便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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ちょっと文字数が減りました。


No.183『誰が為の文化祭』

 寮内に荘厳にして繊細で力強い音が響き渡り、それを聴いている者たちは誰一人例外無く声を発することも出来ずに聴き入っていた。

 

 ここは雄英高校ヒーロー科A組の生徒達が暮らしている寮、そのリビングにて小さな演奏会が開かれていた。

 

(……いや、これを文化祭のバンドに組み込めは無理でしょ)

 

 下手ではない、寧ろ上手すぎるが故に組み込んだら全部食われるよコレというのが耳郎の感想。やれと言われれば考えるが出来ればダンス枠にレイミィは回したいなとすら思ってもいる。

 

 それはそれとして演奏は素晴らしいとしか言えない、とても破滅的な音痴の持ち主だとは思えないほどに。

 

 寧ろどうして歌だけはあそこまで壊滅的になれるんだろうかと思いたくもなるが、この現象だけであれば彼女だけではないのでそういう事なのだろう。

 

「久し振りに聴いたけど、本当に上手いわねあの娘」

 

「うむ、とは言え所長くんはこういうのではないのだろうか、腕が落ちたと」

 

「それくらいには演奏してないから言うだろうなアイツは」

 

「お姉ちゃん、色々出来るんだね」

 

 呑気な感想を出されたがクラスメイトからすればあれで腕が落ちてると言われても困るんですけどというのが本音でしかない、と言うか落ちてるってなんだよとすら上鳴は思ってる。

 

 演奏が始まってどの程度経っただろうか、聴き入っていたクラスメイトがさほど時間は経ってなかったと気付くのは演奏が終わり、レイミィが息を吐き出した時、見ればまだ3分といった具合だったのだが

 

「なんか10分くらい聴き入ってた気がする」

 

「さて、耳郎どうかしら? 腕は落ちてたけど悪くないとは思うわ」

 

「腕落ちてるんだ、うーん、でも十分というか強すぎるっていうのが感想かな」

 

 いわば素人集団の中にプロを放り込むようなものであると言うニュアンスのことを素直に話すがレイミィはそれを聞いて心底つまらなそうな顔をした。

 

 まさか日和るのか? という表情と視線を向けてきた彼女に耳郎は怯む、よもやそんな視線を向けられるとは思ってなかったというのもある。

 

「つまり場を食われるから入れにくい、と?」

 

「え、まぁ、うん、そうかな」

 

「私を食おうという気概はないわけ? じゃなきゃ普通科に食われて終わりよ」

 

 誰がどう聞いても煽りである。けれどその煽りを耳郎たちに向かって使うというのは今日まで無かったことであり彼女らが驚くなという方が無理な話だろう。

 

 同時にもしかしてレイミィになにか狙いでもあるんじゃないだろうかと勘付くことも出来る、出来るのだがそれが何なのかと言われてもわからないが本音なのだが。

 

 流れる沈黙に壊理が不安そうな表情でレイミィを見つめ、何かを察したラブラバが小突いてやろうかと動いた所でレイミィがあぁやっぱり今のナシと言葉にしてから耳郎たちを見つめこう言い直した。

 

「えっと、今のナシとは?」

 

「つまりあれよ、私にコレ以上ないくらいの最高な文化祭の思い出をプレゼントしてくれないかしらってことよ」

 

「……あ、あぁ!! あっはは、そういうことかぁ、あぁもう卑怯じゃんそれ」

 

 ここで耳郎達は彼女が何を伝えたいかが理解できて笑い出し、我ながらキャラじゃないと思いながら口にしたからだろう、レイミィの表情は苦笑を浮かべる。

 

「全くだ、つかだったら初めからそう言えっての」

 

「でもそう言われちゃ、生半可な事はできねぇな。なぁ、みんな!」

 

「へへっ、当然だっての。なんだったら雄英で一番盛り上がるライブにしようぜ!」

 

 瀬呂の言葉に全員が頷く、考えてみればレイミィがこうやって素直に頼んでくるということも今日までで始めてだとなれば士気が自然と上がるというもの。

 

