便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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No.190『器用貧乏な吸血姫』

「んでだ、ありゃ何だ説明してくれるんだよな?」

 

「大盛況でそのままお流れってのは流石にね、うん、分かってバートリー」

 

「だからって圧迫面接みたいな構図に持ってくのはどうかと思うわよ私」

 

 大盛況の内に終わりを告げたライブから控室に戻ったと思ったら部屋の中心に用意された椅子に座らされ、周りを包囲された状態でクラスメイトに詰められました。

 

 自分で言ってなんだけど酷い状態よねこれ? 理由はまぁ分かるけどライブを大成功させたのになんで軽く説教みたいな空気を感じなくちゃいけないのよ。

 

「とりあえず先に言っておくけど、あれは【ヴァンパイア・クイーン】ではないわよ」

 

「それは分かってる、てかそれだったら全員で一発入れてから赤黒さん呼んでるから安心して欲しい」

 

「どこにも安心できる要素が見当たらないんだけど……?」

 

 それは安心じゃなくて死刑宣告っていうのよ? しかも確実に血染以外も集まるから確実に私は無事じゃすまないっていうのは分かったうえでの発言よね耳郎?

 

 ……まぁ分かってて言ってるんでしょうね、えぇ。えっと、とりあえずどこから説明したものかしら、そうね、あれは言ってしまえばハリボテってやつよ。

 

「ハリボテ? あぁ、見た目だけってことか」

 

「そ、被身子の〝個性〟の軽い応用ってやつね」

 

「じゃあ、あの分身? みたいなのも〝個性〟の応用?」

 

「そっちは仁の〝個性〟の応用っていうか、まぁそんな感じで構わないわ」

 

 あれって劣化の場合だと自分しか増やせないらしくて、結果的に分身みたいな感じになったのよね。しかも仁のとは違って私の意識一つでコピー体も消せるし、その辺りはオリジナルよりも使いやすいと思うわ。

 

 ただまぁ、コピー体が【二倍】を使うことが出来ないからしっかり劣化はしてるんだけど。なんて軽く喋ったけど、そこで緑谷が気付くわけよ、あれ便利屋の〝個性〟も使えるようになったのかと、そしてその質問に対する答えはYESよ。

 

「いつの間に……でも渡我さんの〝個性〟の劣化ってどういう感じなの?」

 

「見た目だけしか変わらないって感じよ。言ったでしょ、ハリボテだって」

 

 だから仮に力自慢に変身したとしても私のスペックしか出せない、逆に言えば意表を突く事はできるかもしれないけど、実戦で使えるかどうかと言われれば微妙なラインでしか無い。

 

 けどこういった場面なら割と使える劣化具合なので私は気に入ってたりする、まぁ使う機会が限定的すぎると言えば過ぎるんだけど……まさかこんな劣化の仕方をするなんてね。

 

「あ、その辺りはちょっと思う所あるんだ」

 

「私としては制限時間が極端に短いとかを想定してたのよねぇ……」

 

 まさか揃いも揃って性能自体が劣化する方面で固めてくるとは思わなかったわ本当。こう考えるとAFOとか卑怯過ぎる、奪ってるとは言え丸々〝個性〟を扱えるとか反則も良いところだっての。

 

 え、劣化するとは言え他人の〝個性〟を使える私も大概だって? それは……そうかもしれないわね。

 

「納得しちゃうんだ。まぁとにかく何か寿命を削ったとかじゃないんだね?」

 

「流石の私も手が抜けないライブだからって全部投げ売るようなことはしない程度には常識はあるつもりなんだけど」

 

「アハハ、ごめんごめん、でもレミィの今までを考えたら、ね?」

 

 それを引き合いに出されると強く反論できないのから止めてくれるかしら、それで納得はしてくれたってことでいいのかしら?

