砂藤が砂糖になってたのに昨日の誤字報告で気付きました。ありがとうございます、多分ですが変換して気付いてなかった感じなので今後も確認が抜ける可能性ありますねこれ……
「え、反省会?」
初日のヒーロー基礎学も終わり、二日目の学生生活も終わりを迎えた放課後。荷物も纏め終えて後は帰るだけというタイミング。そこで切島から掛けられた言葉が上記のレイミィのセリフになる。
見ればどうやら何人か、彼女が見える範囲では麗日、切島、砂藤、梅雨、芦戸、飯田、上鳴、常闇も反省会に参加するらしく残っている。他は予定があるなどで既に帰っているのか居ないがそこは別によく、彼女としてはと切島を見つめる。
見つめられた方は、彼女のかなり真剣で、何処か驚いているという感じの表情と視線にたじろぐ。
「え、えっと、どうした?」
「いえ、ただ貴方から誘いの言葉が出るなんて驚いたってだけ」
「……? なんでだ?」
その言葉に本気でわからないという声を上げる切島、このことから別に誰かに自分を誘っておこうと言われたわけでもなく彼自身がレイミィを誘ったことが分かり、だからこそこう告げる。
だって、ヒーロー基礎学の時の件であまり自分にいい印象を持ってないでしょ? と。それを指摘すると切島はあ~と頭を掻いてから、悪くないと言えば嘘になるけどよと切り出す。
「轟がよ、バートリーが訓練に出てる時に言ってたんだ。『あいつは意味もなくあんな事言うやつじゃない』って、必要な時に、必要な立場として言葉を選ぶって」
「あの子は、余計なお世話を……」
彼なりのフォローだったのだろう。それのお陰でクラスメイトからの印象がさほど悪くはならずに済んでいるのだからレイミィとしてもそれ以上の苦言は漏らさなかったが、それはそれとして小恥ずかしいので顔が赤くなる。
「ちょっとしたお節介よあれは。あのまま折れられても困るし、だから発破をかけたって話なんだけどってなんで頭下げてんのよ」
言い訳とも取れる筈のそれを聞くや否や、ガバッと勢い良く頭を下げた切島に本気で困惑する。しながらも直ぐに彼の行動の意味に辿り着き、真面目すぎると思いつつ
「頭を上げなさい。そんなに安くないでしょ?」
「いや、俺の勘違いでオメェを責めちまったんだ。ケジメは付けねぇと気がすまねぇ!」
「勘違いって、貴方は間違ってないわ。彼の態度が気に食わなかったから勝手に発破を掛けるために厭味ったらしく言ったのは確かだし」
自分勝手なのよ基本的に私はと吐き捨てるかのごとく言い切り、だから頭を下げる必要なんて何処にもないと続ける。けれどその発言が嘘だと、梅雨が反論を始める、もし本当に貴女が自分勝手だというのならば今日の授業の講評の度に全員に対して的確なアドバイスをしたりはしないと。
「そうそう、俺も言われてハッてなったわ。確かに放つ電気に指向性を持たせる装備とかあったら便利だって!」
「指摘され俺も気付いた。黒影が頼りになるが故に、寄り掛かりっぱなしだということに。己も鍛えなければならないと」
「ベツニモットタヨッテモイインダゼ?」
彼らの言うように別に興味が沸かなかったとは内心では言いつつも、実際はあれこれと指摘とアドバイスを送っている。特に上記の上鳴と常闇は思うところが強く合ったようで既に行動に移してると聞けば、むむっとなるのがレイミィ。
確かに出来そうだからアドバイスはしたがそれも、指摘できたのにしないで知らぬ間に怪我をされたら嫌だなという感情からだと、それ以上のことはないのだがと答えるが
「それでもよ。そうやってきちんと考え、指摘できる人が自分勝手とは言えないわ。それに貴女が言うような人間だったら便利屋の人達もついて来なかったでしょ?」
レイミィから一切視線を逸らさずに、スパッと言い切る梅雨に彼女の目が泳ぐ。別に意地を張ってるとかではない、ないのだから認めてしまえばいいのに、どうにも素直に頷けない。
が、コレ以上の反論も無いのも事実。コレを否定してしまえば、それは便利屋の面々を、家族だと思ってる彼らを否定することになる、だから両手を上げて観念しましたという表情のまま
「降参よ。全く、皆して人をそんなに持ち上げて何が目的なのかしら?」
「そういうのじゃないわ。ただ、自分を必要以上に卑下しようとしてる貴女を見過ごせなかっただけよ」
「そーそー! それにレミィちゃんが良い子なのは既に分かってたことだしね~」
うーん、良い子たちの集まりと今日だけで何度思ったか分からない感想を抱きながら、彼女は鞄を手に持ち、本当に申し訳ないのだけれどと切り出す。
「悪いけど、貴方達の反省会には出れないわ」
「そりゃ、残念だが。何かあるのか?」
