便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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母親キャラのエミュが難しい(読み込み不足


No.196『文化祭の終わり』

 正門近くの適当なベンチに座り込み、私はふぅと息を吐き出す。楽しい時間は早く過ぎ去るとは聞いたことあったけど、実際に体感したのは初めてだわ。

 

 さてアレだけ盛り上がってたのに気付けば人も疎らになりつつある中、私は何してるかと言えばまぁ人を待ってるのよ。

 

 ほら、緑谷と爆豪の両親が話があるとかってあったじゃない、それよ、とは言えなんだけどさ。

 

(……うーん、緑谷はともかく爆豪の方は本当に皆目見当がつかない、何を話すってのかしら)

 

 あぁ、マンダレイ達は既に帰ってるわ。あと壊理は被身子達に預けても来た、居ても良かったけど流石にあの娘には退屈でしょうし。

 

 話は戻すけど、爆豪のほうが本当に理由が浮かばない。緑谷は良いのよ、多分だけどあれこれ世話を焼いたことに関することでしょうから、でもあっちに私がしたことって煽ったり天狗鼻を折ったりで碌なことした記憶無いのよね。

 

 まさかそれに関して? いやいや、だったら爆豪がもっと渋い顔するでしょうし、少なてもヒーローになろうとかいう性格には育たないわ。

 

「分からん」

 

「あ、バートリーさん!」

 

「っと、来たわね」

 

 見ればそこに居たのは緑谷とその母親の女性、あぁうん、似てるわ雰囲気が凄く。にしても母親だけってことは父親は今日は来れなかったようね、忙しい人なのかしら。

 

 まぁ私がそこを気にしても仕方がないか、ていうかそんな事を考えてる間にもう二人は近くまで来ちゃってたので先んじて挨拶しておくべきね。

 

「はじめまして、レイミィ・バートリーです」

 

「あ、ご丁寧に。出久の母で緑谷引子です」

 

 あまりよろしくないのは百も承知なんだけどつい癖で記憶を覗き見てしまった。そしてこの人の今までの苦労や苦悩を知ってしまった、これは……ちょっと強いわね。

 

 同時に緑谷はちょっとお母さんに心労を掛けすぎなじゃないかしら? いやまぁヒーローってのはそういうものなんだけどさ。

 

「それでお話というのは?」

 

「息子がお世話になったとのことでお礼をと思いまして」

 

「お礼って、いや、その私はただちょっとアドバイスしただけですよ」

 

 しかもアドバイスも本当にであった数日だけであとは血染だし、こんなことならアイツも連れてくるべきだったわね……

 

 まぁともかく引子さんの言葉には私的には大袈裟なとしか言いようがないのが本音なのよ、いや、本当に、てか緑谷は何を話したの。

 

「えっと、〝個性〟についてのアドバイスを貰ったとか修行に付き合ってもらってるとか」

 

「私がお礼を言いたいのは出久に笑顔が戻ってきたという所です。この子、雄英高校に入学するまではずっと思い詰めてたりしてましたから」

 

 あぁ、なるほどね。気持ち的にも入学直後なんて余裕ないし焦ってたものね、そりゃ母親からすれば心配なのにどうすることも出来ないで辛かったのは確かか。

 

 んでその息子が笑顔になって前向きになってきたってなり、話を聞けば私たちの話題が出て今に至る。まぁ、ある程度は予想してたけどこう真正面から言われるとやっぱりこそばゆいわね。

 

 さっきも言ったけど、私がやったことなんでほんの少しだけ背中を押したと言うかアドバイスを送っただけで後は緑谷の頑張りでしかないんだし。

 

「でもバートリーさんが居なかったら僕はまだ焦ってたかもしれないし、かっちゃんとも仲直りできてなかっただろうから」

 

「爆豪に関しては本当に偶々よ、見てて面倒だなって思っただけだし」

 

 だってあれ絶対に放置してたら碌な事になったないだろうし、実際にあの喧嘩を見てたらそう思わざるを得ないじゃない。

 

 でもまぁうん、お礼というのならば素直に受け取っておくべき、か。どうであれ引子さんからすれば息子が救われたというのは変わらないんでしょうしって何よ緑谷。

 

「あ、いや、バートリーさんって相変わらず素直じゃないなって……ごめんなさい」

 

「分かればよろしい。引子さん、だからあまり気にしないで下さい、でもまぁそう言ってもらえると私たちの方もやりがいがあったと思えますけど」

 

「ふふっ、改めてありがとうございます、バートリーさん」

 

 うーむ、真実を知ってからはあまりそういう感情を持たなくなったけど、やっぱり母親に頭を下げられると心がざわつくわね。

 

 冷さんにだけかと思ったんだけど、思った以上に私って母親みたいなタイプの人間に弱いと言うか甘いのかもしれない。

 

「にしても爆豪達の方は一体何の話なのかしら、緑谷は何か聞いてないの?」

 

「ううん、全く。かっちゃんに聞いても多分答えてくれないだろうなで聞いてないから」

 

「そりゃそうか」

 

 アイツがすんなり話すわけ無いわよねそりゃ。とりあえず悪いと言うか変な話ではなさそうだから、あるとすれば引子さんと同じパターンか?

