便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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No.179『便利屋所長の穏やかな一幕』

 雄英高校、A組教室。何ら変わらない雰囲気の授業が行われているそこでレイミィは思ったよりもここを離れてたんだなと思っていたりした。

 

 日数にしてみれば一週間以上というのも手伝っているだろう。単刀直入で言えば久し振り過ぎて、軽く感動しているという話でしか無いのだが。

 

「お、今日は不良バットガール居るじゃねぇか! 居なかった分容赦なく指していくから覚悟しておけよ!」

 

「あら、なら楽しみにしておくわ山田先生」

 

「プレゼント・マイクって呼んで!!」

 

 なお、この後は宣言通りバンバンと指名されるもののその全てをあっさりと答えていくことになるのだが、その姿を見て昼休みになったと同時に芦戸がうぐぅという声と同時にこんな事を呟く。

 

「レミィ、暫く居なかったのに普通に授業に追いついてるのズルい」

 

「ズルいってアンタ……高校レベルの授業なんて私が苦戦する理由はないわよ」

 

「まぁ便利屋の所長やってるってんならそらそうだわなって。つかバートリーって現状でどのレベルまで行けたりするん?」

 

「どのレベルってそうね、それなりの大学レベルの奴だったらさほど苦戦しないってところかしら」

 

 これには聞いた瀬呂もやっぱスゲーなと感心するしか無い。とは言え、そんな彼女も万能というわけでもなくガチガチに勉強している人間とかには普通に負けるし、割りとしょうもないケアレスミスなんかもすることは多々ある。

 

 何気ない雑談をそんな感じにしつつ食堂に向かおうかというタイミングで教室の扉が軽く叩かれ、一番近かった尾白が見ればそこに居たのは見慣れない青年の姿、いや、正確に言えば見たことあるのだが記憶と一致しないという方が正しいかもしれない。

 

「よ、所長さん」

 

「ん? って燈矢じゃない、どうしたのよ」

 

「兄さん?」

 

「燈矢……? あ、もしかして林間学校の時に居た焦凍のお兄さんか」

 

 彼が気付かなかったのは無理もないだろう。あの時の姿と今では治療が進んで事によってまるで違うのだから、なのでそのような反応をされても燈矢は怒るわけもなく、寧ろそこまで見た目変わったんだなぁと呑気な感想を抱く程度である。

 

 さて、そんな彼が此処に来た理由はと言えば足元の少女もとい壊理が関係している。最も深刻な相談とかの類ではない、事はもっと単純にこの時間が昼食だということを考えれば誰だってすぐに気づくだろう話。

 

「お嬢ちゃんが所長さんとお昼を食べたいってね」

 

「だめ、かな?」

 

「別に構わないわよ。でもあれなのよね、これから食堂に行くんだけど……」

 

 人が多いのよねあそこというのがレイミィの心配事。この時間帯の食堂に行けば間違いなく視線を集めることになる、ともすれば人と接する事にまだ慣れていない壊理に負担がかかるかもしれない。

 

 だが食堂に行かなければ自分のお昼はない、別に食べなくても問題ないが抜いたとなれば間違いなく被身子辺りに五月蝿く言われるのでそれは避けたい、と考えてから。

 

「壊理、食堂に行くことになるけど大丈夫?」

 

「うん、お姉ちゃんとなら」

 

「リカバリーガールの婆さんが言ってたんだがある程度は慣れさせた方が良いってさ。だから連れてきたんだし」

 

「それに私たちも居るからヘーキだよ、レミィ!」

 

 リハビリと言う観点で言われればレイミィもそれもそうかと頷き、それはそれとしてと彼女は燈矢と焦凍を見つつ

 

「貴方達二人で食べに行ったらどう? 兄弟でってのは無かったんでしょうし」

 

「……いいのか?」

 

「え、あぁまぁ焦凍が良いってんなら」

 

 彼女なりの気遣いで提案してみれば燈矢の方は遠慮する感じに焦凍を見れば、彼は兄のその言葉にそうかと頷きそれから

 

「俺は兄さんとが良い、ここの蕎麦が美味いから食べてほしいし」

 

「……蕎麦、好きなんだ」

 

「あぁ」

 

「俺もだ。んじゃ、俺達は先に行ってるぜ、所長さん」

 

 どうやら互いに歩み寄ろうという結論に至ったらしい二人は食堂へと歩き出すのを見送ったが冷静に考えてみればとレイミィは気付く、目的地一緒なんだから別れる意味無かったのでは? と。

 

 考えてからでもまぁ良いかと無かったことにして、彼女たちも食堂へと向かったのだがそこで彼女たちを出迎えたのは……

 

「話は聞かせてもらったからね、既に席は確保しておいたよレイミィ!」

 

