便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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No.169『当日、実行前のお話』

 壊理の保護から翌日、事務所にて。早朝に近い時間から彼らはそこに集まり今日の作戦に向けて最終確認を行っていた。

 

「とりあえず燈矢以外は私と一緒に朝から警察に向かい、向こうとのすり合わせと立会のもと奴から証言を得るわ」

 

「んで、俺はその間は寮で万が一の為に壊理ちゃんの警護ってわけね。あまり目立つことができない身とは言え、毎回待機は退屈になりそうだな」

 

「あははは、何だったら学校のお手伝いとかしてても良いんですよ? 多分、言えば仕事を回してくれそうですし」

 

「ん~、気が向いたらな」

 

 コレは自主的にやるつもりはないなと誰もが分かる言葉に全員が笑う。なお、彼は知らない学園の手伝いをしなくても書類仕事と壊理の相手で退屈だとは口が避けても言える状況にならないということを……

 

「それと向かう際には装備はフルで行くわ。恐らくそのまま死穢八斎會にカチコミになると思うし」

 

「現状で屋敷に動きはなかったのか?」

 

「治崎の直属が動こうとしたって以外、まるで動きがないらしいわ。向こうだって私たちに騙されたってのは気付いてるはずなんだけど」

 

「赤霧が何も伝えてないとかあり得るか?」

 

 仁の質問にあるかないかで言えばあり得なくはないと答えるレイミィ、それは昨夜の時点で考えなかったわけではない。でもなければこの日まで向こうが何かしらのアクションを取らない理由にならず、不自然なほどに静かなことにも一応の理由付けにもなる。

 

「だがその場合、狙いはなんだ? 態々証拠すらこっちに渡してカチコミさせることが大前提の目標ってのは」

 

「あ、そうだレイミィちゃん! ほら、この間だったか赤霧の記憶が見れたとかあったじゃないですか、そこになにか……」

 

「無かったわ、いえ、正確に言えばそういう部分はまた別の処理がされて覗けなかったが正しいでしょうけど」

 

 いくら赤霧と同一存在とは言え、向こうだって馬鹿ではなく無条件に全てを読み取らせるようなことはさせず対策はしてくる。まだ詳細こそ話してないがレイミィから見えたのは彼女の過去や『本来の最終目標』などと言ったものだけであり、今回のような細かい部分はほとんど読み取れていない。

 

 なので今回の件についてと聞かれようともレイミィは分からないとしか答えようがないのだ。だとしても今日やることは何一つ変わらない、ともすれば単刀直入に言ってしまえば

 

「出たとこ勝負になるわね」

 

「赤霧相手にか。分が悪いとしか言いようがねぇな」

 

「けどその赤霧が死穢八斎會に協力するどころか敵対とすら取れる行動をしているのなら、意外と手を出してこないとかあり得るんじゃねぇか?」

 

「それはないでしょうね。あいつだって雇われてる身だし仕事をしないってのはないでしょ」

 

 とは言え、ただ仕事をするだけで済ましてくれるかは分からないけどと呟きながら席を立つ、その動きに全員が時計を見れば確かにそろそろ動き出さなければならなくちゃいけない時間だと、他も立ち上がり最終確認を始める。

 

 それから数分後、レイミィ達、便利屋は壊理が居る寮に来ていた。どうやら朝食などは済んでいたらしいが少女はレイミィを見ると駆け寄ってきて

 

「レイミィお姉ちゃん、おはよう」

 

「おはよう壊理、で早速で悪いんだけど燈矢と留守番を頼むわ。お姉ちゃん達はちょっと仕事に行くから」

 

「仕事ってことは今日も学校は休み?」

 

 コレで何日連続の休みかしらねと哀愁漂う呟きがレイミィから出てくる。彼女とて別に休みたくて休んでいるわけでもないし、出来ればちゃんと出席したいとは最近は思っている。

 

 いるがやはり便利屋を経営していくとなればコレは仕方がないことだと割り切ってから響香にそうねと頭を掻きつつ頷けば、向こうは仕方がないよと伝えて

 

「じゃ、ここ最近の授業の事とかみんなでノートに纏めておくよ」

 

「ありがたいわ」

 

「イレイザーヘッドには昨日の時点で伝えてある、奴は壊理の事があるからここで待機らしいしな」

 

 しれっとこう言っている血染だがこれは嘘である。正確に言えば学園に相澤が残るのは正しいがそれが本人だということは一言も言ってないという意味。

 

 もう既に戦いは始まっている。なので可能な限り誰かの記憶にこちらの手札が残らないように会話には気をつけているという話、最もレイミィはコレが意味をなすかと言われると分からないとしか答えられないのだが。

 

「あぁそうだ。壊理、今日はリカバリーガールの所に燈矢と一緒に行ってそこで彼女から勉強を教えてもらいなさいね」

 

「勉強、うん、頑張ります」

 

