便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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No.163『情報戦にて吸血姫は最強(自称)』

 二、三日依頼で帰れないから気にしないでほしい。そんな事をA組がレイミィが聞かされたのはつい昨日の出来事だった、その翌朝、場面は朝のシーンである。

 

 気にしないでほしいとは言われてもそれはそれとしてやはり心配にはなるというものであり、ふとお茶子が呟くところから始まる。

 

「それにしても数日も帰れないって大丈夫かな、レイミィちゃん」

 

「まぁバートリーの大丈夫は割りと信頼ならないってのはあるよね」

 

「ケロ、それは確かにそうね。でも態々自分から言ってきたのだから多分大丈夫だと思うわ」

 

「まぁバートリーの奴も毎度毎度の説教で懲りてるだろうしな」

 

 うーん、散々な言われようだとクラスメイトがレイミィのあれこれで盛り上がりつつある光景を見つつ出久は思ったことは口にはしない。大丈夫だとは思ってもこの場での発言が何らかの要因で彼女の耳に入った場合、どんな八つ当たりが飛んでくるかわからないから。

 

 因みにだが出久が迂闊にも口にした場合、焦凍経由でしっかりとレイミィに引き継ぎがされたその日の訓練が五割増になるので彼の懸念は大当たりだったりする。

 

「……(今、なんか私のことで割りと失礼な事を言われたような気がする)」

 

 そんな話題の真っ只中なレイミィは現在は何時ぞやの大学生スタイルの服装もとい変装で死穢八斎會の屋敷がある地区の喫茶店にてナイトアイの依頼を遂行すべく情報収集を行っていた。

 

 周りから見たら喫茶店で勉強中の大学生という感じではあるがノート内容はモスキートにより回収した血から読み取った記憶から死穢八斎會が現在及び今後取引するつもりのブローカーやグループの名前とその日時や商品が書かれているのだが一息つきながらレイミィが感じたのはかなり手当たり次第って感じだなという感想だった。

 

(随分と手広く展開するつもりと言うかしてるわね、それほどまでに財政面でやばかったって見るべきかしらこれ)

 

 またノートには取り引き先以外にも確実に死穢八斎會を潰せそうな情報は随時纏めている。これは万が一、死穢八斎會が取り引き先を尻尾切りして逃れようとしても良いようにという保険ではあるのだが、内容を見る人が見ればオーバーキルだこれと言うのは間違いない物に仕上がっていたりする。

 

 もっと言えば警察からしてみれば喉から手が出るレベルの内容であり、これをそこに持っていって売ってあげると彼女が言うだけでそこそこの額が動くくらいには詳細なものが書かれているのだが、レイミィは今回に限りそういうことはしないくらいにはキレている。

 

《こちらホークアイ、屋敷に動きは無し。イーグル1から5も異常なしとのことだ》

 

 一息を一旦つこうかというタイミングでレイミィのイヤーカフピアスに偽装している通信機に火伊那からの通信が入る。彼女は現在、死穢八斎會の屋敷を監視しており今のは定期連絡なのだが今の通信に疑問を持つ人もいるだろう。

 

 彼女はこう言った〝イーグル1から5も異常なしとのことだ〟、もしこれが他の所員であるのならばそれぞれのコードネームで良いものを態々こう言ったのは理由がきちんとある。

 

 などと仰々しく書いたが早い話が増やしたのである、火伊那を。人数は5人ほどを増やし屋敷を囲むように遠方のビルの屋上から監視しているのである、これには計画を聞いたホークス曰く〝いやぁ、今のお嬢様を怒らせたらこうなるんだね〟と笑っていた。

 

「こちらスカーレット、了解したわ。引き続き監視を続けて、なにか動きがあったらすぐに連絡して」

 

《ラジャー、にしてもこうあれだな、増えた私に四方八方監視されてるとか悪夢だな、アイツラからしてみれば》

 

「あら、同情?」

 

《まさか、でも私が五人いるって思うと若干気持ち悪いものはあるな》

 

 しかも物言わぬ人形ではなく思考から何までそっくりそのままの存在なのだからまだ慣れていない火伊那にしてみればそういう環状になるのも無理はないだろうしレイミィも初めの頃はそうだったので同意しつつ

 

「今後は機会が増えると思うから、なんとか慣れて頂戴な」

 

《あいよ。んじゃ、また》

 

 通信が切れたタイミングで今度こそとアイスコーヒーを飲みながら纏めた情報を頭の中で整理していく。取り引き先、非合法なシノギのあれそれ、死穢八斎會を潰す段取りになったときに有利になりそうな情報はあらかた読み取り終えた、だがレイミィはその記憶の中での組員同士の会話や陰口や愚痴を聞いて気になることがあった、それが。

 

