便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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受けてから内心、やっぱり私にタスク増えすぎてない? とか思ってる

私信
一話前の予約投稿が一時間早くなってたようですみませんでした……


No.19『オールマイトからの依頼』

 彼女が国家機密とまでは言わないが、相手が知られると困るという情報を記憶という形で握ったのは何も初めてではない。主に相手は協会だが、それでも向こうからは黙っててくれるなら便利屋を認めるという旨を引き出すのに必要なことだったと今でも思っているし、それ以降は協会とも必要な範囲で協力することで信頼を稼ぐことに勤しんでいる。

 

 それ以降はその手の情報は極力握らないようにしていた。面倒が増えるし、便利屋を守るためにも必要以上に踏み込まないと徹底していたからだ。

 

 だからこそ突発的に握ってしまった、しかも最上級クラスの機密事項に彼女は頭を抱えたくなる。嘘でしょとボヤきたくもなる、しかもそれがただの入試に紛れてたクラスメイトからとかもうどうやって回避しろって言うのよと嘆きすら入れたくなっている。

 

「……」

 

「……ば、バートリー少女、その、大丈夫だ。それを口外しなければ私だって事故だと思って怒りはしない」

 

 端的にって密談室の空気はお通夜状態になっていた。テーブルに両肘を立てて頭を抱えるレイミィにオールマイトはどうしたものかとなんとかフォローの言葉を掛けてみるが返ってくるのは魘されているような声だけ。

 

 今回のことに関しては上記の通りオールマイトも事故だと思っており、もしこれを周りにバラすとかならともかく、口外しないと分かっているので怒りもしない。寧ろ申し訳無さの方が強いので謝りたいとすら思っている。

 

 要はコレに関しては完璧に事故なのである。無論、レイミィも事故だということは理解してるし相手側が許してるのは分かっている、分かっているがそれはそれとして

 

「なんでそんな機密事項があっさり漏れるような事になってるのよ!!!」

 

「それに関しては君が特殊という話もあるんじゃないかなぁ!?」

 

 有無も言わさないド正論パンチにぐぬぅと沈む。そこでふとオールマイトを見れば、いつの間にか筋骨隆々の姿ではなく、出久の記憶の中で見た骸骨のような姿に、急な変化に驚きながらもその姿を見て思ったのは

 

「やっぱり、体に異常があるのね」

 

「……あぁ、校長からは聞いているよね? 私はAFOとの戦いで勝ちこそしたがヒーロー活動に多大な支障が出るほどの怪我を負ってしまったんだ」

 

 聞けば、呼吸器官半壊に胃袋全摘に加え度重なる手術と後遺症により本来の姿、通称【マッスルフォーム】でのヒーロー活動は一日に三時間が限度となるほどに弱体化してるとのこと。

 

 これだけの怪我を負いながらも未だヒーロー活動をするという姿に彼女は頭痛を覚えながら、こう告げる。

 

「死に急いでるのかしら貴方は?」

 

「そのつもりはない、と言っても説得力はないだろうけどね。だが今、私が退くわけには行かないんだ」

 

 彼の言い分も分からなくはない。もし、No.1ヒーローたるオールマイトが怪我で引退すると今日や明日にでも言った日にはこの社会の治安は個性が世に出始めた頃の暗黒期、そうではなくともそれに近い状態に戻ってしまうのは目に見えている。

 

 たった一人に平和を背負わせ続けたツケとして言えない状態に、根津がどうして自分たち【便利屋】に依頼を通してきたのかも何となしにだが理解でき、対面の彼に聞こえない程度の声で

 

意外と焦ってるのね、あの校長も

 

「なにか言ったかい?」

 

「……正気じゃないわって言ったのよ。そのボロボロの状態で活動しておいて、何が死ぬつもりじゃないなんてよく言えるわね」

 

「HAHAHA、ヒーローと言うのはそういう物だよ、バートリー少女」

 

 何を笑っているんだかと思いながら、ふと自身の心臓部分を手で擦ってから、それよりもと本題に入るように伝える。自分からこの雑談にしてしまったが元々は向こうから話があるということじゃなかったかと。

 

「おっと、そうだったそうだった。話というのは君も言った、緑谷少年のことさ。今日のヒーロー基礎学での訓練で彼が見せた技があるだろ?」

 

「あの、緑色のプラズマが身体に走ったやつのことかしら、それとも天井ぶち抜きの方?」

 

「前者だね。それで保健室で彼と話したのだが、君からイメージを変えて、常にイメージトレーニングをするといいとアドバイスをされたと」

 

「事実よ? とは言ってもしたのはそれくらいで。あとは彼の頑張り、それがどうかしたのかしら?」

 

 あれだって卵を電子レンジに入れてとかいうどうイメージするんだそれというものを分かり易い例えに変えただけだしとソファに体重を預けて楽な姿勢になりながら答える。

 