 

 それはそれでお礼される理由がまるで見当たらないってのが本音になるんだけど……それでそっちはこれからは?

 

 ふと聴いてみれば、少しだけ話しながら解散とのこと。曰く寮生活なので会話はできるうちにしておきたいとのことらしい、それは御尤もね。

 

 なので二人とはここで解散、私は爆豪を待つためにまたベンチに座るんだけど、これあれよね、相談窓口やってる気分になるわ。

 

「おい、コウモリ女って! 何しやがるババア!?」

 

「あんた、女の子になんて呼び方してるの! ごめんなさいね、こっちの都合で呼びつけておいて」

 

「い、いえ、大丈夫ですよえっと……爆豪のお母様で?」

 

 聞いたけどこれで違います言われたら私は今すぐにでも血から記憶を読み取るし便利屋を緊急招集するわよ。

 

 だってそれくらいにはソックリだし多分、性格も母親譲りでしょ。じゃないと爆豪の頭を叩いて怒るなんてできないと思うし、いやぁなんかうん、親子って感じだわ。

 

「はじめまして、勝己の母の爆豪光己です。息子が本当にお世話になったようで」

 

「……お世話? あ、あぁ、えっとお世話っていうか私が煽ったと言うか、何だったら折りかけたとも言いますか」

 

 割りと真面目に爆豪に関しては世話云々よりも煽って爆発させたり入学初日とかなんか心折る一歩手前くらいまで追い詰めたような記憶しかないし。

 

 だから目の前で頭を下げられてる光景に私にしては珍しく思考が追いつかなかった、が次の光己さんの言葉である程度の納得はできることになる。

 

「こいつ、勝己は昔から能力の高さでチヤホヤされてて親としてどうにかしなくちゃで出来ずにいてね。雄英高校に来ればしっかり見てくれて立派なヒーローにしてくれるんじゃないかって思ってたんです」

 

「……ふむ」

 

「それで入学初日から急に雰囲気が変わったなって思って、次の日には荒れちゃいたけどまた変わって、そこら辺からコウモリ女、つまりバートリーさんのことが会話で出てくるようになったんですよ」

 

「へぇ、何アンタ私のこと話してたんだ」

 

「るっせぇ」

 

 それはそれ非常に興味深い話であると同時に、お世話になったという言葉の意味も理解できた。まぁ実際問題、家庭内だけでこの天狗鼻状態だった爆豪をどうにか出来るかと言えば難しいとしか言えない。

 

 家族っていうのは身近だからこそ変化に気付けるけど、短すぎるから変えようとしても変えにくい、なんだったら余計に拗れて悪化することだってあり得てしまう。

 

「なるほど、故にお世話になったってことですか」

 

「えぇ、正直なことを言うと緑谷くんとも仲直りしたって話を聞いた時は驚いたくらいです」

 

「どんだけ拗れてたのよあんたら二人……まぁあれに関してはいつまでもズルズルと引き摺られると面倒だなっていうのが殆どですけどね私は」

 

 ていうかさっきから爆豪は黙ってるけど、何か言わないの? あ、話すことなんて何も無い? なんともまぁ子供らしい拗ね方しちゃってからに。

 

「誰が拗ねてるって? あぁ!?」

 

「あらあら、もしかして図星ってやつかしら?」

 

「上等だコウモリ女、今からぶっ殺してやってもっ!?」

 

「あんた、まだそんなこと言ってるの?」

 

 み、見えなかった……っ!? 間違いなく制裁の一撃が爆豪の脳天を直撃したっていうのにその拳が私には見えなかった、え、なにあれ怖。

 

 母は強しなんて言葉があるのは知ってたけど、まさか実例を目撃することになるなんて、っていや、母は強しが見たいなら轟家があるじゃないのよね。

 

 そこも冷さんが天下取ってる家庭だし、時点で冬美さんの時点で男性陣の地位の低さが分かりやすいし。まぁ極端に低いのはエンデヴァーだけで夏雄さんとか焦凍とか燈矢はそうでもないんだけど。

 

「二度も人の頭を叩くんじゃねぇぞ、ババア……!」

 

「ほぉほぉ、まだ元気があるんだね、帰ってから覚えておきな」

 

「くくっ、あ、ごめんなさい。本当に仲が良い親子だなって思っちゃって」

 

「何処からどう見たらそう見えんだオメェ?」

 

「何処からどう見てもの間違いでしょうが、そうやって真正面から言い合える親っていうのは大事にしなさいよ」

 

 欲しくても手に入らない生涯において貴重な人なのだから。なんて私が言っても説得力無いかしらね、とは言え家族ってのは大事になさい爆豪、言うまでもないとは思うけど。

 

