起きたら深夜でした。は割りと真面目に驚くし誰も起こしに来た痕跡も無いところを見るにって、置き手紙があるってことは部屋には来てるでしょうね、気配に気付けないくらいに意識が落ちてたと見るべきねこれは。
身体を起こしつつ、置き手紙を開けば書かれてたのは夕食に軽い物を用意しましたという被身子の文字で書かれた内容。
その手紙の側に置かれていたのラップに包まれた食器の中に簡単なおかず数品とおにぎり二個、本当に軽い物、だけど私にとってはありがたいことこの上ない。
正直、この身体になってからはあまりガッツリ食べたいって欲がもう無いのよねぇ。作るのはやっても良いんだけど、にしても……
(こんな深夜に起きたけど、何してようかしら)
ここがもし事務所だったなら夜中の街を補導されないように適当にぶらつくとかやれたんでしょうけど、ここは学園内であり下手なことをして相澤先生の耳に入った場合、なにを言われるか分かったもんじゃないのでやりたくない。
だけど二度寝という気持ちにもなれない。アレだけ存在してた疲れと眠気が全く感じないから仮に横になっても意味が無いと思うし、他が起きてるとは思えない時間だから話をしての暇潰しも叶わない。
困った、本当に困ったわ。依頼の最中はそんな事を考える間もなく常に動き回ってたから気にしなかったけど、やっぱり病院に居る時に思ったけど今後はこの暇と付き合わなくちゃいけないのよねぇ。
(それはそれとしてどうするか……)
なんかこうして悩むなら適当な本とか買い込んでおこうかしら、なんて今更なことを考えながらどうしたものかと部屋を見渡しそこで目に入ったのは机の上のパソコン。
続けて思い出したのは他の所員達の報告書の数々、勿論だけど私が不在の約一週間の間は血染達がある程度流行ってくれているはずだけど中には私が目を通して判を押したり、記入が必要なものが多い。
つまり仕事がある、本当なら明日起きてからとか思ってたけどこれって今やっちゃえば楽になるってことだし私の暇もある程度は潰せるってことよね? そう考えてしまった。
(やることないし、溜まりに溜まってるし丁度いいわよね)
パソコンを立ち上げてこの不在だった一週間近くに被身子が部屋に運んでおいてくれた私宛の書類などを眺めてから、必要になりそうなものを引っ張り出して、ぐっと体を簡単に解す。
(さて、やっちゃいましょうか)
現時刻0時半、私は暇を潰すために溜まりに溜まった書類を崩すことを始めることにした。ついでに今日までの収支もある程度は纏めておかないと、なんていざやり始めたら次から次へと出てくるあれやこれやのお陰で私は当初の目的だった暇潰しが叶いそうだと手を止めずに笑うのだった。
____________________________
時間にして朝の6時半、A組女子達は事前に決めてあったというわけでもなく、とある部屋の前に集まっていた。今言ったように昨日決めていたとかではないのでまさか全員が揃うとはという風に驚くことになるのだが。
「まぁ、心配になるよね」
「昨日、結局レイミィちゃん出てこなかったしね……渡我さんが言うには寝てるだけって話だし私達もそれは見たけどさ」
お茶子が不安げに言うのも無理はない、部屋の主レイミィは昨日漸く依頼を終えて帰宅しシャワーを浴びて部屋に戻ったと思えば、それから一切出てくることもなく、夕食になっても出てこないので心配になった梅雨が彼女の部屋に訪れたのだが。
『だ、誰かリカバリーガールを呼んできて!!!』
血相変えた彼女の叫びに場は騒然としつつ直ぐにリカバリーガールを呼び出したが結果から言えば梅雨の早とちりだった訳なのだがその理由を聞けば全員は納得しか無かった。
曰く部屋に入り先ず確認したのはベッドで寝ているとレイミィの姿。それから近付いて確認してみれば呼吸はしているので安心しつつ、夕食だからと起こしてみるのだがまるで反応が返ってこない。
身体を揺らしたり、声を掛けてみたり、申し訳ないと思いつつ叩いてみたりするが反応はまるでなく、明らかに可笑しいと思ったが故に上記の反応となってしまったというのが流れになっている。
「その、昨日はごめんなさいね」
「いやいや、アレは誰でもそうなるって」
「寧ろ梅雨ちゃんだったから冷静にリカバリーガールを呼ぼうってなったわけだし、私とかだったらパニックになってるよ」
「えぇ、あとは今日無事に起きてきてくればよろしいのですが……」
扉を全員で見つめる。いつもの彼女であれば既に起きてきている時間だというのは今日までの共同生活で分かっている。けれど起きてきていない、これがまだ寝ているのか、それとも……