 

 したのならば私は壊理に会いに行くんだけど、え、便利屋の出し物は見なくて良いのかって? あの娘が見たいって言うなら見るけど時間未だあるし良いかなって。

 

「かなりドライな、一応気になったりしないのかい?」

 

「なるにはなるけど、多分アイツラ大人気ないくらいに完璧なことしてくるだろうなって感想しか出てこないのよね」

 

「……なんて?」

 

 だから私たちのライブの盛り上がりを見てこれは手が抜けないなってなるだろうから大人気無いレベルのが出てくるって話よ。

 

 大トリなのも血染達が張り切ってる理由っちゃ理由ね。締めだからこその演出を、一応ほら圧絋なんかはマジックショーやる人間だからセオリーも分かってるしね。

 

「もしかすっと、俺達がエンジンに火を付けちゃった的な?」

 

「かもしれないわねぇっと、んじゃ私は壊理の所に行ってきてそのまま文化祭巡ってくるわ……ってあぁそう言えば緑谷の親が会いたいとか言ってたっけ」

 

「あ、うん、時間があればでいいけどって」

 

 忘れてたわけじゃないとは言えないわね、ライブの余韻で軽く忘れてたわ。それに爆豪の親もだっけ? いや、本当になんで私に会いたいんだか。

 

 とは言え会わないってのも悪い気がするから会うんだけど、まぁ何だかんだ緑谷や爆豪にはちょっかい掛けちゃってるし一度は顔を合わせて話すのもやぶさかではないというのもあるわ。

 

「だから話をするくらいなら別に良いわよ、場所と時間は?」

 

「あ、特に決めてなかったかも。えと、どうしようかな」

 

「んなもん、文化祭の終わりに適当なベンチでもいいだろうが。長々と話すつもりはねぇんだろ」

 

 おっと、まさか爆豪から意見が来るとは。けどそれならそれで構わないわよ、私も文化祭を壊理と周るってことを考えたらあまり時間は取れないし、そっちも同じでしょ?

 

 この提案に向こうもじゃあそれでということになったので話はそこで終わりになり、A組もこの場で一旦解散で自由行動にしようかというタイミングで控え室の外から足音が2つってこれは……

 

「壊理、それに燈矢も。どうしたのって聞くまでもないか」

 

「まぁね、いつまでも出てこないからどうしたのかって思ったってわけ。それよりもだ、ほら、お嬢ちゃん」

 

「お姉ちゃん、えと、凄かった!」

 

 燈矢の隣に居た壊理が私たちに見せてくれたのは今まででどうやっても出すことが出来なかった笑顔、えぇ、なにかしら、こんなにも嬉しいものなのね。

 

 だからだろうか、私はそっと彼女を抱きしめてしまった。いや、我ながら急な行動だとは思ってるんだけど、感動ってやつよ、だって今までどうやっても笑えなかったこの娘が笑えたのよ?

 

 嬉しくて、いえ、それ以上に壊理に言いたい言葉がこれよ、己のトラウマを振り払って笑えた彼女に私はこう告げる。

 

「良かったわね、頑張ったわね、壊理」

 

「お姉ちゃん達のお歌のお陰、楽しいって気付いたら笑えてた」

 

「おぉう、まっすぐ言われると小っ恥ずかしいねこれは」

 

「うわぁお、レイミィちゃんが涙浮かべてるの初めて見た」

 

 むっ、私だって感動するくらい普通にあるんだけど? もしかして血も涙もない人間だとか思われてたのかしら私? これでも……いや、そう思われても仕方がない気がするわね。

 

「いや、納得されるとそれはそれで反応に困るんだけど……」

 

「まぁあれよな、所長さんが映画見て感動して泣きましたってのが想像できるかって言われたら難しいってことと同じだろ?」

 

「……」

 

「なんとか言いなさいよ、男子」

 

「冷血コウモリ女じゃなかったんだなお前」

 

「なにか言えとは言ったけど皮肉れとは言ってないわよ」

 

 理不尽が過ぎるなんて声が聞こえた気がするけど聴こえないフリしておくわ。さて、壊理、これから私と文化祭を周ってみない? 初めてでしょ、こういうお祭りに参加するのも。

