便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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ここからインターバルな日常章です。多分、文化祭とかその辺りまで


第十章【便利屋と日常と文化祭と】
No.178『久し振りの日常』


 少女、壊理の朝は視界に入った天井は何時もの薄暗いものでもなく、物々しい部屋のものでもない見覚えがまるでない天井に頭の中が疑問符で埋め尽くされることから始まった。

 

「?」

 

「ん? あら、起きたのね、おはよう壊理。その様子だとよく眠れたようね」

 

 掛けられた声に反応してベッドから体を起こし、その方向を見れば居たのは椅子に座った状態で壊理を見つめるレイミィの姿。

 

そして、そこでようやく自分が彼女に昨日保護されたということを思い出すことに成功したのか、きょとんとした表情から目を潤ませるというのを見たレイミィはそっと彼女の側に歩み寄り優しく抱擁してあげることに。

 

「あぁ、大丈夫大丈夫、そんなんじゃ今日一日泣きっぱなしになるわよ」

 

「う、うん、ご、ごめんなさい」

 

「謝ることじゃないから平気、とりあえず身支度から始めましょうか。流石に私も今日は授業に出るし」

 

 流石にと言う言葉が出たようにここ最近のレイミィは事情を知らないものから見たら、事あるごとに学校を休み他のことをしている立派な不良生徒であるのは言うまでもなく、彼女自身もそれは理解している。

 

 と言うよりも出なさ過ぎたかもしれないとすら思っていると考えつつ、今はそのことには蓋をし壊理の服を選ぼうと動いた時、自室の扉がノックされた、いや、ノックと同時に開け放たれたというのが正しいかもしれない。

 

 それはともかく、入ってきたのは被身子と火伊那の二人。被身子は入ってきた直ぐに壊理がまだ部屋着であるということを確認すると安堵の表情と息を吐き出す、これにはレイミィは引き攣った笑みを浮かべるしかない。

 

「どういう感情から出てきたため息なのかしら、被身子?」

 

「レイミィちゃんの魔の手が壊理ちゃんを襲う前で良かったっていう感情です」

 

「……」

 

「いや、残当ってやつだから私を見るな」

 

 言うまでもなくレイミィのセンスはお世辞にも良いとは言えない。ここ最近の学生生活のお陰で多少なりと改善されたがそれでも被身子からすれば及第点にすら達していないレベルでしかない。

 

 もしそんな彼女が壊理の私服を担当するなんてことをすればどうなるかなど、火を見るよりも明らかであり被身子としてはそれは断固阻止しなければとこの時間に部屋に乗り込んできたという次第である。

 

 なお、彼女の懸念は大当たりであり仮にここで介入がなかった場合レイミィが取り出す私服はキャラ物であり、つまりはそういう事であり耳郎辺りから被身子に伝わり説教となっていただろう。

 

「はぁ、構わないけどこの娘のサイズに合う服持って……いや、アンタのことだから既に用意してるわよねそりゃ」

 

「勿論! ふふん、実は壊理ちゃんの事をレイミィちゃんから聴いたときからこんなこともあろうか取って感じで購入してあったんですよね」

 

「これはツッコミ待ちってやつか? いや、なんで買ってんだよ怖いんだよ」

 

「そもそも私のクローゼットから出てくるのが怖いんだけど!?」

 

「わぁ……」

 

 さも当たり前のように部屋のクローゼットから出されるよりどりみどりな壊理のサイズにピッタリの私服の数々に火伊那もレイミィもドン引くしかない、レイミィからすればいつそこに入れたんだよとしか感想が出てこない。

 

 因みにこれは被身子が言わないのとこの場の面々がその辺りを疎いので寮にて女子組から指摘があるまで気付かれないことだが、彼女が用意したもの全ての値段はそれなり以上に高かったりする。

 

 具体的に言えば、被身子の財布は極寒寸前になっているというレベルに。そんな事を知らないレイミィ達はよく揃えたわねこれと思いつつ、んでどうするんだと聞けば

 

「どうするも何もこれから壊理ちゃんを着飾るに決まってるないですか。それじゃ、お姉さんに任せて下さい、壊理ちゃん!」

 

「う、うん」

 

「あ~、まぁ安心しなさい。その辺りのセンスはこの娘は確かだから」

 

 そんなやり取りがあった数十分後、寮の共同スペースに現れた壊理の姿を見て女子組は大いに盛り上がった。そこに居たのは昨日までの姿ではなく、上から下まできっちりと年頃なコーディネートをされた壊理。

 

 髪の毛も今回は基本に行きましょうという被身子の言葉でポニーテールに纏められており、その見た目の感想を言うのならばと麗日が感想を真っ先に述べた。

 

「なんか、良い所のお嬢様って感じや!」

 

「バートリーが隣りにいるから尚の事かもね。にしてもよく服がありましたね」

 

