※原作読み返して寮の引っ越しが新学期10日前だったことを忘れてたことが判明、急遽書き直しました。フフッ、自分の記憶がまるで当てにならないよ
雄英高校ヒーロー科の少年少女たちはこの夏休みの間に、そしてあの日に自分たちがどれほど無力で、そして弱く、誰かに常に守られていたかを知った。
強くなっていると思っていた、けれどそれは合宿場の襲撃から始まったあの事件の時にただの驕りだったと思い知らされた。
テレビの向こうで友人である少女が
その後、生きていると担任と被身子から聞かされるまで自分達は絶望に包まれた。同時に強大な恐怖にも襲われた、あれが現場なんだと、あれが自分たちがいつかは相対する
だからこそ雄英高校から来たお知らせのプリントを貰った全員が悩むことなんてことはなかった。確かに恐怖はある、けれどこのままで良いとは誰も思わなかったから。
故に家庭訪問で相澤とオールマイトが来た時には全員が覚悟を決めたという表情でお願いしますと迷いなく答えた。勿論、両親には心配されたがそれ以上に自分たちは強くなりたいんだという気持ちに彼らもまたお願いしますと頭を下げ、相澤とオールマイトもそれに応えるように任せてくださいと伝える。
そして夏休みが終わる10日前。それは少年少女たちの一日も、一秒たりとも無駄には出来ない日々、新たな始まりを告げるということだった。
「とりあえず1年A組、無事にまた集まれて何よりだ(どいつもこいつも面構えが合宿前よりも険しくなってるな、仕方がないことだとは思うが)」
寮引っ越しの朝、A組は敷地内に新たに建築された寮生活のための建物『ハイツアライアンス』の前に集まっていた。だがその表情は新たな生活の始まりを楽しみにしているという感じでは全くないというわけではないがどこか思い詰めているものを感じれば相澤はふむと唸る。
理由は考えずとも悟れるがそれらは後ででも解決できるとし相澤は全員に注目するようにと伝えてから
「この寮生活の目的は、プリントにも書かれていたように合宿で取る予定だった〝仮免〟取得に向けて動くものだ」
この言葉に空気が変わる。分かっていると言わんばかりの表情をし、全員が頷くのを見て相澤はさっきは別として今の感じは悪くないと内心で思う。面談の時も感じてはいたが今の彼らはしっかりと現実を理解し自分たちを高めようとしていると。
だからこそ各家庭への説得も滞りなく進んだ。寧ろ呆気なさ過ぎて予定の時間よりも遥かに周り終えた程には、同時に若干だがこの雰囲気には危ないものがあるという危惧も感じている。
(とは言っても俺からなにか言っても効果があるわけじゃなし、あいつに任せるしかない、か)
「先生、その、レイミィちゃんは大丈夫なんでしょうか?」
おずおずと言った感じに麗日が相澤に問いかける。一応、面談の時も、そして記者会見と言う形でテレビに出ていたことも知っているがそれはそれとして心配なものは心配だということだろう。
相澤もそれは感じたので安心させる形で一つ頷いてから、無事だということと、今朝まで寮内部の清掃してたということを伝えれば
「彼女、病み上がりよね……? いえ、それが出来るくらいに元気だっていうのなら安心なんだけど」
「レミィってもしかしてワーカーホリック? とか言うのじゃない?」
(割りと否定できない)
思ったことそのまま口に出た蛙吹と芦戸の言葉に焦凍は多分そう、部分的そうという感じのことを思うしかなかった。そう言えば、昔だったか風邪で寝込んだというのに意地で依頼を遂行してたとかも聞いたなと思い出せば彼は口をつぐむほかなかった。
ともかく無事でいるということに安堵の声が自然と漏れ、表情と雰囲気も多少なりとも緩和された。されたがこのあとどうせまた重くなるんだろうなと相澤は思いつつ。
「何時までも外にいる訳にもいかないだろう、話は一旦ここまでにして寮の中に行くぞ、付いて来い」
『はい!』
こうしてA組の全員は相澤の後に続くようにハイツアライアンスの中に入れば、そこに広がっていたのは隅々まで清掃が行き届いた清潔で、この人数が居ても十分以上だという広さの空間。
一階は共同スペースとなっており食堂、風呂、洗濯などはここで行うようになっていると同時に憩いの場としても使用可能なように大きなテレビやソファなども完備、更には中庭まで存在するという豪邸とも言える空間に仕上がっている。
そんな感激の声が上がりそうな場に、彼女たちは居た。一人はやっと来たかという感じに、そして残りは……何故か満身創痍で死にかけた顔をしていた。