 と言うか盛り上がり過ぎではと煽った張本人のレイミィが若干引き始める、その様子を見てラブラバが一言。

 

「どんくらい人というか、友人に頼ってなかったのよアンタ」

 

「俺が知る限りじゃ、今日が初めてかもしれんな」

 

「あぁ、そりゃこうなるわ」

 

「所長くん……」

 

「悪かったわね、素直じゃなくて」

 

 あ、自覚はあるにはあったんだと思わず言いたくなりそうになるが誰もがそれは口にしないでおく、或いは最早それを指摘することすら面倒になったというのが強いかもしれない。

 

 それと同時に壊理は自分には素直になにか言っていいと言うのにお姉ちゃんはなんで素直じゃないんだろうかという世の中の小さな矛盾に気付いたがそこも置いておこう。

 

 ともかく話は区切りはついた、そうと決まればA組の行動力と団結力は目を見張る物がありパンッ! と切島が手の平に拳を叩きつけ

 

「そうと決まれば、誰が何を担当するかを決めねぇとな! って流石に明日のほうが良いか、耳郎?」

 

「うーん、その方が良いかな。誰が何をどの程度できるかって実際に触ってもらわないと分からないし」

 

「だなぁ、つか楽器の経験持ってるやつ居るんかここ」

 

 流れる沈黙、言ってしまえばレイミィを除いてこの場で自信持って手を挙げれるのは耳郎、そして……上鳴が何気なく視線を向けた一人の青年こそ勝己である。

 

「あ? 何ガンくれてんだてめぇ」

 

「いや、お前確か音楽教室通わされてたって言ってたよなって思い出して」

 

「……あ、確かにかっちゃん通ってたかも!」

 

「あぁ?」

 

 後日、完璧なレベルのドラムの腕前を披露し無事に担当に任されることになるが割愛しておこう。どちらにせよ、残りの担当は明日ではないと決めれないのは確かだということでこの話は一旦打ち切り、場も解散となる。

 

 なのでラブラバとジェントルも帰ろうかということになり、レイミィと血染が見送りで付き添うことにその際に壊理には

 

「悪いけど待っててちょうだい、まぁ耳郎達がいるから暇することはないでしょうけど」

 

「うん」

 

 頷いたのを確認してからレイミィ達は寮から出て二人を正門前まで見送る道中、事を察していたのだろうラブラバから顔を向けられず告げられることになる。

 

「見送るなんてそれらしい言い訳してまで私に話したいことってのはあの娘、壊理の事でいいのかしら?」

 

「ま、流石に察するか。えぇ、その通り、あの娘についてちょっと話があるの」

 

「歩きながらで済む話かなそれは?」

 

「触りみたいなもんだから問題ないと思うわ、最悪立ち止まればいいし」

 

 それは問題しかないんじゃなかろうかとラブラバが思うも真面目な感じなので口にはせずに無言で続きを促す。なお、このやり取りの間、血染は特に反応もせずに我関せずに近い態度を取っていたりする。

 

 もっともこれは関係ないと言うよりもレイミィの決定に従うというのが正しいだろう。ともすれば、この場面でのやり取りは便利屋としての話というのも自ずと分かるというものであった。

 

「あの娘、壊理を将来的に誰かに預けようと思ってるわ」

 

「ま、便利屋に置いておく危険性を考えれば分からなくはないわね」

 

「どう甘く見積もっても俺達は恨みを下手なヒーローよりも周りから買ってるだろうからな」

 

「それを考えればあの少女を置いておくわけには行かないということか」

 

 ここまで来ればラブラバ達もレイミィが何を伝えたいかというのは分かる、分かるのだがじゃあそれを今ここで即決できるかと言えば

 

「その話、あの娘にはしてないんでしょ?」

 

「当然じゃないの。まだ壊理の精神面は不安定なんだから、私たちと離れるなんて話をしたらどうなるか……」

 

「じゃあ、壊理ちゃんが落ち着いてしっかりと話し合ってから決めなさい」

 

 つまり彼女が残りたいと言った場合、それも選択肢に入れろと言外に伝えてきた言葉にレイミィは難色を示す表情を表す。

 