「なんか被身子が買い揃えてたのよ。さて、とりあえず座っちゃって朝ごはん食べちゃいましょ、私はその後に事務所でミーティングしなくちゃいけないし」

 

「買い揃えたんだ。いや、でもこのメーカーの服ってどれも高かった気がするんだけど」

 

 刹那、芦戸は被身子の目を見て何かを悟った。まぁ、悟った内容というのが上記の話なだけなので割愛するのだが、ともかく今の流れでレイミィ達もあぁと気付くことになり、それから

 

「……ま、今回の依頼でまた報酬が出るし色はつけておいてあげるわよ」

 

「マジですか!!! えへへ、レイミィちゃん大好きですよー!」

 

「はいはい」

 

 さも当たり前のように抱き着いてくる被身子を上手い具合いなしながら壊理に座るように促し自分も席に座ってから、運ばれてきた朝食を食べ始める。

 

 壊理も彼女の割りと積極的なスキンシップには昨日のうちに慣れたようで特に気にすることもなく、と言うよりも目の前に用意された朝食に目を奪われているのでお決まりの挨拶をしてから食べ始め、その光景を見た峰田は一言。

 

「お嬢様姉妹か、属性がまた増えたなこりゃ」

 

「あぁ、きっと壊理ちゃんはバートリーとは正反対な性格ながら仲が良い美少女に育つってのが容易に想像できるぜ」

 

「君たち……」

 

「バートリーに二人のこと話しておくか」

 

「んな後生な!?」

 

 後日、二人に壊理接近禁止令が発令されたことは置いておこう。なお、この間にも壊理はA組の面々から可愛がられ、あれこれと雑談を交わしていた。が、この辺りは仕方がないことなのだが壊理から話をというのは全く無かったのだがそれでも彼女自身は楽しそうな様子にはレイミィも安堵の表情を浮かべた。

 

 後はどうにか笑い方というものを思い出してくれれば文句無しだろう。とすれば次に考えなくてはならないことが彼女の中には存在する、それは……

 

(壊理の今後よね。こっちで保護したとは言え、ずっとという訳にも行かないし)

 

 ある程度事が落ち着いた後の話、壊理の心身などが回復し落ち着いたその後の彼女自身の身の振り方。レイミィ自身の考えとしてはこのまま便利屋に置いておくつもりは毛頭ない、というのもこの組織、言うまでもなく割りと恨みを買っているからだ。

 

 それもそうだろう、本人たちはグレーで押し通しあれこれと裏で良くないことをしていた個人や組織を潰して回っていたのだから、やられた側としては便利屋のことを当然ながら恨んでいるし隙さえあれば彼女たちを潰そうとも考えている輩だって存在する。

 

 現状においてそれが為されていないのは彼女たちがそれを許すほど甘くないからという単純な理由でしか無い。もっと言えば個々が単純ながら実力もあれば裏から手を回してくる相手との立ち回りを熟知しているというのも大きい理由になる。

 

(けど壊理はそうじゃない。もし彼女が便利屋、と言うか私と繋がりがあるなんてバレた日にはあの娘に危害を加えようと動くバカが大量に出てくるのは考えるまでもないのよね)

 

 便利屋としては壊理を使って自分たちを脅してくるヤツ程度ならば問題ない。けれど壊理自身がまた傷付きかねない事象が起きてしまうというのが問題なのだ、それだけは避けなければならない。

 

 そうとなれば考えられる手段は壊理を別の場所に引き渡すか、或いは信頼できる人物に託すかという選択肢になるだろう。そして、ここ雄英高校ならば直ぐに解決できるとも踏んでいた。

 

(とりあえず、相澤先生辺りに話をしてみるのがベターかしら? あの人なら無碍にはしないでしょうし)

 

「お姉ちゃん?」

 

「っと、どうしたのかしら、壊理?」

 

「食べてないから、どこか具合が悪いの?」

 

 彼女の言う通りレイミィの目の前には食べてるには食べているが周りからすれば遅いと言われても当然の量が残っている朝食の姿。それを見て、どうやら考え込みすぎたらしいと笑いつつ、壊理には大丈夫だと伝え残りを食べ進めることに。

 

 そんなこんながありつつ朝食も終わり、各々が登校準備を始める時間。もっともここは学園内の寮であり準備も大体が前日に終わらせているのでまだ一時間ほどはのんびりしている中、レイミィと壊理の二人は便利屋事務所にてミーティングを行っていた。

 

「ってことで今日は大きい依頼はないから久しぶりに日常的なものを片付けていく方針でお願いするわ」

 

「了解、とりあえず学園外のものと学園内の物の両方を並べておくから目を通しておいてよ」

 

「ういうい、いやぁにしても本当に久し振りだなこの感じは」

 

「全くだ。ふむ……生徒や教師からの個人的な依頼が意外とあるな」

 

