもうそこまで弱くないこともしっかりと告げられる。

 

 そもそもにして彼女が精神を病んでしまったあの一件も、そこに至るまでの様々な要因が重なりに重なってしまった結果でありレイミィの献身的な治療のお陰で立ち直ってからは更に強くなっている。

 

 じゃなければエンデヴァーを尻に敷き、轟家の天下を取れるわけがないのだ。寧ろその光景を見ていたというのにレイミィの評価がそうだったことに実はショックを感じていたりもするのでそこも付け加えて伝えれば

 

「あ、いや、それはその……」

 

「バートリーさんがとても優しいのはわかります。でも過保護に扱われるのは私だって思うところがありますよ」

 

「えと、ご、ごめんなさい」

 

 淡々と続けられる説教、それをBGMに被身子は事前に持ってきていた便利屋の資料を燈矢に渡しつつ給与や福利厚生等などを慣れた感じに説明してから、ふぅと一息入れ

 

「っていう感じですね。でも燈矢くんの場合は暫くは治療に専念になりますけど」

 

「ま、そこはしゃーないだろうな」

 

「入院中も給料は出るから安心してくれ。あと治療費に関してはエンデヴァー持ちだ、それで良いんだろ?」

 

「あぁ、全額負担する。だが体質の方はどうしたものか……」

 

 この治療で皮膚などは完治まで持っていけるが問題は体質の部分である。曰くあれから更に弱くなってしまっていて〝個性〟の火力を強くしすぎればそれだけで火傷を負ってしまうとのこと。

 

 エンデヴァーとしては微かな可能性があるのならばあらゆる手段を用いても改善をしてあげたいと思っているが、病院側も殻木も現状では難しいという返答になっている。

 

「けど全く可能性がないわけじゃない、殻木には研究を続けさせているから再生医療の技術が進めば或いはと本人も言ってる」

 

「マジで現状の元マッドサイエンティストが有能過ぎるだろ、あいつが真面目に社会貢献するだけで医療が週単位で進化してるってホークスが言ってたぜ」

 

 仁が言うようにレイミィに魅了され彼女のシンパとなった彼は日夜寝る間も惜しんで研究を進めており、お陰で上記でも書かれているが医療の進化が目覚ましい。

 

 先週までは不治の病だったのが治癒可能になった、四肢を切断し意識が戻るかもわからないほどのの重傷が一晩で四肢も再生し後遺症もなく意識も回復したといった具合に。

 

「それなら燈矢兄さんの身体もいずれは治るのか?」

 

「かもしれないな。本当、バートリーさんには頭が上がらないなぁ」

 

 なんて言いつつ夏雄が彼女の方を見るが、当の本人はまだ説教を受けている姿にあの調子ではまだ続きそうだなと若干の同情を込めて笑みを浮かべるしか無い。

 

 因みにレイミィは既に泣きが入り始めている。血染のとはまるで違う姉と母親という立場からの説教は耐性がないので心に来るらしい。

 

「うぅ……」

 

「嬢ちゃん、泣きそうだぞ。良いのかあれ」

 

「お嬢も流石に厳しいか、いや、まぁ俺もあの発言には驚いたが」

 

「自分を低く見すぎてんだ、もう暫くは放っておけ、む?」

 

 こういう機会でもなければ意識の改革は難しいだろうと続けようとした血染だったが病室の扉がノックされ、エンデヴァーが答えれば入ってきたのはホークスとミルコ、どうやらレイミィの見舞いに来たらしいが居ないのでここに来たらしい。

 

 そんな二人は入って早々に説教を受けてましたという感じのレイミィを見て、それから近くに来ていた圧紘に

 

「えっと、どういう状況?」

 

「うーん、所長がちょっと、ね?」

 

「あぁ、そういう。まぁ元気そうで良かったよ」

 

 本音を言えばあまり理解していないが、状況から見てレイミィが何かしらのあの二人の逆鱗に触れるような態度か発言をしたんだろうなと察し苦笑いでそう告げる。

 

 無論、ホークスもミルコも彼女については昨日の段階で聞いていたりする。とここで漸く説教から開放されたレイミィが二人を見て

 

「おはよう二人共、ミルコに至っては久しぶりが正しいかしら」

 

「よ、にしても嬢ちゃんも子供らしく説教受けるんだな。何やらかしたんだ?」

 