「お久しぶりです、バートリーさん」

 

 いつの間にか行動に移していたのだろう葉隠と恐らくは食堂で事情を聞いて協力したのだろう塩崎茨の姿がそこにあり、人数分の席を確保していた。

 

 因みに轟兄弟は別の席にて既に蕎麦を食べ始めている。その表情から分かるのは燈矢の舌を満足させているであろう蕎麦の味だろうか、まぁそこは置いておきレイミィ達は用意された席にまずは壊理を座らせ自分たちは注文をしに行くことに。

 

 道中、レイミィは妙に視線を感じるなと思いつつも久し振りと思えるランチラッシュの鰯定食を受け取った際に視線の謎が解明された、曰く。

 

「君のオムライスを気に入ったって生徒が多くてね。今日は違うのかっていう意味じゃないかな」

 

「……はぁ、明日、明日にして頂戴。根津校長に伝えておいて」

 

「お、それは良いことを聞いた。では伝えておくよ」

 

「受けてよかったの、レミィ」

 

「今軽く後悔してるから安心してちょうだい」

 

 だがあの場で、この空気の中で断るということも出来ずまた臨時報酬として考えてみれば割に合わないというわけでもないので彼女は頷いた。

 

 頷いたのを見た一部の生徒がガッツポーズをして友人たちに知らせに言ったようにも見えてレイミィは少し遠い目をしたが自分の決断であり撤回も出来ないのでため息に変換することにした。

 

「え、明日はお姉ちゃんのオムライスがお昼に食べれるの?」

 

「そういう事になったわ。と言うかそこまで話題になってたのあれ」

 

「前回の時に私もいただきましたが、とても美味しかったです。そうですか、明日また食べれるのですね」

 

 どうやら明日も相当忙しくなるらしいということを感じながら各々昼食を食べようかということになるのだがその中で注目を浴びたのは壊理がカバンから取り出した弁当箱。

 

 これは流石に学食では壊理には多すぎるだろうということで便利屋で用意して持たせたものであり、見た目は一般的な弁当箱に中身も如何にもなラインナップの数々、しかも驚くことにこれには冷凍食品が使われていないんだとか。

 

 傍から見れば昨日の残りを詰めたと思わせながら、見る人が見ればその手の込みように感嘆の声を漏らすであろう弁当。誰が作ったのか、先ずいの一番に出てくる人物は彼女しかいないだろう。

 

「これ作ったのって渡我さん?」

 

「残念違うわ、それにあの娘だったらキャラ弁よ」

 

「あ~、言われると確かにそうかも。壊理ちゃんのを作るってなったら張り切るもんね絶対」

 

 納得するがでは誰がと言う疑問が全員の脳内を埋め尽くす。被身子ではないとすれば後は誰か? あと考えられるとすれば圧紘か仁だろうかとなる面々、火伊那は本人が料理は得意ではないと良い燈矢も今までが今までだったので同じ。

 

 なお、バートリーには聞いていないが鰯系列のおかずがない時点で彼らの中では選択肢から除外されている。彼女が知れば納得しつつも失礼だなコイツラと思うこと間違いなしである。

 

 そんな話は置いておき、誰も彼もが壊理の弁当を作ったのは誰だとなっている中、答えは当の本人から普通に出されることとなる。

 

「えっとね、これは赤黒さんが作ってくれたよ」

 

「そ、血染手製の弁当ってこと。どうかしら、壊理?」

 

「すっごく美味しい!」

 

「それは何より、帰ったら彼に伝えてあげなさい、また作ってくれるだろうから」

 

「うん!」

 

「あ、へぇ赤黒さんが」

 

 答えが出てしまえば自然と納得もできてしまうというもの。確かにあの人も料理ができないというわけでもないということを忘れていたとも言う、あぁ何だ簡単な問題だったじゃんと場がなってから葉隠が呟くように、そして驚いた表情で

 

「いや待って、赤黒さんが?」

 

「えぇ、血染が」

 

「……え?」

 

「どうしよう、思ったよりも想像が難しい」

 

 抜き身の刃そのものと言った雰囲気を醸し出している彼が家庭的な弁当を作っている姿、実物がそこにある以上はその光景が広がっていたのは間違いないはずだと言うのに出久達の脳内に不思議なことに浮かばない。

 

 彼らの反応からレイミィもそれはそうだと笑ってから、ふと血染が弁当を作るに至った理由を話すことにした。とは言え、そんなに特別な話がというわけではない、事はとっても単純な話、当時はまだレイミィと血染の二人だけだった頃のこと。

 

「あの頃は便利屋も無名も無名だったから文字通り1日中、依頼に飛び回っててね。深夜でも外で活動してるのをアイツが見かねたのか、作ってくれたのよ」

 

