便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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黒霧と赤霧のせいで探し出すのも一苦労。


No.141『会議は踊ってないけど、それでも進まず』

 サポート科でのやり取りを終え、結局その後は特になにかがあるというわけでもなく、あ、いや、強いて言うなら雄英に居る教員やプロヒーローに挨拶はして周ってたわね。

 

 その度に無事だったことを喜ばれてかなり小っ恥ずかしかったわ。彼らの気持ちも分からなくはないんだけど、毎度その反応をされるとちょっと、その、困るのよ。

 

(さて、とりあえず試してみるしか無いわよね)

 

 なんて事があった翌日、私は自室に居た。因みに自室は事務所ではなくて寮の方に用意され、轟達よりも一足先に寮生活と言うことになった。

 

 そして自室で何してるかと言えば、昨日サポート科からの帰り際に校長から渡された戦闘服(コスチューム)を着用しあることを試そうしていた。

 

 今までも出来るんじゃないだろうかとは考えなかったわけじゃないあること、意識を集中させイメージをはっきりと頭の中に浮かばせながら身体全体に〝個性〟を巡らせていく。

 

(けど戦闘中にあいつがやろうとしたところ見た記憶無いのよね)

 

 なんでかしらと思いながら、それを試して……直ぐにやるわけないわねこれとなったのが今朝の話。今は集まりに使う為に仕上げた資料の確認を事務所で行っている、にしても期待外れも良いところだわ。

 

「はぁ、やってられないわ」

 

「ガチで凹んでますよ、よっぽど自分の〝個性〟に夢見てたんですねレイミィちゃん」

 

「今日まで〝個性〟使ってたってんなら分かるもんだろ、何をそんなに凹む要素があるってんだ」

 

 使ってたって言っても今と前じゃ〝個性〟の出力とかが変わってるし出来るかもとか思うじゃないのと答えたが火伊那からははぁとなんとも興味がないという感じの反応を返される。

 

 分かってないわね、こういうのはロマンってのがあるのよ。それに【吸血姫】って名前の〝個性〟なら出来ると思うじゃないの、いや、正確には出来たには出来たんだけどが正しいんだけど。

 

「まぁ所長の気持ちも分からなくないかな。創作漫画とかじゃよくある表現だしコウモリに変化したり身体を霧にしたりって」

 

 そう、私が朝に試したのは今圧紘が言った内容だ。今までが身体能力と鎖とかの射出とかだけだったけど、本来ならそういった事も出来るんじゃないかと思った。

 

 もし出来たならいざって時の回避とかに使えそうよねと、んで結果から言えば成功した、したんだけど上記での私の失望になるってわけ。

 

「けど発動するのに40秒って聞くと確かに実戦じゃ使えねぇなってなるわな」

 

「しかも変化させるだけでだろ? 戻すにも同じ時間掛かるならマジで隙を晒すだけだな」

 

 失望の内容としては仁と火伊那の言葉が全てである。最初は慣れてないからとか今回が初めてだからとか思ったわ。でも何度も試せば試すほど、この〝個性〟はこれが限界だと判明するだけだった。

 

 そこで初めて【吸血姫】に対して使えないわねこの〝個性〟と本気で思ってしまったわ、いや、十分役立ってるから使えないなんて口が裂けても言えるはずないんだけどそれはそれよ。

 

「何度も試したのかお前、やるのは構わんがせめて誰か他のやつが居るときにしろ。何かあった時に対処が遅れかねん」

 

「流石にマズイと思ったらやらないわよ。あ、でも一つだけ例外があったわね」

 

 ほらとやったのは同じ霧化なのだが右腕、その肘から先だけは1秒と要らずに変化し、元に戻すのも同じ時間で済んでいる。

 

「そこって確か赤霧との戦いで切り落とされた箇所ですよね」

 

「えぇその後に再生した部分だけは意識すれば、こうなるのよ」

 

 仮説ではあるけど〝個性〟で全て再生されたからこそラグ無しで霧にできているのだと思われる。因みにコウモリは出来ない、なんて融通の利かない〝個性〟だこと、吸血姫って名乗るんだったらそれくらいは出来てほしいものだったわ。

 

 はぁ、まぁいいわこれ以上あれこれゴネても〝個性〟が進化するわけでもないしいい加減に割り切りましょう、えぇ。

 

「まるで割り切れてない顔なんですがそれはって、暴力は反対です!!」

 

「止めろ、私を盾にするな被身子」

 

 要らないツッコミをしてきた被身子にデコピンでもしてやろうかとしたら火伊那の背後に回り込まれたので舌打ちだけして、自分の席に座ってから

 

「それじゃ、今日の流れを確認しておくわよ」

 