「それはノーコメントでお願いするわ。いや、まぁ悪いのは私だから、うん、それよりも二人共、今回の作戦への協力感謝するわ」

 

 流石に自分のこの状況を親しい仲とも言える相手に隠すつもりだったし、その上で付き合いを急に変えて死んでも悲しまれないようにしようとしたからなどとは口に出来ずに誤魔化してからお礼をする。

 

 お礼を受けた向こうは別に大したことじゃないと告げてから、寧ろとホークスが頭を下げる。

 

「ごめん、もっと速く君のもとに行けていればこんなことにはならなかった筈だった」

 

「何言ってるのよ、落下死を阻止してくれただけでも十分よ」

 

「つかそれを言ったら私もだし、エンデヴァーも言える話になるだろ」

 

「……そうだな」

 

 本当ならばあの場にプロヒーローはもっと速くに集結する手筈だった。だがそれは死柄木たちの徹底抗戦によって阻まれ、結果として向こうの計画通りに事を運ばれ、レイミィは蘇生こそしたが死亡という最悪な事態に陥ってしまった。

 

 ここでレイミィは自分のあの一度目の死がどれほど周囲、もとい自分の知り合いに影響が出てしまったかを実感しため息を吐き出す、というのも

 

「ホークスたちでこれってことは、A組とかどうなってるのよ」

 

「正直、俺ももう駄目だと思ってたし泣いてる奴も居た」

 

 その後、死者は出ていないという報道を聞いてもその直前にメディアに対するリークがあったせいで、レイミィはカウントされてないんじゃと言う話にもなったと聞いて彼女はうわぁと頭を抱える。

 

 これってクラスメイトにも事情を話さないといけないやつじゃない? と、思わず呟いてしまえば側で聞いていた被身子がそりゃ当然そうですよねと告げてから

 

「もしかして、黙ってようとしてました?」

 

「……」

 

「してたんですね? どう隠すつもりだったんです? 少し身体に触れられるだけで違和感を感じられますし、響香ちゃんに心音がしないとか言われる可能性も考えないんですかレイミィちゃん」

 

 ぐうの音も出ないとはこの事だろうか、そしてこの期に及んでそんなことを企んでいたということに大人組は思わずレイミィに視線を向けてしまう。向けられた彼女としては内容が内容なんだから仕方ないでしょと反論したかったが、流石に空気を読んで言葉を飲み込むことに成功する。

 

 したがその直後、あれこれと事情を説明されたミルコが火伊那に対して放った一言でレイミィは本気で付き合い方を学び直そうかしらと思うことになるほどにダメージを受ける。

 

「なぁ、お宅の所長ってのは隠し事が好きなのか?」

 

「何も言い返せねぇんだわ。まぁ嬢ちゃんも考えがあってだってのは理解できるんだがな」

 

「レイミィちゃん、優しさから来る隠し事っていうのは分かるけど、じゃあいざその時が来て知らされてなかったってなると信頼されてなかったのかなとか思ってショックなんだよ?」

 

 もう止めてやれよ、嬢ちゃんの精神力がボロボロになるから。ここで流石に哀れに思った火伊那がストップを掛けた、それに感謝しつつレイミィは少し考え方を変えなくちゃいけないわねと心に決意するのであった。

 

 もっとも決意したとしてすぐに改善されるかはまた別問題なのだが。その後、燈矢にはまた明日退院直前に顔を出すと言い病室を出て、ホークスとミルコもそれぞれ仕事があるからと去り、あとは何事もなく……ということもなく

 

「あ、これ昨日渡し忘れたレイミィちゃんのスマホです」

 

「……え、何このメッセージと着信の数」

 

「それくらいには心配されてるってことだ」

 

「一応、俺達からも話しておくけどメッセージとか返してあげたほうが良いと思うよ、所長」

 

 スマホの画面に表示される数十件もの未読メッセージと不在着信にレイミィは引き攣った表情を浮かべつつ、地道に返信していくのであった。




割ともう轟家からするとレイミィは末っ子みたいな扱いしてるまである。なのに自分は部外者だからとか言い出すんだから、そらキレる。

便利屋メモ
後日、ラブラバとジェントルにも今回のことが話されたがジェントルは苦笑いをし、ラブラバはあの娘やっぱりバカでしょと説教しに行ったとか。
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