便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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No.180『便利屋、所員達の一幕』

 便利屋チェイテ、夏休み明けと同時に雄英高校の敷地内に事務所を構え生徒教師問わず依頼を受けるという触れ込みの集団。明けた数日間は利用者は教師程度だったが流石に一週間と少しも経てば人もなれるというものであり

 

「よいしょっと、これは此処で良かったんだよね?」

 

「あ、はい。ありがとうございます、こんな雑用みたいなことを頼ってしまってすみません」

 

「いいよいいよ、それがおじさんたちの仕事だからね」

 

 現在では生徒側も困ったことがあれば頼る程度には馴染んでいる状態になっている。便利屋としても将来的な顧客に繋がるかもというのもあれば、生徒の方も教員とは言えプロヒーローには頼みづらい事を頼めるという点で助かっているとかなんとか。

 

 今こうして生徒からの依頼を済ませた圧紘としても現状の受け入れられ具合は悪くないと思っている。いるのだがそれとは別に問題も発生していた、しかも解決策はあるのに実行が難しい或いは現在は不可能と言うタイプの問題が。

 

(学園外からの依頼数がいよいよマズイことになってるんだよねぇ)

 

 事務所を一時的に学園内に移転してからも発生していたこれだが此処一週間でいよいよ危険水域にまで達していた。理由もまた以前に彼らが話していたように電話ではなく事務所に直接依頼しに来るということが出来ないからというのも分かっている。

 

 なので解決策も分かっているが現状はまだ今の事務所から元の事務所に移動するのは無理、故に圧紘も同仕様もないとは思いつつも

 

(うーん、これお客さんが離れたりしないよね?)

 

 あり得なくない展開に考えつけば圧紘としても苦い表情を浮かべたくなる。仮にそうなれば遠のいた客足をまた戻すのに果たしてどれくらい掛かるか、戻ってくれるのか、最もそれを所長たるレイミィが考えていないわけではないとも圧紘は考える。

 

 彼女ならば既に根回しをし対策済みかもしれない。ともすれば今日にでも一旦聞いてみてそこから改めて考えるでいいのかもしれないと結論づけた所で一人の普通科の女子高生が自販機で買ったであろう飲み物を手に近付いてきた。

 

「あ、あの、これ良かったらどうぞ。お礼です」

 

「ん? あぁ別に気にしなくてもいいんだけどな」

 

「い、いえいえ、その此処最近はいつも手伝ってもらってますし」

 

 ここ最近という言葉の通り便利屋は学園外からの依頼は減ったが比例するように学園内での手伝いという依頼は増えている。内容としては大体がヒーロー科以外のもの、この辺りはそもそもヒーロー科の生徒たちが自力でどうにかできてしまったり、レイミィが居るから彼女が処理しているからが理由になる。

 

 やはり教員ではあるがプロヒーローでもある彼らには頼りづらいという物があるらしく、便利屋という気兼ね無く頼れる存在はありがたいらしい。

 

「あっ! 抜け駆けは駄目だって言ったじゃん!」

 

「ぬ、抜け駆けとか言いがかり止めてよ! お礼をしてただけだし!」

 

 ワイワイと騒がしくなった己の間の前を見て圧紘は苦笑しつつ、受け取った飲料水を飲めば乾いていた喉が潤っていく感覚に彼はふとこんなこと思った。

 

 そう言えばここ数日間は忙しくしてたなと、そしてこんなのんびりとした感覚で仕事をするのも久し振りだったなとなんて感じたからだろう圧紘の口からはこんな言葉が漏れ出てた。

 

「いやぁ、平和だねぇ」

 

 騒がしくもそれは事件ではなく日常の騒がしさ。それが今は何とも貴重で大切なものだろうかと彼自身もお年寄りみたいな思考だと思うような事を奇しくも別の場所で思ってた所員がまた一人。

 

「平和だ、昨日とかもだったが俺がこんな平穏な日常を過ごせるとは思ってなかったわ」

 

「どうした急に。分からなくはないが」

 

 それよりもこれ貼ってくれと仁から渡されたプリントを燈矢は掲示板に張っていく、コレすらも悪くないもんだと思うくらいには彼は今の光景が夢のようだと最近は思い始めていた。

 

 荼毘として生き、時が来たらエンデヴァーに復讐し燃え尽きて死ぬ。それが自分の人生だと思っていたのが今や家族と再会し弟の焦凍とは蕎麦仲間として仲良くなり、好きな時に好きなようにエンデヴァーを煽れる生活が出来ている、そう考えれば

 

「俺って視野が狭くなってたってか、意地になりすぎてたんかね」

 

