便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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No.170『先手必勝』

  ブチギレてます宣言から始まった会議だったが内容自体はしっかりと真っ当に行われている、と言うよりも一人のプロヒーロー【ロックロック】が用意された死穢八斎會についての資料を読み込んでから疑問を提示する。

 

「なぁ、コレかなり精密なやつだがどうやって集めた資料なんだ?」

 

「黒いことはしてないわ、ただちょっと私の〝個性〟と話を聞いただけよ」

 

 絶対に真っ黒じゃん。とは思っても口には出せない学生組、今は真面目な会議中なので普段のノリが出せないというのもあるが仮に口に出しても相手はヤクザだからで押し通すんだろうなという信頼からくる無言だったりもする。

 

「彼女の用意した資料は警察も目を通し問題ないとしているのでその辺りは信頼して欲しい」

 

「そこまで言うなら、納得しておく」

 

「さて話が途切れましたが現在、警察は前々から便利屋に調査を依頼し判明している密売グループを中心にガサ入れを開始、既に大多数を検挙に成功しています」

 

「ここ最近確かに騒がしい思ったが、そういうことだったんか」

 

 大阪を中心に活動しているファットガムが納得した声を出したように警察のガサ入れは全国各地で一斉に行われており、現段階でその大半を検挙し大多数にて死穢八斎會の関与が確信できる証拠が上がっている。

 

 故に警察はこれらの証拠を元に急ピッチで令状を要求し、発行が完了しているため、警察も動ける準備は整っているとのこと。

 

「随分と腰を上げるのが早いわね、悪いことじゃないんだけど」

 

「警察も今日までで色々ありましてね。とにかく、こちらとしても死穢八斎會をこれ以上好きにさせるつもりはなく、今日で解散まで持っていくつもりです」

 

「それは便利屋も同意見よ。さて、次なんだけど今作戦においての屋敷の見取り図を見てちょうだい、各員の配置が書かれているから」

 

  軽い感じに出された見取り図、それを見たプロヒーロー達はあまりにも詳細に書かれたそれに若干だが引いた。ただ外見や内装が書かれているというのならばまだ良い、だがそこに書かれているのは向こうが完璧に秘匿しているはずの地下の詳細まで書かれているではないか。

 

 更には出入り口の方も当然のように記されており、街中に張り巡らされた入口も細かに書かれているとなればロックロックは引き攣った表情をしながら再び彼女たちに聴いた、これどうやって知ったんだと。

 

「はぁ、あまり時間がないからその辺りの質問をして欲しくないんだけど……」

 

「ここまで詳細なやつが出所不明は流石に気にするなってのが無理あるだろ」

 

「……企業秘密って言っても納得しないんでしょ? 聞いたのよ、本人に」

 

「は?」

 

 ロックロックが呆けたような声を上げたが便利屋の〝個性〟を知らないプロヒーローも同じ感情でしかない。そもそも本人に聞いたとはどういうことだというのだ、まさか直接聞いたわけじゃないだろうと疑問でしかないだろう。

 

 無論、レイミィもそれは理解してるしこの後また聞かれるのも面倒だからと仁を隣に立たせてから口でいうよりも早いからと〝個性〟を使わせれば、場は騒然となった。

 

「こ、こいつは、コピーを生み出したってことかいなコレ!」

 

「コピーではあるけどより正確に言えば耐久以外は本人同様の存在を増やしたが正しいわね」

 

「俺の〝個性〟は【二倍】、なんでこうやって人を増やしたり出来るってわけで知識とかもそのまんまなんでそういうことっすね」

 

 規格外な〝個性〟、プロヒーローの感想はそれに統一された。しかも聞けばここから別に人物を増やし〝個性〟の【洗脳】を利用しレイミィの魅了で情報を聞き出したとなれば

 

「……色々とアウトじゃねぇか」

 

「相手は黒なのに? その御蔭でこうやって死穢八斎會に踏み込める公式な証拠だって手に入ったわよ?」

 

「ここは法治国家だぜ、お嬢さんよ」

 

「えぇ、知ってるわ。だから警察も協会も公安も文句をつけてこない方法で聞き出したし、実際彼らも問題にしてないでしょ?」

 