 

 ふふっ、実は私もなのよ。地域のお祭とかも便利屋として屋台とかしてたから遊んだこと無いのよ、だから楽しみなのよね。

 

「そうなんだ、うん、私も楽しみ!」

 

「子供になに重力ぶつけてんのよ」

 

「駄目よ、レイミィちゃんは重力だと思ってないもの」

 

「と言うか壊理ちゃんも特に何も感じてない辺り強者な気がするんやけど」

 

 随分とまぁ好き勝手言ってくれるじゃないと反論したいがこれ以上のやり取りは時間がもったいないので我慢我慢、それよりも燈矢はどうする?

 

「俺はB組のやつを見たり出し物のリハーサルがあるからパス、あぁまぁ時間が出来たら焦凍達と周るかも」

 

「ん、じゃあここで一旦お別れね。麗日達もまた後で」

 

「いってら~」

 

 A組の声を背に受けつつ、私と壊理は体育館から出る。さてまずどこから周ろうかしら、あと出てからわかったけど盛り上がりが凄いわね、大丈夫、壊理?

 

「うん、あ、そうだはいこれ、パンフレット貰ってきてる」

 

「ありがと、うーん、どれも気になるけど……」

 

 私だけだったら適当にだけど壊理も居るとなると楽しめるのが良いわよね、ともすれば食べ歩きも視野に入れつつアトラクション系列が良いかしら。

 

 アトラクション、アトラクションってどんなのあるかしらってそう言えば心操の所がその手の類やるって言ってたかしら? と思い出したのでパンフレットで見てみれば

 

「お化け屋敷『心霊迷宮』、どう、壊理、怖いのとかは止めておいたほうが良い?」

 

「怖いの、うーん、あそこよりも?」

 

 思わず答えに困ったのは久し振りな感覚だったわ。そうよね、怖いの基準はあそこになるわよねそりゃ、死穢八斎會と比べたらまぁ子供騙し程度なんじゃないかしら。

 

 いやでも雄英の出し物だから本気で怖いのかしらちょっと判断に困るんだけどこれ、でもまぁ超えるってことはないでしょ。

 

「多分、あそこよりはマシじゃないかしら。行ってみてから判断するのも良いかもね」

 

「じゃあ、そうする。それにお姉ちゃんとなら大丈夫」

 

「言ってくれるわね、信頼してくれるのは良いけど私も割りと意地悪よ?」

 

「そうなの?」

 

 ふぅ、私が悪かったわ。いや、こう聞いたらどうなるかなって思っただけなんだけど、まさか心からそんなことないよねという顔をされるとは思わなかったのよ。

 

 安心なさい、万が一本気で怖いお化け屋敷だとしても私がどうにかするからと伝えれば壊理もだよねという感じの安堵の表情を浮かべるのを見れば私もそれ以上は何も言えない。

 

 という事で私たちは心操のクラスに向かうことに、そう言えば被身子達には特に連絡入れなかったわね、まぁ燈矢とかその辺りが話してるだろうから平気か。

 

「え、レイミィちゃんは壊理ちゃんと一緒に文化祭を見に周ってるですって?」

 

「あ、やっぱり所長さんから連絡無かったんだ、まぁうん、ついさっき出ていったけど」

 

「……なんで? どうして私に何も言わないんですかレイミィちゃん!」

 

「言ったら面倒だなって思われたんだろよそりゃ」

 

 ま、私は後で知ることになるんだけど被身子は今から私たちと合流するって駄々をこねたらしいわ、何やってんだかと思ったのは秘密よ。




困った、まさか話がここまで進まないとは思わなかった。

便利屋メモ
【劣化変身】
被身子の【変身】の劣化版、見た目だけのハリボテ変身でしかない。

【劣化二倍】
増やせるのは本人だけであり、コピー体が劣化二倍を使用することは出来ない。
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