 曰く『やるなとは言わん、だが飯ぐらいはきちんと食っておけ。倒れられても医者に見てもらう金はねぇんだからな』なんてことを言いながら押し付けてきたらしい。

 

 因みに最初の頃は冷凍食品だったり、ただのおにぎりだったが段々とグレードが上がっていき今の壊理に渡しているようなものになったとか。ともかく、その話を聞いた麗日はただ一言。

 

「お父さんやん」

 

「思った以上に保護者だな……でも確かバートリーが小さい頃からの付き合いだってんならそうなるか」

 

「アイツは否定するけどねって珍しいわね、リンゴをうさぎにしておくなんて」

 

 弁当箱とは別の容器に詰められたリンゴはレイミィが言うようにウサギ切りされており、それを見た壊理が嬉しそうに彼女に見せるが出久達から見たリンゴは非常に綺麗に切りそろえられており一切のミスも見受けられないほどである。

 

 最早慣れた作業だと聞かずとも声が聴こえるほどに、同時にあの人がこれ切ったんだよなとなれば

 

「ギャップ強すぎる。これが渡我さんとか追さんとかならそこまで驚かないんだけど」

 

「分倍河原さんでも多分、驚かねぇんだけど。どういうわけか赤黒さんだけは別って気がしちまうんだよな」

 

「クックク……! 散々な言われようねアイツ」

 

 思わず笑ってしまうレイミィだが血染は便利屋内で一番家庭的料理が得意だったりすることを知っている。言わないのはこのまま勘違いさせたままでも良いかと言う思惑があるというのは秘密である。

 

 一方その頃、噂の副所長こと血染は相澤ととある話し合いをしている最中、一旦一息つこうということになったと同時にクシャミをしそれを見た相澤が

 

「大丈夫ですか?」

 

「ふぅ、あぁ風邪とかではないから問題ない。大方、バートリーが人の噂でもしているというところだろう」

 

「そうですか。あぁそうだ、バートリーの件で一つ」

 

「む? 何かまた?」

 

 またという言葉が真っ先に出てくる辺り前科が多いんだろうなと思いつつ、何かを起こしたとかではないと前置き。では何かとなれば、彼女がそれなりの期間を休んでいたが故の問題だった、つまり

 

「このままだと進級の出席日数がギリギリですね。今後はあまり休まない方針にしてもらったほうが」

 

「……申し訳ない、こちらも気付かなかった。バートリーには今日中には伝えておく」

 

「お願いします。まぁこちらもそちらの事情も分かっていますのでなんとか調整もしますから安心して下さい」

 

 高校だからこそ出てきた問題に血染はやらかしたと思わざるを得なかった。中学などは勝手に進級していくものだからそのあたりのことはすっかり頭からスッポ抜けていたとも言えるのだが。

 

 最も全く足りないだとかそういうことではなく、現状のペースで休まれると足りなくなるという話なのは救いがある。そう思えば雄英側も彼女に依頼をしているという背景があるので配慮しているということなのだろう。

 

 因みに二人が話し合っていた〝とあること〟と言うのは雄英高校の一つのイベントが関係しており便利屋として相談されていたというものである、その内容は

 

「雄英文化祭で便利屋も出し物、ね」

 

「向こうも無理にとは言ってなかったがまぁ敷地内に事務所を構えさせてもらっている手前、断るにもどうかと思ってな」

 

 雄英文化祭、10月に行われる雄英高校の目玉行事の一つ。そこで便利屋も出し物をどうだろうかという話が根津校長から出され、そしてさっきの場面で話し合っていたということらしい。

 

「でも何やるんです? その日はレイミィちゃんもヒーロー科として動くでしょうし」

 

「……文化祭ってことは外からも人が来るんだろ? 依頼でも受けてみるってのはどうだ」

 

「出張の占い屋敷みたいだなそれ」

 

「てかそれ件数は少ないが普段と変わらないだろ」

 

「それならお祭りの依頼を受けた時みたいに素直に出店を構えるのが無難かもね」

 

「お祭り、私も楽しめるかな?」

 

 こうして彼らは日常的な悩みが生まれることとなる。最後にだが壊理がお弁当の感想を伝えつつ空っぽになったそれを渡された際に血染はレイミィを見てはぁとため息を吐き出した際にやり取りを記しておこう。

 

「何かしら今のは?」

 

「昔のお前もこれくらいの可愛げがあったなと思っただけだ」

 

「何時の頃の話をしてるのよそれ……」

 

 お父さんじゃんと誰もが思いつつも言葉にしなかったのは言うまでもないだろう。




 コードヴェインやってて先週は書けませんでした(素直)

 あと、今後はもしかすると文字数を減らしつつで更新日数増やせるようにするかもしれませんが、まぁあまり期待しないで置いて下さい。
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