見ればどことなく急いでる感じに砂藤が聞いてみれば返ってきた答えに全員が納得する。と言うよりも彼女が属してる場所を考えれば、確かに放課後に残れる余裕なんて無いわけでと思うしかない、それは
「事務所に戻って、私じゃないと処理できない書類を片付けなくちゃいけないのよ」
「……あ! そうか、レミちゃんは便利屋の所長さんだった!」
「冷静に考えると、学生しながら所長もっていう、何だっけ二足わらじだっけ? とにかくトンでもなくヤバいよな、良い意味で」
「そう言えば轟から聞いてたな。なら、わりぃな引き止めちまって!」
しれっと焦凍からの情報漏洩に軽く口角が引き攣りそうになるのを無理やり抑え込んでから、そういうことだからと全員に挨拶をしてから教室を出る。こうしてみると結構、大変な生活してるんだなぁと麗日が感想を抱いているとふと、何かを悩む姿の梅雨が目に入る。
なので、どうしたのかと聞いてみれば、確証はないのだけれどと彼女は答えた。
「レイミィちゃん、なんだか私達とは距離を置いてるような気がするのよ」
「気の所為ではないか? というのは簡単か。何故そう思ったんだい?」
「今さっきも普通に会話はしたわ。それに昨日だって変わらない、けれどこう、本当に薄い壁みたいなものを感じるの。決して超えさせない一線、みたいなものね」
あまりハッキリとしない彼女の言葉だが、それを切り捨てるような者達はここには居ない。言われ、各々が彼女との会話を思い出してみる、昨日の今日であまり多くはなかったが、話しかければ楽しげに会話し、とそこで麗日がああそうだと今日のことを思い出す。
「そう言えば、昼食の時に中学の頃とかは同級生と食事しながらの会話をしたこと無いって言ってたよね、飯田くん」
「あぁ、確かに聞いた。そう言えば……」
連鎖するように思い出したのは昨日の話。初めて教室で出会ってから天哉、八百万、焦凍と会話してた時に、彼自身が便利屋をやってる理由を聞いた際に返ってきた答え、あの時彼女は確か
「『私が灰色の住人だから』、これがもしや答えになるのではないか?」
「灰色って、どういうことだ?」
「……白にも黒にも属さない者。ともすれば、バートリーは黒になるつもりはないが白にも戻れない、故に灰色の住人と名乗った」
急にスイッチが入ったかのように語りだす常闇にどうした急にと言いそうになる上鳴。だが相手も真剣だし、周りも真面目な雰囲気で話を聞いているのを察し、黙っていることに。
「ともすれば、距離を置いてるというのは我々を『白』と定義し、灰色である自分のせいで我らが汚れないようにするための処置?」
「ちょ、ちょっと待って! つまり?」
「白、ヒーロー、灰色、便利屋と考えたらもっと分かり易いんじゃないかしら。何れはヒーローになる私達が便利屋という存在と仲が良いなんてなったら、将来的に私達が不利になったりするのを防ぐため、とか」
「なんやそれ! それこそ自分勝手な思考ってやつやん!! そんな事でとやかく言われても私は気にせぇへんのに!」
ガタッ! と椅子から勢いよく立ち上がり抗議の声を上げる麗日に同意するように頷く面々。気遣いとなれば、それこそ要らないお世話とも言えるし、そんな理由で彼女が自分達と友人になれないなんて思っているのならば、その考えをぶっ壊すところから始めないといけないと気合が入る。
「何だよあいつ、自分勝手だとか言っておきながら、メチャクチャ俺達のこと考えてるじゃねぇか。なのに、俺……あああもう!」
「あれはしゃーないって切島。結構えげつない感だったし、そりゃ爆豪のやつもやりすぎだとは思ったけど、だからといってあそこまで言っていい理由にはならねぇし」
思えば、あの場面でのレイミィは結構、イライラしてたようにも見えるのでそこが彼女的には自分勝手な事をしたという感じなのだろう。と、そこで天哉が律儀に手を上げて、それから彼らに問う、彼女の壁と考えを壊すのはいいのだが実際問題どうやるのかと。
「バートリーくんの様子を見るに、あまり急に態度を変えて、積極的に言ったら逆に警戒させないだろうか?」
「うーん、それは大丈夫じゃないかな。ほら、今日だって食堂に私達が行くのかって聞いてから自分もついて行っていいかっていうくらいだし」
「確かにそうだった、壁を作りたいと言う割には彼女からだったな」
もしかして、表面的には一線を引いてるつもりでも内心ではそうは思ってない? あの行動からもしやという疑惑が浮かび、だったら普通にやりようがあるんじゃないかと考えが纏まり始める。
「じゃあ、今後もレミィちゃんを何かと誘えばいいって感じだね!」
「放課後も誘えれば一番なんだがなぁ。なぁ、上鳴、どうにかなんねぇかな」