「勉強かぁ。俺も少しはやっておけばいいかなって今になって思ったりするんだよな」

 

 なお、燈矢の今の発言はこの場ではじゃあこれから頑張ればとなるが仮に轟家で放った場合、通夜待った無しである。主にエンデヴァーが沈みに沈んで浮上できなくなるので注意が必要だったりするので流石の彼もコレは家族の前では言わないようにしてるとかなんとか。

 

 因みに焦凍の前では平気なのかとなるが彼はそうだな、勉強は大事だ兄さんと言う程度の天然なので問題ない、いや、なんで問題ないんだよとツッコミをレイミィが入れたのは記憶に新しいがこの話は置いておこう。

 

「それじゃ私たちはそろそろ出るわ。いくわよ、あんたら」

 

「いってらっしゃ~い。それにしても久し振りに見たね、レイミィの戦闘服(コスチューム)姿」

 

「あ~、確かに」

 

「かっこよかった」

 

 何気なく、それでいて心から思ってるという感じの感想を述べた壊理に燈矢を含めた全員が、あの変な生き物シリーズと良いもう既に良くない影響を受け始めているのではないだろうかと心配になった。

 

 そんな心配をされていることは知らないレイミィとその便利屋の仲間たちは学園を出てから数十分、現在は警察署に到着し受け付けにて塚内を待っているのだがその間にレイミィがふと気付いたことを血染に聴いていた。

 

「そういえば、昨日の夜に緑谷の相談に乗ってたらしいけど、何があったの彼?」

 

「言うまでの内容ではない、まぁあの年齢にはよくある現実のギャップに悩んでいたと言うだけだ」

 

「はっはーん、壊理の件だろ。ヒーローを目指してる自分は救えずに便利屋の嬢ちゃんが華麗に救い出してたもんだからってやつだろ」

 

「うーん、分からなくもないけど所長と比べるのはおすすめしないと思うけどね」

 

「それにあの場面も俺と圧紘が居たからできたって話だからな、例外ってやつじゃねぇか?」

 

 実際、あの時点で壊理を連れ出せたのは赤霧側からと思われる情報提供と圧紘と仁と言う人を連れ出すのに特化してると言える〝個性〟持ちが居たからこそ。もしどれかが欠けていれば難しかったというのはレイミィも分かっている。

 

 だが居なかったからとあの場面で諦めるのかと言われれば、それもないだろう。彼女はそこまで子供が食い物にされているというのは地雷なのだから、最もその場合はレイミィ未帰還で暫く潜伏ということになっていたかもしれないが。

 

「はいはい、それにしても遅いわね塚内警部」

 

「おっと、待たせてしまったようだね。や、便利屋の皆さん」

 

 噂をすれば影と言うべきだろう、現れた塚内に全員がそれぞれ挨拶をしてから状況を聞いてみる。曰く死穢八斎會に目立った動きはなし、それを聞いてレイミィは面倒な状況だということを隠さない表情を晒す。

 

 晒された方も分かるよと苦笑しながら言い、それじゃ早速だけどと便利屋にお願いをする。では何をするのか、これからカチ込みに向かう死穢八斎會の屋敷の内部構造は正直言えばヒーローも警察も把握しきれてはいない。

 

 ともすればその状態で向かっても逃げられてしまう危険性がある、なので警察は便利屋を頼り事にした。思い出して欲しい、壊理を救い出したあの場面、仁はサポート科からのアイテムである例の眼鏡を装備していたのだ、ならばその状態でノコノコと現れた治崎を見ればどうなる?

 

 そしてこちらにはレイミィの魅了を確実に通すための手札だって持ち合わている。無論、公式に使える証言にはならない、だが今この場に限れば関係ない、ただちょっと聞き出して包囲できるように配置に人員を割くだけの証言が欲しいだけなのだから。

 

「という事でコレが聞き出した屋敷の構造や地下への出入り口と直属の〝個性〟とかの名簿ね」

 

「うん、確かに。なるほど、随分と根を張り巡らせていたようだ」

 

「まるで蟻の巣だな」

 

「だとしたら害虫指定の種類の蟻だわ。すぐに駆除しねぇとな」

 

 時間にして午後少し前、聴取を終えた彼らはの手には聞き出せた情報で書き上げられた地図が。そこには屋敷の地下に続く出入り口の数々、中には緊急の避難経路、言ってしまえば屋敷そのものの構造を丸裸にしたと言っても過言ではない内容となっており、その中には更に詳細として

 

「処置部屋、ね。物は言いようってことだろうけど、ここに大方の証拠があるって見て良いんだよね、所長」

 

「えぇ、ここを抑えるのが第1目標と見るべきよ。まぁ、それも仁のコピーでだいたい終わる話だけど」

 

「〝個性〟に物言わせた物量作戦、しかも今回コピーするのがルミリオンくんって所が相手に勝たせる気ゼロですよね、これ酷いですね」

 

