便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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だって仮免も何も関係ないし……


No.149『圧縮訓練だけど蚊帳の外な吸血姫』

 『必殺技』、ヒーローとなれば一つや二つは持ちうる得意技の名称。特にトップヒーローともなればそれそのものが象徴という扱いになることもあるもの。

 

 例えばオールマイトの『DETROIT SMASH』やエンデヴァーの『プロミネンスバーン』などの技名を上げればそれが誰のものか即座に返答されるくらいには必殺技とプロヒーローは結び付いているのが良い例だろう。

 

 長々と書いたがつまりは必殺技と言うのは特別な技であるということだ。そして本来であれば合宿中に作り出すそれを今回、夏休みが終わるまでの十日間で編み上げるという話を聞かされれば生徒たちのテンションはバク上がりするというものである。

 

 具体的に言えば久しぶり過ぎてレイミィが警戒を怠った結果、爆音の大歓声で机に沈む程度の衝撃に襲われたというところだろう。

 

「貴方達は一々大音量で私を苦しめないと気が済まないのかしらね……ていうか、必殺技でよくそこまで騒げるわね」

 

「いやいや、必殺技だぜ!? 盛り上がらないわけ無いだろ!」

 

「だから必殺技でしょ? なんで盛り上がれるのよ」

 

 ん? とクラス全体が、より詳しく書けばレイミィと他が互いに困惑し始めたし、流石に彼女に慣れ始めたクラスメイト達は気付く、もしかしなくても認識にズレが生じてるなこれと。

 

 対してレイミィも困惑されそこで『今の会話、なんか変』と言った具合に悟った。間違いなく向こうとこっちで言葉の意味が違う認識だなと。

 

「……バートリー、お前にとって〝必殺技〟とはなんだ」

 

「なんだって、読んで字の如くだけど?」

 

 控えめに言わなくても物騒だった。とは言えこれは彼女がヒーローとしての立ち位置ではないということが理由であり、レイミィからすれば必殺技とはこれ即ち撃てば確実に相手を殺すための技という認識でしか無い。

 

 対して相澤を始めとしたヒーロー側としての〝必殺技〟の立ち位置は必勝の型或いは技であり、相手に自身の得意を押し付け状況を有利にする物、つまりは(ヴィラン)相手にこれを撃てば有利もしくは勝利を取れる技のことである。

 

 というのが互いの認識のズレであり、それを説明されたレイミィはあぁと納得してから

 

「それってっつまりは〝決め技〟って言わない?」

 

「まぁ殺す技じゃないっことを考えたら決め技って言ったほうがらしいっちゃらしいか?」

 

「馬鹿が、殺すつもりで打つための技なんだから必殺技でいいだろうが」

 

「いや、己を象徴するって意味もあるからね? 必殺技には」

 

 やだ、このクラス物騒な子が二人も居るとはミッドナイトが未来で話す内容であるが今は置いておこう。ともかく、今日から仮免試験に備えてこれを全員作ってもらうという話である。

 

 ということで続きの説明は実演を交えて合理的に説明するという相澤の言葉で戦闘服(コスチューム)に着替え場所は体育館γ、ここは通称……

 

「トレーニングの台所、略して『TDL』!!」

 

「……アウトじゃない?」

 

「問題ないよ、通称ってだけだから。さて、ここは俺考案の施設、生徒一人一人に合わせた地形やものを用意できる。台所ってのはそういう意味だよ」

 

 この学園、いずれデカいところに訴えられるんじゃなどとレイミィが思っていることを尻目に相澤は天哉からの質問で仮免の取得と必殺技の開発の関係についての説明を始める。

 

 曰く、ヒーローとはあらゆる状況から人々を救い出す存在であり、試験の内容は様々な能力の多くの適性を見るたびに毎年違う達で試験は行われる。

 

 その中でも〝戦闘力〟はこれからのヒーローにとって極めて重要とされると見られているらしく、技の有無は合否に大きく影響するだろうとのこと。

 

(……それはそれで問題じゃ状況なのじゃないかしら?)