いや、被身子達便利屋とリカバリーガールが大丈夫だと言っているのならば問題ないはずだ。そう思いながらも不安は抑えられない彼女たちはこうして集まったわけなのだが。
「とりあえず、ノックしてみようか」
「う、うん」
「よろしく、響香ちゃん」
ゴクリと固唾を呑みながら響香はゆっくりと部屋の扉を数度、少し大きめに叩く。少しの沈黙、中で動いているという気配も感じられない事に不安になった辺りで
「開いてるから勝手に入って!」
「あ、はぁ、良かったぁ……」
「本当だよ。じゃあ、入るよ、バートリー」
良かった良かったと安堵の雰囲気が女子達から溢れつつ部屋に入った彼女たちの目に飛び込んできたのは自分たちに目を向けること無く、ひたすらパソコンを操作しているレイミィの姿。
しかもその側には大量とまでは言わずとも結構な量が積み重なった書類、明らかに今さっき起きての雰囲気ではないと言うのは響香達にも分かる光景だった。
「……」
「血染、これ今日までの報告書の纏め、あとこれが収支のやつね、軽く目を通したあと圧紘にも渡しておいて」
「えと、バートリー?」
こちらを見ずにレイミィから差し出される書類の束、しかもどう見ても便利屋の人間しか目を通しちゃいけないだろこれというそれを前に困惑するしか無い響香達。
対してレイミィは何時まで経っても片手の重量が無くならないことに疑問を覚え始め、どうしたんだとばかりにキーボードを叩く手を止めて振り向きつつ
「? なにボサッとしてるのよ血ぞ……め?」
「おはよう、何してるんかなレイミィちゃん」
「どう見ても仕事をしてましたって感じだけど、何時からしてたの?」
血染が入ってきたと思ってみれば実はクラスメイトでした。想定外ですという表情のまま固まるレイミィと困惑しつつも挨拶をしておくクラスメイト、再び流れる沈黙、それを壊したのは主たるレイミィだった。
彼女はコホンと態とらしく咳払いをした後に、差し出した書類の束を戻してから何もなかったとばかりに
「おはよう、それとさっきのは忘れて頂戴」
「それは良いんだけど、私のさっきの質問に答えてほしいかな」
「0時半、目が覚めてからずっとやってたわよ」
「……」
絶句しか出来なかったし、彼女たちの中に出てきたレイミィへの感想はただ一つだった。いや、薄々感じてたことをはっきりと確信出来てしまったと言うべきかもしれない。
ていうか、なんで平然とした顔してるんだろうかこの娘はと口にはせずに代表して梅雨がゆっくりと口を開き彼女に告げる、多分だけど貴女は
「ワーカーホリックね、それも重症な」
「被身子にも仁にも言われたわねそれ」
あぁ、これは今に始まったわけじゃないんだとなりつつも、今日が仮免試験だということで緊張してたのが程よく解けたというのが今朝の話。
それから彼女らとともにリビングに現れれば男子組にも同じように安心されたり、響香が被身子と火伊那に今朝のことを話せば
「働き方改革!!!!」
「溜まってたんだから仕方がないでしょ!?」
「バートリー、今のセリフもう一度たのゴメス!!」
「こいつ本当にヒーロー志望か? なぁ、大丈夫なのかこいつ?」
なんてこともありつつ時間と場面は移り仮免試験場、国立多古場競技場入口前。レイミィは受けるわけではないということでA組及びB組の乗っているバスとは別に圧紘が運転するワゴンで便利屋として来ていた。
降りて早々に何やらA組が士傑高校の夜嵐イナサに絡まれていると言うべきか、向こうが首を突っ込んできたという場面を見つつ
「彼って確か雄英の推薦入試〝2位〟のやつよね? どうしてか蹴って士傑に居るけど」
「詳しいことは俺も調べてないから分からんが噂じゃ、焦凍に負けたというのが理由ではないかという話があるな」
「焦凍にねぇ、ん? てことは焦凍が推薦入試1位なのか、さっすがだな」
弟であり焦凍が頑張っているということに素直に喜ぶ燈矢、家族周りのわだかまりやエンデヴァーへの憎悪云々が収まってきたせいなのか、彼は割りと弟に甘い、下手すれば弟が好きすぎて甘やかすんじゃなかろうかとすらある。
無論だが他にも仮免を獲得すべく他の学校も集まっており、その中の一つを見て火伊那が呟いた。
「あっちは傑物学園の二年と……あ~、嬢ちゃん、あそこには近寄らないほうが良いな、死ぬぞ」
「いきなり物騒なこと、あぁ、うん、そうだなお嬢、行かないほうが良い」
「ま、まぁ大丈夫だとは思うけどね?」
「出ましたね、レイミィちゃんの天敵の1人!」