「何があったん!!??」
これには麗日も叫ぶしかない。新築の寮に満身創痍の知った顔が居たとなればそうもなる。寧ろなんで一人だけ無事なんだこれと瀬呂も疑問に思うしかない、と言うか無事なのがあの大怪我を負ったはずの少女だということがなおのことそう思わせる要因となっている。
なお、その少女ことレイミィ・バートリーは素知らぬ顔と言うわけでもなく便利屋の面々には悪かったわねという表情で目を逸らしている、恐らくはやらかしたのだろう。
「あ? あ、やぁやぁ皆、ようこそって感じかな? ごめんね、おじさん達、ちょっと前まで急いで準備してたから……」
「夏休みの宿題を直前で片付けるって感じ久し振りに味わいました、二度とごめんです」
「だから言ったんだ、毎日触っておくべきだって、つかそれは何となってもなんだって宴の準備とか言い出したんだよお前は」
「どう考えても思い付きだろ、思い付きで振り回される私らにとっちゃイイ迷惑でしかねぇが、被身子も止めねぇし」
「まぁお嬢の思い付きは今に始まったわけじゃねぇから……いや、だとしても最近、俺も便利に使われすぎてねぇか?」
要はそういうことらしい、確かに見れば何かを準備しているという感じの物も見えるがそれを前日に思い付きで行ったというのは苦笑するしかない。がやはり苦笑も浮かぶよりも前にクラスメイトにはこちらの存在のほうが大きいのだろう。
気付けば満身創痍の面々の前に移動していたレイミィがクラスメイトへ綺麗なカーテシーを一つしてから
「悪かったって言ってるじゃない。それに私が全部やるって言ったのに手伝ったのはそっちでしょうに。さて、ともかくようこそハイツアライアンスへっと、耳郎?」
「本当に、心配したんだから……さ?」
「……あ~、これ予定変更ね。相澤先生」
いの一番に駆け寄り無事を確かめるようにレイミィに抱き着いた耳郎だったが、その言葉は何かに気付いてしまったと同時に弱々しくなっていき、次第に表情が驚愕とも絶望とも言えるものに変わり顔色も悪くなっていく。
最後には急にふらついた彼女を麗日が直ぐに支え、それを見たレイミィは困ったという感じに相澤に聞けば、仕方がないかと頷いてから彼はA組、そして相澤に呼ばれる形で後から入ってきた心操も現れれば出久は驚いたように。
「心操くん?」
「あぁ、実は呼ばれててな。理由は知らないんだが……」
「それをこれから話す。長くなるだろうから各自、近くの椅子かソファに座って楽にしろ」
言われた通りに全員が楽な形を取り、その間に復帰した圧紘と被身子が淹れたコーヒーもしくはお茶を受け取ったのを確認してから相澤が口を開く。
「本来ならば寮の説明からのつもりだったがお前たちも気になるというか、耳郎がさっきので気付いてしまっただろうからバートリーの話を先にする」
「そう言えば、大丈夫、響香ちゃん? 何があったの?」
「……はぁ、ふぅ、ねぇバートリー。私の気の所為だよね? だって、大丈夫にしか見えないし、じゃないとおかしいじゃん」
認めたくない、認めることなんて出来ない。けれど実際に触れてその〝個性〟により耳の良さが現実を彼女に突きつけていた、だからこそその言葉には否定してくれという感情が含まれている。
がレイミィ・バートリーはその願いを真っ向から否定するように首を横に振った。無論、これだけでは耳郎が何を聞いているのかは周りからはわからない、だからレイミィは側の椅子に座ってふぅと息を吐いてから
「今の私の心臓は動いてないわ。それどころか、肉体的に見れば……」
自分はもう死体と大差ない。淡々と告げられたその言葉がもたらした衝撃は言葉に出来ないだろう。誰もが驚愕の表情をレイミィに向けることしか出来ず、女子の一部は泣き出してしまう者も居た。
「これから全部話すわ、もう機密もへったくれもないからね。一から十まで、全てを」
クラスメイトのそんな様子を見つつレイミィは語り始める。始まりと今日までのことを、自分の全てと背負わされた運命を、ただ淡々と。
─────────
「以上が私が話せる全てとなっているわ。なにか、質問はあるかしら?」
なんて言ってみたけどそれどころじゃないのは探るまでもないわねこれ。そりゃまぁそうよねとしか言えないんだけど、もう少し段階を刻むべきだったかしら?
とは言ってもどこからどう刻めばって話になるんだけど。っと、何かしら八百万?
