便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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No.154『その頃の死柄木組』

 同日の夜、レイミィ・バートリーが赤霧の血の記憶を読み取っている頃、とある市のとある廃墟となっている団地。

 

 長い間、放置されたであろう外見であり付近の住人も近寄ることは先ずないが故に所謂チンピラや(ヴィラン)の屯する場所になってしまっている。

 

 ではこの地区を担当しているプロヒーローは何してるかと言えば、何もしてないというわけではなく定期的にパトロールをしては捕らえてはいる。いるのだが直ぐに屯されてしまうというイタチごっこ状態になっており、故に最近ではあまり頻繁には来なくなってしまっている。

 

この辺りをレイミィ辺りが聞けば、いやそれはそれで対策を取れよというような状態、だからこそ誰も気付けなかった……この団地に屯していた(ヴィラン)達が今、とある襲撃を受けていることを。

 

「あっ……カヒャ……」

 

「た、助け……」

 

 一人、また一人と襲われては身体から血という血を抜き取られミイラと言わんばかりの姿で捨てられていることを。

 

 彼らにとって不幸だったのは自分たちが(ヴィラン)が故に助けを求めることが出来ず、数を利用して襲撃者を排除しようにもまるで歯が立たずに返り討ちにされ、ならば逃げようにも

 

「何だよこの靄!! くそっ、くる……」

 

 出入り口全てを靄に覆われており、抜けようと潜ってようと即座に戻されるという現象に襲われ、戸惑っている内に襲撃者の手に掛かると彼らに逃げ場というものはすでに存在していなかった。

 

 彼らに出来るのは己の今日までの所業を鑑み後悔するか、或いは存在するわけもない僅かな希望にかけて襲撃者に挑むか、もしくは全てを諦め血を全て捧げるか……どれを選ぶにせよ一つ確実に言えるのは彼らの人生は今日ここで終わるということだろう。

 

 時間にしてみれば襲撃から十数分とちょっと、その程度の時間で廃墟団地には静寂が訪れていた。だがそのことに気付くものは誰も居らず、知っているのは襲撃者こと赤霧と逃亡の妨害を行っていた黒霧、そして事が終わったからと合流した死柄木たちだけである。

 

「んでさ、何だってコイツラだったわけ?」

 

「そこは俺も気になる。しかも(ヴィラン)とかチンピラ、あとは何だっけ『客』だけに絞ったんだ?」

 

 うへぇとミイラとなった(ヴィラン)を見ながら死柄木と伊口が揃って聞けば、赤霧から返ってきた答えにマグネがなるほどと反応することに、曰く。

 

「いきなり市民まで手を掛けてしまえば即座にプロヒーローとの全面対決になる。流石にまだそれは避けたい、それに(ヴィラン)や後ろめたい連中を殺すことである程度は世論を私達に向けることが出来る」

 

「世論? あぁ、なるほどね。確かにプロヒーローや便利屋からすれば私達は悪党だけど、こうして犯罪者だけを襲ってますってことにすれば一般人なんかは悪い奴じゃないんじゃないって思い始めるってことか」

 

 言ってしまえば世間の印象を利用することで向こうを動きづらくさせてしまおうという考え、更に言うとすればいざとなった時に自分たちを匿ってくれるかもしれない存在を潜在的に作るというものもある。

 

「けどよ、それは今回のことを公表したらってことだろ? しなかったら結局意味ないんじゃねぇか?」

 

「それならそれで我々の動きが露呈せず、向こうも大っぴらには捜索できずに活動できる。どっちに転がろうと得になるのならば問題ないだろ?」

 

 答えるだけ答えれば赤霧は適当な椅子に座り一息つく、見れば若干気持ち悪そうな表情をしていることにマグネが気付き、もしや毒の〝個性〟でも居たのかと不安になり聞いてみる。

 

 が、返ってきた答えに死柄木は笑うことになる。というのも別に毒だとかそういう物騒な話ではなかった、ただ単純に

 

「……もたれだ」

 

「なんだって?」

 

「胃もたれだ、流石にこれだけの人数の血を吸ったのは始めただったか流石にキツイな」

 

 歳か。そんな事を呟くものだから死柄木は深夜だということも忘れ腹を抱えて笑い出す。またマグネと伊口も彼女がそんな冗談を口にするとは思ってなかったが故に驚いたという表情をされしてしまっていた。

 

 と言うか歳とか気にするんだ、思わずそんな言葉が出そうになったのを伊口は無理やり押し込んだ。もし口にしても大丈夫だとは思ったがそれはそれとして、色々と苦労してるであろう彼女にそんな言葉を吐くのは宜しく無いだろうという良心である。

 

「何を騒いでいるのですか死柄木って、大丈夫ですか、赤霧?」

 

「あぁ、問題ない……」

 

「ふっふふ、いやぁ悪い悪い。しゃーねぇな、帰りにでも胃薬買っておくか? それよか、黒霧はどこ行ってたんだよ?」

 