「ま、情けなんてかける必要がない相手だからってのもあるけどな」

 

 情がないとしてもこれを相手する死穢八斎會に少し同情したくなるなと塚内は思いつつ、受け取った資料を一旦コピーするために向かうと良い、便利屋には会議室に先に行ってくれと伝え、それぞれ動き出す。

 

 という事で会議室、塚内が言うには先にプロヒーローが何人かすでに来てもらっているという事は聞いていたレイミィだったのだが部屋に入って早々に目についた人物に出てきた言葉はただ一つ。

 

「げっ」

 

「相変わらず随分な挨拶だな、便利屋」

 

 ギロリと言う効果音が聞こえそうな視線で彼女を見つめる大男ことエンデヴァーの姿。とは言え二人にしてみれば最早コレがお決まりの挨拶というのもあるので互いにそれ以上は何も言わず、血染達がエンデヴァーに挨拶している間に他に誰が来ているかと見渡せば

 

「(思ったよりは集めてくれたって感じね。空席も未だあるしそれを考えれば十分か)あら、インゲニウムじゃないの」

 

「やぁ、久し振りだねバートリーくん」

 

 思えば社会見学以降は顔を見せることもできてなかったなとインゲニウムを見て思い出したレイミィは調子はどうだと聞けば、問題ないと返され、それから逆に天哉はどうだろうかと聞かれる。

 

「どうって、変わらないわよ。相変わらず真面目な委員長さんって感じ」

 

「そうか、いや天哉も学校のことは話してくれるが寮生活になってからは顔を合わせる機会が少なくなってね」

 

「あぁそういう、連絡とかしてないの?」

 

「してない訳ではないが、あまり頻繁にというのも困るだろうなって思ってね」

 

 そういう物だろうかと考えるが彼がそう言うならそうなのだろうと納得しておき、指定された席へと着席し会議が始まるまで待ちつつ、情報を脳内で整理しておくことにしようと目を瞑る。

 

 一方その頃、午前の授業を終え今日もまたインターンにためにナイトアイの所へ向かった出久だったがどういうことだと疑問を感じていた、というのも

 

「切島くん達も同じ方向で、同じ集合場所で、戦闘服(コスチューム)を持ってくるように言われた……?」

 

「らしい、なんか急に決まったって話らしくて俺も細かいことは知らねぇんだけど」

 

「ケロ、私も同じだわ、お茶子ちゃんもよね?」

 

「うん、でもこの集合場所って……」

 

 警察署だよねとお茶子が呟き、全員が頷く。何度確認してもそこは確かに警察署、だが出久は気付いている、コレがなんの集まりなのか、そして今朝、どうしてレイミィが休んだのかすらも。

 

 言わなかったのは言うなと釘を差されているからに過ぎない、何だったら壊理の事すらもうっかり話すことも禁じられているレベルで情報統制されている。

 

 だがこうして学生の自分たちまで集めるということはそれほどの事態だと見るべきなのかもしれない、そんな緊張をしつつ警察署に到着、そこには見知った顔も居て出久は驚くことに。

 

「グラントリノ!?」

 

「お? おぉ、坊主じゃねぇか、なるほどな、今回ばかりは本気ってわけだ」

 

「相澤先生も!?」

 

「ん? あれ、でも相澤先生って学校に居るんじゃ……あっ」

 

「なんでか知らないけど頭から抜けるのよね、便利屋がコピーできるって事実」

 

 他にも数人のプロヒーローにBIG3の姿もあれば、事情を知らない切島達もコレはかなりの大事なのではと緊張し始める。とりあえず各々お世話になっているヒーローの元へ向かい、出久もミリオと共にナイトアイと合流して警察署の会議室へ向かえば。

 

「レイミィちゃん!?」

 

「あら、貴方達も来たの? ふぅ、まぁ大丈夫だとは思うけど」

 

 ちょっと想定外なんだけどという反応をしつつ、ナイトアイ、塚内警部と共に立ち上がり、背後のモニターを点灯させてから各々に書類が行き渡ったのを見計らって彼女は告げる。

 

「さて、貴方達ヒーローにお集まり頂いた理由なんだけど、ちょっとヤンチャが過ぎる小さな組織を潰すのを手伝ってほしいって話なのよ」

 

 あ、これ思ったよりもブチギレてますね。彼女を知っている同級生組は静かに悟り、とりあえず黙って話を聞いておこうと心に誓うのであった。




(あれ、おっかしなぁ今回で死穢八斎會カチ込み直前まで行くはずだったんだけどという顔)

便利屋メモ
レイミィお手軽魅了確実コンボに心操のコピーが使われるが実は一人につき毎回、心操本人に10万の報酬が支払われている。

なおコレは相手方のご両親にも話を通しているが本人は知らない所で出てくる自身への評価と稼ぎに毎回、冷や汗をかくとか。
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