死柄木組逃亡から数分後の死穢八斎會の屋敷。現在は事後処理を警察主導で行っている中、レイミィは待機していた救急車から丁度出てきたところだった。
理由は言うまでもなく腕をオーバーホールで四散させられるわ、腹部を内蔵を損傷や胸を致命傷レベルで貫かれたりされたので診てもらっていたと言うだけなのだが、彼女からしてみれば必要ないというのが本音だったりする。
「んで診てもらった結果が問題なし、と。問題ないのかあれで」
「だから大丈夫だって言ったじゃないの。なのにオールマイトは騒ぐし、グラントリノやホークスも良いから診てもらえの一点張りだし」
「なんかもう本当に出鱈目な身体になっちゃってますねレイミィちゃん」
血染の言葉が全てであり、これには救命員も驚くしかなかった。とは言え、間近でその瞬間を見てしまっている彼らからすれば、どうであれ診てもらえとなるのはレイミィも理解はしているし更に言えば……
「レイミィちゃん! だ、大丈夫そうやね」
「はぁ、良かったわ。聞いたら救急車に向かったって聞いたから心配で」
彼女が診療されたとなれば友人たちが来ないわけもなく、まずお茶子と梅雨が現れ無事そうなレイミィを見て安堵の表情と声を出す。
どうやら作戦中に負傷したということすらも伝わっていないらしく、なら面倒にならないわねとほっと一息つこうとするが世界はそう簡単に彼女を切り抜けさせるつもりは行かなかったらしく、次に現れた鋭児郎と出久の発言で彼女は頭痛を感じることになった。
「滅茶苦茶な負傷したって聞いたけど、とりあえず大丈夫そうだな」
「だね、流石にオールマイトから重傷を負ったって聞かされた時は驚いちゃったけど」
「レイミィちゃん?」
「あ〜、まぁ、少し良いの貰ったわね」
曖昧な態度に対しお茶子は血染と被身子に視線を即座に飛ばした。絶対に少しで済むものじゃありませんでしたよねと言う声無き言葉にレイミィは口元を引くつかせる。
「ねぇ、そんなに信用ならない?」
「そうね、前科があまりに多すぎて。それにレイミィちゃんが少しって言っても私たちからするとまるで違うってこともあり得るから」
「意識の相違がデカすぎるんだよな、バートリーと俺達で」
「うん」
怒涛の賛同の声だがレイミィに反論は許されない。と言うよりも彼女自身も意識の相違と言う部分は分かってきているのでそれを言われると黙るしかないというのが実情ではあるのだが。
そんな風に鋭児郎達のその言葉にそうかな、そうかもとレイミィがなっている姿を見つつ、血染はゆっくりと口を開く、最も彼女をフォローするためではない。
「俺がこいつから聴いた話だと、死柄木の攻撃で右腕が弾け飛び、腹部を複数箇所貫通する負傷、その際に主要なの含めた内蔵の大体も貫通して致命的なダメージを貰ったとか言ってたな」
「レイミィちゃん?」
声に怒気が混ざったのを流石の彼女も感じ取れば冷や汗を流し始める。ここで再生したしとか言おうものならば間違いなくお茶子の〝個性〟で宙に浮かぶ羽目になると。
が、その心配は杞憂で終わる。と言うのもお茶子の怒気がフッと霧散したからであり、だがそれは許したとかもあるだろうが根本にある理由は諦めと呆れである。
「なんかもうあれやな、こうして無事に会話できてるだけでええかなってなってきたわ」
「今のレイミィちゃん、大体の怪我も再生できるって考えると確かにそうなるわね」
「すげーな、女子から匙投げられちまったぞ」
「あはは、でもあれだよバートリーさん、身体は大事にしたほうが良いよ?」
出久は心からそう思ってるし、友人であり恩人であり師匠でもある彼女を心配しての言葉。確かにド正論ではある、毎回のように大怪我をしては周りに心配や心労を掛けているのでその辺りは改善しなくちゃなとはレイミィ自身も自覚している。
しているのだがそれはそれでこれはこれとして、彼にその手の正論を言われたことに吸血姫は内心でキレた。理不尽だと思われても仕方がないが彼女にしてみればそれをお前に言われるのはなんか腹が立ったのだ。
「……なんでかしらね、緑谷にそうやって促されるとムカつくわ」
「え!!??」
「確かに私も大概だとは思ってるけど、迷いなく指を残弾扱いして焦凍と張り合おうとしたアンタも人のことは何一つ言えないわよね?」
「あれ、なんか僕のほうが怒られてないこれ!?」