「いや無理だろ、つかなんで俺に聞いたんだよ!?」
いや、なんとなくと切島が答えれば自然と笑いに包まれる教室。けれど、放課後どうにかならないかということに閃きを得た梅雨が、可能性だけどとある案を出してみる。
「前もって言っていけば、レイミィちゃんって予定を開けたりしないかしら」
「出来るのか? 結構忙しい感じがしたが」
「便利屋の仕事ってのがどのくらい忙しいか分からないからなぁ。多分、ヒーロー事務所とはまた違うだろうし、いや、ヒーロー事務所の方もまだよく知らないけど」
「でもやらないよりはマシじゃないかな。今度聞いてみるよ!」
こうして、本来の今日の屋内対人戦闘訓練の反省会は何処へやら、レイミィ・バートリーの心の壁ぶっ壊そうぜ会議に移行してしまったがコレが後に彼女の壁を取っ払い、持っている深く暗い闇に触れることになるとはこの時の彼女たちは知る由もなかった。
ただしっかりと彼女と向かい合いたい、純粋で真っ直ぐな心がレイミィには眩しすぎるということを彼女たちは知らない。と、教室でそんな事になってるとはこちらも知らないレイミィ・バートリーはというと、そのまま帰宅……ではなく
「まさか、No.1ヒーローからお声がかかるなんてね」
「すまない、君も忙しいのは理解しているがどうしても話しておきたくてね」
帰宅の途中、正面玄関まで来た所でオールマイトに話があるんだと声を掛けられて『生徒』としては非常に嫌な表情をしつつも、彼が纏う雰囲気に生徒としての自分に話があるわけじゃないなと判断。直ぐに『仕事』としてのレイミィ・バートリーの仮面を付けて、誘われるがまま密談室へと足を踏み入れた。
そして今はテーブル1つ挟んでソファに互いに座り、話をしようかという場面で彼女から切り出したところだ。
「で、明らかに生徒としての私に用があるわけじゃなさそうだけど」
「あぁ、便利屋の君に話しておきたいことがあり声を掛けた。勿論、校長にも許可は取ってあるから安心して欲しい」
ふむ、と思考を巡らす。オールマイトから態々密談室を使うほどの話、となると自然と浮かび上がる選択肢は限られてくる。彼が秘密にし、他人に聞かれたくない事案、そして自分に話しても良い内容、となるとこれかと当たりをつけてから
「緑谷出久の事かしら? 貴方のお弟子さんなんでしょ?」
「っ!? ど、どうしてそれを!?」
「どうしてって、オールマイト、私の個性で出来ること知ってるでしょ?」
若干呆れ気味に彼に言えば、オールマイトは少し待っててくれと思い出すように目を閉じる。その間も画風が違うと題されるあの筋骨隆々な姿なのだが、彼女には何処か無理をしてるように見えてしまい、うーんと彼女も暇なので悩み始める。
(……これ、指摘した方がいいのかしら)
いやでもなぁと踏みとどまる。もしこれが物凄く面倒ごとの発展するとなるとそれはそれで彼との関わりが増えるので嫌だなぁと、一応仕事モードの時に個人の嫌悪で相手を選ぶとか態度を悪くするなどはしないが自身のモチベーションにはそれなりに関わってくるので、出来れば必要以上に関わりたくないというのが本音。
けれど、現実は何時だって彼女に全く優しくない。ここでやっと思い出したようで彼から出てきた言葉は
「あ……」
「『あ……』? もしかしてなくても忘れてたわけ!?」
「い、いやそうではない、そうではないが。そうか、君は他者の記憶が読み取れてしまうんだったな……いや、待ってくれ、この事は誰の記憶から知ってたんだい?」
「誰って、入試の時に緑谷からよ。正確には入試までの一週間の記憶を……ん? どうしたのよ」
入試までの一週間分の記憶。それを話したところオールマイトの顔が面白いことになった。何かマズイ記憶がその中に含まれてたっけと考え見たものを想起していき、あっ、と今度は彼女がその声を漏らす番になった。
そう言えば、出久視点の修行場面に見知らぬ骨みたいな男性が居たなと。個性を譲渡したという事実が衝撃的すぎて忘れていたが、彼はその男性を何て呼んでたっけから、彼女は急に立ち上がり指を目の前のNo.1ヒーローを指しながら心から叫んでしまった。
「あのガリガリな男性ってオールマイト、貴方自身!!!???」
「驚くのそっちなのかいバートリー少女!!!!???」
彼女的には国家機密レベルのことを気付かぬ内に知ってしまっていたかもしれないという事実にレイミィは白目を剥いて絶句することになった。
let's go!(例のBGM)(今作品二度目)(密談室と言えど叫ぶな)
便利屋メモ
被見子曰く、レイミィはチョロい部類。押せ押せでいけば常識的な範疇であれば頷いてくれる。