「正直に言えば一気に情報が来て整理が付いていないのですが、青山さんのことは現状は解決しているということですわよね?」
「えぇ、彼に関してはもうすでに終わったこととして扱ってくれて構わないわ。何一つ、彼らに落ち度はないということにしてあるし」
「けれど、僕は皆を……」
「だからその内通も全部私が利用したって言ってるでしょうが。責任云々を感じるくらいならここを素直に卒業してヒーローとして取り返せ、分かった?」
こいつ、今回の内通でかなり強めに責任を感じてて一度、司法に身を委ねるために雄英を辞めるなんて話までしてたくらいだったのよ。考えは分からなくはないけど、今回の件は何一つ被害も出てないんだから気にすることもないでしょうに。
はい次はっと、心操ね? 言ってみなさい、もう隠し立てするつもりもないから大体は話せるし。
「なぁ、本当にその体はなんとかならないのか?」
「ならないわ。言っちゃえば充電できないバッテリーで動いてる人形みたいなものよ、次」
「次って、なんでそんなに淡々としてるんだよ!」
「出来ないものを足掻いてもしょうがないって話よ。それよりも出来ることとやらなくちゃいけないことを考えるほうが先決だってだけ」
何をそんなに怒ってるんだか。いや、これはもしかして被身子が言ってた人の心が分かってないってやつかしら? でもこれに関してはどう答えても変わらないと思うんだけど、でもそうね。
「言っておくけど、死を受け入れてるってつもりじゃないわよ。まだやらなくちゃいけないこともあるし、卒業までは生きるつもりだし」
「卒業までって、それ以上は望んでないってことなん?」
「望んでないというか、多分無理ね。赤霧を殺すために全力を出すつもりだから、それを加味してギリギリっていうのが私の試算だから」
寧ろギリギリでも残るかどうか怪しいけど、そこはなんとかやりくりするつもりだから黙っておこう。まぁその話しておいて何だけど気にしないで頂戴、ただちょっと誰よりも早くくたばるってだけだから。
言ってから後悔した。うん、私も気を付けてるつもりだったんだけど、なんというかやっぱり普通の子達とは感性がズレにズレちゃってるからこの程度なら大丈夫が大丈夫じゃないのよね。
「レイミィちゃん、貴女がずっと私達と一線引いてるようにしてたのはそういうことだったのね」
「まぁ、そうね。ほら、すぐに居なくなるような奴と思い出を作っても辛くなるだけでしょ?」
「いいえ、作らない方が辛いわ」
間髪を容れず否定の言葉が梅雨ちゃんから出てくる。その表情にははっきりと怒りに近いものを感じ、私はなんとも周りの人間に恵まれているものだと思うしかなかった。
怒られる理由も今の私なら分からなくもないって感じだった。それよりもまさか一歩引いてたというか一線を引いてたっていうのを気付かれるとは思わなかったわ。
「なんとなくだけど、ね。でも今の話を聞いて納得できちゃったわ、それと同時にちょっと怒りたいのもあるけど」
「バートリーってあれだよな、一線の引き方に人の気持ちへの理解がまるでないよな」
「……うぅ」
「唸っちゃった」
困った、反論ができない。ていうか私が実はみたいな話を聞いた割りにはそこへの衝撃はないわけ? え、なくはないけどそれ以上に情報が大量に流れ込んできてそれどころじゃない?
いやだって、クローンみたいな存在よ? まるで映画とかそういう次元じゃない?
「いやまぁ、驚きするんだが〝個性〟ならワンチャンって思えちまうんだよな」
「分かる」
〝個性〟社会って怖いわ。自分でも確かにそれなら驚かないかもしれないと思ってしまったし、AFOのことだから間違いなく使って作ったんだろうなって思えるからなおのこと怖いわこの世界ってなった。
で、これ以上はないかしら? まぁ後日に出てきたらまた聞いてくれれば話すけど。寧ろそうしたほうが良いんじゃない? と相澤先生に視線を向ければ
「そうだな、一旦話はここまでにして案内の方を先にする。それで構わないな?」
「あ、先生、俺は?」
「案内を終えたらそのまま今日の鍛錬をするつもりだ。待ってても構わないが、どうする?」
「それじゃ、自主練してます」
因みにだけど心操を呼んだのは私だったりする。ま、私を知ってるし話しておいたほうが良いって被身子のアドバイスだけど、ともかく手間を掛けさせちゃって悪いわねと謝れば
「別に……バートリー」
「なにかしら?」
「俺は諦めないから、ヒーローが諦めちゃ終わりだから諦めない、お前の身体をなんとか出来る手段を探してみる」
告げた心操の目と顔には確かな覚悟があった。だからだろうか、私はそれを見てただ微笑み、こう告げた。
「ならやるだけやってみなさい、ヒーロー」
なんでか知らないけど、女性陣から黄色い歓声が上がった。全く持って意図が不明である。
今回の話でレイミィ関連及び便利屋が実はっていうのが共有されたけど何か活かされるのかと言われると疑問である。無計画ばっかじゃねぇかお前!!