便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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ここから新章です、まぁ仮免許辺りまでを想定してます。

あとなんかもう週一作品になっててすみません……


第八章【便利屋、雄英にて】
No.139『新拠点にて』


 都合上、新事務所とでも呼ぶことにするけど、あれから一通りの荷解きは済んで今は事務室で軽く息抜きをしてた私は思った、その、あれよ、この座ってる所長席の椅子一つとってもこう言えるわ

 

「グレードが高すぎないこれ……」

 

「備品一つ取っても向こうよりも高品質だってのがよく分かるってすげー差ってことだよな」

 

「事務所も新築ですしね。これ今後もここで良いんじゃないんですか?」

 

 いや、駄目だから。この事務所はあくまで一次避難みたいな立ち位置だからね? それに流石に雄英敷地内にあるのは色々と不便がないわけじゃないし。

 

 そもそもここにあったら誰が気軽に依頼しに来るってのよ。ということで事が落ち着いたら向こうに戻るからと伝えれば被身子からブーイングが飛んできたけど、駄目なものは駄目だから。

 

「まぁ嬢ちゃんの言う通りでもあるし、私も流石にここに定住するのは御免被りたい話だっての」

 

「それに向こうの静かさと言うか、閑散した感じの立地が好きだからね、俺」

 

「むむむ、でもそうですね。ここはちょっと目立ち過ぎな気がして落ち着かないはあるかもです」

 

「あ~、分かるわそれ。なんだろって思ったがその違和感だったか」

 

 三人が言うこともなんとなく理解できる。あの静かさは心地良くて落ち着くのよね、やっぱり周りに住宅とかが無くて人の気配が殆ど無いからかしら。

 

 まぁここも日中はともかく夜中とかは騒がしいとかはないと思うけど、夜勤勤務の警備員とかは居るだろうし慣れるまではそこが落ち着かないかもね。

 

「自分から話を振っておいて何だが、警備員が居るから落ち着かないって部分だけ聞くと怪しさしか感じないな」

 

 火伊那がなにか言ってるけど、別に後ろめたいことしてるからってことじゃないから、クリーンな事務所だからここは

 

「クリーンって言い切れるのは凄いですね、仮にクリーンでもグレーに半歩以上足突っ込んでますよ」

 

「お黙り、それ言ったら何も出来なくなるから」

 

「随分と騒がしいな。まぁいい、バートリー、客だ」

 

「お客? 学校に態々足を運んだのが居るの?」

 

 言ってから、そもそも事務所移転しましたの告知すらしてないから来るわけなくない? と気付く、つまり依頼とかではないってことでじゃあ誰かって言えば

 

「やぁ、昨日振りだねバートリーくん。用意した事務所はどうかな?」

 

「とても居心地が良いわ、校長。というか、どれもかしこもグレードが高すぎないかしら?」

 

 暗にここまで良いものを態々用意しなくてもという意味を込めた言葉だった、まさか返しの言葉で絶句することになるとは全く思ってなかった。

 

「気にしなくても大丈夫だとも。これらは倉庫にあったのを点検、修理して綺麗に仕上げたものだからね!」

 

「つまり、予備ってこと……?」

 

「マジかよ、この品質のが倉庫に普通にあるのか」

 

「駄目ですレイミィちゃん、資本力の差が歴然違い過ぎます!」

 

「HAHAHA!! 喜んでくれてるようで何よりだ!」

 

 勝ち誇ったかのような校長の声。くっ、これが圧倒的経済力の差だって言いたいわけね……! 悔しいけど今の私達じゃ逆立ちしたって勝てない!

 

 勿論だけど、負けたから悔しいとかはないわよ、まぁじゃれ合いって奴だから。

 

「あれで喜んでるのかい?」

 

「はぁ、思ったよりも元気そうだな、どうも」

 

「相澤とオールマイトか。安心しろ、コントしたくなるほどには喜んでるだけだ」

 

「独特な感情表現だね!?」

 

 声の方を見ればオールマイトと相澤先生の姿。見た感じじゃオールマイトに目立った異変とかは感じられない、とりあえずは大丈夫だということだろう。

 

 というかあれだけの激戦を繰り広げてたのに重傷らしい重傷を負ってないのは流石だと言うべきか、或いは血染と火伊那のサポートが良かったと考えるべきかしらと思いつつ。

 

「元気そうね、オールマイト」

 

「バートリー少女……その……」

 

 煮えきらないような態度と声、これは間違いなく私について全部聞いちゃったって感じか。まぁ話すつもりだったから別段、構わないんだけどそれでコイツが責任感を感じられるのは違うのよねぇ。

 

 このナチュラルボーンヒーローのことだから、この状態の私に緑谷のこと含めて押し付けてしまってって感じでしょうけど、これだけは言わせて頂戴。

 

「どうせ全部聞いたんでしょうけど、その上で言わせてもらうわ。アンタが勝手に責任感を感じてうだうだ悩む必要ないから」

 

「だ、だが」

 