なんとも酷い八つ当たりだろうか、これには鋭児郎達も苦笑いしか浮かべることが出来ないし彼らからすると出久とレイミィはどっちもどっち、もといどんぐりの背比べとも言えるレベルなのだがと思わずにはいられない。
それを口にしないのは互いに真剣に事に当たっての怪我という部分があるだろう。だが血染と被身子に遠慮というものはないし二人からすると出久の方が断然マシなので彼はスタンロッドで頭を小突いてから。
「みっともない八つ当たりをするな」
「んぐっ、分かってるわよ。でも今後も奴と戦えばこの調子なんだから慣れてほしいとしか言えないわ」
「そりゃまぁそうでしょうね。私たちなんかが向かってもサポートにすらなるかどうか……そう考えるとホークスさん達とか強いなぁってなります」
曲がりながりにも彼らはトップヒーロー、もしあの場にエンデヴァーも来ていればほぼ確実に誰かしらは捕らえることも出来たかもしれない、赤霧側もそれは分かっていたからこそ逃げの一手を直ぐに打ったのだろうが。
「それにしても緑谷達は目立つような怪我は無さそうで何よりだわ」
「え、あぁうん、私らは後方支援だったからね」
「それでも開幕の銃撃は肝が冷えたけど……」
「切島くんが僕達の前に立ってくれなかったら危なかったよ。ありがとう、切島くん」
「気にすんなっての! 俺の〝個性〟はこういう時こそ前に立つべきなものだからな! つっても分倍河原さんのシールドのお陰の方がデカいかもしれないけど」
と鋭児郎が言うが仁のシールド展開も流石にあの奇襲に対しては僅かに間に合っておらずもし鋭児郎が彼らを庇っていなければ少なからず負傷していた。
なのでこの後になるが仁から流石だと称賛を受ける鋭児郎が見られたとかなんとか。という話をしたからだろうか、次に話題に上がったのは死穢八斎會の構成員が所持していた武器に関して、この手の現場は初めての彼らも流石にこれには異常を感じていたらしい。
「向こうが使ってた銃火器、明らかに普通じゃなかったと思ったんだけど、バートリーさんどう思う?」
「よく分かってるじゃない。えぇ、少なくてもあの程度のヤクザ集団が数用意できる代物じゃないのは確かよ」
「やっぱりそうよね。なんだか軍隊とかの武器のように見えたのは気の所為じゃなかったのね」
〝軍〟その単語にレイミィはふむと考え込む。確かに奴らが使ってきたのはその辺りではないと用意できないレベルのもの、だがその場合どうやって入手したのだという疑問が湧いてくる。
まさか死穢八斎會に横流しをしたとは考えられない。この〝個性〟社会になった今でも、いや、今だからこそ銃火器の管理は厳重であり、もし不法な横流しなどを行ったとすれば即座に足が付くくらいには目を光らされているのだ。
けれど相手は構成員全てに所持させるほどに用意させていた。こちらに悟らせることもなく、間に合せではないそれをどうやって? 思考を巡らせ始めたその姿にお茶子は血染と被身子に視線を向ける。
「えっと、今は話しかけない方がいい感じですかね?」
「そうですね、多分レイミィちゃんは今すっごい考えてます。グルグルと、トガにはとてもじゃないけど無理ですよあれ」
「考えてる内容は分かりやすいがな。バートリー、考えるんだったら塚内警部達に会ってこい、向こうも同じ事で話し合ってるはずだ」
「ん? あぁそうね、そうするわ。それじゃ、ちょっと言ってくるわね」
いってらっしゃ~いと言う声を背にレイミィは塚内警部達の下へ向かえば、そこには塚内警部の他にホークス、ミルコ、グラントリノ、オールマイト、火伊那の姿もあった。
はて、仁と圧紘も居ると思ったがと通信機で二人の所在を聞けばまだ事後処理の手伝いを続けていたらしい。なのでならそっちを優先してと伝えてから
「どうも、ちょっといいかしら?」
「やぁお嬢様、話の内容は死穢八斎會の銃火器についてかな?」
「こちらも丁度それを話し合ってたところさ。最も何も分からないが現状だけどね」
「どうにかして盗んだってのが答えなんじゃねぇのか?」
よほど話が進まないことに業を煮やしてるのだろうグラントリノの意見に塚内警部が首を横に振る。だとすれば既に騒ぎになっているはずだと、また火伊那に言わせれば、幾ら黒霧の〝個性〟があるとしても基地等といった場所からバレずに盗み出すというのは不可能に近いと断言すらされればミルコが怪訝な表情を浮かべ
「んじゃ、どうやったってんだ。まさか作ったとか買ったとかじゃねぇだろうしよ」