「残党や生き残りが紛れてないかの確認と赤霧に頼まれていたことを少々」

 

 頼まれていたこと? 一応のリーダーである自分に何も告げずに何やってんだよと思いつつ赤霧に問い詰める死柄木、もしこれがなにか重大なことであれば自分が知らないのは問題だろうと。

 

 結構なドスを効かせた声だったが赤霧はその問い詰めに慌てる様子もなく、彼を見据え何を頼んだかを隠すことなく話し始めた。

 

「黒霧に頼んだのはこの廃墟団地に居た〝売り物〟を一箇所に固め、衣服などを渡しておけということだけだ」

 

「……〝売り物〟っね。正直な話、胸糞悪すぎて私はすぐにでも連れ出してあげたいと思ってるんだけど」

 

「けどよ、マグネさん。連れ出そうにも今の俺達には匿う場所がないから……」

 

 分かってるわよと伊口の言葉にマグネも頷くしかない。それに自分たちはどう足掻こうと犯罪者集団であるが故に仮に場所があったとしても匿うのは難しいことだろうと。

 

 だがそれはそれとしてどうして一箇所に固めておいたんだと伊口が聞く。別にそのまま放置でも良くない? と拘束や監視は無いんだから勝手に抜け出して助けを求めるかもしれないじゃんと。

 

「それでも良いかもしれなかったがな、一応の恩を売っておく必要があると思っただけだ」

 

「我々が殲滅したのはあくまでこの廃墟団地のみ。外部にも似たような存在が居た場合、抜け出した側からまたという可能性もありますからね」

 

「だったらここで助けておいて、ヒーロー共に自分たちは俺達に救われたと言わせるほうがお得ってわけか」

 

 考えてるなぁと妙にしっかりと練られていた作戦に感心の声を上げつつ死柄木は〝五指〟で物を掴んで、フフッと笑う。

 

 今までであればこうすれば勝手に崩壊していたはずの行動が何も起こらないという事に思わず笑ってしまった。だがと彼は思う、このままじゃ色々とマズイなとも。

 

「代わりの〝個性〟が早いところ欲しいな」

 

「もう少し待ってくれ、どうにかして便利屋とヒーロー共を奴らと接触させる機会を作らせる」

 

「で、どうにかしての〝どうにか〟の部分は?」

 

「……あるにはあるが運任せとしか言いようがない」

 

 大丈夫なのかそれ。赤霧のまさかの言葉に死柄木は思わずそんな言葉が口から出てしまった、こいつ考えてることは考えてるけど割りと適当なんじゃなと思いつつもじゃあ自分が何か案を出せるかと言えば出せないので黙るしか無いのだが。

 

 こうして夜は明けていき、早朝とあるプロヒーローが(ヴィラン)をこの廃墟団地に追い詰めたことで事が発覚、状況が状況が故に警察は公安及び協会を通して彼女を頼ることを決定、そして……

 

 翌朝、今日も今日とて圧縮訓練だと体育館に集まったA組だがそこにはいつもの教師陣は居たのだがレイミィの姿がなく、今朝も見てないなとは思ったが早くにこっちに来てるものだと思ってた彼らはあれ? となっていると代わりに居た被身子から。

 

「レイミィちゃんは今日は朝から緊急の依頼で血染くんと火伊那ちゃんを連れて現場に出ちゃってますよ~」

 

「そうなん? 緊急ってことは結構大きな依頼なのかな?」

 

「かもしれねぇ、家に泊まりに来たときも何度かそういう事があったから」

 

「だが安心して、代わりといっちゃなんだけど今日は俺と被身子ちゃん、それと仁が担当するから」

 

「おう、なんだったらお嬢も出せるから頼ってくれ」

 

 血染と火伊那が居るのならば大丈夫だろうと思われつつA組は圧縮訓練に取り掛かり、そんな事を思われているレイミィは早朝から呼び出された現場である廃墟団地に来ていた。

 

 こんな所あったのねと言うのが初めの感想、来てみれば既に警察が現場に到着し現場検証を始めており、その中で便利屋を出迎えたのは塚内だった。

 

「悪いね、こんな朝早くから呼び出してしまって」

 

「別に構わないわ塚内警部、態々ホークスから連絡を寄越すほどってことはよっぽどってことでしょうし」

 

「現場の状況は?」

 

「向かいながら話そう、来てくれっとこれ一応ね」

 

 塚内から手渡された白手袋を付けつつKEEP OUTと書かれたテープを潜り廃墟団地に足を踏み込む。踏み込んだレイミィ達は思ったよりも内部は綺麗だなだなと思った、見た目こそは廃墟だが内部はそうじゃない、つまり。

 

「日常的に使われてたってことだなこれって……」

 

「これはまた凄い状況だこと」

 

 内部は綺麗だった、がそれは壁などがという話であり少し歩けばこれは確かに警察が出てくるわけだと言う遺体が彼らの手によって丁寧に並べられていた。

 