 そうよね塚内警部と聞けば彼はまぁそうだねという感じに頷くしかできない。それを見せられたロックロックも黙るしかない、というのも納得はできてないがこれ以上突っかかればキレるぞというのがレイミィから漏れ出しているのを感じ取ったからである。

 

 プロヒーローたる彼が僅かに漏れ出たその圧で怯んだ、その事実に周りは緊張感を高めてしまうしエンデヴァーはらしくないと言葉にしないで息を吐き出し血染に視線を送り、受け取った彼は分かっているという風にため息を付いてレイミィを軽く小突いてから。

 

「すまん、子供を利用した悪党という事で事を急ぎたいが故に無礼な態度を取っているように見えるが許してやってくれ」

 

「無礼は向こうでしょう、こっちは信頼されてるからやったってのに。あぁ、分かったわよったく、とにかく時間が惜しいから配置等の細かいことは資料を見て覚えて、あとはなにかある?」

 

 この問いかけに誰も手を挙げないのを確認してから塚内にそっちからは何かあるのかと話を振る。

 

「こちらからもこれ以上は特にない、あとは大体が資料に書かれていることだしね。ではこの場は解散とし、今から二十分後には作戦を開始しますので皆さん準備をお願いします!」

 

「あっと、解散前に学生組は悪いんだけど私の所に集まって、少しだけ話があるから」

 

 レイミィに呼ばれ集まる学生組、そして集まってきた彼らを見てから彼女はゆっくりと見渡し、それから口を開いた。

 

「集まってもらって悪いわね。今回の作戦について理解できてないところとかはない?」

 

「資料を読んだ限りじゃ特には、うん、大丈夫」

 

「そうね、ここまで細かく書かれてるから読んだだけで大体は理解できるわ」

 

「僕も大丈夫」

 

「なら良かった、あの場でプロを差し押さえ手を挙げられないと思ったんだけど、杞憂のようだったわね」

 

 慣れない場で緊張もあっただろうにさっきの会議と資料を読むだけで大体は理解できたと言えるのは流石、雄英高校のヒーロー科の生徒だと言うべきだろう。

 

「じゃあそこに付け加える形でって言っても貴方達も理解してるとは思うけど。今回の作戦、赤霧が間違いなく出張ってくる、だから学生組は後方支援に徹して、無茶はしないように。特に緑谷ね」

 

「名指し!?」

 

「嫌でもこの中でそんな無茶しそうなのは確かにデクくんやな」

 

「えぇ、そうね」

 

 女子二人からの容赦ない口撃にグッとなるが事実なので彼も反論出来ずに口を噤むしかない。もっとも、反論した場合はレイミィの無慈悲な追撃が来てたので黙ってたのは正解だろう。

 

 とは言え、コレ以上何か注意をするようなこともない、ないと言うよりも彼らもそこは分かっているので言う必要がないというのが正しいのだが、ともかく、最後にレイミィはこう告げた。

 

「あとは現場判断ってことになるけど、インターン先のプロの命令を絶対にするように。それじゃ、現地でまた会いましょ」

 

「うん、えと、レイミィちゃんも気をつけて」

 

「また怪我をしたなんてことは止めてほしいわ」

 

「壊理ちゃんがすごく気に病むと思うからね……」

 

 そこで壊理を出すのは卑怯だと思うんだけどと思いつつ彼らの気遣いに頷いてからその場を離れたが、すぐに別の人物に呼び出される。

 

 呼び出した人物はグラントリノ、彼はレイミィの顔を見るや、何やら疲れた感じに息を吐き出すのでこれには彼女も呼び出しておいて酷くないと言えば

 

「ヒデェのはそっちだろうが。急に俊典経由で相当昔のことを思い出せとか言う話を持ってきたんだからな」

 

「仕方ないでしょうに、昔のこと、しかもヒーロー関連のことを聞ける人なんて貴方かリカバリーガールしか居ないんだから」

 

「それでもだ、んでエルジェーベト・バートリーのことだったな。あぁ知ってる、あの小娘がまさか本気で事を進めてるとは思っても見なかったがな」

 