「それが分からねぇから私らも頭捻ってんだわ」
「騒ぎにならずに数を用意する……赤霧の魅了を利用したと考えるのが一番妥当かしら」
「魅了を使って合意の下、武器を持ち出してもらったってことかい? だとしても数が数だ、何も話題にならないってのは難しいんじゃないかな」
しかも死柄木達が最後の最後に取り出した機関銃とミニバンを爆破した爆弾なんかを考えれば、持ち出したというのは無理がある。
「持ち出したわけじゃないってなれば盗み出した、けれど騒ぎにならない方法って何よ……」
「警察でその辺りも調べてみます。幸い死穢八斎會の銃火器は丸々残っているので調べればどこのものかは直ぐに分かると思いますし」
「だねぇ、警察に任すしかなさそうだ。さて、次に赤霧達についてだね、どうだった?」
唐突に話を振れらレイミィは随分と曖昧な問いかけなんだけどと思いつつ、適当な場所に腰を掛けてからホークスに目を向けて素直に答える。確かに奴はAFOを得て強く放った、だが
「どうだったって、まぁ現状で何とか戦えなくはないかなってのが本音かしら。オールマイトもアーマーが完成すれば問題ないんでしょ?」
「うむ、今回の戦闘データを元に改良すれば問題なく動けるのは間違いないね」
「そういや、聞きたかったんだが嬢ちゃんのあれなんだ? お陰で俺の耳が使いもんにならなくなるかと思ったぞ」
「あ~、それはごめんなさいね、まさかそこまで被害が広がるとは思ってなかったのよ。で、あれは【吸血姫】で取り込んだ〝個性〟を複数個同時に発動しただけよ」
何でもないようにサラッと出された内容だが聴いた当人たちからすれば何いってんだお前となったのは言うまでもないだろう。だが実際に目にしているということもあり、グラントリノもなるほどなとなんとか言葉にしてから
「つまりだ、エルジェーベトあぁ今は赤霧か。あいつもやれる可能性があるってことだな?」
「……そうね、手札を見せてしまった以上、向こうも同じ事をしてくる可能性はあるけど、そこまで心配はしてないのよ」
「なんでだ?」
「奴はまだAFOの完全制御に成功してないからよ」
返ってきた答えにミルコはあぁと納得する。あの時、赤霧と戦ったのはそんなに長い時間ではないがそれでも彼女の目にははっきりと違和感を感じていたらしい。
曰く、〝個性〟の使い方が雑だと感じたと。もしAFOを制御できてるならばもっとやりようがあるはずなのに〝個性〟を使う際は一つ一つ丁寧に取り出して使っているような感じだったと。
「うーむ、ならば向こうも思ったよりは綱渡りだったということかい?」
「かもしれないわね。だからこそ今回逃したのは痛いんだけど……っとちょっとごめんなさい」
彼女のスマホが着信を告げ、レイミィは彼らから離れてスマホの画面を見れば映されていたのは轟燈矢の文字。彼からの電話となると学園側で何かあったのかと思いすぐに通話ボタンを押して
「バートリーよ、何かあったの燈矢」
《あったというか、これからあるというか。あぁ分かったっての婆さん》
「婆さん? リカバリーガールも近くにいるってことは保健室に居るってこと?」
保健室となれば壊理のことだろうかとレイミィは考え、実際にその通りだったのだが彼女が思ったよりも急を要する事態が起ころうとしていた、それは……
《所長さん、すぐに戻ってこれるか? 壊理ちゃんの〝個性〟が暴走した感じに発動しちまったんだ》
「っ! 分かったすぐに戻るわ、イレイザーヘッドは居るのよね」
《居るからこうして話せてるって感じだわ》
そりゃそうよねと思いつつ燈矢にはリカバリーガールと共に範囲外に出るように指示してから通話を切り、通信機で便利屋の面々に学園に戻ることを伝えてから、飛び立つ前にホークスたちにも同じように伝える。
「なんと、ならばすぐに戻ってあげてくれ!」
「一難去ってまた一難ってか」
「相変わらず忙しいな便利屋ってのは」
なんでミルコと火伊那はそんなに呑気なのかしらねと思いつつ、雄英高校へと飛翔を開始。これは彼女が知らないことだがその速度で飛んでいく姿を見てホークスは呟いた。
「……俺、最速の男って称号を破棄していいっすかね」
「自信失ってんじゃねぇぞ若いの」
なんてやり取りがあったとか無かったとか。
え、もう今年終わるってマジ!? 完結のかの字も見えてねぇぞこの小説……