「何だ本当に急に悟ったみたいなこと言い出してっ、まぁそこの感情は俺も分からなくはねぇけどな」

 

 今でも思い出せるほどに便利屋、もといレイミィと出会う前の自分は落ちぶれてヤケクソになってたからなと笑いつつ作業を進める仁。

 

 っとそこで燈矢が此処に居て良いのかという疑問が浮かぶ、彼の今の担当は壊理の同行だと思ったのだがと聞いてみれば

 

「今は落ち着いてるし、あの婆さんが大丈夫だってことで所長さんにも許可もらってこっち来てるって感じ」

 

「そっか、あの娘ももう落ち着いてきてるってのは良いことだな……んじゃ、色々と手伝ってもらうか」

 

「お手柔らかに頼むよ先輩」

 

 ここから彼は仁から便利屋のイロハを教わることになるのだが内容は言ってしまえば、〝個性〟を使うことのない日常的な作業のコツ或いは気をつけたほうが良いことなど。

 

 今まで働いたことが勿論無い燈矢にしてみればありがたいことなのは間違いないのだが今の社会で考えるならば

 

「普通っていうか、意外と〝個性〟を使ってってのは少ないんだな」

 

「あ~、そうだな。全く無いってわけじゃないが便利屋に来る依頼なんて大概が技術でどうにかするものばかりだな」

 

 言ってしまえば日常の雑用係というのが便利屋の平時の役割。寧ろ此処最近で頻発している〝個性〟を使ってのドンパチや(ヴィラン)相手に裏工作などは本来であればかなり珍しい案件でしか無い。

 

 借りに来たとしても大概がレイミィ指名の案件であり所員である自分たちに回ってくるなんて年に数度あるかないか程度だと話せば燈矢はだったらと今の状況を思い出してこう告げる。

 

「結構、治安ガタガタなんだな今の社会って」

 

「そうだなぁ……一応敵連合や死穢八斎會なんてデカいところは畳んだって言ってもまだどっかが動くかもしれないってお嬢も言ってるし」

 

「嬢ちゃんが言ってるってことはほぼ確実じゃねぇか。ま、そん時になったら俺も少しは現場に出ますけどね」

 

「出れるのか?」

 

 心から心配しているという声で聞いてきた仁に燈矢は笑う。確かにまだ完治しているわけではないがそれでも今では6割程度の火力であれば〝個性〟の使用は問題ないと言われている。

 

 更に言えばサポート科が彼用のアイテムを開発しているらしいと伝えれば、仁は何かを思い出したとばかりの声を上げる。

 

「おっと、なにか忘れてた感じか?」

 

「サポート科から試作品の実地試験の手伝いをって依頼が何件か来てたなって思い出した。世話になってるしこっちを優先しないとなって思ってな」

 

「お、じゃあそっちも付き合うぜ。俺も例のサポートアイテムがどうなった聞きたいし」

 

「……んじゃ、コレが終わったら向かうか。今後を考えりゃ、サポート科の動きも知っておいたほうが良いだろうし」

 

 その日の夕方に燈矢は語る。便利屋ってのは決して楽な仕事じゃないんだなと、曰くサポート科でそれはもうエラい目にあったらしいが詳細は報告書を呼んだレイミィがゲラゲラと笑ったということで大惨事などではなく、笑える自体での惨劇だったんだのだろう。

 

 この話は割愛しておき二人がサポート科に向かおうかという時間に便利屋の女性陣二人こと被身子と火伊那は壊理が勉強などを受けているリカバリーガールの保健室に来ていた。

 

 此処に居る理由は単純に時間があいてたということだけ。彼女らはついさっきまでは外回りで被身子指名で来ていた依頼を片付けていたのだ、つまり男性陣が平和だなんだと呑気なことを言ってる間、二人は平和とはかけ離れた案件を対処していたのである。

 

「ストーカーって異性じゃなくて同性でも起こるんだな……」

 

「そりゃ当然でしょうよ火伊那ちゃん。寧ろ学生相手の場合なんて同性の方が多いまでありますよ」

 

「子供が居る前でなんて会話してるんだい。やるんだったら他所でやりな」

 

 リカバリーガールからの指摘に二人はご尤もでとその話題を止め、壊理に視線を向ける。見ればさほど苦戦する様子もなくリカバリーガールや雄英の教師陣が用意した彼女の年齢に合わせた問題集を解いている姿に被身子はホォと感心してから

 

「壊理ちゃん、普通に勉強ができる子だったんですね」

 

「そこは私も驚いてるってのが感想さ。ただ監禁してただけじゃなかったらしい、ま、どういう意図があったかまでは知りようがないけどね」

 

