文化祭の準備に賑わう雄英高校、そんな中便利屋チェイテ雄英高校支部、と言い出したのは誰だったか。それはさておき壊理を何時ものように保健室へと通わせた後、便利屋の事務所は妙な緊張感が漂っていた。
各々は真剣に考え込み、レイミィは珍しくヤバいわよコレという感じの声を出す、お前学校はどうしたと言われそうだが緊急ということで多少遅刻するという旨を連絡済みなので問題はない。
「期限、そろそろなんですけど」
「分かってるわよ被身子」
げんなりとした感じに答えたレイミィの机の上に置かれているのは文化祭での出し物を問う書類、そして被身子が言った期限、つまりはそういうことである。
決まってないのだ、しかも最悪なことに誰一人として案すら出せてないという状況には基本的にこの手のことに興味を示さない血染ですら
「流石にこれ以上は校長にどやされても文句言えないぞ」
「つってもよ、何やるんだマジで」
腕を組み考えてますと言った感じの仁が言うがほぼポーズでしかなくセリフが現状の全てを物語っているし分かっているからこそ全員が奇跡的な程同時にため息を吐き出しもした。
仮にコレがただの地元のお祭りだしたらこうもならない、焼きそばなりリンゴ飴なりお好み焼きなり各々が得意なジャンルの料理で話は決着するのだが、今回ばかりはランチラッシュのお膝元でそれはあまりに分が悪い。
「だが分が悪くてもその辺りでお茶濁すしかないんじゃねぇか? まぁ私は何も作れないんだが」
「その場合、俺も同じなんだが? けどまぁそれが一番無難な気がするんだが駄目なのか?」
「駄目ではないんだけど、今後を考えると無難って選択肢に逃げ続けるのも良くないと思ってね」
もしかしたら今後も似たような依頼が来るかもしれない、そしてその時にあまりに無難なことをすればその場は乗り切れるかもしれないが今後に繋がらない可能性が高くなる。
それは困る、非常に困る。便利屋家業というものはいつもいつも安定するというものではない、だと言うのにそんな事で繋がりを絶たれてしまうのは己の命を削るのと同意義なのだ。
「なるほど、それなら確かにただ普通の屋台ってのじゃ宜しくないわな」
「だが実際問題、ここまで案が浮かんでなくて書類を出せてないのもマズイだろ、それこそ信用問題に関わるぞ?」
火伊那の言い分もまたご尤もなのでレイミィ達も唸るしかない。だが唸った所で案が出てくるわけでもなく、これ以上は時間をただ浪費していくだけだとレイミィは判断、そして
「とりあえず今日中に案を考え提出する、そういう事で頼むわ」
「了解、考えるだけ考えてみよう」
「最悪の場合は無難ってことで良いんですよね」
「じゃないと書類が出せないからねぇ」
「はぁ、まさかこんな事で頭を悩ますとはなぁ」
「こりゃ難題だな」
「便利屋ってのも楽じゃねぇんだなほんと」
こうして彼らの割りとギリギリ状態の便利屋の一日が始まる。本日の業務、各々の依頼と文化祭の出し物の案一つという過去類を見ないくらいの難易度の業務を引っ提げたまま……
「とは言ったものの、どうしたものかしら」
「おや、なにかお困りごとかな」
困った、いやガチでと言った具合の声で呟いたそれに反応したのは青山。これには珍しいやつが釣れたなと思うのがレイミィであり実際、ここ最近は様々な柵が無くなったからなのかクラスメイトたちとの交流を優先していたので自分にはあまり接触してこなかった部分がある。
というのはレイミィの認識であり実際は青山が声を掛けようかなというタイミングにはレイミィは不在だったり、そもそも彼がヘタレたりで叶わなかっただけなのだが本人以外は知らないことであり、彼も話すことはないので判明することはない。
それはともかく、せっかく声を掛けられたからとレイミィは今朝の話をしてみれば青山はふむと考えるポーズを取ってからこう提案してきた。
