便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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No.195『あっちこっち文化祭Session5』

「お、やっと来たねって、ホークス!?」

 

「どもども、俺もちょっと見てこうかなって思って」

 

 やっと現れたと思ったレイミィがホークスを釣れてきた、と書けばマンダレイが思わず驚いてしまったというのは無理もないだろう。

 

 更に言えば開演数分前という事で人が集まっている体育館なので声も響くわけで、周りの視線が一気にホークスに集まることになり、それを受けてレイミィは

 

「まぁ、こうなるわよねそりゃ、壊理は大丈夫?」

 

「うん、平気だよ」

 

 彼女としては急に視線が集まったということで壊理が不安がる或いは怖がらないかと思ったが当の本人はケロッとしている。

 

 壊理にしてみれば自分に集まってるわけじゃないので寧ろホークスさんっていう人は凄い人なんだなぁとか考えてたりするくらいには余裕があったりするらしい。

 

 などと考えてみたレイミィだがだとしても急に周囲の視線が一気に集まるという状況で落ち着けるというのは凄くないかしら? と。

 

(あれかしら、精神面が安定したお陰と今まで居た環境が環境だったから威圧とかそういうのに強くなってるとか?)

 

 ある得ると言えばあり得る、変な肝の座り方してしまった可能性なんて寧ろ高いほうかも知れない。と考えてそこで別にいいかと割り切った、と言うか肝が座ってるならそれはそれで困るもんじゃないしというのが彼女の考えである。

 

 それで面倒事に巻き込まれるとか絡まれる危険性もあるかも知れないがそこは壊理の人誑しの才能を信じるしか無いだろう、間違いなく被身子辺りが聞いたら良いわけ無いでしょうが! と怒られるのだがレイミィの脳内にはその可能性は微塵も存在してない辺りはやはりこの少女に任せないという判断を下した血染達が正しいのかも知れない。

 

「それにしても結構人が入ってるね、便利屋だから物珍しさっていうのもあるのかな?」

 

「む? まぁそうでしょうね、そもそも大トリを学生に任せないって時点でどうしてだとかあるでしょうよ」

 

「話題性としては十分ってことか。で、所長さんとしてどう見る?」

 

 唐突なホークスからの問い掛けにレイミィは意味深に笑みを浮かべるだけの返事に留める。彼女からするとその質問に意味があるわけ無いじゃないという感情しか無い。

 

 自分の自慢の所員達が生半可な物を出すわけ無いだろと。レイミィが笑みを浮かべ、ホークスが意図を悟ったと同時に体育館の電気が一旦落とされスポットライトが舞台を照らす。

 

「Ladies and Gentlemen! 大変長らくお待たせしました。本日雄英高校文化祭、舞台の部の大トリを務めさせて頂きます我々便利屋チェイテでございます!」

 

 照らされたスポットライトの中に現れるのは仕事用の衣装を身に纏わせた圧紘、ショー慣れしているということで挨拶も卒無くこなしているがそこは便利屋。

 

 ただそれだけで終わることもなく、圧紘が開幕の口上を終えたタイミングで観客の頭上では空中ブランコ、そして舞台では玉乗りしつつジャグリングをしながら現れるは被身子の姿。

 

「それにしてもあれですよね、大トリって普通学生たちに任せるものじゃありません?」

 

「出てきて早々にそれを言われるとおじさんもちょっと困るんだけど、あと台本にないよねそのセリフ」

 

「いやぁ、疑問に思っちゃいまして」

 

「思っちゃいましてでアドリブしないでくれるかな? それに大トリの話は俺達が決めたんじゃなくて校長からの依頼だからさ」

 

 テヘッと効果音が見えそうな表情で告げられた言葉に圧絋も呆れるしかないとばかりの表情と動きに観客から笑いが溢れる。

 

「分かってるでしょ、被身子ちゃん、我々便利屋チェイテは報酬さえ貰えれば犯罪以外はなんだってやる何でも屋、だから……」

 

「大トリで最高に盛り上げてくれって依頼も完遂するですよね分かってまーす」

 

「いや、最高に盛り上げてくれの部分はなかった気がするんだけど」

 

 などと即興コントをやっている間も被身子は様々な芸を披露していく、と言うよりも披露するための時間が彼女の場合は普通にやってると足りないので合間合間にも休憩無しでやってかないと行けないというのが事実だったりもする。

 

 だがこの時点で見る人が見れば彼女の異常さが分かるだろう。被身子はこの即興コントをしている間も一切動きを留めてないのである。

 

 更に言えば圧絋もまた同じであり、彼に関しては被身子と連携とも言える動きをしている。それも緊張している様子もなくまるで日常だとも言える姿で。

 

(やっぱり地力が高いよなぁ、便利屋)

 

「さてさていつまでも私と被身子ちゃんだけでコントしてるとね、副所長達が早く進めろって煩いから進行しちゃいましょうか」

 

「誰も何も言ってねぇだろうが」

 

「おぉこわ、ではでは皆様、短い時間ではありますがお付き合いの方よろしくお願いいたします!」

 

 圧紘の宣言と同時に消えていた電気が一気に付けられ、それと同時に『二倍』で増やした便利屋の面々が各々芸を披露していく。それは個人が自由にやっているように見せつつもある種の連携が取れているようにも見えるものであった。

 

 サーカスだと聞いていたが合間合間に入るコントとも言えるやり取りを見れば、これはサーカスや曲芸と言うよりも……

 

「雑技団がミュージカルもしてるって感じやんこれ」

 

「おぉ、赤黒さんもだけど分倍河原さんも結構軽やかに動くんだな。俺もあんだけ動けたらできること増えっかな」

 