 結果としてそれが彼に上手い具合に突き刺さり、あの訓練での善戦からの勝利に繋がった。なので大体は出久の努力が実を結んだと言う程度ではと思っていると

 

「その、無責任だと取られても反論はできないのだが。彼の特訓を見てもらえないだろうか。情けない話、私では彼を早期に個性の調整をあそこまでの物にできた自信がない」

 

「師匠役なのに何を情けないって言いたいけど、表立って接触したら周りが煩いものね。けど分かってるのオールマイト、態々この場を用意してそう頼むってことはこれは『依頼』だということを」

 

 もしこれが出久からだったらクラスメイトとして無償である程度のサポートをしてあげた。けれどオールマイトは密談室と言う部屋まで使い、更に初めに『便利屋に君に話しておきたい』と切り出している。

 

 ならばこれは彼からの依頼の提示、グイッと身体を正してからオールマイトを見据える。次に出る話は分かっているわよねと言葉にせずに視線で乗せれば向こうも頷きそれから

 

「勿論、これはオールマイト個人として君たち便利屋チェイテに依頼として頼みたい。緑谷少年を鍛えてあげて欲しい、無論、私も手伝える時は手伝うのだが……」

 

「そこは無理しなくていいわ。下手に貴方と私達が繋がってるなんて露呈したら目も当てられないし。でもそう、依頼か」

 

 目を閉じ思案する。この依頼を受けるか断るかで言えば受けてもいいと思っている、彼がこの先どのような進化を遂げるのかを間近でしかも己も関わる形で見れるのならばコレ以上無い特等席だ。

 

 問題があるとすれば雄英高校からの依頼に加えてオールマイトの依頼も上乗せとなるとちょっと自分が忙しくなりすぎるのではという疑惑が出てくる。がそのデメリットを無視しても彼を鍛えることには意味があると考え、一つ頷いてから

 

「分かったわ。その依頼、便利屋チェイテが引き受けるわ」

 

「本当かい!? いや、本当に助かる、師匠だと言いながら学校に入学してからは彼に碌なことをして上げることが出来ずに申し訳ないと思って……」

 

「ただし、依頼料は高めになるわ」

 

 彼の独白を断ち切るかのようにそう告げる。今回の依頼は今までとは毛色が違う、流石に便利屋をやってそれなりに長い彼女でも誰かを鍛えてほしいというのは初めてのことであり、特に出久のは譲渡された個性と言う前例がないどころの騒ぎではない代物の特訓。

 

 何もかもが初めて、そんな依頼を持ってきたのだからコレくらいは吹っ掛けてもいいだろうとレイミィの言葉を待つオールマイトに五本の指を立てて、ニヤリと笑ってから告げる。

 

「50万、一括を振り込みで。それが私から提示する依頼料よ」

 

「分かった、口座を指定してくれれば明日にでも振り込もう!」

 

「……は?」

 

 50万という大金を翌日には支払おう。オールマイトから特にその程度ならば問題ないとばかりに出された言葉にレイミィは目を見開くしか出来なかった。迷いもないのはまだ予想してたが、それって翌日にポンッと出る金額だっけと思わず脳内で計算するがどう考えても無理だろうという結論に至る。

 

 だが考えて欲しい、彼女の計算はあくまで自身をベースにしたもの、つまりは便利屋家業で云々であり、相手は名実ともにNo.1ヒーロー、寧ろ50万は大した金額ですら無いまであるのだ。

 

「どうしたんだいバートリー少女」

 

「え、あ、いや、えっと、とりあえず口座はこの名刺にあるURLのホームページに載ってるのでお願い出来るかしら?」

 

 確かにと受け取り、あまりここを長時間使うのもよろしく無いと詳細は後日ということになりその場で解散。マッスルフォームになり何処かへ急いで向かうオールマイトの背中を眺めるが思考はまだ中途半端に帰ってきてはおらず、密談室の前で呆けていると背後から相澤が現れ、そんな様子のレイミィを見てから少々叱るような声で

 

「バートリー、何やってる下校時間は過ぎてるぞ」

 

「相澤先生、50万って大金ですよね」

 

「だと思うが、それがどうかしたか?」

 

「いえ、ありがとうございます。それじゃ、帰ります」

 

 どうしたんだあいつ、思わず心配に思うくらいには上の空と言う感じのレイミィはそのまま事務所に帰宅。とりあえず昨日と同じように所員に報告をしていくのだが、その中には勿論オールマイトからの依頼も含まれている。

 

「って事になったわ」

 

「ほぉ、オールマイトが弟子の特訓を俺達にか。どんなやつだ?」

 

「二代目オールマイトを襲名しても許されるくらいには精神がキマってるわ。まだ発展途上だけど見込みは大いにあるのは確かね」

 

 割と容赦ない言い様に圧紘が苦笑をするが、それで喰らいついたのは被身子。それってつまりと彼女の思考がフル回転し、それってつまりですよと特徴的な笑みを浮かべ

 