「(思ったよりも今の若頭は慕われてるって感じはなさそうと言うか、これって)上手く突付けば内部抗争いけるんじゃないかしら」

 

「何恐ろしいことをぼそっと言ってるのよ貴女は」

 

 聴こえた声に振り向けばそこに居たのはラブラバとジェントルの二人。二人が此処にいるのは言うまでもなくレイミィが呼んだからであり、当の本人は今のつぶやきが聞かれる距離まで近付かれていることに気付かなかったことに思考に耽りすぎたと思いつつ

 

「態々来てもらって悪いわねラブラバ、ジェントルも」

 

「別に依頼だから構わないけど、それよりもさっきの何よ」

 

「何って、ちょっと組織壊す方法を考えてただけよ。あと好きに注文していいわよ、奢るから」

 

「おや、羽振りが良いね。実入りが良い仕事でも終えたのかな? おっと、それよりも身体はあれから大丈夫かい」

 

 テーブル席の空いてる場所に二人が座ったのを確認してからそんな会話をすれば、レイミィは若干曖昧にまぁ大丈夫といえば大丈夫だけどと答えるに留める。とは言え曖昧な返答に納得するかと言えば眼の前のラブラバがするわけもなく、適当に注文してから彼女を見据えて口を開く。

 

「そんな言い方をするってことはよろしく無いってことでしょうが、なにを誤魔化してんの。アンタの所の秘書が最近、食事量がガクッと減ったって聞いてるわよ」

 

「あの娘勝手に……食欲と言うか、食べたいなって気が湧かないのよ。それよりも頼んでたものは?」

 

「それよりもって、はぁ良いわ。はいこれ、流石に全くデジタル化してないってこともなかったけどセキュリティ自体はそんなでもなかったから抜けるだけ抜いてきたわ」

 

 差し出されたタブレットに表示されているのはラブラバがレイミィからの依頼で死穢八斎會へハッキングを行い、そこから抜き出した収支や取引データの数々。理由としてはレイミィの記憶だけの情報だけではやはり即応性というものが生まれにくい。

 

 なので正規な証拠としては使えないものの確かなデータと言う形でも彼らのシノギの証拠を提出することで四の五の言わずに潰しに動くという選択肢が生まれやすいようにしようというのがレイミィのプランであった。

 

「ふーん、取り引き先は私が奴らの記憶から見たのと差異は無いわね。それで収支はって、これはこれは」

 

「思った以上に酷い有様、正直に言っちゃえば今日までよく組織としての体を保ててたなって思うしかないわ」

 

「それほどまで組長に人望があった、ということではないかね?」

 

 映された死穢八斎會の収支のデータが彼女たちに教えたのはギリギリ赤字から赤字、そしてここ最近になってまたギリギリ赤字と低空飛行を繰り返す組の財源状態を示すデータの数々。因みにこれは余談だがラブラバとジェントルの二人もレイミィが〝個性〟の能力で血から記憶が読み取れるのは知らされている、なのでラブラバは自身の秘密が知られた理由も悟り激怒したとかは置いておこう。

 

 ともかく、ここ1年の間に手広く取り引き先などを開拓してた理由もこれだろうと気付くのに時間は必要無かった。寧ろこの状態で組から足を洗った組員が出てこない辺りに疑問に思うなという方が無理だろう、無論だがジェントルが言ったことも正しいかもしれないが。

 

「恐らくは若頭が恐怖政治を敷いてるって感じでしょうね。逆らえば殺す、それで人員の流失は抑えてる感じだし」

 

「不満出るでしょそれ」

 

「出ない理由を教えてほしいレベルだわ。分かってる範囲でも若頭の人望はほぼ無い感じでしかなくて、あるのは一部が忠誠を誓ってたり盲信したりってだけ」

 

 見た記憶の中で一番彼に従っていると言えるのは【八斎衆】と呼ばれる若頭、もとい治崎直属の鉄砲玉集団だろう。彼らは治崎個人と主従関係を結んでおり彼に変わって汚れ仕事などを担当しているらしい。

 

 流石に誰がどんな〝個性〟を持っているのかなどは分からず、また顔に関しても全員がペストマスクを付けているために分からずにレイミィも軽く舌打ちしたのは記憶に新しい。

 

「なるほど、故に先程の所長くんのち上手く突付けばの発言に繋がるというわけだね」

 

「その通りよジェントル、其の為にもまずは外堀を完璧に埋めなくちゃいけないんだけど」

 

 君がやってるのは外堀りを埋めるどころではないと思うのだがとジェントルは言いたくなったが注文した紅茶を飲むことで抑え込む、それはラブラバも同じだったようでジト目を彼女に送っていたりする。

 

 それにしてもとジト目で見つめていたラブラバだったが、ふとレイミィに伝える追加の話があったことを思い出してタブレットを操作してから彼女に見せたのはとあるカルテ。これは偶々彼女から個性破壊弾の話を聞いていたからこそ見つけた代物であり、そのカルテの内容は