 

 そこまで聞いたレイミィはそんなことを思った。確かにヒーローとはそういう存在だし職業となってしまっているが、ほぼほぼ一任してしまっているというのはあまりに歪過ぎはしないかと。

 

 最もすぐに現状を変えられるわけでもなく、自分たちのような便利屋などの存在も新たに確認できてないので仕方がないかと思考を説明中の教師陣に切り替える。

 

 セメントス曰く、状況に左右されずに安定した行動を取れるということはそれは極めて高い戦闘能力を有しているという証拠になるという言葉には彼女もそれはそうと頷く。

 

(居るのよねぇ、担当したヒーローがさした能力もなくて私達が介入しなかったら事態が悪化してたとか)

 

 あの時のヒーローは今はどうしてるのだろうか、呑気に思い何気なく調べたらそのヒーローは昨年あたりに殉職しているということを知り深い溜め息を吐き出す彼女が居たとかなんとか。

 

「技ハ必ズシモ、攻撃デアル必要ハ無イ。例エバ……飯田クンノ【レシプロバースト】ヤ、レイミィクンノ【ヴァンパイア・プリンセス】等ト言ッタ一時的ナ能力ノ大幅向上ナドモ脅威ニナルガ故二〝必殺技〟トナル」

 

「アレ必殺技で良いのか……!」

 

「うーん、まぁいっか」

 

 因みに彼女の中での〝ヴァンパイア・プリンセス〟は必殺技と言うよりもただの強化技だしという立ち位置の技。けれど例に出すという部分では確かに正しいから訂正しなくていいかとしている。

 

 なお、彼女は基本的に必殺技と呼ばれる技に関しては名前はない。これはこれから殺す相手に一々技名とか伝える必要ある? という部分からというのと場面的に速攻で静かにだったりが多く声に出すわけ無いでしょというのが大きい。

 

 じゃあブラッディ・チェーンとかはと聞かれそうなのだがあれはわざと技名を言ってると彼女は答える。そうすれば相手は自ずと言わなくちゃ出てこないという心理に陥り、そこに奇襲が刺さるからと。

 

「なる程、自分の中に『これさえやれば有利・勝てる』って型をつくろうって話か」

 

「そ! 先日の神野で活躍したシンリンカムイの【ウルシ鎖牢】なんか模範的な必殺技よ、分かりやすいよね」

 

 神野というのは死柄木弔たちを捕縛しに行ったときの話である。その場面では確かに捕縛こそ成功したがものの数秒でコピー荼毘の自爆するつもりの最大火力での【蒼炎】によって燃やされ逆に窮地に陥りかけてしまったのだが。

 

 ともかく、今回の内容は中断されてしまった合宿での『〝個性〟伸ばし』をしつつ必殺技を編み出すという圧縮訓練。同時に〝個性〟の伸びや技の性質に合わせて戦闘服(コスチューム)の改良も同時に考えるようにと言われるのだがレイミィはそこでふと思う。

 

 今の自分は冗談抜きで〝個性〟の使い過ぎで寿命が縮まるどころの騒ぎじゃないんだけどと、それに必殺技ももうあるしもっと言えば自分はすでに免許持ってるしと口を滑らせれば。

 

「え、レイミィもう持ってるの!?」

 

「いや、普通に考えたら持ってなきゃどうやって便利屋やるのよ」

 

「それもそうだけど、じゃあもしかして試験の内容とかも知ってたりするの?」

 

 耳郎からの質問にレイミィは割りと本気な営業スマイルを返す。聞いてもいいが聞いた以上のことは覚悟しろよというのがはっきりと分かる表情と雰囲気に、ヤバいこと聞いたなこれとなるのに時間は要らないのは言うまでもない。

 

 なのでその質問は即座になかったことにされた、何だったら質問したという事実すら記憶から抹消した。ついでに周りのクラスメイトも何も見てないとばかりに訓練に向かったのを見てからレイミィは息を吐き出し。

 

「んで、私はどうするのかしら? 手伝えっていうのならやるけど」

 

「お前には客が来ている。いや、正確にはリカバリーガールが呼んだというのが正しいか」

 

「私に客? 一体誰が……」

 

「あちきだよ!!」

 

 ひょこっと体育館入口から声と同時に現れたのはプッシーキャッツの一人、ラグドール。ともすれば彼女が一人な訳もなく、続くように現れたのはピクシーボブ、どうやらこの二人で来たらしいのだが目的がいまいち見えないという表情になる。

 

 〝個性〟伸ばしの手伝いかとも一瞬考えたがそもそもそれだったら後から登場する意味はないし、相澤は自分への客だと言ってる以上それはありえない、なので聞いてみれば答えたのはさらに遅れてやってきたリカバリーガールだった。

 

「あんたの今の身体を【サーチ】で診てもらうためだよ」

 

「なるほどね、確かに【サーチ】なら可能かもしれない、か。んで、ピクシーボブはその護衛ってことかしら?」

 

「そうそう、流石に敵連合に狙われてたピクシーボブを一人でっていうのは危ないから、それと……」

 

 キョロキョロと周囲を診始めたピクシーボブ、それを見てレイミィは一言短く告げる。圧紘なら朝から依頼に出ててこの場には居ないと、すると彼女ははっきりと分かるくらいに残念そうな表情に変わる。

 