「だったら僕達みたいに何かショーをするとかはどうかな?☆」
「ショー?」
本気で意味が分からないんだけどという声が彼女の口から漏れ出る。若干の困惑もあると言っても良いかもしれないがこの場面で流石に冗談は言わないだろうと続きを促すことに。
「便利屋へのイメージって多分だけどテレビで流れるようなものしかみんな知らないと思うんだ」
「……そうか、昔から利用してた客はともかく最近知ったとなるとなんかヒーロー紛いのことしてる集団に見えるのか」
「そうそう、だからそのイメージを払拭するという意味でショーみたいなことが良いんじゃないかなって☆」
世間からの印象、それは盲点だったというのがレイミィの感想である。ともすればここ最近で雑用みたいな依頼が学園内以外からほぼ来なくなった理由も察しがつくというもの、そりゃそうだわと一人である程度納得するしかない。
下手すれば便利屋は大きい所しか依頼を受けないようになってるかもなどという、とんでもない勘違いすらされているかもと考えれば
「大きめの一手が必要ね。其の為にも文化祭を利用する、うん、コレなら行けるかも」
「や、役に立ててかな?」
「えぇ、ありがとう青山、お陰で今日の会議で血染にどやされなくて済むわ」
具体的なことはまだこれから考えることになるがキッカケが手に入ったと言うだけでも十分な成果だと安堵の笑みを浮かべるレイミィを見て顔を赤くしながら良かった笑う青山。
なんとも微笑ましい光景なのだが、そうだと思えるのは何も知らない第三者の感想でしかなく彼女、レイミィを知るクラスメイト達からの感想は
「前々から思ってはいたんだけど、バートリーって釣った魚に餌をやらない主義だよね」
「そもそも釣ったという認識がないから餌も何も無いんじゃねぇかに百円」
「賭けが成立しないから駄目だろそれ」
耳郎の言葉に上鳴と瀬呂が続けば、今の話が理解できた面々もウンウンと頷く。今日までのアレコレを見てどう考えてもレイミィがそんなタイプじゃないよねというのが無慈悲な総評でしかない。
仮にコレで尽くす女ですとか言われる方が驚くし、何か〝個性〟でも受けたんじゃないかと疑われることは間違いないくらいにはそう思われている。
「……? 釣った魚、バートリーさん、魚を飼っておられるのですか?」
「ヤオモモはそのまま純粋な子で居てね」
「は、はぁ……?」
願わくば八百万が男を手玉に取るような女性にならないようにと願うクラスメイト、正直な話その心配は一番近くに居て懐いている壊理に向けるべきかもしれないとふと思ってしまった緑谷出久だった。
「曲芸、か」
時間同じく、依頼を終え学園内のベンチにて一息ついていた血染が呟く。ことの流れとしては依頼で文化祭の準備の手伝いをしていた際に便利屋はということになり、何気なく話したのが始まり。
内容としては青山がレイミィに伝えたことと似たりよったりだったがこちらは便利屋の人たちは色々出来るからそれを見せたら面白そうだねと、それを聞いた血染が上記の台詞となる。
(悪い考えだとは思わん、下手にあれこれと悩むよりは分かりやすいだろうしな)
言われればその手の依頼はしたことはない、そう考えればこれはいい機会かもしれんと思いつつ自販機で買ったコーヒーを飲んでいると視界の隅に影が。
誰だと視線を向けるがそこには誰も居らず、気の所為だったかと考えそうになった時、右肩に気配を感じ取りいつの間に!? と驚くと同時に
「やぁやぁ、こうして顔を合わせるのは久し振りだね、副所長くん」
「校長……はぁ、驚かさないでくれ」
「HAHAHA! それは申し訳ない!」
正体は根津校長、どうやら血染が一人で居たのを見て声を掛けてきたらしい。同時に彼が言ったように便利屋の誰かと接触するのも割りと久し振りだったというのも理由に含まれているかもしれない。