いきなり何言ってるんだろうかコイツラとなりそうなので先に言えば、傑物学園の二年の受け持ちがスマイルヒーロー『Msジョーク』、彼女の〝個性〟はヒーロー名らしく【爆笑】
言うまでもないだろう、レイミィ・バートリーという少女はツボが変であり浅い、そんな彼女が一度Msジョークの〝個性〟を受けようものならば比喩でもなく死ぬ可能性が浮上するのだ。
故に警告する、あそこには近寄るなと。そして、その懸念は相澤もしていたようで絡んできた彼女に向けて
「あぁそれと、今日は便利屋が来てるがその所長にお前は近づくなよ」
「お、なんだなんだ、私が他の誰かに靡くのが嫌だってかぁ?」
「ヒーローから殺人犯になりたいって言うなら構わんが」
「イレイザー、お前ってジョーク言える口だってのか、ウケる」
ジョークじゃないんです、本当のことなんですと誰かが言ったかは定かではないがあまりに本気な声にMsジョークが笑うのも忘れて困惑したのは言うまでもないだろう。
なお、レイミィは彼女の姿を見て前に見た
正直に言えば彼女にしてみればA組もB組も心配なんてしてない。確かに相手は強豪ばかりであり、1年上の存在だって居るがそれを加味しても問題なく合格するだろうと思っていたりする。
「や、お嬢様。雄英のみんなの調子はどう?」
「問題ないわ。相手が強かろうが雄英潰しをしてこようが跳ね除けられるほどには成長してるもの、それよりも忙しい貴方が顔を出すなんてどんな都合をつけたのかしらホークス?」
隣りに座ってきたホークスに対してそんな事を言うが実際は彼女も分かっている。と言うよりも、前もってこの場所のこの時間に合うように約束していただけなのだが。
因みに他の面々もその場に居るが、それは試験の様子を見ているだけではなく周りに不審な人物が近寄って来たり聞き耳を立てに来るのを警戒しているという方が正しい。
まだ慣れてない燈矢だけは若干露骨に見えてしまうが寧ろ仕方がないこととして置いておき、ホークスは彼女の隣りに座ってから軽く雑談をしつつ、本題に入る。
「さてと、頼まれてた例の件に少しだけ進展があったよ」
「それは重畳だこと、警察も流石に今回はよほど本気のようね」
「そりゃね、今回わかったのは例の個性破壊弾について。君の懸念通りというべきか、そこそこの量が流れているのが確認できた」
「ともすれば売人、あるいは売買組織ってのが居るはずよね、そこから大元へは?」
聞くがホークスはそれには首を横に振る。だが確証がないという話だけであり〝かもしれない〟というレベルであれば一つの中間売買組織から情報が手に入ったらしい。
「そこの幹部がとある組織と接点があった。あったんだけど、あくまでヤツの口からだけだし、物的なにかがあるわけじゃないから踏み込めないって感じ」
「私が記憶から覗くっていうのも公式な証拠には使えないから難しいってことか。んで、その組織ってのは?」
「〝死穢八斎會〟、そことの接点があった。そして警察と協会、及び公安はこの〝個性〟破壊弾の出所はそこだと睨んでいる」
死穢八斎會、この〝個性〟社会になってからは天然記念物とまで言われるヤクザ、もとい極道という存在。なるほど、確かにそこならば作れなくもないなとレイミィは納得する。
すると同時に、弾の材料を思い出して即座に潰しにかかれないことに舌打ちをしそうになるのを息を吐き出すことで誤魔化してから
「なら私は奴らを探るほうが良いかしら?」
「うん、公安としてもそれをお願いしたい。ただ死穢八斎會は実はヒーローも目をつけていてね、そことの協働って形になると思う」
「ふぅん、どこの誰よ?」
聞いたところで雄英が全員突破したというアナウンスが入る。が彼女的には当然なことでしか無いので気にしないで、ホークスに返答を促せば、向こうは本当に信頼してるんだねと思いつつ。
「サー・ナイトアイ、彼の事務所がってそう言えば知り合いだっけ?」
「知り合いっていうか、まぁそうだけど。でも彼なら話せば分かってくれそうね」
もう既に彼女の中では計画が幾つも立てられているのだろうか、ニコリと底冷えしそうな笑みを浮かべるレイミィにホークスは死穢八斎會に同情の念を送ってしまう。
奴らは明確に彼女の地雷を踏み切ったということを、なんたってこの少女は誰よりも子供が食い物にされることを嫌う人間なのだから……
仮免試験は全カットです。まぁ原作よりも成長してるし、爆豪も問題なく協力してくれるだろうしで楽勝やろの精神。
あと焦凍と夜嵐とのいざこざも多分無いかなと、この世界線だと入試の段階ですでに家族間とのあれこれは燈矢関連以外は解決してるので、雰囲気は天然焦凍状態でしょうしってことで。