 

「これってもしかして個性破壊弾の……」

 

「そ、貴女からその話を聞いてからついでに探ってみたら出てきたのよ」

 

「あぁ安心してほしいのだが愛美くんは病院には手を出してないよ。これは死穢八斎會のパソコンからの情報さ」

 

「そこは疑わないんだけど、にしてもそうか、表に出てないって言うなら闇医者でも頼ったかと思ったけど屋敷内で全部管理してたか」

 

 つまりこの少女は外に出ることはない。この事実にレイミィはどうしたものかと頭を悩ませる、先手を打って保護しようにも屋敷内に常に居るとなると簡単には行かない。

 

 確かに便利屋はそういった潜入も出来ないことはないが時間をかけてというものが大半、個性破壊弾のことも考えればそんな悠長なことは出来ない。

 

(参ったわね。流石に手札が弱い、被身子に潜入もリスクが、仁に組員を増やして内部から? いや、それも確実じゃないしこの娘と接触できるレベルだとコピー体を見抜かれる危険性があるし、そうなったらこっちが動きにくくなる)

 

「ちょっと、急に黙りこくらないでくれる? 大方、この子供について悩んでるんでしょうけど」

 

「あぁ、ごめんなさい。どうにかして保護できないかって思ってね、そうすれば個性破壊弾の生産も止まるし」

 

「本音は?」

 

 その追求にレイミィは即答できなかった。勿論、今口にした言葉も嘘ではない、原材料になっているその少女を保護すれば死穢八斎會は個性破壊弾の生産はできなくなり品物を流せなくなるのは事実だ。

 

 だがラブラバはそれだけでレイミィという少女がここまで悩むわけ無いと知っている、だからこそ黙ってないで喋ろと追求してきたのだ。

 

「子供が大人の身勝手で食い物にされるなんて我慢できない、それだけよ」

 

「初めからそう言いなさいっての、とは言っても私たちもなにか出来るわけじゃないんだけど」

 

「こちらでも屋敷内に監視カメラとか無いかと見てみたけどね。どうにも存在しない、或いはスタンドアローンじゃないかと」

 

「スタンドアローンは無駄に高いから無いとは思ってるけど、恐らく日常的に暴力を振るってその娘を従わせているから監視すら必要ないってことじゃないかしら」

 

「反吐が出る」

 

 短く出された声にこれ以上無いほどに怒りが込められていることは察するまでもなかった。レイミィをここまで怒らせるとか死穢八斎會はもう跡形も残らないわよこれとラブラバは思いつつケーキを食べる。

 

 食べてから、そう言えばこいつさっきから何も食べてないなと気付く、来るまでに注文してという感じでもないともすれば。

 

「聞きたいんだけど、貴女最後に食べたの何時?」

 

「急にどうしたのよ。今朝、エナジーバーを一本食べてと血を吸ってるから大丈夫よって何その顔」

 

「……」

 

 その返答を聞いたジェントルは絶句してから頭を抱えた。副所長達が把握してないはずがないので指摘されてなおもこれだとすればあまりに駄目すぎると、それは隣のラブラバも同じであり彼女も深い溜息を吐き出してから。

 

「なんでも良いからちゃんとしたものを食べなさい。そんな食生活してると精神病むわよ」

 

「んな大袈裟な、私そこまで軟になったつもりなんだけど」

 

「いや、大袈裟ではないよ所長くん、しっかりとした食事をしその時間を誰かとともにするということは大事だ、本当に」

 

 かつて無いほどに真顔で語ってくるジェントル、その横であの頃は本当にヤバかったわよねと懐かしむラブラバ、それを見れ唐突にレイミィの脳内に溢れ出した極貧時代の便利屋の食事風景。

 

 あぁ、うん、そういうことかと不思議とレイミィは納得できたし最近、確かになんか精神的に焦ったりしてたような気がすると思った彼女は近くの店員を呼んでから

 

「すみません、チョコケーキ追加で」

 

 とりあえず食べよう、それから夜もちゃんとしよう。ここに轟家カウンセリングでもなし得なかった今のレイミィの食事改善が成功した瞬間だった。最も改善したのは食事だけで睡眠は取るつもりがないというのは、チョコレートケーキを食べてるのを安堵の表情で見ている二人は知らないのだが。

 

 時は進み、その日の深夜、コピー体の火伊那をローテーションで休ませながら死穢八斎會の屋敷を監視及び情報収集してたレイミィに一つの新情報が入った、それは死穢八斎會の若頭、治崎が死柄木組と接触したという予想はしてたが最悪な記憶の内容だった。




なんかラブラバとジェントル久し振りに出した気がするわ
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