 廊下から見える範囲でも数えるのが面倒だなと思う数、そしてどれも共通しているのは身体に存在している体液を全て失ってると言わんばかりの姿だろう。

 

「この遺体は?」

 

「この廃墟団地を拠点に屯していた(ヴィラン)やチンピラ、それと〝客〟」

 

「〝客〟? あぁそういうことか、随分と人数が多いがここまで放置してたのはどういうことだ?」

 

「それを言われるとこちらも何も言えない。言い訳して良いのならどうにも意図的にここのことは組織ぐるみで隠蔽されていたとしか」

 

「隠蔽ね、ただ隠してただけじゃないわね。定期的にここは巡回して対処してますってのも混ざってたでしょそれ」

 

 レイミィがそう言いながら近くの遺体に近寄り塚内に許可を貰ってから手を合わせ、シートを顔の部分だけ剥がし少し目を閉じてから、ゆっくりと開いて首を横に振った。

 

 それを見て塚内もやはりかと呟いた。今の流れはレイミィが被害者の遺体から血を摂取し記憶を見ようとしたのだが彼女が首を横に振ったということはこう告げている。

 

「血が残ってないか」

 

「えぇ、一滴も。流石に無いものからは記憶は覗けないわ、徹底しているわね」

 

「そこまで徹底してるなら犯人は言うまでもないだろこれ」

 

「警察も同意見だ。今回の犯行は間違いなく赤霧によるものだと断定してる」

 

 むしろ他にこんな芸当ができるやつが居たらいよいよこの国はお終いねとレイミィは告げつつ、彼女は昨日、漸く覗けた赤霧の記憶からこの犯行の意味を考える。

 

 まず一つは血の補充、栄養は確かに女性からじゃないと取れない【吸血姫】ではあるがただ補充ということだけならば男からでも問題ない。

 

 そして二つ目は〝個性〟の数を揃えること、AFOの能力を使えば簡単に出来ることであり手札が増えれば増えるほどに赤霧は強くなっていくのだからやらない理由はない。

 

 最後に三つ目、もしこれが正しい推測ならばとレイミィは塚内に質問をした。この現場で生存者は居なかったかと、すると。

 

「居たよ、今は女性警官が〝彼女たち〟と話しているっと失礼、私だ、どうした」

 

「〝彼女たち〟ね、決まりじゃねぇか胸糞ワリィ」

 

「いつの時代もお客には困らない商売ってことでしょ。私もまぁ無関係じゃないし」

 

「俺が気づかなったら貴様も危なかったなアレは」

 

 血染の言葉にウゲッという表情を晒すレイミィを見て、嬢ちゃんも過去にやらかしてるんだなと火伊那は悟る。そのタイミングで通話を終えた塚内が彼女たちの側に戻ってきたのだがどうやら自分たちに話があるらしいということに気付いたレイミィから。

 

「その様子だと私達になにか?」

 

「保護した彼女たち、と言うよりもそのリーダーと言うべきだろうか。とにかく一人が便利屋が居るのならば会わせろと」

 

「俺達に? ヒーローや警察じゃなくてか?」

 

「えぇ、自分たちは信頼ならないから便利屋じゃないなら話なんてしないと〝個性〟まで使って抵抗されてるらしくて」

 

「そりゃ筋金入りだな、客の中に混ざってたか?」

 

 凄まじく痛い所を突かれたという感じの表情を見せた塚内を見て火伊那がマジで世も末だなと想わず口にする。ともかく指名されているのならば向かわない理由はないしと保護されている場所まで行くことに。

 

 場所は廃墟団地の中にあった一室、壁を取っ払われた感じに三部屋ほど合体させたそこに〝売り物〟として扱われていた彼女たちは居た、そして自分たちが便利屋であり所長のレイミィ・バートリーだがと名乗る。

 

 名乗れば彼女たちの中の1人、赤髪のツインテールの活発そうな少女が出てきて、レイミィをマジマジと見つめてから

 

「あんた、赤霧じゃないの?」

 

「違うけどまぁ似てるとは思ってるわ、それで?」

 

「ふーん、あの白い靄が言ってた通りなんだ本当に。まぁ良いわ、はいこれ、便利屋なら上手く使うだろって赤霧から渡されたのよ」

 

 え、白い靄って誰よと思いながら受け取った帳簿のようなものを開き、数秒してから彼女はとりあえず赤い髪のツインテールの少女の頭を撫でることにした。

 

 続けて血染と火伊那も覗き込むようにそれを見てからあぁなるほどと納得し、最後に塚内から何だったんだいと聞かれれば彼女は悪い顔をしながら

 

「喜びなさい警部、これ〝購入者リスト〟よ」

 

「わ、わぁ……」

 

 これ、どうする? 悪い顔をしたままの吸血姫が警部に問い掛ける。内心ではマジで面倒なことを押し付けてきやがってアイツと怒り心頭になりながら。




便利屋にまた余計なこと摑まれて困ってるよこの世界の法的機関
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