「昨日話したとは思うが、今日の午前は警察との聴取がある。これには俺とバートリーの2人で向かう手筈になっている、なので午前の依頼は被身子、仁、圧紘、火伊那の四人でこなしてもらう」

 

「これってどの程度の時間が掛るんでしょうね、あまり長いと嫌になるんだけど」

 

「聴取ですし、それなりには掛かるんじゃないんです? それに赤霧のこととかになれば、更にって感じもしますし」

 

 それもそうか、特にあの場面のことを話せる人間なんて私達とオールマイトくらいでしょうし仕方ないし。ま、あとは実際に聴取に向かっ手からじゃないと判断はできないし、そろそろ出るとしますかね。

 

「んじゃ、行ってくるわ。戻って来るまで頼むわよ」

 

「了解です! とりあえず昨日の軽い宣伝でも依頼は来てるからそれを捌いちゃいますね」

 

 なんとも頼りがいのある被身子の声を背にしつつ事務所を出て校舎へと向かう。話では会議室で話をっていうことらしい、恐らくはUSJ襲撃のときと同じように他のプロヒーローも集めて行うのだろう。

 

 今回のはそれほどまでに事態が大きく変動してしまった。今後、生徒たちを守ることを考えれば全員の協力無しでは実現も出来ないだろうというレベルには。

 

「来たね、バートリーくん」

 

「おはようございます校長、それと久しぶり塚内警部ってUSJの時も同じこと言ってたわね私」

 

「そうだね、ただ今回はあの時とは違うだろ? 身体は大丈夫かい?」

 

 とりあえずはと答えておくが向こうも事情は把握しているだろう。その証拠に私の言葉に対してそうかと少しばかり顔を俯かせ答えた塚内警部の姿がそこにあった。

 

 ま、そもそも知らなくても再会の握手をした時点で気付かれるからその辺りはもう触れないでおくわ、じゃないと話し進まないし、相手もそれは理解してるでしょうから直ぐにいつもの様子に戻って話を続けてるし。

 

「とりあえず会議室に向かおうか、今後のことも含めて神野の一件の話と便利屋としての君たちの話も聞きたい」

 

「勿論、こちらとしても話さないとと思ってたことなので、それとこれが便利屋として纏めた資料よ」

 

「助かるよ。では行こうか」

 

 それにしてもこの会議室に来るのも久しぶりね。今後は久しぶりなんて感情を持つ暇は無さそうだけどっと……えっと、凄い目つきのプロヒーローが居るんだけど。

 

 雄英の教員じゃないわよね、外部のプロヒーローを呼んだってこと? チラッと校長を見るが特に反応はないのでサプライズゲストとかの類でもないらしい、なら今聞くべきことじゃないわねと疑問を一旦封印しておく。

 

 ま、私のことをあそこまで見てるってことは用事か話があるのは間違い無さそうだしこの会議が終われば向こうから接触してくるでしょ、なんてことを思いつつ私と血染も席に座った。

 

「以上が神野での便利屋及びオールマイトが話せる内容、細かなところは配られた資料を読んでもらえると助かるわ」

 

「巨悪が消えたと思えば、また新たな巨悪が、か。聞きたいが赤霧は本当にAFOを受け継いたのか?」

 

「馴染ませるのに時間は掛かるでしょうけど、扱えると考えるべきだと私は思ってるわ、塚内警部。でもなければあんな計画を立てるようなやつじゃないし」

 

 但し継承出来たかという部分には私は否定を入れておく、あれはAFOと言う〝個性〟を抑え込んで扱えるようにしてくるだけだと言うのが私の考えだ。

 

 OFAと同じ系譜の〝個性〟だとするならばあんな形の継承では間違いなく不具合が出るはずだと。最もそれを前提で動くのは危険が過ぎるけど。

 

 けれどこれだけは言える。もしアイツが完全にAFOを扱えるようになった場合、下手なプロヒーローには対処をさせてはならないと。

 

「はっきり言っていたずらに死体を増やすだけになるわ。もし活動を開始した場合は見つけ次第、報告を入れてほしい」

 

「……それは君ならば対処できるということか? この報告書を読んでいる限りでは結果は分かっているようなものだと思うが」

 

 そこで今まで黙っていた目付きの鋭いプロヒーロー、確か【サー・ナイトアイ】だったかしら、彼が口を開いた。

 

 確かにその通りかもしれない、と言うかそうでしょうねとしか言えないのよね。でも今は私とアイツで【吸血姫】は丁度半々の状態、ならばまだ勝ちの目はあるにはある。

 

「その時の状況次第だけど、私達便利屋とオールマイトでならば殺せる算段ではあるわ」

 

「オールマイトも?」

 

 おっと急に空気が変わったわよ。さて、どうしたものかと思ったがすかさずオールマイトがフォローに入るように立ち上がり意見を述べた。

 