「所長が言ってたな。死穢八斎會の連中の殆どがろくに口が聞けないとかなんとかって」

 

 死穢八斎會のその後についてはレイミィが塚内警部から聞いたらしいのだが組員のほぼ全員は強力な魅了の後遺症により廃人寸前になっており事情聴取は不可。では八斎衆はどうだと言えばそっちはもっと酷いもので、全員が完全に自我が崩壊し廃人になってしまっているとのこと。

 

 そして若頭である治崎廻は話こそ聞けるのだが現状は精神的に壊れる寸前という状況ですぐには聞き出せない。元組長はそもそも壊理がそのような扱いを受けてたことを知らず、そもそもにして治崎廻に一任してしまっていたとのこと。

 

「ま、聞けねぇもんは気にしても仕方ねぇし。壊理が普通に勉強ができるなら悪いことじゃないんだから良いんじゃねぇの?」

 

「それもそうですけどね。むむ、このまま行けば私なんかあっという間に追い抜かれそうですね~」

 

「……聞くんだけど、アンタは高校はどうしてるんだい?」

 

 唐突なその質問に被身子はあれ言わなかったっけとなったが雄英側には自身の事情は一度も話してなかったなと思い出す。一応話したことはあるがそれはA組の面々だけ、なお聞かされた方は割と重めの話にどう反応すればとなったとか。

 

 ともかく別段、隠していることでもないしとリカバリーガールにも話せばはぁとため息をしてから被身子を見据えるように目を向け、老婆心からの言葉だけどねと前置きをしてから

 

「両親ともう一度でも良いから話をしてみるのはどうだい。互いに離れて時間が経ってんだ、頭も冷えてるだろうしな」

 

「嫌です。私はあの二人を親だとも思わないし許すつもりもないですから」

 

「それでもさ、絶縁するにしても何にしても話し合って区切りをつけるべきだと思うよ私は」

 

 親の話題を出したと同時に雰囲気が変わった被身子に対しリカバリーガールは促すようにそう告げる。それはこの年齢まで生き、様々なものを見てきた経験からの老婆心からの言葉、そんな感情からの言葉に被身子は居心地悪そうな表情をしてから

 

「……向こう次第です。そもそもあっちも暫く何も言ってこないですし」

 

「そりゃ今の嬢ちゃんと同じ感情なんだろうさ、互いにどう顔を合わせれば良いのかって思ってんじゃねぇの」

 

「お姉ちゃんは、会いたくないの?」

 

 ふと部屋の雰囲気が変わったことでどうしたのかと話を聞いてた壊理からの質問に被身子は表情を変えないまま考え込んで、それから

 

「分かりません、考えたこともないですし……」

 

 告げた言葉、だが声には確かな迷いを感じ取れる。今日までレイミィも迂闊には触れてこなかった話をされ被身子の心境にザワツキが起こり始めていた、会うべきかどうするか、そもそも会ってどうすれば良いのか。

 

 考え始めれば浮かぶあれこれに被身子は不機嫌そうに鼻を鳴らす、嫌いなものは嫌い、特にあの人を化け物扱いしレイミィを悪い者と扱ったあの二人なんて勝手にしてればいいですと思うくらいには。

 

「私、聞いちゃいけないこと聞いちゃった?」

 

「いや、聞いといて正解だ嬢ちゃん。後でご褒美を上げねえとな」

 

「いいの?」

 

 被身子が唸り、火伊那を壊理にそう告げ、リカバリーガールはその様子を見てやれやれと自身の仕事に戻る。保健室もまたある意味で平和な時間が流れていく中、ではレイミィと血染はどうしてるのかと言えば勿論ながら彼女は授業中。

 

 そして血染はその手伝いを相澤に頼まれ体育館γにてヒーロー基礎学の実践訓練を行っていたのだが二人の、いや、A組の面々の前で繰り広げられた光景を見て軽く驚愕していた。

 

「はぁ、はぁ、ぜぇ、けほっ」

 

「驚いたわ、まさか【プリンセス】状態での【モードエリザベート(鮮血魔嬢)】とは言え、ここまで食らいついてくるなんて。と言うか、幾つ〝個性〟が目覚めたのよアンタ」

 

「幾つだった?」

 

「黒縄含めりゃ五個、危険察知も発動してるなら六個。つまり、緑谷の奴は……」

 

 この短期間でOFAの先代の〝個性〟を全部発現したってことになる。その言葉に相澤は勿論、近くで聞いていた面々も驚くしか無かった。




文字数減ってないじゃんお前!!! あとはい、増やそうかとか言っておきながら増えませんでしたね更新、すみません風邪引いてました。
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