「なんだ人生相談とかそういうのの類か?」

 

「いや、教員のは授業の手伝いとかで生徒からのはサポート科は試験運用の手伝い、他は……秘書さん、指 名 依 頼(ストーカー相談)来てるぞ」

 

「うわぁい、雄英って事であるんですねやっぱり」

 

 ドサッと置かれた依頼書とは別に置かれたそれを見て遠い目をする被身子に苦笑する面々だが来ること自体は割と想定されていたことだったりもするのでそれ以上は彼女も何も言わずにその依頼書の束を自身の机に置いて確認を始める。

 

「それで壊理、貴女は今日も保健室でリカバリーガールの授業を受けてちょうだい、燈矢付き添いを頼むわ」

 

「りょ、にしても昨日とはガラッと印象が変わったなぁお嬢ちゃん」

 

「うんうん、こうして見ると髪色とか違うのは確かだけど所長との姉妹って感じがするもんだね」

 

「こいつの妹か、姉のようにならなきゃ良いがな」

 

 依頼書を眺めていた血染からの発言に燈矢が堪えきらなかったとばかりに笑い、仁と圧紘はこりゃ珍しいものを見たという視線を彼に向ける。

 

 そして火伊那と被身子は火の玉ストレートな発言を受けたレイミィを見たのだがそこに居たのは二人の想像通りの口元を引くつかせた我らが所長の姿、そして

 

「それどういう意味かしら?」

 

「どういう意味も何もないだろうし貴様なら分かるだろ。それよりもミーティングはこれで終わりか?」

 

「はぁ、無いわよ。それくらいには暫くは平和でしょうからね」

 

「平和と来たか……いや、この話は後にするか」

 

 赤霧達の動向、その話をしようとも考えた血染だったが壊理が居る手前、良くないかと打ち切る。圧紘達も理解したようで解散という感じに各々が仕事の準備に取り掛かり、レイミィは壊理に渡すものがあると部屋へと向かうことに。

 

 それから数分後、彼女たちは校舎内を歩いていた。目的はまず壊理を保健室へと預けに行くこと、そのため側には燈矢も居るのだがそのせいだろうか生徒たちの視線が自然と集まっていた。

 

「なぁ所長さん、これって俺どういう目で見られてんのかな」

 

「ん? どうって昨日も来たんだから特に思われてないんじゃない?」

 

「その割にはすっげー視線を感じるんだが」

 

 ふむと燈矢の言葉を聞きそれとなく周囲に気を巡らせれば、確かに視線が集まっているなとも感じるレイミィ。だが不審者がというものではなく、興味津々と言う感じのそれに理由を考えてから

 

「あれじゃない、私と壊理が一緒だからとかそういうのじゃない? 別にそういう関係ないけど周りから見たら分からないものでしょ?」

 

「なるほどねぇ、だとしたらこの誤解を解かないと俺が年下好きだなんだって思われそうなんだが」

 

「?」

 

 マジで困るんだけどそれはという感じの声の燈矢だが、実際は彼の懸念した内容ではなかったりする。確かにそれも一部はあるかもしれないがそもそもレイミィが便利屋の所長であり燈矢の所員だということは知れ渡っているので関係云々の誤解は存在しない。

 

 では生徒たちの視線は誰に向けられているのか、二人でなかれば残るは一人だけ、そう壊理である。だが壊理も昨日来ており根津校長を通して学園内では知らされているので物珍しいということはない。

 

「……しれっとウチらが居ないことになってないかとかはまぁ良いんよ、うん」

 

「急にどうしたのよ耳郎」

 

 ここで着いてきていたA組の女子組の一人耳郎が口を開く、内容は視線の件について。彼女たちには視線の理由はすぐに分かった、と言うかなんでレイミィと壊理は別として燈矢さんが気付かないんだろうかと思っていたりするがともかく、この視線の原因は壊理の背中にある。

 

 そこには今日、彼女が使うであろう勉強道具一式が詰められているリュックサックがある。あるのだがこれを用意したのはレイミィであり、つまりはそういう事なのだ。

 

「ねぇ、それって本当にどんだけグッズあるの?」

 

「これ? あぁこれはこんなのあったら良いわよねって例のデザイナーに伝えたら完成品を送ってきてくれたのよ」

 

「繋がっちゃったんだぁ……」

 

「可愛いよこれ?」

 

 例の鳥が象られたリュックサックに笑顔の壊理、周りの生徒の視線は不思議なものを見るような目だった。こうして彼女たちの、そしてレイミィの久し振りとも言える日常が幕を開けたのだった。




お知らせ 来週の更新はあるかどうか微妙なラインになります。ちょっと私用で、えぇすみません(コードヴェイン2)

便利屋メモ
例の鳥リュックサック
ブルアカでヒフミが持ってるそれ。これもう名前伏せる意味ないだろうとかちょっと作者は思い始めてる。
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