最も接触がなかったということではないのだがそこは置いておこう。ともかくこうして腰を落ち着かせては久し振りだということで彼は声を掛けてきて、血染もそう言えばそうだなと答えることに。
「ところでだ、文化祭の出し物は決まったかな? そろそろ提出期限なのだが」
「今日中には纏めて明日には出すつもりだ、遅くなってる件については謝罪するしかない、申し訳ないな」
「いやいや、そこまで気に病むことでもないさ。君たちがここ最近忙しかったことは知ってるからね、こちらとしても無理をさせてしまっていると思っているくらいだ」
「そ忙しいのはそっちもだろ。聞けば、数日学校を空けることもザラだとか」
まぁ理由はおおよそ予測が付くがなと呟く血染に根津はHAHAHAといつもの笑い方で答える。血染の言うように根津はここ数日、それどころか数週間にわたり禄に休んだという記憶がないくらいには多忙な日々を送っている。
理由は敵連合や死穢八斎會、そして一番大きいとすればオールマイトの引退関連だろう。まだ世間には公表していないが次のビルボードチャートの際に発表するのだがその根回し、そこから秘密裏にオールマイトの装備の開発と完成などなどetc。
このように便利屋から見ても多忙すぎて、流石はハイスペックだと血染も口に出したくなるほどの日々を送っている、居るはずなのだが。
「(毛並みが前見たときも良くなっているように見えるのは気の所為か……?)だがこうして俺と雑談できるということはある程度は区切りがついたということか」
「あぁ、大体は済んでいる。と言うよりも状況の流れが早すぎて幾つかの準備が無駄になったり必要なくなったりしたから暇になったというのが正しいかもしれない」
「……赤霧か」
聞けば大小問わず国内の
それを聞いた血染は厄介だなと口にする。国内であれば根津の人脈と便利屋自身、そうでなくとも警察や公安が動けるが外国となれば話が大きく変わる。
こちらには向こうで動けるほどの手札がないのだ。一応、根津は諸外国にも口は聞けるがその程度、赤霧相手には不足していると言わざるを得ない。
「外国で暗躍してるとなると狙いは〝個性〟か?」
「こちらもそう考えているよ。〝個性〟集めそして時が来たら日本で動き出す、最もそれは本気で魔王になろうということではないのも分かっているがね」
あの日、レイミィが緑谷出久と話していた内容は彼の盗聴器越しで知っている。正直に言えば、あの日の会話は彼らには衝撃的であり、それと同時に覚悟の決まり方にどうしたものかと悩んでもいる。
「君たちはどうするつもりだい?」
「どうもなにもない、奴がそう決めたのならば俺は何も言えん」
「……そうか、なら今はこれ以上触れるのはやめよう。それよりも文化祭、楽しむにしてるよ」
校長にしては雑な話の切り方だと思いつつも彼の言葉にあまり期待はするなという感じに頷き、その日の便利屋総括、そこで奇妙な偶然が起きた。
何故かは分からないが全員が全員、生徒もしくは教員に相談を求め返ってきた内容が揃いも揃って
「奇妙な偶然があったものね本当に」
「全くだ、まぁ下手に複数上がって話が伸びるよりはマシだが」
「これもうサーカスやれって言われてません?」
「だよなぁ」
「まぁ出来なくはないよね。俺は得意分野だし」
「私は何やれば良いんだこの場合、ワンホールショットでもやるか?」
「炎を使ってやるなにか……いや、難しいなおい」
何故か便利屋の面々はそういうの得意でしょというのが認識に広まっていたことに全員が首を傾げることになるが彼らのやることは決定した、それは
「お姉ちゃん達、サーカスやるんだって!」
「なんて?」
ヤバい、自分たちのライブよりも話題性が強いの来ちゃったんだけど。A組まさかのライバル出現に戦慄するのであった。
決めておいた何だけど作者的には描写どうしろってんだよと思ってたりします。