「彼女の言う通りだ。赤霧に関しては彼女と私で対処する、残り火も少ない状態ではあるがそれをサポートするアイテムの開発も進めてもらっているので十分に戦えるから安心してくれたまえ」

 

「ま、それでも全部出しきってやっとって所でしょうけど」

 

 因みに言うまでもないと思うけどこの場にいるプロヒーローが足手纏いだとかの話ではない。寧ろ居てくれればそれはそれで助かるとは思うんだけど被害が無視できないものになってしまうと思っているから対処は便利屋とオールマイトだけでって話なだけ。

 

 言ってしまえば、後のことは任せるわってことよ。って話をしたらまた空気が死んだ、もういい加減に食傷気味なんだけどこれ。

 

「子供にそれを言わせてしまうことが、ね」

 

「分かってくれとは俺も言わん、だがバートリーにもプライドってものがある。それに自分で選んだことだ、済まないが止めないでやってくれ」

 

「あと言っておくけど、その時に死ぬつもりはないわ。ここを卒業しないと便利屋潰されちゃうし」

 

 果たしてそこまでの時間が残されるかは疑問でしかないんだけどという言葉は流石に飲み込んだ。その後は特筆するようなこともない今後の確認などの話だけ、正直な話をすれば死柄木組の動きをもうこっちも把握できないってのもある。

 

 今までは青山の内通を利用して動きを制御できたけど、それももう出来ない手段だし向こうには黒霧が居るから足取りを掴むのだって一苦労だし、掴んでも逃げられるしで警察も苦戦しているとのこと。

 

「目撃情報の一つでもあればですがそれすらも掴めてないのが現状です。物資の調達などに外に出ないはずはないというのに全国からも情報らしい情報が出てきてません」

 

「もしかしたら魅了を利用して、どこかの家を間借りしてるってのはあり得ると思うわ」

 

「そうか、それなら買い出しは家主が行えばいいし、今では通販だって充実してる。目撃情報が出てこないのはそれが原因かもしれないね」

 

 だとすればどうやって探し出せばって話になるけどね。私の【吸血姫】で記憶から洗い出すにしてもせめて地域を決めてくれないと流石に難しいわ。

 

 更に言えば仮に【吸血姫】で記憶を読み取ろうとしても赤霧も【吸血姫】持ちなのでプロテクトのようなものを張られてしまうと解除までに時間がかかってその間に逃げられてしまうかもしれない。

 

 ともすればやっぱり頼りになるのは警察による人海戦術の情報収集ってことになるのよね、お願いするわ塚内警部。

 

「任せてくれ、今後は急に買い物量が増えた人物なども調べてみるよ。ヒーローの方でもそのような目撃情報などがあれば上げてもらえると助かります」

 

「みんな聞いたね、些細なことでも良い以前と何かが変わったという話を聞いたら報告に上げてくれ、それが彼らを特定する糸口になるかもしれないからね」

 

「便利屋もその線で伝手を利用して情報を集めてみるわ。裏とかは任せて頂戴」

 

 いくらなんでもまるで情報を残さないってことは不可能のはず、ならヒーロー、警察、私達で地道に探せば絶対に何かは見つけられる。

 

 けどそれもすぐには結果は出ないでしょうから焦らずに行きましょう。なんて感じに会議はその後も進み、無事に終了、今後は情報収集しつつ(ヴィラン)の動きにも注意するってこと。

 

 それと夏季休暇明けからの寮生活に関連する事柄の確認もしたわね。まぁ便利屋はなにか関わりがってわけじゃないんだけど、立ち位置も殆ど変わらないし。

 

「夏季休暇の間にやることも無さそうなら依頼に集中できるな、寮の方の清掃は手が空いてるやつがやる形でいいだろう」

 

「前日に集中的にやるでも良いんじゃない? まぁ日頃からってのは分かるけど」

 

「バートリー少女、ちょっといいかい?」

 

 解散してから血染と夏季休暇の間のことを話しているとオールマイトに呼ばれと振り向けば、彼の他にナイトアイの姿もあった。

 

 相変わらず会議中と同じように鋭い目つきで私を見てくる彼に愛想笑いでも浮かべておきつつ、どうしたのかと聞けば。

 

「私がと言うよりも彼が君に話があるってね」

 

「サー・ナイトアイだ」

 

 はっきり言っていいかしらね。多分、私は彼苦手だわ、その時の私は威圧感しかない鋭い目つきのナイトアイにそんなことを思いながら愛想笑いは苦笑に変わっていた。




話が進んでないじゃんって? そうだね(遠い目)本当ならナイトアイとレイミィの会話はこの話で終わらせるつもりだったんだけどね(死んだ目)
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