「これはアンタからの依頼を受けたってだけよ。ここまでのこともそう、私は私のことを知ってる上で依頼を受けたの、なら責任は私にあるわ」

 

 誰だろうと、依頼で発生したことに依頼主がなにか負い目を感じる必要なんて無い、と言うか勝手にあれこれ背負い込まれる方が腹が立つ。

 

 これでも便利屋としてのプライドは持ち合わせているつもりだ。そりゃそういう人間が居るとも思ってるし、多少は仕方がないとも思わなくもないけど、こいつのそれは必要以上に感じた。

 

「大方、私の身体の状態を知って、あれこれと私に頼みすぎたとかで罪悪感を感じてるんでしょ?」

 

「あぁ、私は君に頼りすぎたと思っている。本来ならば私がすべきことを、自分がやるよりも上手く進めてくれると思い、頼って……」

 

「別にいいじゃないの。適材適所って言葉があるんだから、アンタは致命的なまでに師匠に向かなかったって話でそれで私達に緑谷の面倒を見てくれって依頼してきたんでしょうが」

 

 何時だったかも言ったかもしれないけれど、あのままアンタに任せてたら緑谷は今以上にきっとボロボロになりながら〝個性〟を制御しようとしてたでしょうね。

 

 もはや見てられないというレベルに、家族にもOFAのことは隠してるとすれば無駄に心配させてしまうほどに、そうでしょ?

 

「う、そこを突かれると何も言えないのだが……師匠にも言われてしまったよ、お前の教育だけだったらあぁも利口に、そして戦上手に育ってなかっただろうなと」

 

「だろうな、〝個性〟の扱いから実戦経験、思考の回し方に心構え、貴様の依頼に応えられるだけのことは叩き込んだつもりだ」

 

 血染が急に口数多くなったけど、まぁそういうことよ。でも実践部分じゃアンタが居たから急成長を可能にしたって部分もあるから、そこは誇っても良いんじゃない?

 

 要は何が言いたいかって言うと、勝手に責任感とか罪悪感を感じて凹むなって話。私のあれこれは遅かれ早かれこうなってたことだし、仕方のないことってやつよ。

 

「むぅ」

 

「何が〝むぅ〟よ、それよりも自分のことを考えたらどうなの? OFAの残り火だってあの一件でかなり使ったんでしょ?」

 

「あ、あぁ、そうだね、君たちにも話しておこう」

 

 曰く、残り火自体はまだ残っているらしくマッスルフォームを維持するだけなら一日でも余裕とのこと。だが戦闘するとなると一日で大体一時間、全力では3分と持たないらしい。

 

 流石に日常的な(ヴィラン)鎮圧に全力はそうそうないと思うがそれでも一時間、ともすれば考えられる今後の身の振り方は

 

「引退、か。するとなれば次のヒーロービルボードチャート発表の時にってところかしら」

 

「君の言う通りだよ。私は今、引退のための引き継ぎなどに動いている状態さ、目下の課題はエンデヴァーの説得になるかなと思ってるよ」

 

「どうでしょうね、意外とすんなり行くかもしれないわよ。でもそうか、オールマイトの引退となると騒がしくなるわね」

 

「ヒーローと(ヴィラン)両方での巨星が消えたとなりゃ、大騒ぎだろうな」

 

 火伊那が呟いたように時期は開くとは言えAFOの死去に続いてオールマイトの引退となれば間違いなく大騒ぎになる。ヒーロー側は支柱とも言える存在を無くすし、(ヴィラン)は抑えが消えて暴れ始める。

 

 (ヴィラン)なんかはその傾向が既に出始めているのが現状だ。今はチンピラレベルで済んでいるがそのうち、でかい所が動くのは嫌でも予想できてしまう。

 

「とは言え、便利屋は依頼がないとその辺りは動けないからヒーローに頑張ってもらうしか無いんだけど」

 

「そもそも便利屋に警邏の依頼が多く来るようになったらヒーロー社会が死に始めてるって話だ、だろ校長」

 

「そうだね、最も簡単にはそうならないように協会も動くとは思うよ、誰かが突っつき続けて公安と協会も清浄化が進んでいるからね!」

 

 あらあら随分と親切な人が居たらしいわね。何よ、火伊那、何か言いたいことがあるなら言ってみなさい、予想は付いてるから。

 

「それって協会と公安だけじゃねぇな?」

 

「……噂レベルだが、同じ時期に政府や警察、まぁようはその辺りの公的機関で粛清とも言えるような動きがあったらしいな」

 

「あ~、確かに何だか無駄にガタガタになってた時期があったわね。ウチにも〝なぜか〟そこらの公的機関から依頼がたくさん来てたから覚えてるわ」

 

「なぁおい、ここで働いてる手前あまり言いたくねぇけど、この嬢ちゃんに国が首根っこ掴まれてるのヤバすぎねぇか?」

 

 ハハハッ、今更よ。それに悪いことはしてないしってこの流れも何度目かしら……まぁいいわ、それよりも相澤先生がきっちり髪型も整えてスーツ姿ってことはどこか出るんじゃないの?