 確かに壊理の意思は尊重してあげたい、けれど便利屋に残るというのは彼女を危険に晒すのだと、流石にそのリスクは私は承知しかねないわよと。

 

 だがラブラバはその表情を見たうえでため息を付いてからレイミィに促すように呟いた。

 

「んな表情されても困るのはこっちよ。本人を交えないで決定して後で拗れるのは嫌だって話なんだから」

 

「私もラブラバの意見に賛成だね。もう少しだけ時間を置いてからでも遅くはないと思うよ?」

 

「……時間を置けば、あの娘は私たちから離れたがらなくなるわ」

 

「それは貴様の方じゃないのか、バートリー」

 

 まさかの口撃に血染を睨むレイミィ、誰がどうして壊理と別れることを嫌がるのかと続けて言葉に表せば意地になるのが証拠だと返され

 

「それでなくても最近のお前は何かと壊理に世話を焼いている、しかも夜には向こうからせがまれて数学に近いことも教えてるだろ」

 

「だからなに?」

 

「アイツはお前の役に立ちたいと思っている、そしてお前もそれを感じているからこそ早めに離れようとしているんじゃないかという話だ」

 

「出鱈目な口がよく回るわね、私はあの娘のことを考えてそう言ってるんだけど……?」

 

 あ、このままだと口喧嘩に発展するなと判断したラブラバが二人の間に割って入り互いに視線を送ることで牽制、と言うよりもこれ以上私達の前でやるんだったら実力行使も厭わないぞという視線だなこれとジェントル。

 

 コレを受け、血染はレイミィから視線を外すように目を閉じ、レイミィはバツが悪そうに視線を逸らしてから

 

「とにかく、事が来たら相談するから頼むわ」

 

「私達以外には誰を?」

 

「相澤先生、あの人ならアンタよりは話を通しやすいでしょうけど」

 

「恐らくだが同じ反応をされると思うよ、所長くん」

 

 どいつもこいつもと言いたくなる感情をぐっと抑え込み分かっているという表情を作って返事とすればジェントルもどうしたものかとラブラバを見るも

 

「本当に変な所で頑固よねアンタって、はぁ、とりあえず話は覚えておいてあげるから、それでいい?」

 

「えぇ、今はそれでいいわ」

 

「やれやれ、副所長、頼んだわよ」

 

「あぁ、とは言っても俺の話も最近は反抗期かってくらいには聞かないんだがな」

 

「ははは、失礼。っとそうだ今後なのだが我々も雄英高校と長期契約を結んでね、ちょくちょくと顔を出すからよろしく頼むよ」

 

 曰くセキュリティ関係で契約を結んだらしい。最近、嫌に忙しいと思っていたが根津校長はあっちこっちと話をつけているのだなと納得してから二人を見送って寮に戻る事に。

 

 戻れば壊理が直ぐに出迎え、それを見てレイミィは複雑な表情をほんの一瞬だけしてから笑みに切り替え彼女の頭を撫でつつ

 

「待たせちゃったわね、ちょっと話し込んじゃって」

 

「ううん、お姉ちゃんたちとお話してたから大丈夫」

 

「そう、なら良かったわ」

 

 姉妹のような会話をしつつレイミィの脳内ではラブラバとの会話が回り続ける。向こうの指摘は間違いじゃない、けれどそれは駄目なのだ、だって。

 

(私の我が儘で誰かを縛るなんて、赤霧みたいじゃない)

 

 私はアイツとは違う、そんな無意識の意地が彼女にはあった。




因みに冒頭でレイミィが演奏してるのは亡き王女の為のセプテット的な感じです、吸血姫だからね。

 さてここからちょっと私信と言うかまぁかもしれない的な話なのですが、ちょっとこの作品を一から書き直したいな的な事を最近思い始めてたり。

 いや、その、話を広げすぎたなってのと便利屋である意味なくないコレ?と思い始めちゃいましてね。まぁでもこの作品はちゃんと終わらせます、終わらせたうえでもしかしたら、これをベースにもっと根本的に設定をいじくり回した便利屋の話を書くかもってだけです、はい。
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