 変わったのを見てレイミィは強く生きなさい、圧紘と勝手に思った。同時刻、依頼中の圧紘がくしゃみをしたが、別にこの事に関連性はないだろう、ついでに嫌な予感を一瞬感じ取ったらしいがこれも関係ないだろう。

 

 そんな余談は置いておき、確かに見るだけで対象の弱点まで分かるという【サーチ】ならばレイミィに残された時間、いわゆるバッテリーの残量を見ることが可能かもしれないと納得していると。

 

「あとはそうだね、洸汰が君のことを凄く心配してたからその様子を見に来たってのもあるニャン」

 

「……無事だと伝えておいて頂戴、そう言えば私の身体については?」

 

「あちき達は全部聞いてるよ。勿論、洸汰には伝えてないけど」

 

「というか伝えられるわけ無いよねっていうのが本音、聞かされた私達もちょっと衝撃が強すぎたし」

 

 でしょうねとしかレイミィは言いようがない。がこれ以上はこの話をしても仕方がないとし早速、【サーチ】による診察を開始するという流れに変えるのだが一つだけ懸念点があるとラグドールは語る。

 

「対象が死んでいる場合は見れないことが殆ど、だから今のレイミィちゃんの場合はどうなるかが分からないし見えても正確に読み取れるかは……」

 

「そればかりはやってみてでしょうね、頼むわ」

 

「分かった、じゃあ早速……っ!」

 

 一度閉じてから集中し、目を見開き〝個性〟を発動。そのままレイミィのことを見つめるのだがそこで飛び込んできた彼女自身も初めてとも言える量の情報の波に一瞬怯みそうになった。

 

 明らかに人一人から見える情報の量ではない、だが同時にこれだけ情報が見えるのならばレイミィの身体や〝個性〟、何より一番の目的である残された時間もあるはずだと更に意識を集中させ波を掻き分けていく。

 

 その間、レイミィも、ピクシーボブ達もただ見つめているだけしか出来ない。そして今までで一番この〝個性〟で他人を眺め続けていたとラグドールに言わせるほどに長時間の後、ふぅと息を吐きながらラグドールは目を閉じた。

 

「だ、大丈夫、ラグドール!?」

 

「ふぅ、ふぅ、大丈夫だよピクシーボブ。ただちょっと疲れただけだから」

 

「お前さんがそこまで消耗するとはね。一体何が見えたんだい?」

 

 呼吸を整え終えたところでリカバリーガールがそう聞けば、先ず一つは主目的の残された時間に関連する情報は見つけられなかったということ、より正確に言うのならばそれらしいものはあったのにあったのだが。

 

「文字化けって感じで多分これだっていうのは見えたけど、数字とかそういうのは全く」

 

「すんなり解決とは行かないってことね、我ながら難儀な身体だわ」

 

「だがそれらしいものでも見つかった、ともすれば推測は可能ですか?」

 

「うーん、ちょっと難しいかも、充電残量みたいな感じでもなかったし本当にそれらしいものが文字化けで浮かび上がったってだけだから」

 

 それには数字も、文字も、ゲージのようなものも一切なく探してる情報だとは不思議と分かるのだがそれだけというものだったとのこと。

 

 ピクシーボブも初めて聞く現象に彼女の身体は普通の状態ではないと改めて思わされる。それはリカバリーガールも同じであり、思ったよりも難しい問題になってるねと一言告げる。

 

 さてどうしたものかとなりそうな場の空気、とは言ってもすぐに何かが出来るわけでもないのでこのまま解散かとなりそうだったがそう言えばとラグドールの言葉で新たな疑問が浮かぶことになった。

 

「あと、関係あるかは分からないけど気になるものが見えたんだけど……」

 

「気になる情報ですか? それは一体?」

 

「実は【サーチ】で見た情報の中に紅いコウモリがたくさん見える場所があって、それに集中したら一匹一匹に名前が浮かび上がったんだよ」

 

「名前? もしかして私が血を吸った人物とかかしら?」

 

「だと思ったんだけど、その中に『ミッドナイト』とか『イレイザーヘッド』、『ナイトアイ』に『オールマイト』もあるのが気になって」

 

「なんだって!?」

 

 出てきた名前的に吸血とかじゃないなこれと思ったレイミィだったが、思わずという感じに聞こえた叫び声を聞き思わず、そしてかなり苛立っているという感じにこう告げた。

 

「煩いわよ、クソ親父」

 

「あれかなり辛辣!?」

 

 居たのはトゥルーフォームのオールマイト、いやお前、この場には他にも生徒居るんだぞと言いそうなったレイミィだった。




サーチって実際、死体とか見るとどうなるんでしょうかねとなる。情報がまるでないのじゃ!!
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