「バートリーさん……」

 

「けっ、うるせぇよ、んなこと」

 

「分かってるっての、粗暴に見えて根は優しいものね、貴方って」

 

「あぁ?」

 

 はいはい、照れ隠し照れ隠し。これ、緑谷の方にも言えるのよねと言うかあいつにこそ言うべきだったわね、あの自己犠牲の塊のブレーキって何重にもあって損はないでしょうし。

 

 ほんと、あいつのあの精神はどうしたもんかしらって……あぁいや、ごめん、別に当てつけとかじゃないから、うん、本当にごめんなさい。

 

「何度も謝んな、俺だって分かってるっての」

 

「まぁ最近は落ち着いてるけど、何かの拍子にまた表に出てくるかもしれないし頼めるかしら」

 

「……おう」

 

「こりゃ驚いた、アンタが女の子からの頼みをあっさり聞くなんて」

 

「コイツにはそれくらいの借りがあるってだけだ」

 

 借りなんてあったっけと私は思うけど、爆豪からしてみればあるんでしょうね。その辺りは分からなくはないから黙っておくけど、っとと。

 

 急に震えたスマホに二人に失礼と画面を見れば被身子から冷さん達が挨拶したいというメッセージがなので爆豪達にすまないけどと伝えれば

 

「あぁ、こっちこそ時間を取らせちゃってごめんなさいね」

 

「いえ、話が出来てよかったと思ってるから大丈夫ですよ。爆豪、何度も言うけど」

 

「言わなくても分かってるって言ってんだろうが、さっさと行ってきやがれ」

 

 なんとも素直じゃないと思いながら改めて挨拶をしてから私はメッセージに記されていた場所に向かう。まぁ言っても寮の入り口なんだけど。

 

 ともかく到着すれば、轟家が勢揃いし向こうも私に冬美さんが気付けば手を振って私を呼ぶので自然と早歩きで向かってから。

 

「ごめんなさい、待たせました?」

 

「いえ、私たちも先程まで便利屋の皆様と話してましたから」

 

「んで途中で所長ちゃんの話題になって秘書さんに呼んでもらったってわけ」

 

 なるほどそういう流れだったのね。被身子たちはと聞いてみれば今は寮内でA組と打ち上げ準備をしてるとか、まぁ大成功だってものねライブも。

 

「そうそう、あのライブのレイミィちゃんのヴァイオリン、あれ凄かったよ」

 

「あぁ、俺はヴァイオリンの演奏とかはあまり聴いたこと無いけどそれでも凄い上手い演奏だってのは理解できた」

 

「……まぁ、悪くなかったな」

 

 急な褒め殺しにちょっと顔が赤くなったような感じがした、あとエンデヴァーはもう少し素直に感想を出したらどうかしら?

 

 なんてエンデヴァーに詰めようとしたがその前に冷さんにもどうだったかと聞いてみれば

 

「心に響いたと言うべきでしょうか、バートリーさんが本当に楽しそうに演奏してるのを見て自然と私たちも楽しくなれました」

 

「そう言ってもらえると嬉しいです。正直、私だけが楽しんでるんじゃないかって心配でしたから」

 

「そんな事ありませんよ、バートリーさんの演奏は皆を楽しませようとしてるのは理解できましたから」

 

 微笑みながら述べられた冷さんからの感想に私は真正面から受けようとしてやっぱり恥ずかしくなってしまった。

 

 あぁうん、やっぱりと言うべきかこの人には特別弱いんだな私って今更ながらに理解して、けれど同時に悪い気はしないというのもあるのも分かる。

 

 結局は私はこの感情と願いに気付かないふりをしてただけ、私はこの人のことを〝母親〟と思いたいんだって。ただ間違ってもエンデヴァーを父親とは思いたくはないけど、その後はまぁなんてこと無い雑談をしたり便利屋の出し物の感想を聞いたりしてお別れとなったわ。

 

「……おぉ、バートリーのあんな表情は初めて見た」

 

「レイミィちゃん、冷さんにはすこぶる弱いんですよ。例えるなら弱点四倍です」

 

「直撃で一撃じゃんね」

 

 さて、盗み見てた下手人達はどうしてやろうか。そんな事を思いながら私は寮に駆け込んだ。その後のこと? まぁ悲鳴が軽く上がったりしたり、打ち上げを楽しんだり、その流れで壊理が感情を思いっ切り出せるようになったことにA組全員が驚いたり。

 

 とにかく思い出作りとしては文句なしの一日だった……で終わりたかった、えぇ、けれどね。

 

「待て待て待てって、敵じゃない、マジで!」

 

「黒霧? いえ、誰アンタ」

 

 深夜、私は殻木に呼び出され向かった奴の病院でいよいよ事態が大詰めに向かわされてることを知ることになった。




次回から章が変わります、いよいよってところですね。
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