 

「あぁ、これから今日中にA組全員の所に全寮制の説明と説得のために家庭訪問をしに行く」

 

「ま、必要よね。今回の襲撃は一応私達が完璧に予測したうえで制御し被害を殆ど出さなかったとは言え、襲撃されたって事実がある以上は子供を預けるの渋るところも出るでしょうし」

 

 というか記者会見でその辺りも話したとは思うけど反応はどうだったか詳しくは知らないのよね見てないから。流石になんの批判もなしってことはありえないとは思うんだけど、どうなのかしら校長。

 

「実際、生徒を危険な目に合わせたという部分では多少なりと批判は出てきたね。けれど、いつか君が言ったように我々も言ってやったよ〝無菌室で彼らを育てるつもりはない〟とね」

 

「言ったの!? あれは世間受けするような言い分じゃないでしょうに、それに今回の作戦も便利屋の私が提案したことで雄英高校がっていうのは……」

 

「だが実際そうだ、確かに生徒の安全は最優先事項なのは変わらない。けれど、ヒーローとして世に出ていくことを考えれば過保護になるのはまた違う、それと言っただろ? 我々と君たちは共犯関係だと」

 

「なら今回の件も俺達が関わっているとアピールする必要があったと言うだけだ。それにアイツラの成長には確かに繋がっている部分があるともなればこちらも少々強気には出れる」

 

 が危険に晒したというのも事実なので説得と説明には出るってことね。にしても相澤先生のスーツ姿というのは中々にレアな光景ね、写真良いかしら?

 

「駄目に決まってるだろ。では校長、自分とオールマイトはそろそろ出発します」

 

「おっと、そうだね、そろそろ行かないとディナータイムまでに終わらなくなってしまう」

 

「あぁ、頼むよ二人共」

 

 少しばかり慌ただしく事務所から出ていき家庭訪問に向かった二人を見送るけど、多分説得の必要はそんなに無いんじゃないかしら。てか、だったら私も向かうべきだったんじゃないの?

 

 ほら、便利屋も絡んでたってことで謝罪しなくちゃとかあると思うけど。と聞いてみれば返ってきた答えに納得しか無かった。

 

「相澤くん曰く、君が向かったら話しどころじゃなくなるだろうって」

 

「あ~、無事だとはメッセージを送ったけど実際に目にしたら話は別ってことか」

 

「でしょうね~、特にお茶子ちゃんとかの女子グループはきっと泣いて喜んで……」

 

「抱き着いたり接触した拍子にお通夜だろうな、そりゃ付いてくるなって話になるわ」

 

 それに家庭訪問ってことはその家族も居るわけだから、そこで私の体の話なんて出来るわけ無いし面倒が増えるだけって考えれば相澤先生ならそう言うわね。

 

 てか、私だって言うわそれ。んじゃ、このあとは荷解きも終わるし依頼も今日の分はコピー組がなんとかこなすから明日からだし、特に用事はないってことかしら。

 

「なら少し良いかい? 実はサポート科が君たちにって」

 

「そう言えば、そんな事も言ってたわね。構わないわ、でもあの娘居ないんじゃないの?」

 

 いま夏季休暇だしと思ったが、聞けば夏季休暇だろうと関係なしに雄英に来て発明に勤しんでいるらしい。なので今日もここに来ていると言われれば私は少しばかり引き攣った表情を浮かべるしか無い。

 

 しかもヒーロー科から頼まれてものと並行して私達への試作品を開発していると聞かされれば、隣で聞いてた圧紘もその熱意には笑みを浮かべつつ。

 

「いやぁ、若いって凄いねぇ」

 

「だがその発明品に助けられてるもの事実だ。顔見せついでに礼も言いたい、すぐに向かおうバートリー」

 

 確かにお礼は必要よねと言うことで校長に全員で向かうということを伝えれば、向こうは頷き私の肩に乗ってそのままサポート科へと足を運んで……まぁなに、言っちゃえば私は一度会ってたから平気だけど他が軽く引いた。

 

「お待ちしてました便利屋の皆さん! 見てください、こんなにもドっ可愛いベイビー達を生み出してみました!」

 

「……ベイビー?」

 

「おっとこりゃ想像以上にキャラが強いやつが出てきたな」

 

「なぁお嬢、もしかして雄英ってのはキャラが濃いやつじゃないと入れないとかあるのか?」

 

「うーん、熱意は凄いね、うん」

 

「腕が良いなら、問題ないだろ」

 

 分かるわその反応、えぇ。そんなことを思いつつ、血染たちの反応を見て校長が笑う声を聞きつつ私は発目が広げた発明品の数々を眺めて思う、作りすぎよと。




原作からの変更点として家庭訪問もオールマイトはマッスルフォームで向かってるのと緑谷家の説得も割りとすんなり済んだってところですかね

便利屋メモ
新事務所の間取りとかは変わってなかったりする。
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