「血の香りがしてボロボロになりそうな男の子ってことですよね!?」

 

「あ~、まぁ、そうね。うん、そうじゃないかしら」

 

「私もその人の特訓に付き合います!」

 

「却下。そもそも被身子は他人に教えられる技術持ってないでしょうに」

 

 無慈悲なその言葉にも被身子はお手伝い位は出来ますから! と喰らいつく、どうやら意地でも会いたいらしいがレイミィが折れるわけにも行かず、あーだこーだと彼女の提案を退けていく。

 

 そもそも出久の特訓ならばレイミィ一人でも問題なく見れるし、もし近接戦闘何かを教えるというのならば独学とは言え確かなものを持っている血染に頼むと言えば

 

「つまりだ、オールマイトの弟子を俺が鍛えると、なるほどな、それは面白い依頼だ」

 

「でしょ? でもまぁ暫くは個性の調整がメインだから呼ぶとしてももう少し後にはなるわね」

 

「その時はトガにも声を掛けてくださいね、レイミィちゃん!」

 

 絶対にないから安心しなさいとニッコリと返せば、今日のおかずが一品減りますよと非道な行いを平然と宣う被身子。それは反則でしょうよ! と怒るも先に非道なことを言ったのはレイミィちゃんです! と返され、ギャーギャーと言い争いが勃発。

 

 それを微笑ましい光景として聞き流しながら圧紘はポツリと

 

「うーん、ここ数日でここも色々と大きな依頼が舞い込んでくるようになったねぇ」

 

「あぁ、これもお嬢たちの頑張りの成果ってやつだな」

 

 ハハハと大人二人の笑い声が事務所に響き、今日はこのまま一日の終りを……告げない。ことの始まりはあぁ、そうだと血染が思い出したかのような声を上げた所からだった。

 

「バートリー、話がある」

 

「だからあんたは……へ? 私に?」

 

「あぁそうだ」

 

 なにか私に伝えるようなことがあったのかと思うも、だったらさっき言えば良いはずだしと考え込むレイミィ。だからこそ気付けなかった、血染の纏う雰囲気が説教寸前のそれに変わっていることに、そしてそれに気付けた他三人は一斉に席を立って

 

「あ、じゃあトガは今日のお夕飯作りに行ってきますねー!」

 

「おじさんも手伝うよ、それじゃお先に」

 

「俺は風呂掃除でもして、沸かしておくか」

 

 逃げるような行動の速さに流石に疑問に思い始めるレイミィ、そこでやっと血染の纏う雰囲気が明らかにヤバいということに気づき

 

「ま、待って、私が何かしたかしら!?」

 

「ほぉ、自覚がないと来たか。まぁいい、今日、貴様の担任から電話が来た」

 

「担任って相澤先生のことよね。え、なんで連絡先交換してるのよ……」

 

「貴様が問題行動を起こしたりしたらこっちに連絡をするように伝えてあっただけだ。それで、どうやら一人の男子生徒に執着してるらしいなぁ?」

 

 ブワッと冷や汗が溢れ出る感覚を覚えるレイミィ。やっと彼が激怒している理由にも目星が付き、身振り手振りで弁明を開始。

 

「いや、あれはその、ちょっと、こう……そう! このままじゃ彼は膨れ上がった自尊心が爆発して立ち直れなくなりそうだから私がヒール役を買って出て……」

 

「つまり、大義名分を得たとばかりに爆豪と言う生徒に絡みに行ったと。聞いたが必要以上に追い込んだようだと言ってたが?」

 

 スッと視線を逸らす。クラスメイトにあの場面で自分勝手だ何だと言ったのはつまりこういう事である。忘れてはいけないが彼女は気に入った相手から屈折した感情をぶつかられることが好みというあまりに困った癖があることを。

 

 勿論、勝己の為という部分も大いにある、だが何割かに己のそれを満たしたかったという部分がないと言えば嘘にもなる。そして今回、それが遂に問題になり、血染としてもなぁなぁで済まして良いことではなくなったと説教することにした訳である。

 

「俺は、何度も言ったよな?」

 

「あ、はい、それはもう、はい……ご、ごめんなさい」

 

「そのごめんなさいも何度目だ? あぁ?」

 

 椅子から事務所の床に正座に変わり、彼女が血染の説教から開放されたのはそこから2時間後の話になり、明日いの一番に頭下げて行くということで終わりを告げた。

 

 彼女は心に誓う、もう少し考えて爆豪とは接触しようと。彼女だって好き好んで血染に説教をされたいわけではないのだ。




彼女的には色々言ったけど、その都度爆発して反応してくれるのが嬉しいから煽るので、だから今回みたいに沈まれて空振りになるとは思わなかったと自供しており、血染は更なる余罪を(ry

便利屋メモ
血染に説教されてる時のレイミィは父親と子どものそれと便利屋面々には毎回思われている。
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