 切島が言うように彼の視界では血染を主役に置いた殺陣が披露されているのだが、仁の動きが精鋭とも言えるレベルであり、もしこれが実戦だとしても驚かないと言える。

 

 が、ここで気付くのが出久だった。なんか殺陣って割りには結構ガチじゃないこれ? と。

 

「なんだ、数で潰すだの言ってた割には温いな仁、それともボーナスは辞退するか?」

 

「誰が辞退するかっての! 行くぞテメェら、何が何でも臨時収入を獲得するぞ!」

 

『合点!!』

 

 ガチだこれ、しかも内部分裂しかねないレベルで本気だ。聴こえてしまった二人の会話に出久達は、いや、レイミィ達も引き攣った笑みを浮かべるしか無い。

 

 レイミィからすればこの場でやっちゃ駄目なレベルで生々しいやり取りしてんじゃねぇぞテメェらという感情すら湧いてくる始末。とは言え、演技掛かったかのような雰囲気もあるのである程度は演技なのだろう。

 

「なぁ、あれって私ら聞いてないんだがマジか?」

 

「いやぁ、俺も知らないなそれは」

 

「なんて呑気に話しながらナイフ投げてくるの止めてくれます!? あっぶな!!!」

 

「お見事! なんとよそ見しても百発百中、流石は便利屋の狙撃手!! 皆様、拍手をお願いいたします!」

 

「百発百中!!?? 今の見てましたよね、私避けてなかったら刺さってましたよね!!!」

 

 古参組がそんな事をしている最中、新人が故にあまりその手の隠し芸とか曲芸持った無いんだよな組の二人、火伊那と燈矢はと言えば端的に言えばナイフ投げを披露していた。

 

 しかもただナイフ投げをするのではなくコピー体の被身子を回転する的に縛り付け、ピンポイント以外は刺さって消滅するというターゲットをほぼノールックで当てていくというもの。

 

 対して燈矢も炎による精密射撃や炎そのものを動物の形にしたりと器用さの演技を行っていた。だが思う、地味だなぁとなんかこう派手に動ければよかったのだが、まだ完治しきってない体がゆえにそれは許されなかったのだ。

 

「ま、だったら〝個性〟で盛り上げるしかないかっと!」

 

「おぉ、龍ってのはまた思い切ったなっと」

 

「ひょあああああ!!!???」

 

 なお、被身子がこのよう扱いをされている理由に深い理由はない、強いて言うとすればリアクション芸が適任だったと言う辺りだろうか。

 

 そしてこのようなほぼ悲鳴で観客はドン引きしないかと言えば、被身子のリアクションがあまりにもオーバーなので誰も本気だとは思ってはおらず寧ろコント的な意味で取られ笑いを生んでいる。

 

 何という好循環だろうか、レイミィは何やら悲惨な扱いを受けている親友に頑張りなさいとエールを送る。内心ではこの間、自分のではないお菓子を食べてたのを思い出しそれが原因だろうなとは思いつつ。

 

「にしても、なんていうか多才だよね君たちって」

 

「一芸特化じゃ生きられない業界に居るからね、まぁ被身子のそれはちょっと万能すぎるとは思うんだけど、あの娘って芸人の素質もあったのねぇ」

 

「多分あれはリアクション芸じゃなくて本気の悲鳴だと俺は思うんだよなぁ」

 

 ヘーキヘーキ、あれはコピー体だからというドブラックなセリフにホークスは苦笑するしか無いが実際、便利屋でのコピー体の扱いはそんなものである。

 

 などとレイミィとホークスがコントしている間も便利屋のミュージカルのようなサーカスのような曲芸大会は盛り上がっていき、それを見たA組の一人、耳郎は呟く。

 

「うん、素人が勝てる相手じゃないよねこれ。でも悔しいとかよりも楽しいが最初に来る辺り流石だなぁって思うよホント」

 

 言うなれば自分たちに実力を見せつけているとかではない、プロとしてこの場の全員を楽しませると言うのが嫌でも分かるというのが彼らの出し物。

 

 だからこそ自分たちよりも会場が盛り上がっているとしても不思議と負けたとか負かされたとか言う感情が湧いてこない、寧ろ一緒に盛り上がろうという気持ちのほうが大きくなる。

 

「まぁそれはそれとして渡我さんは何かやったんあれ?」

 

「間違いなく私怨込み込みだよな、当てはしないんだろうけど容赦ねぇもん」

 

「あ、髪の毛掠ってる」

 

「だ、大丈夫ですのよね!?」

 

 八百万の心から不安な声に全員が答えた、まぁ大丈夫でしょと。そして気付けば、終りを迎える、最後に全員の連携で大一番な技を見せてから、便利屋の面々は万雷の拍手を送る観客たちに向けお辞儀を一つ。

 

「これにて便利屋チェイテの曲芸大会以上となります! どうでしたでしょうか、皆様の心に残る物となれば非常に光栄で御座います」

 

「やれやれ、結局最後まで見ちゃったよ」

 

「ふふっ、ホークスを釘付けにしたって言えば被身子辺りはガッツポーズしそうね、壊理達はどうだったかしら?」

 

「凄かった!!!」

 

「俺もすげーしか言えねぇよ」

 

「話には聞いてたけど、凄いねぇ、なんだか私自信失くしそうだよ」

 

 とマンダレイは言っているが顔は笑っているので感想としての言葉だろうし、それを分かっているレイミィは口が上手いわねと笑みを浮かべる。

 

 これにて雄英高校文化祭も幕を閉じると行きたいがまだもう少しだけ付き合ってもらおう、そう、最後のイベントがまだ残っているのだから。




詳細な描写を書こうとして全く書けずに誤魔化しに誤魔化す形になるという。
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