「とすると、あいつの計画はやっぱり……」

 

 お前さんの観た記憶の通りだろうよと告げられればレイミィははぁと息を吐き出す。彼女がグラントリノに頼み思い出してもらったのは彼が全盛期で活躍してた頃の赤霧、つまりはエルジェーベト・バートリーについて。

 

 自身が見た記憶が捏造も何もされてないとすればその頃から彼女は活躍してたと思い至り聞いてみれば、今のように当たりだったというわけである。

 

「当時の俺が聞いても荒唐無稽としか思えんかったが、まさかこんな手段で現実にしてこようとするとはな」

 

「永く生きれるからこその手段とも言えるけどね。だとしたら分からないのはどうして死柄木たちと今も協力してるのか、目的とかを考えたらもう利用する必要もないと思うんだけど」

 

「知らねぇよ。そこは直接聞くしかねぇだろうさ、んじゃ俺は行くぜ」

 

「えぇ、ありがとグラントリノ」

 

 去っていく背中を見送ってからレイミィも便利屋と合流、出撃の準備を整え始める。その間にも彼女は赤霧のことを考える、目的は捏造されてないのは分かった、だが今の行動とそれがどうしても結びつかないと。

 

 或いは変わったのか、それとも死柄木達はまだ利用できると思っているのか、答えが出てこない思考をグルグルとしながらレイミィは準備を終え、死穢八斎會の屋敷へと向かう。

 

 もう既に死穢八斎會は彼女たちが想定していた状況とはかけ離れた状況になっているとは知らず、そして知るのは突入間近の火伊那からの言葉だということを。

 

───────何が起きた……!?

 

 死穢八斎會の若頭、治崎廻は己が置かれた状況を理解できずに居た。それでもここまでのことを冷静に思い出し状況を整理するで状況を打破しようとするのは流石だと言うべきかもしれない。

 

 結局、便利屋の行方を八斎衆は見つけることが出来ず、否、奴らは昨夜から彼の前に姿すら表していない。個性破壊弾の量産も勿論止まり、更に治崎の苛立ちを募らせるように今朝方から来たのは最悪な情報だった。

 

「ガサ入れだと?」

 

「は、はい、昨夜から今朝にかけてヤクや個性破壊弾を流してた個人、組織問わず全てにサツのガサ入れが」

 

「全てだと? なんでだ、どうしてバレてやがる」

 

 個人の弱小が馬鹿やらかしたか、そう考えるがそれだけで関与している組織全てにメスが入るはずがない。ともすればこちらの取引が全てバレているということになるがその場合考えられるのは

 

(内通者? いや、それはありないはずだ、まさか……!)

 

 治崎は一つの可能性に行き当たりすぐに指示を飛ばす。それから数分後、戻ってきた組員から報告で確信に至る、曰く組のパソコンに何者かの関与があったかのような痕跡があったと。

 

 なおコレはラブラバがレイミィの指示で態と残した痕跡な上に、彼女らの関与だとは分からないように仕込まれているということを彼らは知る由もないのだがともかく、そこから情報が抜かれたのだと気付くのだが、手遅れだと言う他ないだろう。

 

「若! 警察とヒーローがここに向かってます!!」

 

「(クソ、クソクソクソ!!)八斎衆と赤霧の連中を呼べ、こうなったら計画を早める他ない!」

 

 ここに奴らが来る理由なんて考えるまでもなく、そして白を切る事は既にできない状況、だが治崎にはまだ勝機がある。数は多くないが個性破壊弾とプロヒーローの集団を軽く撚れる赤霧、それらがいればまだこの場を切り抜けられると。

 

 そうして地下に彼らを呼び出したのだが、八斎衆の姿を見て何かがおかしいと治崎は気付く。そうだ、なぜコイツラは今まで付けていたマスクをしてないのだと、だが状況がそれを気にさせることも問い詰めることも許さず、直ぐに状況を話す。

 

「ということだ、奴らを迎え撃つ、ここで連中を潰さればどうであれ死穢八斎會の名前は広がるだろうからな」

 

「なるほど、ことはここまで便利屋の計画通り順調に進んだということか」

 

「あ?」

 

 なぜ便利屋が出てくる、いや、そもそもにしてまるで知っていたかのような言葉に治崎は問い詰めようと一歩動き出すが二歩目が出るよりも先に赤霧は軽く手を動かせば彼は八斎衆に取り押さえられる。

 

 急な事態に思考が追いつかず、そして上記に独白に続く。今彼が分かるのは八斎衆が裏切ったということ、いや、彼らだけじゃない近くにいるはずの組員もその行動に動きを見せないのを見て治崎は気付いた。

 

「どういうつもりだ、テメェら!!!」

 

「そいつの腕は折っておけ、何だったら死なないのであれば落としても構わん」

 

「畏まりました」

 

「なにを、おい、おいやめ、やめろがあああああ!!!????」

 

 メキャという両腕の骨が壊れる音、それから二度と使えないようにするかのように折れた腕を畳まれれば治崎は叫び続けることしか出来ず、それを眺めながら赤霧は口を開く。

 

「済まないが死穢八斎會は私が掌握させてもらった。最も今日限りだがな」

 

「き、ざまぁ!!!!」

 

「組員総員に武装をしてから正門前に集まれと指示しておけ、八斎衆そいつを組長の所に放り込んでやれ」

 

 何もかもを失ったと気付くのに時間は必要無かった。赤霧の言葉一つで淡々と指示に従う彼らを見て治崎は全てが手遅れであり、こいつを引き入れた時点で間違っていたと気付かされた。

 

 彼の中の全てが崩れてゆく、失意が彼を襲い意識が朦朧とし気付けば、一つの部屋に放り込まれていた。そこは自身の親代わりの組長が寝ているはずだった部屋、だが居たのは

 

「よぉ、随分とヒデェ顔になったな治崎」

 

「オヤ、ジ……?」

 

 己の〝個性〟で起きないようにしたはずの組長の姿を見て治崎は呆然とした。それからやっと状況を飲み込めた彼は激痛が走る腕を気にせずに身体を起こして土下座の姿勢で叫ぶ。

 

「ごめん、オヤジ……全部、奪われた、失くしちまった!!!」

 

「赤霧っていう女だろ。してやられたなと言いてぇが、テメェもやり過ぎたんだ。人の道を外れちゃいけねぇってのはこういうことなんだよ」

 

「ごめん、ごめん、うぅあああああ……」

 

 ただただ謝る治崎を前に組長、いや、今日にでも組は無くなるとすれば元組長になるかもしれない彼は閉じられた扉の先を見つめる。自身を起こした赤霧はこう言った、そこから出てこなければ殺しはしないと、その目を見た彼は思った。

 

(あの女、本当に(ヴィラン)なのか? 俺には下手なヒーローよりも未来を考えてる善人にしか見えなかったんだがなぁ)

 

 思案して善人はねぇかと笑う、だとすれば組員を全員捨て駒にするようなことはまずしないのだから。なんてことを思われている赤霧は黒霧と共に正門前に来てみれば、既に銃火器で武装し配置についている死穢八斎會全戦力の姿。

 

「貴様らに告げる指示は一つ、〝無個性〟の意地を見せてやれ、降伏はしてくれるなよ?」

 

「鬼ですね、銃火器があろうとも勝ち目というものはないでしょうに」

 

「だが何人かは食えるかもしれんぞ、なんたって軍の正規品を与えてるんだからな」

 

「それ、魅了で誤魔化したとは言え盗ってきたのは私なんですけどね」

 

 やれやれと黒霧が言うが赤霧が気にすることもなく正門に意識を向ければ、恐らく警察とヒーローが到着したであろう声と気配を感知、【監視】で鳥の視界を覗き来たということを確認してから

 

「開けてやれ、総員、構え」

 

 ゆっくりと開かれる屋敷の正門、これにはその向こうに居た警察達はどういうことだと感じるよりも先にヒーローの一人が叫んだ、向こうは武装していると、それと同時に

 

「撃て!!」

 

 ヤクザが所持してたとは思えない銃火器による弾幕が彼らを襲った。

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